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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
69/206

拷問部屋

 「開門っ!」

 と、無駄とは分かっていたがヨーゼフが叫んだ。城門の裏側から何やら叫び声が聞こえたが何を言っているのか分からない。ガタゴトと物音がした。ザマロの兵隊達が城門を固めている。カイエンがバンバン城門を叩きながら叫んだ。

 「おらぁさっさと開けやがれっ!でねえとこの門ぶっ壊すぜぇ!」

 城門を見つめていたレンは、大きく息を吸い込み叫んだ。

 「そこに居る兵隊共っ!怪我をしたくなかったらそこから立ち去れ」

 そう叫び終わるとカイエンに門を破壊するよう頼んだ。カイエンは、門を力任せに押した。ミシミシと音を立てたがなかなか開かない。カイエンは、シーナに変身して一緒に押せと言い二人は、呼吸を合わせて一気に押した。バキバキと音を立てかんぬきが折れ門が開いた。ザマロの兵隊達は、戦おうとはせず一目散に城内に逃げて行った。

 「ふん、腰抜け共め」

 と、吐き捨てる様にテランジンは言うと、小型魔導無線機でルークに連絡を取った。

 「ルーク、我々は今城の前に居る、そっちの状況はどうか?」

 「兄貴、少々町を壊しちまったがこっちはだいたい片付いたぜ、どうする?」

 「そうか、ふねを港に近付けて警戒しててくれ、我々は今から城内に向かう」

 「分かった、気を付けてくれよ」

 テランジンが連絡を取り終わるとレン達は、いよいよ城内に向かった。かつては、草花が咲いていた城内に続く道は、手入れがされていないのだろう荒れに荒れていた。

 「昔は草花が咲き乱れ美しかったこの道をこのようにするとは」

 かつての姿を良く知るヨーゼフは、愕然とした。城の中門まで辿り着いた時、初めてまともな兵隊が出て来た。

 「ここから先へは通さぬ、者共かかれぇ!」

 と、指揮官が叫ぶと兵隊達が襲い掛かった。レン達はすぐさま剣を抜き応戦した。

 「お前達はまともな兵隊のようだな、何でザマロの様な奴に従ってるんだ」

 と、マルスが襲い掛かって来た兵士と戦いながら聞いた。その兵士は悲しい目をしていた。おそらく身内の者を人質にでも取られているのだろうとマルスは思った。

 「俺達が必ずザマロを討ち取る、だから大人しく引いてくれ」

 「駄目だ、引く事は出来ぬ」

 と、兵士は、激しくマルスに斬りかかった。マルスは、紙一重でかわし叢雲むらくもの峰で兵士を打ち付け気絶させた。ヨーゼフが指揮官に言った。

 「お主らの様な者がなぜザマロに仕えておる、弱みでも握られておるのか?」

 「ロイヤー閣下、何も聞かんで下さい、どうかどうか引いて下さい」

 指揮官がそう言うと兵隊達がレン達から間合いを取った。やはり他の者とは違うと感じたレンは、斬鉄剣を鞘に納め兵隊達に言った。

 「僕が必ずザマロを討ち取りこの国を立て直します、どうか信じて下さい」

 その言葉を聞いて兵隊達は、剣を捨て泣き崩れた。

 「レオニール様…お願いです、トランサー王国を以前の平和な国に戻して下さい…我々はもう耐えられない」

 レン達は、指揮官や兵達から話しを聞くとやはり身内を人質に取られていると分かった。ザマロが謀反を起こし国を奪った十六年前、謀反に反対した者らは、ことごとく殺されたり牢に入れられた。その間、ザマロは、人質を取り従わねば殺すと脅し今日まで来た。

 「身内の方々はどこに?」

 と、レンが聞いた。

 「ザマロが作らせた軍にある施設に幽閉されています」

 「軍の?ああ、ならもう大丈夫だろう、サイモン大尉が解放したはずじゃ、お主らは今から港町の酒場青い鳥に行け、そこにサイモン大尉らが居る」

 と、ヨーゼフが言うと指揮官は、驚いていた。

 「サイモン殿が?し、知らなかった…」

 中門の守りを放棄した指揮官と兵隊達は、青い鳥に行った。レン達は、中門を潜り城の中庭に出た。そこには、大きなラダムの木が生えている。木の手前に女神像が建てられているが、女神像の顔をよく見ると顔が削られていた。

 「何て事するんだ」

 と、芸術的な物に興味を持つシドゥが怒っていた。勝手を知るヨーゼフが先頭に立ち城内に入った。時折物陰からイビルニア人やザマロの兵隊が襲い掛かって来るがレン達には敵わない。イビルニア人は、首を刎ねて殺すかカイエンが頭を握り潰した。そこで兵士を一人捕えてザマロの居場所を答えさせた。

 「おい、ザマロはどこに居る」

 「ザ、ザマロ様は二階のご自分の部屋に居るはずです」

 「そうかでは案内せよ」

 と、レン達は、捕えた兵士に部屋まで案内させる事にした。二階に上がる途中に城内に詰めている兵士や大臣らの部屋に連絡が取れる部屋があり、そこでヨーゼフは、魔導拡声器を使い城全体に聞こえる様にして話した。

 「ヨーゼフ・ロイヤーである、今我々はレオニール様と共にこの城に居る、ザマロに人質を取られ心ならずも従っている者達よ、安心せい、人質は解放された、もうザマロに従う必要は無くなった、武器を捨て大広間に集まれ」

 ヨーゼフの声が城全体に響き渡った。話しを聞いた者達は動揺した。

 「おい、今の聞いたか?人質は解放されたってよ、そうと分かればもうこんな事をする必要はない、我々はレオニール様に従う、皆、大広間に行こう」

 と、兵隊達は、次々と武器を捨てた。シェボット派の将兵達は、そうはさせまいと剣を取り兵隊達に斬りかかった。

 「貴様ら、陛下を裏切るのか、裏切者はこの場で斬り捨てる」

 「ふん、やれるもんならやってみろ!もうお前達など怖くはないわ」

 各部屋や城のあちこちで乱闘が起きた。城内に怒号が響き渡る。ヨーゼフはこれで良しとした。そして、レン達は、捕えた兵士にザマロが居ると言う部屋まで案内させた。そこは、十六年前からザマロが使っていた部屋だった。

 「なんじゃ、あやつめまだこの部屋を使っておったのか、おい扉を開けろ」

 と、ヨーゼフは、兵士に言い扉を開けさせた。真っ先にカイエンが飛び込んだ。

 「おらっ!ザマロてめぇをやっつけに来たって、あれ?誰も居ねぇじゃねぇか!てめぇ嘘吐きやがったな」

 と、兵士の胸ぐらを掴み怒鳴った。兵士は慌てて答えた。

 「本当にこの部屋に居るはずなんです、アルカト殿と」

 「何っ?!アルカトだと?」

 と、ヨーゼフの顔色が変わった。皆がどうしたんだろうヨーゼフを見た。ヨーゼフは、アルカトの事を皆に説明した。

 「ジルド、グライヤー、フラックそしてアルカト…この四人を我々はイビルニア四天王と呼んでおりました、この中でもアルカトの実力は群を抜いております」

 「そ、そんなに強いのか…でもヨーゼフ達がイビルニアとの戦争を終わらせた時、倒したんだろ?誰が倒したんだよ」

 と、マルスが聞いた。

 「フウガ殿です、かなり苦戦されていましたが見事討ち取りました…まさかここに出て来るとは思っても居なかった、あやつが半島から出て来るとは…」

 「とにかく、今はザマロを探そう」

 と、ラーズが気を取り直して言った。レン達は、捕えた兵士に他にザマロが居そうな場所に心当たりが無いか訊問した。兵士は、もう城から脱出してるかも知れないと言った。ヨーゼフは、まさかと思い国王家族が普段の生活を送る部屋はどうなっているか訊問した。

 「あ、あの部屋は今、拷問部屋になっています」

 「何?拷問部屋?よりにもよって拷問部屋だと?」

 と、ヨーゼフは言って力任せに兵士の横っ面を殴った。殴られた兵士は気を失い倒れた。

 「お、おいヨーゼフどうしたんだよ?国王家族の部屋って?テランジン、シドゥまで」

 と、三人の顔色が変わっている事に気付いたマルスが言うとヨーゼフがわなわなと唇を震わせ答えた。

 「その部屋でレオニール様はお生まれになられました、そしてあの時、その部屋からレオン様ヒミカ様フウガ殿らが城外へ脱出されたのです」

 「じゃあまだ脱出口は生きてるのか?だとしたら急がねぇと逃げられちまうぜ」

 レン達は、急ぎ拷問部屋に向かった。その頃、ザマロは、アルカトを連れ拷問部屋に向かっていた。

 「はぁはぁ、逃げるぞ、あの脱出口はまだ使える」

 と、肥満した身体を一生懸命に走らせていた。途中何人も兵隊達や大臣などに我々はこれからどうなるんだと聞かれた。自分の事は自分で何とかしろと言うだけで相手にしなかった。レン達に寝返りザマロに襲い掛かった兵士は、ことごとくアルカトに殺された。

 「逃げてどうするつもりだザマロよ、せっかく手に入れた国なのに手放して良いのかね?」

 と、アルカトは、薄ら笑いを浮かべ言った。その顔を見てザマロは、ムッとしたが何も言わずひたすら拷問部屋に向かった。その時、後ろから声をかけられた。

 「父上!」

 と、ザマロを呼び止めたのは息子のラストロ・シェボットであった。部下数人を引き連れていた。

 「おお、ラストロよ無事だったか、逃げるぞ、もうここに居ては奴らに殺される」

 「何を言われるのです、私は戦いますよ、このトランサー王国は我がシェボット家のものです、今更ティアック家の者に渡せるか」

 と、腕に自信があるラストロが言った。ザマロは、止せと言い息子と部下を連れ拷問部屋に向かった。部屋に辿り着くと真っ先に脱出口に続く階段が隠してある床を剥がそうとした。しかし、なかなか剥がれなかった。まさかレンが生きていて攻め込んでくるとは考えもしなかったので自らの命令で固く閉ざさせたのだった。

 「こ、こんな事になるのなら閉めるんじゃなかったわい、くっ開かんお前も手伝えアルカト」

 「ふん、勝手にしろ、私はここでレオニールを待つ」

 「父上、私やアルカト殿が居る、大丈夫ですよ」

 「ほほう、どうやら来たみたいだぞザマロ」

 と、アルカトが言うと鍵を掛けたはずの扉が乱暴に開いた。カイエンが思い切り蹴り開けたのだ。レン達が一斉に部屋に入って来た。ラストロと部下達が剣を抜きレン達に向けた。アルカトは落ち着き払ってレン達を見ていた。

 「久しぶりだなザマロ、アルカトよ」

 と、ヨーゼフはゆっくりと刀を抜きながら言った。ザマロは、ぶるぶる震えながらアルカトの後ろに隠れた。

 「ふん、父上には指一本触れさせぬ、かかって来い切り刻んでやる」

 と、ラストロが言うとテランジンが腕組をしながら進み出て言った。

 「随分と親孝行だな、ええ?その孝行に免じてと言いたい所だが、お前の親父は謀反起こした大罪人だ許す訳にはいかん」

 「何を言うか、トランサー王国は我がシェボット家が王として君臨するのだ、ティアック家に用はない消え失せろ」

 と、叫びラストロがテランジンに斬りかかった。ラストロの渾身の一撃をテランジンは、余裕でかわし思い切りラストロを殴りつけた。歯が二三本宙を舞った。

 「俺達は何度も死地を越えて来た、ボンボン育ちのお前に何が出来るか」

 「き、貴様ぁ…お前達何をしているかからぬかっ!」

 と、ラストロが部下に言うと一斉に襲い掛かって来たが、マルス、ラーズ、シドゥがあっという間に片付けた。残ったのは、ザマロ、ラストロそしてアルカトだけになった。ザマロとラストロだけなら直ぐに終わらせる事が出来るが、アルカトが傍に居るのでそうはいかない。

 「ア、アルカト、は、早く奴等を始末しろ!」

 と、ザマロがアルカトにすがり付きながら言った。

 「何度も言う様に私は人間同士の争いに興味は無い、自分の国は自分で守るんだな、しかし」

 と、言いながらアルカトはレンを見た。

 「レオニール…君はフウガ・サモンの孫として育てられたのだったな、私はフウガ・サモンに恨みがあってね、君が持っているその斬鉄剣で首を落とされ暗黒の世界に封印された…フウガ・サモンが死んでどう恨みを晴らそうかと考えた結果、斬鉄剣を持つ君で晴らさせてもらう事にした」

 そう言い終わると一瞬でレンの目の前まで来た。その素早さは、今まで見た事のない素早さだった。テランジンとシドゥが同時に斬りかかったが、アルカトは素手で剣を掴んだ。そして、掴んだままレンを食い入るように見つめて言った。

 「ふうむ、美しい顔をしているな、君の首は私のコレクションにしよう…ほほう、なるほど」

 レンは、凍り付いた様に動けなかった。テランジンとシドゥが掴まれた剣を引き取ろうとしているが全く動かない。

 「この野郎!」

 と、カイエンがアルカトの頭を鷲掴みにしようと飛び掛かった。その時、アルカトは掴んだ剣を放しザマロとラストロの所まで飛び下がった。ヨーゼフ、テランジンとシドゥはすぐさまレンの前に立ちはだかり剣を構えた。

 「レオニール、君は良い家来に恵まれてるな、それに比べてこの親子は…くくく」

 と、アルカトは笑ってザマロ親子を見た。

 「この場でレオニールの首を持って帰りたい所だが、さすがに私も無事には帰れないだろう、ドラクーン人が二人も居る、それに叢雲まで持っている者も居る、私にとっては場所も悪い、ザマロよ身から出た錆だ、諦めるんだな、ヨーゼフどうせイビルニアに攻めて来るんだろう?レオニール勝負はイビルニアで着けよう、もしも君が来なければ君の大事な何かを失う事になるぞ」

 と、アルカトは言い終わるとポケットからグライヤーやフラックが使った玉を取り出し床に叩き付けた。紫の煙がアルカトを包み込み煙が消えるとアルカトの姿が消えていた。

 「だ、大事な何かって何の事だろう?見つめられた時、全てを見られたような感じがした」

 「ふん、どうせハッタリに決まってらぁな殿様、そんな事より」

 と、カイエンがレンに言ってザマロとラストロを見た。ラストロは父を庇う様に立ちはだかった。

 「この期に及んでまだ父を庇おうとする心がけ殊勝である、ザマロにはもったいない息子じゃな、そこを退きなさい」

 と、ヨーゼフが言った。ラストロは首を横に振り剣を構えた。ザマロは、息子の後ろでひぃひぃ言っている。

 「レオニール、私と勝負しろ!お前がこの国の王子ならば私に勝って父を討ち取るが良い、私こそトランサー王国の王子だ!」

 「この野郎、生意気な!」

 と、テランジンが殴りかかろうとしたがレンが止めた。

 「分かった、勝負しよう僕が勝ったら大人しく言う事を聞いてもらう、それで良いですね?」

 「ふん、勝つのは私だ!おりゃあ」

 と、ラストロは、レンに激しく斬りかかった。レンは、軽く受け流し斬鉄剣の峰でラストロの背中を打った。ラストロの顔が苦痛で歪んだが、諦めず撃ち込んで来る。そして、渾身の力を込めレンに斬りかかった。レンはそれを斬鉄剣で撃ち払った。ラストロの剣が真っ二つに折れた。ラストロは剣を捨てレンに組みかかろうとしたが、レンが峰討ちで倒しうつ伏せになったラストロの顔に刃先を向け言った。

 「勝負は着きました、大人しくして下さい」

 「くっ!こ、殺せっ!」

 レンは、テランジンとシドゥに取り押さえるよう言い刀を納めた。二人に取り押さえられたラストロが喚き散らしたが、シドゥにうるさいと腹を殴られ苦痛で黙った。かつては、国王家族の部屋として使われていた拷問部屋が急に静かになった。そして、レンとヨーゼフは、ゆっくりと床に座り込んでいるザマロに近付いて行った。


 

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