初めての敵
「あそこが私たちの村アカト村です!」
―…だよー!速くしないと売り切れるよ!……さあさあ皆さんご注目ー!これから…
人はとても多く、活気に溢れ、賑わっていた
「なんだここは…?!」
そこは俺が知っていた"日本"とは似ても似つかぬとこだった。
「改めてようこそ、クジョウアラタ!ここが私達の村、アカト村です」
「こんな人がいるのは、祭りでもやっているのか?」
「お祭りなんてありませんよ?むしろ、今日はこれでも人が少ないくらいです。」
「驚いた。まさかこんなに賑わっているとは思いもしなかった。」
「国の王都に行くと、これとは比較にならないくらい、もっとたくさんの人がいますよ!」
「すごいな…」
「まぁ、まずはあなたについてのお話もしたいですし、私の家へ行きましょう。」
「ああ、こっちも聞きたい事が山程あるからな。」
「では、付いてきてくださいね。」
ほんの少し歩くとシルフの家についた。中はそんなに広くはないが、とても綺麗に整理してあり、住みやすそうな感じだった。
「では、クジョウアラタ、まずは…」
「ちょっと待ってくれ、さっきから気になっていたんだが、わざわざ九条新って言わなくていいぞ。新でいいから。」
「わかりました。では、アラタあなたがどこから来て、なぜあの森にいたのか、お話してもらっても?」
「ああ、もちろんだ。俺は、日本っていうところにいたんだ。さっきの反応からするに、こことは別の場所にあるってことはわかった。」
「はい、私はニホンというのを初めて聞きました。」
「そこで俺は、特別な事情で走ってたんだ。そしたらいきなり、周りが暗くなって、変な声が聞こえて、気付いたらあの川の近くにいたんだ。」
「そうですか…」
「俺もこっちのことについて少し話を聞きたいんだが…」
「はい、わかりました。」
そして俺は、こっちのことについて、を聞いた。
「そういえば、少し気になっていたんだが、さっき森で、夜になったら…みたいな ことを言っていたよな?あれはなんかあるのか?国の決まりとかか?」
「いえ、そういう事ではありませんよ。」
「おばけとかが出るとか…?」
「フフッ、アラタは面白い事を言うのですね。」
「…笑うなよ!」
「おばけは出ませんが別のものが出るんですよ。」
「ん?」
「…魔物です。」
…はぁ? 魔物だ?!なんなだよこの世界は!!
その晩、もちろん家の無い俺はシルフの家に泊めてもらった。も、もちろん一緒に寝るなんてそんなことはしてないからな!そんなことよりも、俺はさっきの話に出てきた"魔物"について考えていた。さっきシルフが、
「絶対に見つけても、近づかず、すぐに逃げてください」
と言っていた。
ースー…スー…
シルフはもう寝たようだ。
「ちょっと探すくらいならいいよな…。」
実際、とても興味があった。アニメなどで出てくる魔物みたいなのが出るのか、とても知りたかった。少しだけなら、と思い俺は外へ出てしまった。
家の裏の林を探そうと、裏へ回り込み、光を照らした時だった。すぐにそいつは見つかった。
体長はおよそ1mほど、見た目は犬のようなやつだった。しかし、何より目が行くのは、その牙だった。ククリ刀のように鋭く曲がり、噛まれたら確実に肉が引き裂かれる、そんな牙だった。
「まさか、こんなにはやく出くわすとは思いもしなかった…」
手持ちは灯りのついたランプのみ…詰んだか…。
「グルルル…グギャアオ!」
そいつは俺に向かって飛んできた。
続く…