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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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ジャンパール城にて

 昨日の事がまだ信じられないレンは、寝不足のまま朝を迎えた。眠い目をこすりながらベッドから出て、昨日エレナが座っていた椅子に腰を下ろした。何となくエレナが付けていた香水のかすかな匂いを感じ、昨日の事が現実だと確信した。しばらくエレナの事を考えていると、部屋の外からフウガの声がした。

 「起きとるかい?よう朝飯を食え、もうじき迎えが来るぞ」

 「はい、ただいま」

 と、レンは、慌てて部屋から出て洗面を済ませ朝食をとり、また自分の部屋に戻り服を着替えた。

 「お待たせしました」

 と、レンは、フウガが待つ居間に現れた。その頃、屋敷の外に城からの迎えの魔導車が来ていた。

 「殿、お迎えの魔導車が来ました」

 と、用人のバズが知らせに来た。

 「そうか、では行こうか…バズおそらくマルス皇子が今晩お泊りになられるだろうから準備をしておいてくれ」

 と、フウガは、言ってレンと屋敷を出て迎えの魔導車に乗り込んだ。

 「おじいさん、どうして今晩マルス皇子がうちに来るんですか?」

 レンは、揺れる車内で何となく嫌な予感がしてフウガに聞いた。

 「ふふ、そりゃあ絶対来るさ、あの皇子の性格を考えればな」

 レンの嫌な予感をよそに魔導車は、走る。小一時間ほどして都にあるジャンパール城に到着した。城内に入ると直ぐに皇帝、皇后両陛下が待つ部屋へ通された。

 「いらっしゃい、フウガ、レン変わりはないようね」

 と、ナミ皇后が微笑みながら言った。イザヤ皇帝は、お気に入りの甥っ子を見るようにレンを見ていた。実際には、イザヤ皇帝の妹ヒミカが生んだ子なので本当の甥になるが、十五年前のザマロ・シェボットの謀反でレン(レオニール)は、死んだ事になっていてフウガの孫と言う事にしているため伯父おじだとは、言えないでいる。

 「また少し背が伸びたんじゃないかレン」

 と、イザヤ皇帝は、レンと背比べをした。こんな事は、平民はもちろんの事、いくら貴族の子でも皇帝とこうも親しげにするなど有り得ない事である。そこへ皇帝の次男、マルス皇子がやって来た。

 「よう、お二人さん来たな、レン俺の部屋に行こう、フウガ、レンを連れて行くぜ」

 と、マルスは、レンを自分の部屋に連れて行った。フウガ、イザヤ、ナミ両陛下は、別室に移った。この部屋は、皇帝家族の完全に私的な部屋でごく限られた者以外、立ち入る事の出来ない部屋である。フウガは、ナミ皇后自ら入れたお茶を頂きながらレンの近況を話した。

 「レオニール様も今年で十五歳になられました、最近では、好きな娘が出来まして、昨日屋敷に招待しておりました」

 「まぁレオニールにそんな娘が出来たの、ほほほ一度見てみたいわね、おかみ

 「そうだねぇ、レオニールも隅におけないな、喜ばしい事だ」

 フウガは、昨日見たエレナの事を詳しく話した。

 「まぁそんなに美人なの、ますます会いたくなりましたわ、お上」

 「そうだねぇ、レオニールもレオンやヒミカに似て綺麗な顔立ちだからお似合いの二人だな」

 「はい、当家の用人や女中たちがひ孫が見れるかもと冗談を申しておりました」

 と、フウガは、申し訳なさそうに言った。

 「うんうん、良いんだよフウガ、本来なら余がレオニールを引き取らねばならんのに…」

 イザヤ皇帝は、レオニールを引き取れなかった事をずっと悔やんでいた。本来ならば自分の妹を死に追いやったザマロ・シェボットを討ち果たし堂々とレオニールを引き取る事も可能であったが、ザマロの背景には、あのイビルニア国が絡んでいる事もあり簡単にいかなかった。

 「おかみ、それがし少々軍部に所用がござりますゆえ、しばらく離れまする」

 「おお、そうか、夕暮れまでには戻ってくるんだろう?」

 「はい」

 「いってらっしゃい」

 と、フウガは、イザヤ、ナミ両陛下に見送られて軍部に向かった。部屋を出て廊下を歩くフウガは、皇帝付きの侍従と軽く会釈をしてすれ違った。

 「そうか、レオニールはもう十五歳になったのか…早いもんだねぇ」

 「そうですね、ずっとフウガに面倒をかけていますね、でもフウガはいつレオニールに真実を話すのでしょう?」

 「フウガも話し辛いだろうな、あんなにフウガになついているからねぇレオニールは」

 「ええ、今更トランサー国王レオンとヒミカの子だとは言えないでしょう」

 と、部屋の扉の向こうから皇帝夫妻の会話を偶然聞いてしまった男がいた。

 (レオニール?トランサー王国?レオン?ヒミカ?一体何の話をされているのだ?)

 先ほどフウガとすれ違った皇帝付きの侍従カロラである。この男は、レンを嫌っていた。フウガの孫だと言うだけで皇帝家族と親しくしている事が我慢出来なかった。一通り会話を立ち聞きしていたカロラは、驚愕した。十五年前、トランサー王国で親子共々死んだはずのレオニールが生きていて実は、フウガの孫として育てられている事を知ってしまったのである。

 (この事がトランサーに知れ渡れば戦争になるんじゃないか?大変だ)

 カロラは、呼吸を整え扉をノックした。扉が少しだけ開いていた。中からイザヤの声がして扉を開けた。

 「陛下、大臣が謁見を求めておりまする」

 と、イザヤ皇帝に伝えた。イザヤは、カロラと共に大臣が待つ謁見の間に向かった。部屋に一人残ったナミ皇后は、カロラの様子が少しおかしい事に気付いていた。

 「変ね、何かそわそわしていたような…まさか話を聞かれたんじゃ…」

 と、ナミは、つぶやいた。その頃、レンは、マルス皇子の部屋でエレナの事を考えながらごろごろしていた。

 

 「どうしたんだ、さっきからため息ばかりついて」

 と、マルス皇子が本棚から一冊の雑誌を取り出しながら言った。

 「別に何もないよ」

 と、レンは、言ったがマルスは、信じない。

 「当ててやろうか?お前、好きな女が出来たんだろう、この中の誰に似ている?」

 マルスは、そう言って先ほど取り出した雑誌をレンに投げ渡した。レンは、慌ててそれを受け取り適当にページをめくった。レンの顔が見る見る内に赤くなった。

 「なんだよこれ」

 「あははは、その中にお前の好きな女に似ている女がいるか?」

 マルスがレンに投げ渡したのは、女性の裸の写真が載った雑誌だった。

 「だから、違うって」

 と、レンは、言ってマルスに雑誌を返そうと思ったが、やはりお年頃である、女の裸に興味が無い訳でもない。パラパラとページをめくっていると偶然にもエレナにちょっと似た女の裸体が載ってあった。それにレンの目は、釘付けになった。それをマルスが見逃すはずがない。

 「ふぅん、その女が好みか…良い身体してるな」

 「ち、違うよ」

 レンは、慌てて雑誌を閉じた。

 「いって良いって」

 と、マルスは、言ってゲラゲラ笑いながらレンの肩を叩いた。レンの顔は、真っ赤である。

 その頃、フウガ・サモンは、懐かしい軍部に居て将兵達を相手に話をしていた。




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