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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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遅れて来たエンジェリア人

 「グルワァァァま、眩しいぃぃぃ」

 光に包まれたベルゼブが狂ったように暴れ出した。やたらめったら鎖で繋がった棘付の鉄球が付いた杖を振り回した。レン達は、かなり距離を取り光の出どころを見るとそこには、空で光を放つ剣を高々と掲げたアストレア女王とその横にはアンドロス、迷いの森の番獣ヴェルヘルムと他のエンジェリア人達の姿があった。

 「アストレア女王!」

 エンジェリア人達がレン達のもとへ降り立った。

 「遅くなりました、レオニール」

 「すまない、半島各地の井戸を破壊していたのだ、これであちこちからイビルニア人は出て来る事は無い、残す井戸は城の中の井戸だけだ」

 と、アストレアとアンドロスが言った。井戸と聞いてレン達は、神殿跡にあった井戸を思い出した。そこは、ベアド大帝が既に破壊している。レン達は、ベルゼブを見た。先ほどまで暴れていたベルゼブは、やっと落ち着きを取り戻したようだった。

 「グルゥゥゥやってくれたなアストレア、余の結界を破ったとてリヴァーヤから得た力はこんなものではないぞグルゥゥゥ、重地縛じゅうじばく!」

 ベルゼブが叫ぶと内郭うちぐるわ全体の重力が変わった。

 「ぐおぉぉ…またかよ、くっそ~」

 「か、身体がお、重い…」

 「グルゥゥゥハハハ、動けまいさぁ今から皆殺しにしてくれるわ」

 「地縛じばく解放!」

 と、アストレアは言い剣を地面に突き立てた。すると急に身体が軽くなった。重地縛が解放された事に気付いたレン達は、一斉にベルゼブを攻撃した。今まで結界に阻まれていた鬱憤うっぷんを晴らすかのように攻撃した。

 「グルワァァァおのれ人間共めぇ」

 ベルゼブが反撃に出たが、レン達に取り囲まれ真空斬や雷光斬を散々受けてベルゼブは、ボロボロになっていた。

 「おかしい、何か腑に落ちん」

 と、龍神がぼそりと呟いた。隣に立って居るアストレアも同じことを感じていた。

 「ええ、エルドラ私もおかしいと思うわ、何か隠している」

 二人の予感は的中した。ラーズが直接斬り付けてやろうと近付いた時、ベルゼブの身体が深紫色に光った。バンッと音を立てラーズが吹っ飛ばされた。

 「ラーズッ!」

 レンとマルスが駆け寄り起こした。

 「き、気を付けろ、あの野郎、全然俺達の攻撃が効いちゃいねぇみたいだ」

 「何?」

 「グルゥフフフ、お前達の攻撃など蚊ほども効かぬわ、鎧がボロボロになったくらいで粋がりおって、グルゥゥゥァァァァ!!!」

 と、ベルゼブが言い叫ぶとまた深紫色に光り衝撃波を放ちレン達を吹き飛ばした。

 「エンジェリア人が来てこれで役者が揃った訳だな、ではまた遊んでやるとしようか、出でよ」

 そうベルゼブが言うと数は少ないが上位と思われるイビルニア人達が城から現れた。 

 「半島中の井戸を壊してもまだ城には強力な井戸が残っている、城の井戸はそう簡単には壊させん、行けお前達!」

 「シェヤァァ!」

 「キィヤァァァ!」

 上位のイビルニア人達がレン達を襲った。各国の軍隊も動き出した。今までの上位のイビルニア人とは違い格段に強い。中には、イビルニア人流の練気を使う者も居てレン達や各国の軍は、苦戦を強いられた。

 「女王様、お下がりください、ヴェルヘルム行け」

 アンドロスが言うとヘブンリーの迷いの森の番獣ヴェルヘルムが雄叫びを上げ、勢い良くイビルニア人達に向かって行き一掃して行く。

 「ほほぅ面白いものを飼っている、ではこちらも出そうか、出でよケルべス」

 すると、黒い雷と共に真っ黒な尻尾が三本生えた大きな犬の様な獣が現れた。そして、ヴェルヘルムに襲い掛かった。ヴェルヘルムは、雄叫びを上げケルべスに体当たりを喰らわせた。飛ばされたケルべスは、くるりと一回転して着地と同時にヴェルヘルムに飛び掛かり噛みついた。互いに噛み合い引っ掻き合い辺りに血が飛び散る。

 「ガルゥゥゥゥ」

 「グルゥゥゥゥ」

 レン達は、イビルニア人と戦いながらヴェルヘルムとケルべスの対決を見守った。前足でガリガリと地面を削りヴェルヘルムは、ケルべスの隙を伺っている。ケルべスも同じくヴェルヘルムの隙を伺う様に身をくねらせ見ている。そして、互いの隙を見出したのか二頭が激しくぶつかり合った。衝撃波のようなものが敵味方関係なく近くに居た者を吹っ飛ばした。ケルべスがヴェルヘルムに出来た一瞬の隙を見出し首元に噛みついた。

 「グゴォォォォ」

 噛みつかれたヴェルヘルムが苦しそうな声を上げた。

 「ヴェルヘルム!」

 目の前に居たイビルニア人の首を刎ね飛ばしレンは、叫んだ。アンドロスは、慌てる事無くイビルニア人と戦いながらヴェルヘルムを見て言った。

 「ヴェルヘルム、遊びはここまでださっさと始末しろ」

 と、アンドロスの声を聞いたヴェルヘルムは、額に生えた一本の角を光らせた。その瞬間、眩い光が二頭を包んだ。バリバリッと雷が落ちたような音が響き渡り、光が消えるとヴェルヘルムの首に噛みついていたケルべスが舌を出して倒れていた。

 「情けない…」

 と、ベルゼブは言い指先をケルべスに向け何か呟いた。すると、ケルべスの身体が大きく脈打ち見る見るうちに二倍ほど大きくなり復活した。

 「グオォォォォォォォォォォ!」

 と、ケルべスは雄叫びを上げヴェルヘルムに襲い掛かった。ケルべスの体当たりを喰らいヴェルヘルムは、吹っ飛び倒れたが直ぐに体勢を整え反撃に出た。しかし、ベルゼブの魔力を受けたケルべスには、歯が立たず苦戦を強いられ、遂にケルべスの凶悪な鉤爪がヴェルヘルムの身体を切り裂いた。

 「ギャイン」

 ドサリと倒れ込んたヴェルヘルムにとどめを刺そうとケルべスが大きく前足を上げた時、アンドロスが強烈な真空斬を放った。真空波がケルべスの前足を斬り飛ばした。

 「いい加減にしろ、化け物めっ!」

 「ふん、卑怯なまねを」

 と、ベルゼブが言うとアンドロスは、大笑いして言った。

 「ははははは、イビルニア人に卑怯者と言われる筋合いは無い、ヴェルヘルムはヘブンリーの大切な番獣だ、こんな化け物に殺されてたまるか、いくぞ!」

 と、アンドロスはケルべスに真空斬を放ち続けて巨大な雷光斬を放った。

 「ガアァァア!」

 と、ケルべスが悲鳴を上げその場に倒れ動かなくなった。

 「グルゥゥゥゥやってくれたな、まぁ良いわ、魔界の獣の力などこの程度か」

 ベルゼブはそう言うとケルべスの頭を踏みつぶした。これには、レン達が驚いた。

 「ああ、何て事を!」

 「ひでぇ、自分が呼び出しておいて…」

 「グルゥハハハハハハ、情けなど無用!余の役に立たぬ者は余自ら殺してくれる、グルゥワァ!」

 ベルゼブがアンドロスに襲い掛かった。ベルゼブは、いつの間に持ち替えたのか棘の付いた鉄球付きの杖から不気味な剣を持っていた。アンドロスは、ベルゼブの攻撃を受け止め反撃に出た。アンドロスの早い攻撃でベルゼブは、身体中を斬られている。その様子を見ている龍神やアストレアは、やはりおかしいと思った。

 「弱すぎる、ベルゼブめ、やはり何か隠しておるな」

 「そうね、何を隠しているのかしら…とても嫌な予感がします」

 龍神とアストレアは、油断なくベルゼブを見ていた。アンドロスも何か感じていた。自分の攻撃がこうも受けるベルゼブに違和感を感じていた。

 「ベルゼブ、貴様何か隠しているな」

 「何の事かな?グルゥフフフ」

 アンドロスは、気になりベルゼブを思い切り蹴り飛ばし距離を取った。倒れているベルゼブを見たマルスとラーズが、首を刎ねようと斬りかかった。

 「おらぁぁぁぁ!」

 「いかん、止せ!」

 と、アンドロスが言った時、マルスとラーズの足元から突如触手が飛び出し二人を縛り上げた。

 「うおっ!な、何だこりゃ?」

 「何だよ、気持ち悪い」

 触手はドンドン上に伸びマルスとラーズを振り回している。

 「グルゥゥゥこの高さから地面に叩き付ければ面白かろう」

 「うわっ!よせっ」

 「止めろぉ」

 マルスとラーズを縛り上げた触手が一気に二人を地面に叩き付けようとした時、アンドロスが真空斬で触手を斬り飛ばした。二人が落ちて来る所をカイエンとドラコが受け止め無事に地面に降ろした。

 「危ないところだった…何だったんだ今のは?」

 レン達がベルゼブを遠巻きに囲んだ。ベルゼブは、ふわりと立ち上がりレン達を見回した。触手はベルゼブの足元から伸びていた。いつどこから飛び出て来るか分からない触手を警戒しながらベルゼブを見ていると、エンジェリア人がアンドロスの耳元で何か話している。アンドロスが何か言うとそのエンジェリア人は、同じエンジェリア人数十人とドラクーン人数十人を連れて飛び立った。

 「どこへ行く気だ、まさか」

 と、ベルゼブはエンジェリア人達が城に向かって飛んだのを見て井戸を破壊しに行く事に気付き追いかけようとした。

 「させるかよ!」

 と、ベアド大帝が白氷瀑斧で行く手をさえぎった。怒り狂ったベルゼブは、地面のあちこちから触手を出しレン達を攻撃した。触手に捕まりそうになりながらレン達は、触手を斬り飛ばしていく。しかし、斬っても斬っても次々と現れる触手に閉口した。

 「きりがない」

 空を飛べるドラクーン人やエンジェリア人は、空中から直接ベルゼブに攻撃した。アンドロスの真空斬やカイエンとドラコの爆炎をまともに受けベルゼブは、気が狂ったかのように暴れ出した。

 「グルゥァァァァァ!貴様らぁ蠅蚊の如く飛び回りおって」

 「へへん、化け物め、これでも喰らいやがれ!」

 と、カイエンが特大の爆炎を吐いた。痛みを感じないはずのイビルニア人であるベルゼブが悲鳴を上げている。

 「グギャァァ、ああ熱いぃぃぃぃぃた、助けてくれぇ」

 「けっざまあ見ろ」

 「何てな」

 「何?ぐはぁぁぁぁ」

 いつの間にかカイエンの腹に触手が突き刺さっていた。

 「カイエンッ!」

 ベルゼブは触手を引き抜くとカイエンを踏みつけた。腹からおびただしい血が噴き出している。カイエンが痛みで悲鳴を上げている。

 「グルゥハハハハ、愚か者め!余がこの程度の爆炎で倒れるものか、踏み殺してくれる」

 「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 「この野郎!」

 と、怒りが頂点に達したレンが強烈な真空斬を放った。ベルゼブが触手で防ごうとしたが真空波は、触手を切り裂きベルゼブに当たり吹っ飛ばした。

 「カイエンッ!大丈夫か、しっかりしろ!シーナ早く!」

 と、レン達は、カイエンに駆け寄り大きな身体を抱え下がった。シーナは直ぐに傷を治療し始めた。

 「ち、畜生めぇ俺っちとした事が…油断しちまったぜぇ」

 「大丈夫、絶対ぼくが治してあげるからね」

 レン達は、一斉にベルゼブに向け真空斬を放った。ベルゼブは、身体を切り刻まれても何事も無いように立っている。

 「ベルゼブよ、貴様何を隠している、触手だけではあるまい」

 と、龍神がベルゼブに言った。

 「グルゥゥゥフフフ、何だエルドラではないか、居たのか…フウガとヨーゼフが居ればもっと面白かったのに、まぁ良い…余が隠し事をしていると勘違いしておるようだが、何も隠してはおらぬぞ、ただあの時とは違いリヴァーヤから得た力で新たな力が余に備わったまで、遊びも飽きたわ…そろそろお前達を皆殺しにしてくれる」

 と、ベルゼブが言うと内郭うちぐるわ内全体に地震が起きた。上位のイビルニア人と交戦中の各国の軍やイビルニア人までもが立って居られない程の地震だった。地面のあちこちに地割れが出来て運の悪い者は、その地割れに飲み込まれた。

 「うわぁ危ない!皆気を付けてっ!えっ?ベ、ベルゼブが…」

 と、レンがベルゼブを見て驚愕した。ベルゼブの身体が見る見るうちに大きくなり始めていた。龍の姿に変身したカイエンより大きかったベルゼブが更に巨大化していた。

 「な、何だよあれ…触手だけでも面倒なのに、おまけに巨大化…た、倒せるのか」

 と、マルスがベルゼブを見上げて言った。

 

 

 

 

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