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かっこいいということ  作者: 沖見幕人
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こんなはずじゃなかった

久しぶりの更新になります。うっすらと実体験も織り込みつつ、ゆっくり書いていきます。よろしくお願いします。

 入社して半年。研修期間を終えて、仕事を覚え始めた頃に異動の辞令が出された。新しい配属先は社内でも花形の部署らしいが、正直なところどうでもいい。


 そもそも、就活の時に本命企業に落ちた為に仕方なく入った会社なのだ。しかも、志望ランクで言えば第5志望くらい。待遇にも業務内容にも社風にも魅力を感じていないが、この氷河期に就職浪人することを嫌い、渋々ながら、嫌々ながら、入社したのだ。


 僕のやりたいことはこんなことじゃあない。さっさと転職してやる。そんな気持ちで過ごした半年間だった。


 新しい配属先、花形の部署。夢も希望もない。ただただ静かに、一日が過ぎるのを待っていよう。




「本日からお世話になります、相川です。右も左もわからない若輩者ですが、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いします」



 無難な挨拶を済ませ、形だけは真面目に見えるよう、かしこまって頭を下げた。


 見た感じ、若い人はいないな……


 期待はしていなかったが、歳の近い社員はこの部署にはいなさそうだ。二人いる事務員の女性も、むしろ僕の母親に近い年齢だろう。


 僕の挨拶に10人余りの中年達が適当な拍手を送ってきた。どいつもこいつも、僕の気持ちなんて理解できていないだろう。この人達の世代と僕の世代では、仕事に対する考え方自体が違うのだから。


 僕の紹介が済んで、そのまま朝礼に移っていった。一人一人が簡単に今日のスケジュールと業務報告を行う。


「日比谷くんは本日直行してますが、午前中には帰社するとのことです」


 営業課の課長が最後に報告をした。もう一人営業マンがいたのか。月初から直行って、普通なのかな?何となく、勝手な人という印象を持った。


 課長の報告に、部長が微笑みを浮かべて話す。


「日比谷くん、早く帰ってこれそうなんだ。良かった良かった」


「新人に会う為に本気出しました、なんて言ってましたよ」


「日比谷くんらしいね。そういうところ、若さだよね」


 部長は僕に向き直ると、僕に対して今後のスケジュールを言い渡した。


「相川くんはね、3ヶ月間は研修期間。日比谷くんの下についてもらうからね。今日はもともと日比谷くん抜きの予定だったんだけど、午前中には帰ってくるって言うから、それまでは適当に過ごしててよ」


「はい……?」


 何だか、説明が中途半端な気がするんだけど。つまり、今日はどうしていればいいんだ?


「相川くんは新卒入社だったよね?日比谷くんはウチの唯一の20代だから、話は合うと思うよ」


 ……どうだか。歳が近いだけでひとくくりにされるのは気にくわない。


「はい。お会いできるのが楽しみです」


 まぁ、話してみたいのは本音だけど。


 こんな会社に入って、何年も続けているのはどうしてなのか、その理由を聞いてみたい。

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