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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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アルカト現る

 翌日の早朝、全軍が慌ただしくイビルニア城前に集まり出した。各国の指揮官達が自国の軍隊に指示を出している。兵隊達は緊張した面持ちで指示を聞いている。トランサーの陣屋ではテランジンが海のルーク達に魔導無線で話しをしていた。

 「もう数分でイビルニア城に総攻撃をかける、そちらの状況はどうだ?」

 「兄貴、こっちはもう大丈夫だ、イビルニアの戦艦は全て沈めたよ、俺達はどうする?」

 「うむ、海の上の安全が確保出来ているのならお前達も陸に上がって来い」

 「分かった、ヤハギの旦那に言ってそっちに向かうよ」

 そう言い終わるとルークは魔導無線を切った。テランジンは、ルーク達がここに来る事をレンに話した。レンは、皆が来てくれるのなら心強いと言い準備を済ませテランジンと陣屋を出てイビルニア城前へ向い先に到着していたマルス達と合流した。

 「いよいよ、攻撃開始だがアルカトがいつ出て来るかだ」

 と、マルスがレンを見るなり言った。レンは、静かに頷いた。その様子をアルカトは、城の窓から見ていた。

 「総攻撃をかけて来るか…良いだろう、私の目的はレオニールとの対決だけだ、さあ来いレオニール」

 そして、攻撃の合図が全軍に送られると真っ先にジャンパール陸軍が突撃を開始した。

 「突撃ー!」

 一気に壊れた城門を突破し守りに徹しているイビルニア人の部隊を殲滅して行った。他の国の軍隊も雪崩の様に城の中庭に進軍し城を取り囲んだ。ランドール軍が城内に入る入り口を破壊しようと試みたが傷一つ付かなかった。どうやら結界が張られている。

 「何だよまた結界かよ今度はどうすりゃ解けるんだ?」

 と、カイエンがうんざりしたように言った。内郭うちぐるわの結界は、堀の中にあった結界石を破壊して解いたが、城全体を包む結界をどうやって解くのか謎だった。レン達が話し合っていると後方の部隊がやけに騒がしくなった。

 「奇襲だぁー!攻撃ぃ攻撃ー!」

 と、どこかの国の指揮官が叫んでいた。レン達は、不思議に思った。イビルニア人が奇襲を仕掛けて来る時は必ず何も無い所から現れる。

 「とにかく行こう」

 と、レン達は奇襲を受けている後方部隊に駆け寄った。そこには上位者と思われるイビルニア人が三人暴れ回っていた。

 「よしあいつらを捕えて城の入り方を聞いてみよう」

 と、マルスが叢雲むらくもを鞘から抜きながら言った。ラーズも剣を抜き二人がイビルニア人に斬りかかった。マルスとラーズは、あっという間にイビルニア人達の手足を斬り落とし抵抗できないようにした。

 「もうお前らなど俺達の敵じゃないんだよ、ところで聞きたい事があるあの城の中にはどうやって入るんだ言え」

 と、マルスは叢雲を鞘に納めて言った。手足を斬り落とされたイビルニア人達は、仮面の奥で笑っている。ムカッときたラーズが足元のイビルニア人の横腹を蹴りながら言った。

 「何が可笑しい」

 「ククク、上手くいった、アルカト様はトランサーの王子との対決をご所望だ雑魚が居ると邪魔なんだよ」

 「そうだ、奇襲をかければ必ずお前達練気を使える者達が助太刀に来るだろうとアルカト様は言っていた、フフフ面白いものが見れるぞ」

 「何?」

 と、マルスがしかめっ面で言った時、ついさっきまでレン達が居た中庭から爆発が起きた。

 「うわっ?!な、何だ?!何が起こった」

 「行ってみよう」

 レン達が爆発の起きた中庭に行くとそこは、まるで地獄絵図の様な状況だった。爆風で吹っ飛ばされた死体があちこちに転がっていて肉の塊の様になっていた。

 「ひ、酷ぇ…」

 と、思わず言葉を失った。ほぼ全滅状態だった。レンは、まだ息のある者を見つけると駆け寄り声を掛けた。その者は、トランサーの兵士だった。

 「お、王子…ご無事で何より…です…と、突然爆発が…お、起きて…う、うぅぅぅ」

 「しっかりっ!シーナッ!」

 と、レンは、その兵士の手を握りシーナを呼んだ。シーナ、カイエン、ドラコが急いで治療を始めたが手遅れだった。死んだ兵士の手を胸の上に置きレンは、肩を震わせ立ち上がり呟くように言った。

 「イビルニア人…必ず全滅させてやる」

 「許さねぇぞ」

 と、マルスも怒りを燃やした。レン達は、辛うじて息のある者達を見つけシーナ、カイエン、ドラコに治療させた。他のドラクーン人達を呼べば良かったが、またいつ爆発が起きるか分からないので呼ぶに呼べなかった。そして、何とか助けた者達を中庭から連れ出し破壊した城門まで下がった。中庭に入りきれなかった軍の指揮官達を集め中庭で起きた事を説明した。

 「中庭まで攻め入ればいつ爆発が起きるか分からず、城に攻撃しても結界で守られている…一体どうやって攻めるのですか?」

 と、リードニア王国の指揮官が難しい顔をして言った。レン達は、トランサー陣屋に居る龍神に何か方法が無いか聞いてみた。

 「何?城全体に結界が…ふぅむ…どうしたもんかのぅ」

 「結界を破る方法はありませんか?」

 「結界石を壊せば良いがそれらしい物は無かったんじゃな?」

 「はい、見受けられませんでした」

 と、レンが答えると龍神は、目を閉じ何か思い出そうとした。その時、伝令兵が大慌てでトランサー陣屋に駆けこんで来た。

 「たたた大変です、城門前にとんでもない強さのイビルニア人が現れレオニール様を連れて来い言っております」

 「どんな奴だ?」

 と、ラーズが伝令兵に聞いた。伝令兵は、背が高く白髪で長髪、額に角が二本生えている事を除けば人間の容姿に限りなく近いと答えた。それを聞いたレン達は直ぐに正体が分かった。

 「アルカトだ」

 「行こう」

 と、レン達は城門前に行った。そこには既に各国の兵士の死体が何十体と転がっていた。レン達に気付いたアルカトがゆっくりとレン達に振り向いた。

 「来たか、久しぶりだなレオニール」

 「ア、アルカト…」

 「アルカトてめぇエレナの心を返しやがれ!」

 と、マルスが我が事の様に怒り狂って真空斬を乱発した。アルカトは易々と剣で真空斬を全て弾き返した。

 「なるほど、ジルドが言っていたように血の気の多い小僧だな」

 と、アルカトは落ち着き払って言った。今度はベアド大帝が白氷瀑斧を放ったがそれも防がれた。

 「ベアド、お前達獣人も人と同じように歳を取ると力が衰えるようだ、止めておけ」

 「くっ…」

 ベアドは苦々しくアルカトを見た。アルカトは、レンを見つめながら言った。

 「レオニール、やっとこの時が来た、しかしここでは思わぬ邪魔が多すぎる、城に行こう私が言う者だけついて来い」

 アルカトは、マルス、ラーズ、テランジン、シーナ、カイエン、ドラコそしてベアドの名を読み上げた。レン達八人は、アルカトの後に続きイビルニア城に向かった。

 「殿下、正気ですか?ここは全員であのイビルニア人を討ち取るべきです」

 と、心配したジャンパールの士官がマルスに言った。

 「駄目なんだ、あいつの言う通りにしないとレンの…エレナの心を取り戻せないんだ」

 「し、しかし」

 「心配すんな、必ずあの野郎を倒し、親玉を引きずり出して来る、その時こそ全軍で挑む」

 と、マルスは士官の肩を叩きながら言った。士官は、呆然と見送るしか出来なかった。レン達八人がアルカトと共に城に入って行くのを見届けると各国の指揮官達は、いつイビルニア人が現れても戦えるように陣形を整えた。

 その頃、トランサー城のエレナに異変が起きていた。

 「お父さん大変よ!エレナ様が!」

 と、リリーが父ヨーゼフの部屋に大慌てで入って来た。丁度、大臣と話し込んでいたヨーゼフは、娘の慌てぶりに驚きながら言った。

 「何事じゃ、今は話し中だぞ」

 「エレナ様が、エレナ様が苦しんでるのよ」

 「何だと?」

 と、ヨーゼフは大臣と共にエレナの部屋へ向かった。そこではコノハとカレンが泣きそうな顔をしてエレナを見守っていた。

 「お姉ちゃん、どうしちゃったの?」

 エレナは胸を押さえ苦しそうにしている。呼吸も荒くなっている。

 「はっはっはっ…うぅぅぅぅ…レ…レン…」

 部屋に居た全員が顔を見合わせた。心を奪われて以来まともに言葉を発した事がなかったエレナが今、レンと言った。ヨーゼフは、慌てたようにコノハに聞いた。

 「ひ、姫様、エレナ様はいつから苦しまれたのです?」

 「ついさっきまで静かに寝てたんだけど…何だか急に起き上がったと思ったら苦しみ出して」

 「もしやイビルニアで何かあったのでは…御免」

 と、ヨーゼフは言って部屋を飛び出し魔導無線を備えてある部屋に行きイビルニアのトランサー本陣に連絡を取った。

 「わしじゃ、ロイヤーじゃそっちで何かあったのか?」

 「閣下、先ほどレオニール王子やジャンパールのマルス皇子らがアルカトなるイビルニア人と共に城に入って行きました」

 「何?!アルカトと城に!そ、そうかではいよいよ若はアルカトと対決するのじゃな、そうか…分かった」

 そう言ってヨーゼフは、魔導無線を切りまたエレナの部屋へ戻りリリー達にレンがいよいよアルカトと対決する事を話した。

 「アルカトの持つエレナ様のお心が若に気付き反応されているのやも知れん」

 「助けてって言ってるのかしら?」

 と、コノハはエレナの手を握り締めて言った。ヨーゼフは静かに頷いた。エレナは少し落ち着きを取り戻したようだったが、つらそうな表情は変わらなかった。

 イビルニア城、一階大広間の扉の前にアルカトを先頭にレン達が居た。アルカトが扉を開け先に入って行った。中央付近まで行ってからくるりと振り向きレン達に言った。

 「レオニール先に入れ、後の者は私が来いと言うまで待ってもらおう」

 「おいレン、大丈夫か?全員でやっちまった方が早いんじゃないのか」

 と、ラーズが言うとレンは首を横に振り言った。

 「もしも全員でやっつけたとしたらエレナがどうなるか分からない…ここはアルカトの言う通りにするしかないんだ」

 レンはそう言うとゆっくりと部屋に入りアルカトの前まで行った。アルカトは納得したかのように頷きマルス達に入れと言った。マルス達が部屋に入り前に進んだ時、何か見えない壁の様なものにぶつかった。マルスが見えない壁をバンバン叩きながら言った。

 「いてっ!何だ?どうなってんだ、結界か?おい、アルカト何だこれは?そっちに行けねぇじゃねぇか」

 「そうだ結界を張った、この勝負は私とレオニールの勝負、邪魔はされたくないのでね、お前達はそこで大人しく我々の対決を見ていてもらおう」

 と、アルカトがマルス達に言った。

 「ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!結界を解けこの野郎!」

 「全くうるさい小僧だ、少しは静かに出来んのか」

 そう言うとアルカトは指を鳴らした。すると結界をバンバン叩いているマルスが悲鳴を上げ跳び下がった。

 「いってぇ~!何だ今のは?」

 「どうしたんだ?」

 「分からん、触ってみろよ」

 と、マルスに言われラーズがそぉっと指先で結界を突いた。ビリッという感覚がラーズを襲った。

 「畜生め、これでは何も出来ないじゃないか」

 そんな様子を呆れたように見ていたアルカトがふところからオレンジ色の手のひらほどの玉を取り出しレンに言った。

 「レオニール、これが私が奪ったお前の女の心だ…私を倒せたら返してやる」

 「そ、それがエレナの?…分かった」

 「では始めようか」

 アルカトは玉を懐にしまい、ゆっくりと剣を抜いた。レンは少し下がってフウガ遺愛の斬鉄剣を抜いた。そして、二人の対決が始まった。


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