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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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真空魔波

 レン達は、フラックを取り囲み剣を構えた。カイエンとドラコは、龍の姿に変身して身構えている。取り囲まれたフラックは、余裕の笑みを浮かべている。

 「さぁ誰から来るんだ、死にたい奴からかかって来い、ハハハハ」

 「このクソ野郎っ!」

 と、マルスが真空斬を連発した。フラックは、それをのこぎり状の剣で弾き返しマルスに襲い掛かった。

 「ふん、フウガ・サモンやヨーゼフ・ロイヤーの真空斬なら危ないがお前如き小僧の真空斬など大した事ないわ」

 「何をクソが!」

 マルスは、フラックの攻撃を受け止めたが力で競り負け押し飛ばされた。そこにカイエンがフラック目掛けて爆炎を吐いた。怯んだところをドラコが思い切り殴りつけた。フラックは、殴られながらも態勢を整え剣でドラコに斬りかかった。紙一重でかわし飛び上がり真上から爆炎を吐いた。フラックは爆炎を剣で振り払った。

 「ドラクーン人は厄介だな、お前達はこいつらと遊んでおれ」

 と、フラックは言うと指を鳴らした。城から半龍に乗った上位のイビルニア人が現れカイエンとドラコに襲い掛かった。二人は、フラックをレン達に任せ上空のイビルニア人達と戦う事になった。

 「さぁ仕切り直しだ、行くぞ」

 と、フラックはレン達に襲い掛かる。


 その頃、レン達が最初にイビルニア半島に上陸した尖った岩だらけの場所に、ある国の艦隊が押し寄せていた。獣人の国ロギリア帝国の艦隊だった。

 「では、大帝様我々は西側に回り人間達と合流します」

 「うむ、頼んだぞ、ではわしらも進軍するぞ」

 と、ベアド大帝は言いイビルニア城に向け進軍を開始した。レン達も通った殺風景な場所を進軍し神殿跡まで来ると止まった。

 「ふぅむ確かここに井戸があったな連中が二度と現れぬよう消し去ってくれる、あれを持て」

 「ははっ」

 ベアド大帝は、大きな軍用魔導車から降り側近二人を連れ神殿跡に入った。中を見て驚いた。小柄なイビルニア人の首の無い干からびた死体が一つ転がっており、井戸の上に大きな石が置かれ塞がれている。

 「ふぅむ誰か先に来たのか…まぁ良い、あれを」

 と、ベアド大帝は言い側近に手を差し出した。側近がベアドの大きな手に丸い水晶の様な物を置いた。

 「石をどけよ、ああそうだ多分一杯沸いて来るから人数を集めてからじゃ」

 側近の一人が外に待機している兵士達数名を引き連れて来た。兵士達は剣を抜き身構えた。側近二人が井戸の上の石をどけると物凄い勢いでイビルニア人達が湧き出る様に現れた。

 「ほれ思った通りじゃ、皆残らず殺せ」

 「ははっ!」

 兵士達は、あっという間にイビルニア人達を片付けた。ベアド大帝は、ゆっくりと井戸に近付き手に持った水晶の様な物に何かぶつぶつ呟くとそれを井戸に放り込んだ。すると井戸の中が光った。中からイビルニア人の悲鳴が聞こえた。光が消えるとイビルニア人の悲鳴も止んだ。

 「さぁこれでこの井戸は終わりじゃ、これだけは人間には出来ん事じゃからなハハハ、この神殿を破壊して先に進むぞ」

 ベアド大帝達が神殿跡から出ると破壊が始まった。徹底的に破壊したベアド大帝達獣人は、イビルニア城に向け進軍を再開した。その頃、フラックと戦っていたレン達は、苦戦を強いられていた。

 「畜生…何て強さだ、俺達の練気が全く通用しないなんて」

 と、ラーズが肩で息をしながら言った。レンもマルスも長時間練気技を駆使したせいか体力をかなり消耗していた。気が付くと夕暮れ時になっていた。

 「はぁはぁはぁ…悔しいがこれ以上戦えそうにないな…一旦引いて休もう」

 と、マルスが言うとフラックは、嘲笑い言った。

 「おいおい、逃げるのか?逃げても無駄だぞ、追いかけて殺してやるフハハハハハ」

 マルスは、何も言わずそっと天照鏡あまてらすかがみを取り出した。それに気付いたフラックが一瞬だけビクッとなったのをレンは、見逃さなかった。

 「そ、それは?!なぜお前が持っている」

 「これか?俺んにあったんだ、照らせ」

 「や、やめろ!ぐわぁぁぁぁぁ」

 天照鏡が放つ強烈な光でフラックが怯んだ。腕全体で顔を覆いながらフラックが城門まで下がった。

 「さすがに四天王と呼ばれるお前でもこの光は耐えられないようだな、そこから出て来るんじゃねぇぞ勝負は明日つけてやる」

 そう言うとマルスは、兵士に命じ特別な台を作らせ、天照鏡を城に向け置き照らし続けた。天照鏡が放つ光でフラック達イビルニア人は、城門から出る事が出来ずにいる。

 「何だよ、最初から鏡を使えば簡単にフラックの野郎を倒せたんじゃないのか?」

 と、ラーズが言うとマルスは、真面目な顔をして答えた。

 「駄目なんだ、あの鏡は本当に危機に陥った時にしか光らないんだよ」

 レンとラーズは、外郭そとぐるわの物見塔に上った時の事を思い出し納得した。地上に変化があった事に気付いたカイエンとドラコは、最後の半龍に乗った上位のイビルニア人を始末すると降りて来た。

 「何でぇどうしたんでぇ?」

 と、カイエンが城門から出て来れないフラックを見て言った。マルスが説明するとカイエンは、城門に近付き思い切り爆炎を吐いた。

 「けっ、クソ野郎、明日ぶっ殺してやるから首を洗って待ってろ」

 「ぐぬぬぬ、お前は真っ先に八つ裂きにしてくれる」

 と、光を避けながらフラックがカイエンに言った。天照鏡が置かれた台を百人近くの兵に守らせレン達は、自分達の陣屋に帰った。

一方、イビルニア城を目指して行軍しているロギリア帝国のベアド大帝ら獣人達は、休憩もとらずにひたすらイビルニア城を目指していた。

 「急げ、戦は始まっとるぞい、国内のイビルニア人を退治するのにちと手間取り過ぎたのぅ」

 と、大きな軍用魔導車の中で頭を掻きながら呟いた。今、ベアド大帝が居る場所は、イビルニア城と破壊した神殿跡の中間ほどで城が天照鏡の光に照らされているのがはっきりと見えた。

 「大帝様、城が白く光っておりますぞ」

 「何、どれどれ…おお…何じゃいあれは?どうなっとるんじゃ?」

 と、ベアドは軍用魔導車の窓から顔を出し見て言った。レン達は、明日の朝一番でフラックに挑もうと約束しそれぞれの陣屋に引き上げた。疲れ果てたレン達は、陣屋に戻ると食事を取って直ぐに眠りについた。眠っているレン、カイエン、ドラコを申し訳ない気持ちでテランジンは見ていた。

 「龍神様、明日は俺も参戦します」

 「まぁそう慌てなさんなテランジン殿、もうそろそろ毛むくじゃらの大男が来る頃じゃ」

 と、龍神がテランジンに言った。テランジンは、ベアド大帝に会った事がなく何を言ってるのか分からなかった。

 翌日、レン達は、また城門に集まった。百人近く居る兵を天照鏡と共に下がらせフラックが出て来るのを待った。しばらくすると城門からイビルニア人の部隊がうじゃうじゃと溢れる様に出て来た。そこを各国の魔導戦車の大砲で狙い撃った。イビルニア人達が肉塊になり城門を破壊した。

 「ハッハー!ざまあ見ろ、悪鬼共め」

 と、満足気にラーズが言うと破壊された城門から巨大な真空斬の様な黒いものが飛んで来て魔導戦車に当たりドカンと爆発炎上した。

 「何だ、今のは?」

 と、城門を見るとふらりとフラックが現れた。のこぎり状の剣が妖しく光を帯びている。

 「お前らは俺を本気で怒らせたな」

 そう言うとフラックは、先ほど放ったイビルニア人流の真空斬を放とうとした。

 「喰らえっ!」

 「させるかよ!」

 と、マルスが真神風で応戦した。二つの真空波が激突し周りに居た者が吹っ飛んだ。

 「うわぁぁぁ」

 「あぶねぇ!」

 丁度、真空波がぶつかった辺りの地面が大きく凹んでいた。レン達は、一般の兵士達を下がらせた。不思議と他のイビルニア人が城から出て来る事が無かった。レン達、五人対フラックの戦いになった。

 「ふん、これくらいのハンデがあっても良いだろう、そこのドラクーン人お前から八つ裂きにしてやる、おりゃあ」

 と、フラックがカイエンに襲い掛かった。カイエンは爆炎を吐き怯んだフラックを鉤爪で引っ掻いた。フラックは素早く避けるとカイエンの背中に斬り付けた。

 「いてぇぇぇぇ」

 と、斬られたカイエンが叫び宙に飛び上がった。

 「カイエンッ!」

 「空に逃げても無駄だ」

 フラックがカイエンにイビルニア人流真空斬を放とうとした瞬間をレンが斬りかかった。フラックは瞬時にレンに反応し攻撃を受け流しレンから間合いを取った。

 「ふん、甘いな小僧、今のは好機だったのに死ね」

 今度は、フラックがレンに襲い掛かった。レンは、跳び下がりながら雷光斬を放った。雷がフラックの頭を直撃したがほとんど効いていなかった。フラックは、首の骨をゴキゴキと二三回鳴らしニヤッと笑った。

 「どいつもこいつも力不足だな、しかしそこのジャンパール人お前は褒めてやる、俺の真空魔波を止めたからな」

 「そりゃどうも」

 と、フラックに言われたマルスが身構え言った。それからしばらく膠着状態が続いた。どちらも迂闊に手が出せないでいた。

 「このままではらちが明かん、行くぞ」

 と、ラーズが果敢に攻めた。ドラコも同時に攻める。フラックは、二人の攻撃を巧みにかわした。

 「二人で攻めてこの程度か」

 「何を!貴様っ」

 ラーズは渾身の力を込めフラックに斬りかかった。フラックは、ラーズの練気を帯びた剣をのこぎり状の剣で弾き返すと素早くラーズの剣を持つ右腕を左手で掴むと剣で斬った。

 「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

 フラックの左手にラーズの腕が握られている。ラーズは、苦痛で地面を転げ回った。

 「ラーズ殿っ!」

 ドラコがラーズのもとへ駆け寄った。

 「ふん、これでその小僧は戦えまい、次はどいつだ?」

 と、フラックは言い腕を放り投げた。空中に居たカイエンが慌てて取りラーズのもとへ飛び降り腕を繋ぎドラコと共に治癒を始めた。

 「ラーズあにぃ大丈夫だぜぇ俺っち達が繋いでやっからよう」

 レンとマルスは、ラーズ達を下がらせ二人でフラックに挑む事となった。

 「どうして殺さなかったんだ?らしくないじゃないか」

 と、マルスが刀の柄に手をやりいつでも真神風を放てる状態で言った。フラックはそれを警戒しながら答えた。

 「ふふ、俺は弱い奴に興味はないんだ、殺してもつまらん」

 「へへぇそうかい、後悔するんじゃねぇぞ」

 「ふん、さっさとかかって来な」

 フラックの言葉でレンとマルスは、同時に攻め込んだ。フラックは真上に飛び上がり真空魔波を連発して来た。レンとマルスも負けじと真空斬を連発し防いだ。着地したフラックに今度はレンが真空突きを放った。確かに顔面を直撃したがほとんど効いていない様子だった。

 「ほほう、今のは効いたな、しかし残念だがお前らの練気技は俺には通用せんぞ、そりゃ!」

 と、フラックがレンにイビルニア人流真空突きを放った。レンは、紙一重で斬鉄剣で受けたが吹っ飛んだ。

 「うわぁぁぁ」

 「レーン!」

 飛ばされたレンは、受けた真空突きの衝撃でなかなか立ち上がれないでいた。

 「ほらほらもう終わりか?」

 と、レンとマルスを見てフラックがほくそ笑み言った。マルスは、隙を探している。叢雲むらくもには、十分に気を溜め込んでいる。マルスは、わざとレンから距離を取った。フラックがゆっくりとレンに近付こうとした瞬間を狙って真神風を放った。

 「けっそう来ると思ったぜ、うりゃあぁぁ」

 と、フラックが真空魔波を放った。二つの真空波がぶつかり合い競り合っている様に見えた次の瞬間、最初にぶつかり合ったよりも更に大きな力が働き爆発した。レンとマルスは吹っ飛んだ。

 「…い、いてぇぇぇぇレン大丈夫か…奴はどこだ?」

 「う、うううフ、フラックは?」

 と、土煙が消えて行くと二人から少し離れた場所にフラックの姿が見えた。フラックにも多少の影響はあったのだろう左腕をダラリとさせていた。

 「ふぅふぅふぅ…やはりお前らは我々にとって危険だ、アルカトには悪いがこの場で二人とも殺す」

 フラックはそう言うとのこぎり状の剣が妖しく光った。レンとマルスは、全身を襲う痛みに耐え身構えようとした時、大気中の水分がキラキラと輝き出し急に冷えて来た。

 「ん?何だ急に寒くなったな」

 と、レンとマルスは、不思議に思ったがフラックは気にせず特大の真空魔波を二人に放とうとした。

 「終わりだ!」

 「そうはさせん、白氷瀑斧!」

 鋭く尖った氷の柱がフラック目掛けて滝の様に落ちた。ハッと気付いたフラックが落ちて来る氷の柱に向け真空魔波を放った。

 「ベアドだな!出て来い!」

 と、フラックが叫んだ。レンとマルスは、いつの間に現れたのか後方のロギリア帝国の獣人達に驚いた。獣人達の中から一際大きな身体のベアド大帝が現れた。

 「ベアド大帝!」

 「遅かったじゃねぇかっ!」

 「いやぁ、すまんすまん国内のイビルニア人共を退治しておったのじゃ、お二人さん後はわしらに任せて下がりなさい」

 そう言うとベアド大帝は大きな斧で地面を一突きしフラックに言った。

 「この間の勝負を着けるぞ」

 「ぐぅぅぅベアド…」

 こうして、ベアド大帝とフラックの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

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