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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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父と娘の再会

 岩場を抜け街道に出たレン達は、周りを警戒しながらひたすら歩いた。いつどこでザマロの兵隊が現れるか分からない。出来るだけ目立たないよう気を配った。

 「不味いな、夜明けが近い一旦森に入りましょう」

 と、ヨーゼフが空が白んで来たのを見て言った。レン達は森の中に入った。

 「ディープ男爵が言ってた反ザマロの連中に上手く繋ぎを取れたら良いんだがどこに居るんだろう」

 と、マルスが座りながら言った。

 「左様でございますなぁ、何とか都に潜入せねば分かりませぬな、しかし日中移動するのは危険でござる、とにかく夜を待ちましょう」

 と、ヨーゼフが言うとカイエンがうんざりした様な顔をして言った。

 「旦那ぁ俺っちは夜まで待てねぇぜぇ、さっさと都に行こうぜぇ」

 「まぁそうくなカイエン、急いては事を仕損じると言う今は待つしか無い」

 と、ヨーゼフに言われたカイエンは、勝手にしろとばかりにその場に寝転がった。テランジンとシドゥが何やら話しをしてヨーゼフに言った。

 「閣下、この近くに小さな村があったのを覚えておられますか?私とテランジンで様子を見に行こうと思うのですが」

 「少し情報を仕入れて来ますよ」

 「う~む、もしザマロの兵隊に見つかったらどうするつもりか?」

 「もしもの時は、斬り伏せて死体はどこかに隠します」

 と、テランジンは言ったが、ヨーゼフはあまり良い顔はしない。しかし、ここで夜まで待つには時間があり過ぎるので、不安ながらも二人を行かせる事にした。

 「少々不安じゃが行ってもらおうか、無理はするなよ」

 「ははっ!」

 と、テランジンとシドゥは、近くの村に情報を得るために向かった。カイエンが一緒に行くと言い出したがマルスとラーズが止めた。土地勘の無い者が行くと目立つと言った。レン達は、森で二人の帰りを待つ事になった。

 森を出たテランジンとシドゥは、フードを目深に被り出来るだけ目立たないように歩いた。しばらく歩くと直ぐに村が見えた。

 「ここは相変わらずだ、昔のままだな」

 「ああ、懐かしいな」

 と、二人が話しながら歩いていると女性が一人、兵士三人に囲まれ言い争っているのが見え、その周りに村人達が集まっていた。テランジンとシドゥは、急いで物陰に隠れ様子を見た。

 「さぁ来るんだ、国王陛下が直々に訊問される、早く来い」

 「嫌です、私は何も知らないし、父が生きていた事もあの新聞で初めて知ったんです」

 「ではその事を陛下の前で説明するんだな」

 「嫌っ!放して」

 と、女性は兵士に掴まれた腕を乱暴に振り払うと兵士は激怒し女性を引っ叩いた。叩かれた女性は悲鳴を上げその場に倒れ込んだ。その様子を見たテランジンとシドゥは、捨てては置けないと感じ助ける事にした。兵士二人が女性の両腕を掴み上げ無理やり立たせ連行しようとした。

 「おい、その女性ひとを放せ」

 「だ、誰だ貴様ら!関係無い者は引っ込んでおれ、行くぞ」

 と、二人を相手にせず兵士達は、行こうとしたがシドゥが立ちふさがった。その時テランジンが周りに居た村人達の様子を見た。皆、兵士達を睨み付けている。と言う事は、この村は、ザマロの事を快く思っていないのだろうと思い大胆な行動に出た。

 「おい今この村に来ている兵隊はお前達だけか?」

 と、テランジンが聞いた。その問いに兵士の一人が馬鹿にしたような顔をして答えた。

 「そうだ、それがどうした?」

 「そうか、そうか、ところでこの国にジャンパールからレオニール様達が来ているそうだな」

 「お、お前…」

 と、シドゥが何て事を言うんだと慌てた。テランジンが軽く手で制し続けた。

 「直ぐそこまで来てるそうだぞ」

 「なな、何だと?貴様ら何者だ?!」

 と、兵士達が女性を放しテランジンとシドゥに剣を向けた。テランジンがゆっくりとフードをめくった。仕方なくシドゥもフードをめくった。兵士達が驚愕した。

 「ききき、貴様らはあの新聞に載っていた…」

 「そうだ、俺がテランジン・コーシュ」

 「私がシドゥ・モリヤだ」

 と、言うと一瞬で二人の兵士を殴り倒した。残った兵士が、逃げ出そうとしたのでテランジンが剣を抜き真空突きを放った。真空波が兵士の頬を掠め血が噴き出た。兵士は腰が抜けたのかその場にへなへなと倒れ込んだ。村人に言って縄を持って来させ兵士三人を縄で縛り上げた。その瞬間周りに居た村人達から歓声が沸き上がった。

 「本物だ、本物のテランジン・コーシュ少尉にシドゥ・モリヤ少尉だ」

 「レオニール様はどこに」

 と、村人達が口々にテランジンとシドゥに話しかける中を掻き分けて、先ほど助けた女性がすがり付くようにテランジンとシドゥに言った。

 「父は!?父も一緒に来てるのですか?」

 父、と聞いて誰の事だろうと二人は考えた。自分達の仲間の中に目の前の女性の親の年齢に相応な者と言えばただ一人ヨーゼフしか居ないと思った。シドゥが恐る恐る尋ねた。

 「あの、もしやあなたはロイヤー閣下の娘さんでしょうか?」

 「はい、ヨーゼフ・ロイヤーの娘リリー・ロイヤーです」

 二人は、顔を見合わせた。娘が居るとただの一度も聞いた事が無かったからである。シドゥがレン達を呼びに行くと言い残し森に帰って行った。残ったテランジンは、捕えた兵士三人を村の倉庫に監禁しレン達を待った。テランジンが思った通りこの村の住人は反ザマロ派だった。しばらくしてシドゥがレン達を連れて村に来た。村人達からまた歓声が上がった。

 「レオニール様だ、やっとレオニール様がお帰りになられたぞ」

 「レオニール様、この日をどんなに待ちわびたか…うううぅぅぅ」

 と、涙する者も居た。そんな中、別の意味で涙する女性ヨーゼフの娘リリーが居る。

 「お、お父さん…お父さん」

 と、リリーは父ヨーゼフに抱き付き泣いた。ヨーゼフは、シドゥが呼びに来た際に話しを聞いていた。村に自分の娘が居ると聞いた時、嘘だろうと思ったが、シドゥから身なりや顔立ちを聞き間違いなく自分の娘と分かった。ヨーゼフは、ザマロの謀反で捕まった時、おそらく妻や子供は殺されると思っていた。あのザマロが自分に逆らった者の家族を生かしておくとは考えられなかった。脱獄した時には、妻も子供も死んだものと思い込みレオニールの事だけを考えるようにしたのだった。

 「リリー…生きていたんだな、良かった…母さんはどうした?」

 と、ヨーゼフは、娘を抱き締め言った。リリーは暗い顔をして答えた。

 「三年前にやまいで亡くなったわ」

 「ふうむ、そうか…随分苦労をかけたな…全てはこの国をザマロから奪い返すためだった、リリー許してくれ」

 「もうどこにも行かないでお父さん…」

 と、父娘おやこの再開を果たしたヨーゼフとリリーであった。レン達は、捕えた兵士三人が監禁されている倉庫に向かった。レンの顔を見るなり兵士達は、殺されると思ったのか命乞いをした。

 「レオニール様、どうかどうか命だけはお助け下さい」

 「うるせぇクソッタレども俺っちが始末してやる」

 と、カイエンが殴りかかろうとしたがレンが止めた。

 「待ってカイエン、僕は彼らを殺そうとは思わない、聞きたい事がある」

 「な、何でも聞いて下さい」

 と、兵士達は必死に答えようとした。レンは、まず城下の様子を聞いた。ザマロが支配するようになってからイビルニア人が堂々と街中を歩いていて町は死んだように静まり返っていると話した。

 「何と…」

 ヨーゼフ、テランジン、シドゥは顔を見合わせて信じられないといった顔をした。そして、色々と話しを聞くうちにヨーゼフ達の怒りが頂点に達した。

 「許せん…ザマロめ、必ず討ち取ってくれるわ」 

 兵士達をしばらくこの倉庫に監禁する事にしてカイエンと村人が交代で監視する事になり、レン達は、村長の家に向かった。

 「改めて紹介します若、娘のリリーです」

 と、ヨーゼフがレンに娘を紹介した。

 「レオニール・ティアックです、あなた方親子には随分と苦労をかけてしまい、本当にごめんなさい」

 と、レンはリリーに謝った。リリーは、とんでもないといった顔をして言った。

 「レオニール様が生きている事を知りトランサー国民は皆、希望を持つ事が出来ました、どうかどうか、ザマロ・シェボットからこの国を取り返して下さい」

 ヨーゼフが深く頷き娘に言った。

 「リリー、レオニール様がこの国に帰って来た以上、きっとザマロからの支配を解いて見せるぞ」

 レン達は、村長にディープ男爵の事を聞いた。村長は、ディープ男爵とは直接の面識は無かったが、水面下で活動している反ザマロ派の者を何人か知っていると言い、その者らに使いを出すと言ってくれた。

 この日は、村長宅に潜伏させてもらう事にした。テランジンが小型の魔導無線機を使い軍艦に居るルーク達に無事を知らせた。ヨーゼフは、リリーから自分が国から出た後の事を詳しく聞き深い悲しみとやり場のない怒りに震えていた。ヨーゼフやテランジン、シドゥ達ティアック派の者がことごとく殺されたり拘束された翌日、リリーとヨーゼフの妻は、屋敷を取り上げられ路頭に迷う事になった。幸い使用人の一人がこの村の出身者で身を寄せる事が出来たが、妻は心労でとうとう病にかかり三年前に亡くなってしまった。天涯孤独となったリリーは、自殺も考えたが死に切れず途方に暮れる毎日を送っていた。そんな時、ジャンパールでレンが立太子式を行った事を知り驚いた。新聞に掲載されていた写真に自分の父ヨーゼフが写っているのを見てさらに驚いた。行方不明となっていた父が生きている。リリーは、希望に満ち溢れた。そして、レオニールと共に父が帰って来る日を待っていたのだった。

 「あの兵士達を監禁してる以上ここには長く居られねぇぜ、明日にでも帰って来ねぇ連中を探しに別の兵士達が来るんじゃないか?」

 「確かにそうだな、早い事ここを出た方が良いかも知れんな」

 と、マルスとラーズが言った。レンも確かにそうだと言ったが、村長が反ザマロ派の者に使いを出したのでその者が帰って来るまで待つと言った。この日の夜遅く村長の使いの者が帰って来た。

 「レオニール様、ロイヤー閣下、港町にある青い鳥と言う酒場に行って下さい、そこに反ザマロ派の方々が集まっています」

 「青い鳥?ああ、あそこか懐かしいのぉ、分かったありがとう」

 「お気を付け下さい、帰る途中に何人か兵隊を見ましたので」

 「お父さん…」

 リリーは、不安な顔をして言った。ヨーゼフは、娘の手を握り言った。

 「もう少しの辛抱だリリー、ザマロを討ち果たしたら親子水入らず平和に暮らそう、母さんの墓参りにも行こう、それまでどうか辛抱してくれ」

 「リリーさん、ごめんなさい、もう少しお父さんの力が必要なんです」

 と、レンがリリーに頭を下げた。

 「もったいない、レオニール様どうかお顔を上げて下さい、父をよろしくお願いします」

 レン達は、自分達が村を出た後、兵士を解放するよう言い、リリーを連れて村を出て森の中を歩いた。

 「あの兵隊、解放して良かったのかな?あのまま村に監禁しとけば良かったと思うが、絶対俺達の事しゃべるぞ」

 と、ラーズが心配して言った。

 「駄目だよラーズ、あのまま村に置いておけば帰って来ないあいつらを探しに必ず村に他の兵隊共がやって来て村の人達が酷い目に遭うかも知れないだろ」

 と、レンが言った。マルスもその通りだと言った。

 リリーを連れたレン達は、ひたすら森の中を港町に向かって歩いた。夜明け近くになりやっと港町が見える所まで来た。



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