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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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ジルドの悪意、コルベの改心

 コルベは、カイエンの頭を踏みしめながらゆっくりと空を見上げた。金色こんじきに光り輝く龍神に引き連れられた数千の龍の姿があった。

 「ふん、やっと来おったかエルドラめ」

 と、カイエンを蹴り飛ばしコルベが言った。龍神が地上に降り立ちコルベと向かい合った。

 「カイエンよくぞ頑張ったのぉ、後はわしに任せなさい」

 「りゅ、龍神様ぁ」

 と、カイエンが元の姿に戻り倒れながら龍神を見上げた。ドラクーン人達がカイエンを龍神とコルベの傍からレン達の居る所に運んできた。

 「遅かったじゃねぇか」

 と、マルスが龍神に言うと龍神は申し訳なさそうに答えた。

 「あいすまんのぉマルス殿、国内のイビルニア人共を始末するのに少々手こずりましたわい」

 その言葉を聞いて上空のジルドが軽く舌打ちをした。この間、他のドラクーン人達は、地上のイビルニア人達を殲滅していった。残るコルベの精鋭はシーナの兄ドラコと戦っている。人間の部隊は、後ろに下がり陣形を整えドラクーン人達を見守っていた。

 「さぁコルベよ、わしらも始めようか」

 「望むところよ今日こそ貴様を倒してくれるわ」

 金色の龍神エルドラと黒龍コルベの壮絶な戦いが始まった。互いに爆炎を吐きつつ組み付き鉤爪で肉を裂き噛み合いそこら中に二人の血が飛び散った。レン達が入る隙は無く見守るしか無かった。

 「す、凄いな…カイエンとシーナが戦っているのを見て凄いと思ったが」

 と、いつの間にか傍に来ていたラーズが固唾を飲んで見ていた。ドラコが精鋭一人を捕まえてレンが居る地上に降り立った。抵抗する精鋭を押さえ付けながらドラコが言った。

 「レン殿、こいつの尻尾を切ってくれ」

 レンは、慌てて不死鳥の剣で精鋭の尻尾を切った。精鋭が悲鳴を上げて龍の姿から元の姿に戻った。

 「何と言う事を!貴様許さんぞ」

 と、レンを睨み付けながら精鋭は言ったが、レンはそんな事より龍神とコルベの戦いが気になって相手にしなかった。時折襲ってくる爆炎の熱波で火傷しそうになった。

 「ふう…ふう…その悪の力、何としても止めねばならんのぉ」

 「何を言うか、わしの力は悪の力ではない、ドラクーンを変える新たな力だ、喰らえっ!暗龍爆」

 と、コルベが叫び真っ黒い爆炎を吐いた。龍神は、間一髪直撃を避けたが右足の膝から下が焦げていた。

 「おお危ないところじゃ、ではわしもいくぞ!かあぁぁぁ、黄光爆!」

 と、今度は龍神が金色の爆炎を吐きコルベは、暗龍爆で対抗した。金色と漆黒の炎がぶつかり合いその場で大爆発が起きた。離れた所で見守っていたレン達は、爆風で吹っ飛ばされた。もうもうと辺りを煙が包んだ。

 「ってぇ…どうなったんだ、龍神は、コルベは?」

 「ううう、何て爆発なんだ…」

 マルスは、レンを立ち上がらせようとしながら言った。煙が消えて行くと地面が大きく窪んでいる。その中で二人のドラクーン人が睨み合っていた。

 「ふふふ、まだまだこれからだぞエルドラ」

 「そうじゃな、まだ決着はつかんのぉ」

 そう言うと龍神とコルベは、また組み合いとなった。上空では、コルベの精鋭の背に乗ったジルドがその戦いを見て苛立ち叫んだ。

 「コルベッ!いつまでかかっている、早く勝負をつけろ!」

 「うるさいっ!わしらの戦いに口を出すなっ」

 「ちっ、自我を取り戻しつつあるな、ならば」

 と、ジルドは右手人差し指を立て爪の先に小さな黒い玉を浮かび上がらせた。その小さな玉をコルベの首筋目掛けて弾丸の様に放った。小さな黒い玉がコルベの首筋に命中するとコルベの様子が一変した。龍神を突き飛ばし頭を抱えながら雄叫びを上げた。

 「ジルド殿、コルベ様にいったい何をしたんだ?」

 と、ジルドを乗せた精鋭が聞いた。ジルドは何でもないと答えた。ジルドが放った黒い玉には、イビルニアの悪意が入っていた。ドラクーンでシーナが儀式を受ける前に同じ事をやった。

 「コルベ、お前…ぐわぁぁぁぁぁ」

 龍神が起き上がった瞬間、物凄い勢いでコルベが龍神に組み付き噛みついた。

 「ううう、こやつ…何と言う力じゃ」

 噛みつかれた龍神がコルベを引き離そうとするがビクともせず牙が更に龍神の身体に食い込む。

 「コルベの様子がおかしい、さっきとは違う悪意を感じる」

 「ああ、どうなっちまったんだ…あっ?!あの野郎、コルベに何か細工をしたな」

 と、レンとマルスは言うと上空のジルドを見た。意味ありげに笑っているのが見えた。やっぱりと確信した二人は、龍神に言った。

 「龍神様、コルベはジルドに何かされています」

 「俺達も加勢するぞ」

 「来てはならん!二人の気持ちはありがたいがこれは、わしらの戦いじゃ、み、み見ていてぐわぁぁ」

 と、言いかけた龍神が地面に叩き付けられた。コルベが雄叫びを上げ龍神の上に馬乗りになり激しく殴りつけると両手で首を締め始めた。

 「そうだ、それで良い、ふふふふふ」

 と、上空からジルドがほくそ笑んだ。その様子をマルスが睨み付けた。龍神は、激しく抵抗していた。

 「ぐぐぐぅ、コルベよ…やはりイビルニア人に操られていたのか…仕方がないのぉコルベよお互い死ぬかも知れんが悪く思うなよ」

 首を絞められながら龍神がコルベに言うと龍神の身体が更に金色に輝き出した。この戦いを見守る皆が何が始まるのかと固唾を飲んで見た。キーンと小さく音がしたかと思うと急に目の前が真っ白になった。眩しいと皆が手を顔にかざしたその瞬間、目の前に真っ直ぐ一本の光の柱が現れ龍神とコルベを包み込んだ。レン達は、目を細めて光の柱の中の龍神とコルベを見た。首を絞めていたはずのコルベが頭を抱えながら苦しそうにもがいている姿が見え龍神は、片膝をつきコルベの様子を見ていた。そして、また強く光るとドーンと言う音と共に光の柱が天に向かって飛んで行った。急に辺りが静かになり龍神とコルベが居た場所には二人の老人が倒れていた。

 「龍神様ぁ」

 と、ドラコや他のドラクーン人達が窪みを駆け下り龍神を抱き起した。

 「うう…うう…ち、力を使い果たしてしまったわい、コ、コルベは…」

 と、ドラコに半身を支えられながら龍神は言いコルベを見た。他のドラクーン人がコルベを揺さぶった。コルベは、ゆっくりと目を半分開け空を仰ぎ見ながら話し出した。

 「わ、悪い夢でも見ていた気分じゃ、わしの負けじゃ…殺せエルドラ…」

 「そうじゃ、お前は悪い夢を見ていたのじゃイビルニア人に操られておったのだ」

 「そ、そう…か、わしはイビルニア人に操られていたのか…古龍党を作りお前の考えに反対していた自分が情けない…多くの同胞を売ってしまった…殺せ、わしを殺してくれエルドラ」

 そう言うとコルベの両目から涙が溢れ出た。ここに居るドラクーン人は皆コルベの事を良く知っている。ドラクーンの古いしきたりや伝統を守り誇り高く生きていたコルベを頭の固い老人だと言ってはいたが尊敬もしていた。

 「コルベ爺!」

 と、気が付いたシーナとカイエンが他のドラクーン人の肩に掴まりながら窪みの中に居るコルベに言った。二人の姿を見たコルベの目にまた涙が溢れた。

 「シーナ、カイエン未来ある二人には痛い思いをさせてしまった…わしを信じて付いて来た古龍党の者共にも悪い事をしてしまった…わしに帰る場所は無い、殺してくれ」

 「何を言うか、お前は悪い夢を見ていたのじゃ、帰ろう里に…わしと一緒に静かに暮らそう」

 「エルドラ…うううううう」

 龍神は、コルベの手を握り締め言った。かつて二人は、龍神の座を争った仲で幼い頃からの親友でもあった。

 「コルベ様」

 と、その様子を上空からジルドを乗せて見ていた精鋭が言った。

 「どうした?お前も帰りたくなったのかドラクーンに、せっかく黒龍となり強くなったのに共に人間共を滅ぼし繁栄するんじゃなかったのかね」

 と、精鋭の背中に乗るジルドが言った。自分の主が改心したのを見て、精鋭は困惑している様だった。

 「わ、私は…」

 「もう良い、お前は用済みだ」

 そう言うとジルドは、精鋭の背中を右腕で串刺しにした。上空で悲鳴が聞こえレン達は、一気に現実に引き戻された。レン達の目の前に精鋭の死体が降って来た。そして、ジルドがふわりとレン達の目の前に降り立った。

 「全く使えん連中だな、茶番はここまでだ」

 と、ジルドが吐き捨てる様に言い指を鳴らすと地面からイビルニア人達が現れた。レン達人間は、一斉に戦闘態勢に入った。ドラクーン人達は、龍神とコルベ傷付いたシーナとカイエンを守る組と直接イビルニア人と戦う組に別れ戦った。周りは忙しく戦っているが不思議とレンとマルスには、イビルニア人が襲って来ない。

 「ふん、何で俺達には襲って来ないんだ?」

 と、マルスがジルドに聞いた。ジルドは、ニヤリと笑いながら答えた。

 「ふふ、私がそうさせている、お前達二人は私が殺す、おおっと忘れていた、お前は確かレオニールだったかなアルカトが言っていた、お前の女の心を預かっているとな、あいつを倒さねば心を取り戻せないんだろ?しかし、残念だなぁお前はここで死ぬ、ふははははは」

 「レン、心配すんな、俺があの野郎を必ず討ち取る」

 「分かった、マルス頼んだよ」

 と、言ってレンは少し下がった。マルスは、叢雲むらくもを構えた。ジルドは、マルスをまじまじと見た。

 「ところでお前が着ているその甲冑…フウガ・サモンの甲冑だな、全く嫌な物を見せおって八つ裂きにしてやる」

 そう言うとジルドは、物凄い勢いでマルスに襲い掛かった。マルスは、間一髪でその攻撃を受け止めた。ジルドの両腕には、ドラクーンで見た以上に不気味な手甲が装備されていた。

 「この野郎!」

 と、マルスがジルドを突き飛ばし真空斬を放った。ジルドは、手甲で顔を覆い直撃を避けた。

 「あの時放ったものはもうまぐれではないと言う事か、ならばっ!」

 ジルドが間合いを詰め真空斬を撃てなくした。激しい攻防が始まった。ジルドの拳がマルスを襲う。甲冑のおかげで生身は、守られているが衝撃が凄まじい。

 「ぐはぁぁぁ」

 腹を殴られたマルスは、跳び下がって血を吐いた。

 「マルスッ!」

 「大丈夫だ、はぁはぁはぁ…」

 「なかなかしぶといな、ヨーゼフもしぶとかったなぁ」

 「黙れっ!そのしぶとかったヨーゼフにお前は負けたんだろ?」

 マルスの言葉にジルドの顔が引きった。

 「減らず口を…ならばこれはどうだ」

 と、ジルドは言うと右手の手のひらをマルスに見せ言った。

 「幻影魔掌げんえいましょう

 レンとマルスの身体にズンと衝撃が走った。急に身体が重くなり立っているのが辛くなった。

 「な、何だ?どうなってんだ」

 「何をしたんだ?」

 「ふふふ、お前達には真の恐怖を味わいながら死んでもらおうかな、まずはジャンパールのお前からだ」

 ジルドがそう言うとマルスは、何か見えない敵に襲われているのかやたらと刀を振るった。

 「畜生!あちこちから湧いてきやがるっ、おらぁジルド出て来い、うわぁぁぁ」

 「マ、マルス何をしているんだ?ジルドは目の前に居るじゃないか」

 どうやらマルスの目にはジルドは映っておらず代わりに四方八方から襲ってくるイビルニア人と戦っているようだった。レンの目には何も無い空を斬っているだけにしか見えない。

 「はははは、どうだ小僧、お前の目には首を落としても襲って来る我々が映っているはずだ」

 と、ジルドは大笑いしながら言った。マルスは、必死に幻影と戦っていた。そして、体力が限界に近づいて来たのかマルスは片膝をつき息を切らした。

 「そろそろ止めを刺してやろうか」

 と、言ってジルドがゆっくりとマルスに近付き始めた。レンは必死に叫んだ。

 「マルスッー!マルスッ!ジルドが目の前にマルスしっかりしろマルス」

 「ふはははは、そこで叫んでいてもこいつには聞こえていない、こいつが死んでいくさまをじっくりと見ているがいい」

 ジルドが右手を振り上げた。手甲が不気味に光っている。

 「死ぬがいい」

 「マルスーーーーーー!」

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