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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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ベルゼブの誤算

 ベルゼブは、元の大きさから比べると数十倍にもなっていた。身体が大きく変化して、上半身は、人間に近いが下半身は、大小の触手だらけでもはや化け物としか言いようが無いほどに変化している。海の底にでも居そうな感じだった。

 「な、何だよありゃ…」

 「こ、こんな事って…」

 ベルゼブが、耳をつんざくような奇声を上げた。内郭うちぐるわに居た者全員が思わず耳を塞いだ。そしてベルゼブは、足の代わりの様な触手を四方八方に伸ばし叩きつけるようにして襲い掛かって来た。

 「うわぁぁぁぁ、逃げろぉぉ」

 「ひ、引け引けぇぇぇ」

 人間の兵士達が上官の命令を無視し逃げ始めた。

 「あっこらっ逃げるな!戦え!」

 「仕方がない、とにかく外郭そとぐるわまで下がろう、これじゃ戦えないよ」

 と、レン達も陣を解き外郭まで下がる事にした。

 「グルゥワハハハハ、全くリヴァーヤの力は凄い、さぁ人間共かかって来んかぁ」

 その頃、イビルニア城の中の井戸を破壊しに行ったエンジェリア人とドラクーン人の部隊も外の異変に気付いていた。

 「先ほどの地震は何だったんだ?外で何かあったのか?」

 「だろうな、とにかく今はこの井戸を破壊しよう、それっ!」

 と、ベアド大帝もやったようにエンジェリア人が水晶の様な物に何か呟き井戸に放り込んだ。井戸の中が明るく光り中からイビルニア人の悲鳴が聞こえた。光りが消えると悲鳴も止んだ。そして井戸を徹底的に壊した。

 「これで良い、後は人質として捕らわれているサウズ大陸の王族を救うのみだ」

 エンジェリア人とドラクーン人の部隊が城内を探した。王族達は、直ぐに発見されたが酷く衰弱していた。

 「大丈夫か、助けに来たぞ」

 「おお、ありがとう、イビルニア人達は?外がやけに騒がしいようだが」

 「今、我々の軍と人間の軍がベルゼブと戦っている」

 「な、何と?!」

 「とにかく外に出よう」

 と、エンジェリア人とドラクーン人の部隊は、王族達を連れ外に出て巨大化したベルゼブを見て驚愕した。

 「あ、あれは…ベルゼブか?」

 「うぬぬ、化け物めぇ、これでは皆の所に帰れないな、遠回りだが裏から出よう」

 と、エンジェリア人とドラクーン人の部隊は、一人で二人の王族を抱えベルゼブに気付かれぬようこっそりと飛びレン達の居る外郭を目指した。外郭では、巨大化したベルゼブになす術がなく苦戦していた。大砲や魔導戦車砲で攻撃するも全く効果が無かった。ラーズが呆れたように言った。

 「あの野郎、リヴァーヤの力を使ってとんでもない化け物になったな」

 「ううむ、これは予想外じゃったのう」

 と、龍神は呟いた。アストレアは、連れて来たエンジェリア人を使って何か準備していた。イビルニア城に捕らわれていた王族達を無事に救い出したと報告を受けたアストレアは、直ぐに連れて来たエンジェリア人に命を下した。

 「さぁ準備は良いですね?行きなさい!」

 と、言うとエンジェリア人達は、両手に人の頭ほどの石を抱えベルゼブを囲むように飛んで行き石を置いて行った。頃合いを見てアストレアは、光の剣を地面に突き立てた。すると先ほどエンジェリア人達が置いて行った石が反応しベルゼブを覆う様に幕が張られた。

 「結界を張ったのですか?」

 「そうよレオニール、これでベルゼブはあそこからこちらには来れないわ、でもこちらからも攻撃が出来ない」

 「えっ?じゃあどうやって倒すのですか?」

 そう言ってレンは、ベルゼブを見た。ベルゼブは、結界が張られた事に気付いている様子だった。内側から結界を破ろうとガンガン叩いている。

 「下らぬ結界など張りおって、これで余を封じたつもりか」

 「皆を避難させるまで持てば良い、レオニール全軍を撤退させなさい」

 と、アストレアが言い、更にベルゼブを倒せるのは、ドラクーン人、獣人、エンジェリア人そして練気を使えるレン達だけとアストレアは言った。レンは、各国の指揮官達を集め全軍撤退するよう話した。

 「レオニール様、それは無茶でしょう、我々も戦います」

 「駄目なんだ、普通に大砲や小銃の攻撃ではベルゼブは倒せないんだ」

 「いや、しかし」

 「犠牲者が増えるだけです、直ぐに撤退するのです」

 と、アストレアも言った。指揮官達は、アストレアの女王としての威厳に押され撤退を決意した。

 「わ、分かりました、くれぐれもご無理はなさらぬように、我々は城外で待機します」

 そして、各国の軍隊は、イビルニア城外に撤退しそこに陣を構えた。イビルニア城外郭に留まったのは、レン達と一部のドラクーン人、獣人、エンジェリア人だけとなった。

 「ほう、軍を撤退させお前達だけで余に挑むのか…面白い」

 と、結界の内側でベルゼブが余裕の笑みを浮かべて言い、内側から触手で結界を押し始めた。すると結界にひびが入り始めた。

 「グルゥハハハ、こんな結界は余には無意味だ!」

 バーンと音が鳴り響き結界を破った。そして、じわじわとレン達に迫って来て触手を伸ばし始めた。空を飛べるドラクーン人やエンジェリア人は空を飛んだ。シーナに治療されたヴェルヘルムがアストレアを守るように傍に居る。

 「さぁやってやろうじゃねぇか!行くぞぉおらぁぁぁぁぁ!」

 と、マルスの真・神風が戦いの合図となった。地上のレン達と上空のカイエン達が一斉に攻撃に出た。襲い掛かるベルゼブの触手を斬り飛ばしたり避けたりしながら頭に目掛けて真空斬や雷光斬を放った。

 「くそう、斬っても斬っても直ぐに再生しやがる、気持ちの悪い」

 と、触手を斬り飛ばしながらラーズが言った。

 「お前達の攻撃など痛くも痒くもないわ!喰らえ!魔掌撃ましょうげき

 と、ベルゼブが言うとてのひらから気を飛ばして来た。

 「うわっ!あぶねぇ」

 と、マルスは飛んで来た気をギリギリで避けた。地面が深くえぐれている。ベルゼブは、魔掌撃を連発し触手で攻撃して来た。

 「グルゥワハハハ、死ねい死ねい」

 「ち、畜生、これじゃあ近付けねぇぜぇ」

 と、カイエンは上空でベルゼブを睨み付けながら言った。地上のレン達もなかなか攻撃出来ずにいた。魔掌撃と触手の攻撃を防ぐのに精一杯だった。レン達に疲れが見え始めた時、ラーズがまともに触手の一撃を喰らい吹っ飛ばされた。

 「ラーズ!大丈夫か?しっかりしろ」

 「ぐぐ、ううういてぇ…」

 マルスが倒れたラーズに駆け寄り抱き起そうとした。

 「マルス危ない!」

 と、レンが叫んだ。ベルゼブが放った魔掌撃がマルスとラーズを襲ったが、マルスが咄嗟に放った真空斬で跳ね返した。

 「グググルゥワァァァ!!…?…グワァァァァァ」

 突然ベルゼブの様子が一変した。頭を抱え苦しんでいる。レン達は、何が起きたのか分からず様子を見た。

 「ど、どうしたんだ急に?」

 「おそらく力を制御出来ていないのでしょう」

 と、アストレアが言った。巨大化した事でベルゼブの中でリヴァーヤの力が暴走し始めたようだった。ベルゼブは、触手をバタつかせた。図らずもレン達には、十分な攻撃になっている。

 「これじゃあさっきより酷いじゃないか、うわぁぁ!」

 レンの目の前にベルゼブの魔掌撃が炸裂し吹っ飛んだ。それを見たベアド大帝がレンに駆け寄って来た。

 「レオニール殿、大丈夫か?」

 「はい、大帝様、しかしリヴァーヤの力を制御出来ないって、どういう事ですか?」

 「ううむ、おそらくリヴァーヤの意思が抵抗しておるのじゃろう悪に利用されたくないとな」

 「半島に来る途中、僕達が捕えられ力を吸い取られていたリヴァーヤを助け出したんです、その時リヴァーヤが必ずお礼はすると言ってたとシーナが聞いたそうです、お礼ってこの事なんでしょうか?」

 と、レンはベアドに話した。ベアドは、自分達の周りに氷壁を張りベルゼブの様子を見た。ベルゼブが怒り狂ったように暴れている。他の者達もベルゼブから距離を取り様子を見ている。

 「グルオオオオオ、リ、リヴァーヤァ!大人しく余に従えぇお、お前の力を余に役立てるのだ」

 と、ベルゼブは両手で頭を抱え下半身の触手を四方八方に叩き付けている。そして、大きく叫ぶと身体が光り出した。

 「眩しい!」

 と、レン達は思わず顔を覆った次の瞬間、ベルゼブの身体に変化が現れた。巨大化した身体が縮みだしたのだ。足の代わりになっていた触手は消え元の足に戻り、身長が五メートル程になった。

 「グルゥゥゥゥゥ、はぁはぁはぁリヴァーヤめ…しかし、力が完全に無くなった訳ではないぞ」

 「リヴァーヤを甘く見たお前の誤算だったようねベルゼブ」

 と、アストレアが地上に降り立ち言った。ベルゼブは、何も答えず凶悪な剣を宙から出現させ掴んだ。

 「ふん、リヴァーヤの力はまだ残っておるわ、裂空間陰れっくうまいん

 ベルゼブが内郭の空間を歪めた。空を飛べないレン達人間やベアドら獣人達は、足場を失った感覚に襲われた。

 「我々には通じんと言っただろうが、ハァァー!」

 と、ドラコが爆炎を吐いた。ベルゼブは、その爆炎を剣で振り払い素早く左手でドラコの首を掴んで絞め上げた。ミシミシと首を絞め上げる音がする。ドラコは、手を解こうと必死に抵抗したが、ベルゼブの凄まじい力でなかなか手が解けない。

 「ぐ、ぐぐぐ」

 「このまま握り潰してくれる」

 そう言ってベルゼブが絞める手に力を込めようとした時、いつの間にかベルゼブに忍び寄ったテランジンが、直接ベルゼブの左腕を斬り飛ばした。ドラコが、ドサリと地面に落ちた。左腕を失ったベルゼブがテランジンに斬りかかる。

 「ほほう、人間がこの裂空間陰の中を自由に動けるのか、お前は何者だ?」

 「ふん、元は海賊でな大時化おおしけの海を経験していれば大した事はない」

 「海賊とな面白い、名は何と言う?」

 「トランサー王国海軍大将テランジン・コーシュだ、おらぁぁ!」

 テランジンとベルゼブの攻防戦が始まった。両者一歩も譲らぬ戦いである。激しい攻防戦でレン達が入る隙が無かった。

 「なかなかやるな、人間にしておくには惜しいのぅ」

 「そりゃどうも」

 「しかし、やはり人間だな体力が持たぬであろうグルゥゥフフフ」

 と、ベルゼブが言う様にテランジンの体力に限界が来ていた。それを気付いていたアンドロスがテランジンに言った。

 「テランジン下がれ、後は私がやる」

 「そうさせてもら…うわぁぁ!」

 テランジンに出来た一瞬の隙をベルゼブは、見逃さなかった。義足をした右足の太ももを深く斬られ倒れた。

 「ベルゼブゥ!」

 と、物凄い勢いでアンドロスがベルゼブに斬りかかった。倒れたテランジンをカイエンとシーナが素早くその場から離し右太ももを治療した。アンドロスがベルゼブと戦い始めた頃に陽が落ち始めて来た。夜になるとイビルニア人の力が倍増する事は皆知っている。そこでマルスは、鞄から天照鏡を取り出した。

 「夜になったらベルゼブの野郎もっと強くなるんだろう、ほら鏡よ照らせ…照らせ、あれ?何で照らさないんだ畜生」

 鏡は、本当に危機に陥った時にしか光りを放たない事を知っているマルスは、焦った。辺りが段々と暗くなって来てやっと天照鏡が光りを放った。その光りに気付いたベルゼブが、アンドロスを蹴り飛ばしマルスに襲い掛かった。

 「その鏡叩き壊してくれる」

 「させるか!」

 と、レンとラーズが同時に真空斬をベルゼブに放った。真空波がベルゼブにまともに当たり吹っ飛んだ。天照鏡がより強く光りベルゼブを照らした。さすがのベルゼブも天照鏡の光りには敵わず光りを通さない真っ黒な結界を自分の周りに張りその場から動かなくなった。

 「天照鏡…それがあれば明日の朝までベルゼブはあのまま動かないでしょう」

 と、アストレアが言った。即席で台を作り天照鏡を乗せベルゼブを照らし続けた。そして、レン達は朝まで休息をとる事にした。

 「あの野郎、明日には絶対ぶっ殺してやる」

 と、マルスが鼻息を荒げ言った。

 

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