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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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フウガの助言

 レン達は、手足を斬り飛ばした中位者のイビルニア人を取り囲み見ていた。マルスがイビルニア人の横に立っている。

 「さてと、これからお前の訊問を始めるんだが、もう一度言う素直に話せば楽に殺してやる、逆らえばじっくり苦しめてから殺す、好きな方を選べ」

 「苦しめる?どうやって我々イビルニア人を苦しめると言うのだ我々に貴様らの拷問など通用せんぞイヒヒヒ」

 「そうだよマルスそいつの言う通りだ、日の光が差さないのにどうやるのさ」

 と、レンが言った。マルスがニヤッと笑って腰に掛けてある鞄から立派な手のひらほどの袋を取り出した。その袋から中身を取り出しレン達に見せた。

 「こいつは、俺が一度ジャンパールに帰った時、城の宝物殿で何か使えそうな物が無いか探していた時に見つけた天照鏡あまてらすかがみと言う物だ、こいつがあるから大丈夫だ」

 「その鏡でどうするの?」

 と、レンが聞くとマルスはイビルニア人の仮面を蹴り飛ばした。醜い顔をしたイビルニア人が不敵に笑っている。マルスがイビルニア人の顔に鏡を向けて言った。

 「鏡よ照らせ」

 天照鏡から光が放たれた。太陽光の様な光で周りに居たレン達もまぶしさを感じた。

 「ギャアァァァ、や、やめやめろぉぉぉぉぉ」

 イビルニア人が叫んだ。マルスは、さっと光をずらし言った。

 「どうだ、効いただろ?この鏡はな太陽の光を再現できる鏡だ、さぁ話してもらうぞ、まずお前達以外に俺達に気付いた者は居るか?」

 イビルニア人は首を横に振った。居ないと言葉にしなかったのが気に入らないマルスは、また光をイビルニア人に向けた。

 「あああああ、いい居ない貴様らの事は私しか知らない本当だ、ぐぐ偶然貴様らに出遭っただけだ」

 と、イビルニア人が言った。嘘ではないと感じたマルスは、光をずらし様子を見た。イビルニア人の顔から大量の汗が噴き出している。今度はレンがイビルニア人の傍に立ち言った。

 「アルカトはどこに居る」

 「ア、アルカト様は、し、城の中だ」

 「その城はどこにある」

 イビルニア人は体力が弱って来たのか、なかなか答えようとしない。苛立ったマルスがまた光を向けた。イビルニア人が斬り飛ばされた手足をバタつかせもがき苦しんでいる。

 「グオォォォやめやめろぉ、しししし城はこの先の…ののの…」

 と、言いかけてイビルニア人は気を失った。マルスは、やり過ぎたと言って鏡を袋に入れ鞄にしまい込んだ。

 「この先の…何が言いたかったんだろ」

 と、レンは、気を失ったイビルニア人を見て言った。

 「何だっていいさ、アルカトは城に居るんだろ、じゃあ城に行って奴を倒してエレナの心を取り戻せばいい」

 と、マルスは言ってイビルニア人の首を刎ねた。レン達は、殺したイビルニア人達を岩陰に隠し先に進んだ。この辺りからやっと草木を見た。どれも見た事のない草木で毒でも持ってそうな奇妙な形をしている。薄い霧がかかっている中をレン達は、周りを警戒しながら歩いた。静か過ぎて気味が悪い。

 「全くこの土地には色が無いな、例えるなら灰色ってところか」

 と、シドゥが独り言の様に呟いた。

 「こんな所に住んでて楽しいのかな?ぼくなら頭がおかしくなっちゃうよ」

 と、シーナが言うと皆笑った。笑う事で少し気分が良くなった。マルスが子供の頃レンにやった悪戯話しで皆を笑わせながら歩いていると、巨大な城門が現れた。壁がどこまで続いているのか分からないほどである。レンは見上げながら呟いた。

 「これがあのイビルニア人が言ってた城?の城門かな…」

 「デカいな」

 と、ラーズも見上げながら言った。レン達は、城門を押してみたが当然開くはずがない。

 「当たり前か、しかしどうやって中に入ろう、右に行くか左に行くか…」

 と、レンが言った。そして相談した結果、左側の壁を調べる事にした。左側なら自分達の軍が攻めている方角なので、合流もしやすいと考えた。レン達は、壁を調べながら歩いた。

 「う~む、どこを見ても隙が無いな…」

 「あれは、物見塔か」

 と、テランジンとシドゥが言った。レン達は、壁に張り付くように身をかがめ様子を見た。物見塔にイビルニア人の影が見えた。

 「これ以上進むのは危険です若、いかがなさいますか?」

 と、シドゥが物見塔を見上げながら言った。幸い目の前に林があった。

 「う~ん、あの林の中に身を隠しながら進もう」

 と、レンは目の前の林を指差し言った。レン達は、気付かれないよう慎重に林に入り身を隠した。

 「あんな所に物見塔なんて生意気に作りやがって畜生め」

 と、マルスが憎らしげ言った。レン達は、林の中でしばらく様子を見て自分達に気付いていない事を確認するとゆっくり進み出した。

 「しかしあの壁はどこまで続いているんだ?かなり歩いているぞ」

 と、ラーズが疲れたのか額に汗を垂らしながら言った。イビルニア半島に潜入してから何時間経ったのか、半島を覆う雲のせいで今が昼なのか夜なのか分からなかった。レン達は、交代で仮眠を取る事にした。最初にマルス、ラーズ、シドゥ、シーナが仮眠を取った。その間、敵に備えレン、テランジン、カイエンが警戒をした。

 「殿様ぁ、面倒だからいっその事、俺っちが壁ぶっ壊してやろうか?」

 と、カイエンが辺りを警戒しながら言った。

 「駄目だよ、気付かれたらお終いだよ、数じゃ圧倒的にイビルニア人の方が多いだろ」

 「カイエン、君の力はもう少し後まで取って置いてくれ」

 と、レンとテランジンが言うとカイエンがぶうぶう文句を言った。特に変わった様子もなく今度は、レンとテランジン、カイエンが仮眠を取る番が来た。レンは、仰向けになると直ぐに眠りに就いた。そして、夢を見た。最初はエレナと並んで歩いていたが、いつの間にかエレナが居なくなるとフウガが目の前に現れた。レンは、嬉しさの余りフウガに抱き付いた。フウガも抱きしめてくれた。

 「レン、良くやったな見事ザマロを討ち取った」

 「はい、おじいさん」

 「ところでお前はあの中に入ろうとしているのか?」

 「はい、あのイビルニア人の城に潜入してアルカトを倒さないとエレナの心を取り戻せないのです」

 と、レンは夢の中でフウガに説明した。

 「そうか、エレナさんの心を…あいつめとんでもない事をやりおったの」

 「はい、だから何としても僕がアルカトを倒さないといけないんです、おじいさん僕に出来るでしょうか?」

 と、レンは夢の中のフウガに聞いた。フウガは、レンをじっと見つめ答えた。

 「レン、自分を信じなさい、確かにアルカトは手強いがお前ならきっと倒せる」

 「本当ですか?僕必ずアルカトを倒して見せます」

 レンは、夢の中のフウガに夢中で話しをした。フウガは、うんうん頷き怒ったり笑ったり悲しんだりしてくれた。

 「そうか、わしとヨーゼフにもエンジェリア人の血が流れておったのか、知らなんだなぁ…ヘブンリーの女王め、何であの時言ってくれなんだのかな、インギも無駄な努力をせずに済んだものを、ふふふふ」

 「おじいさん、イビルニア人の城に潜入するのは難しいですか?」

 「おおそうじゃった、ここからもう少し先の壁に鉄で出来た格子こうしがある、それを斬鉄剣で斬れば中には潜入出来るが、外郭そとぐるわはおそらくジルドが守っておるじゃろう」

 と、夢の中のフウガが言った。レンは驚いた。

 「えっ?じゃあ僕達に気付いているのですか?」

 「いや、それは大丈夫だろう、外のヤハギ達を警戒しとるようじゃな、陸軍が半島に向かって行軍しとるからな」

 と、夢の中のフウガは言った。ヤハギ中将ら海軍がイビルニアやサウズ大陸の国々の海軍をほぼ殲滅し陸軍を上陸さていた。

 「えっ?もう陸軍が上陸してるんですか?」

 「うむ、近くまで来たらおそらく狼煙のろしを上げるだろう」

 「狼煙が上がったらテランジンに言って雲を消す爆弾を打ち上げるよう言います」

 「そうしなさい、この地でジルドや他の四天王と戦う時は必ずあの暗雲を消してから戦うのじゃぞ、暗雲の下の連中の力を見くびってはならぬぞ」

 と、夢の中のフウガはレンに助言した。

 「はい、おじいさん…」

 レンは、素直に返事をしてフウガの手を握った。フウガは、レンの頭を優しく撫でながら言った。

 「もう行かねばならん、レン…自分を信じて仲間を信じなさい、お前には素晴らしい仲間がおる、一人ではない、マルス殿下にラーズ殿下、テランジンにシドゥ、ドラクーン人のシーナとカイエンそしてヨーゼフ、このいくさで多くの命が消えるが無駄にしてはならぬぞ」

 そう言うと夢の中のフウガは、そっとレンから離れた。

 「行かないでおじいさん、僕の傍に居て下さい!おじいさん、おじいさーん」

 レンは、すうぅーと消えて行くフウガを追いかけたが追いつけなかった。

 「…ン…きろ…レン起きろ」

 と、マルスの声に起こされた。ハッと気が付いた時には、皆がレンを覗き込むようにして見ていた。

 「大丈夫ですか若、かなりうなされていたようですが」

 と、シドゥが心配して言った。レンが皆にフウガの夢を見た事を話した。

 「ホントかよ、夢の話しだろ?大丈夫か?」

 「サモン閣下が若の夢におでになられたのなら私は信じます」

 「私も」

 と、マルスは疑ったがテランジンとシドゥは信じてくれた。レンは、間違いないと言い先に進んだ。しばらく歩いていると夢の中でフウガが言ったように鉄で出来た格子が見えた。しかし、真上には物見塔がありイビルニア人が一人警戒していた。

 「畜生め、また物見塔がある、どうする?」

 と、憎らしげに物見塔のイビルニア人を睨みながらマルスが言った。とにかく鉄格子をレンが斬鉄剣で破壊して中に入れるようにしその間もし気付かれたら真空突きでイビルニア人の頭を潰すと決まり行動に出た。レンは、斬鉄剣を音も無く抜き鉄格子に近寄った。この間にマルス、テランジン、シドゥが剣を構え練気をしてイビルニア人の頭に狙いを定めた。常に薄暗いおかげかイビルニア人はレンの動きに全く気付いていない様子だった。レンは、斬鉄剣を構え練気をして十分気が刀身に溜まったのを感じて鉄格子を斬った。カランカランと格子が倒れる音がしたが幸いイビルニア人は気付かなかった。レンは、直ぐに格子の内側に身を潜めてマルス達を見た。城壁は分厚くレンが隠れても全く身体がはみ出ない。そっちに行くとマルス達が合図をレンに送り、マルス達は音を立てずに格子に近付き中に入った。丁度レンを先頭に一列に並んだ状態になった。

 「良し、やったな、向こうはどうだ?」

 マルスがレンに城壁の内側を見るよう言った。レンは、こっそり顔を出し辺りを見回した。内側は何もないただ、だだっ広いだけの様に見えた。

 「何も無いよ、隠れる所も無い…イビルニア人って一体どんな生活をしてるんだろう?」

 「何だって?何か建物とかないのかよ」

 と、マルスが言った。レンが直ぐ横にある物見塔に上がる階段に気付いた。

 「隣に階段がある、とりあえず階段に隠れよう」

 レン達は、物見塔に上がる階段に身を隠した。階段は、螺旋階段だった。レン達は、螺旋階段を上り見張りに立っているイビルニア人の近くまで来た。全くこちらに気付いていない事に少々驚いた。

 「あいつ、下位かな?いっその事殺して物見塔からどうなってるか見てみるか?」

 と、ラーズが言うと皆が賛成した。このままこうしていても始まらない。何か行動に出ねばならなかった。テランジンが剣を抜きそぉっとイビルニア人近付き声をかけた。

 「おい、交代だ」

 「…ギギギギ?…ギ」

 イビルニア人が振り向いた瞬間テランジンが首を刎ねた。まともに喋れない所を見るとやはり下位のイビルニア人のようだった。素早くイビルニア人の死体を隠し、レン達が物見塔から城内を見た。

 「う~む何も無いな、しかし何て広さだ、ん?何だあの黒い塊は…こちらに向かって…おいおいヤバいんじゃないか?」

 と、ラーズが言った。黒い塊の正体は、イビルニア人達だった。百人以上居る。

 「気付かれたのか?!早くここから逃げ出さないと」

 「いや、若、ここで迎え撃ちましょう、階段は狭い連中は一列になって上がって来るでしょう多方向から攻められるより安全です」

 と、シドゥが言った。階段から何を言っているのか分からない叫び声が聞こえて来た。カイエンが龍の姿に変身して階段から下に向かって爆炎を吐いた。

 「へへっここまで来れるもんなら来てみやがれってんだい」

 イビルニア人達は、炎を嫌ってなかなか上がって来なくなった。マルスは鞄から天照鏡を取り出し階段に居るイビルニア人達を照らした。階段からイビルニア人達の叫び声が響いている。何とかなると思った矢先、壁をよじ登って来たイビルニア人が現れた。レンは慌てて斬鉄剣で一人の首を刎ねた。シーナも龍の姿に変身して爆炎を吐こうとしたが、テランジンが止めた。

 「シーナ止せ、これ以上気付かれたら本当に危ない事になるぞ」

 斬っても斬っても沸いて出て来るようだった。

 「きりが無いな、全く」

 と、レンがまたイビルニア人の首を刎ねた時だった。東の方から狼煙が上がっているのが見えた。

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