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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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イビルニア人の目的

 翌朝、目覚めたレンとエレナが部屋から出て来るとマルスとラーズが意味ありげにレンを見ていた。レンが、二人が期待する様な事はしていないと言うとがっかりしていた。朝食を取るとエレナ、コノハ、カレンは、学校へ行った。エレナ達が学校へ行くのを見送ってからレン達は、フウガがまつられているやしろへ行き参拝した。そこは、歴代の皇帝や皇族達が祀られている場所である。

 「おじいさん、僕はおじいさんの言いつけ通りヨーゼフ、シドゥ、テランジンを探し出し帰って来ました」

 と、レンは、呟いて手を合わせた。

 「フウガ殿、よくぞレオニール様を立派に育ててくれた、かたじけのうござる、このヨーゼフ・ロイヤー必ずやレオニール様をトランサーの王にして見せますぞ、どうか見守って下され」

 と、ヨーゼフは社に向かって言い手を合わせた。マルス、シーナ、ラーズも静かに手を合わせた。この後、イビルニア人に殺されたサモン家の女中センとリク、用人のバズが眠る墓地に行った。そこには、フウガの妻マーサの墓や二十六年前の戦争で戦死したサモン家の長男タイガとすでにメタルニアの墓地から移された次男リューガの墓がある。それぞれの墓に花を供え祈った。

 墓参りを済ませたレン達が城に戻ると、侍従がレンとマルスに記者会見があるから広間に来て下さいと言って来た。

 「記者会見?何でそんなもんしなきゃなんねぇんだ?」

 「マルス様、一年以上かけてご遊学されて来たのです、国民はマルス様の話しを求めております、どうか会見をお受け下さい」

 「ええ~、面倒だな、まぁ良いだろう、ただし俺一人だ」

 と、マルスは言った。立太子式を控えるレンの顔をあまり晒す訳にはいかない。侍従はレンの素性を知らなかったが、マルスに一人で会見すると言われ納得したようだった。レンをヨーゼフ達のいる部屋に行かせマルスは一人会見に臨んだ。広間に用意された椅子にマルスが着席すると記者達がどよめいた。

 「マルス殿下、無事のご帰国お喜び申し上げます、あれっ?サモン公爵は?」

 「ああ、あいつは具合が悪いから寝てるよ」

 と、適当に嘘をいた。それから、記者の質問攻めが始まった。マルスは、ある事ない事誇張して話したが、ヨーゼフ達の事は話さなかった。

 「殿下、サモン公爵以外にお連れの方が居られたはずなんですが、その方々のお話しもお聞かせ願えませんか?」

 「ん?ああラーズの事だな、あいつはランドールから付いて来ただけだ」

 「いえ、ランドール王子ではなく、ご年配の方と女性が一人居たはずなんですが…」

 そう記者に聞かれマルスは、少し考えて答えた。

 「近いうちに二人が誰だか分かるからその時まで待て、ああもう二人いや三人か」

 と、マルスは、テランジンとシドゥそしてカイエンの事を言った。記者達は近々何があるんだろうと思い各々質問したが、マルスの疲れたとの一言で記者会見は終了した。

 「はぁ~終わった終わった」

 と、マルスがレン達が居る部屋に戻って来てソファーに寝転びながら言った。シーナに腰を揉めと言う合図を送った。シーナは、素直にマルスの腰を揉んでやった。

 「どうだったの記者会見は?」

 と、レンが聞いてみた。

 「ああ、適当に答えたさ…ああそこそこ、いいぞシーナ上手いな…いてててて、や、止めろ」

 と、マルスが飛び起きた。シーナは、ヘラヘラ笑って椅子に座った。

 「ああ痛ぇ、しかし暇だなぁ散歩でも行くか」

 と、マルスが言ったのでレンとラーズは散歩に出かける事にした。ヨーゼフは、レンの立太子式の相談をイザヤ皇帝とナミ皇后にするため城に残る事にしシーナは、ジャンパール城をもっとよく見たいと言って侍従に案内させた。

 「こうやって三人で城下を歩くのも何年ぶりだろう」

 と、ラーズが感慨深げに言った。

 「僕はあまり良い思い出は無いけどね」

 と、レンが言うとマルスとラーズがクスクス笑った。幼い頃、レンは二人に女装させられて町を歩かされ、そこで変質者に連れ去られ悪戯された経験があった。

 「またやってみるか?」

 と、マルスが言うとレンは、怒った様に嫌だと言い先に歩き出した。冗談だと言いマルスとラーズがレンに追いつくとエレナとユリヤが女達に囲まれ言い争いになっている所に出くわした。どうやら学校の同級生や上級生を相手にしているようだった。

 「あなた達二人はどうして簡単にお城に上がれるのかしら、それとこの間一緒に居た赤毛の人はどちら様?女性に見えたけど皇族の方かしら」

 と、嫌味たっぷりに一人の女が言った。自分達貴族の娘でもそう簡単に城に上がれないのに平民であるエレナがコノハや皇后と仲が良いと言うだけで簡単に城に出入り出来るのが気に入らないようだ。そしてエレナと友達と言うだけでユリヤもとばっちりを受けた。

 「あなた方には関係ない事です、さぁ通して下さい」

 エレナは、毅然とした態度で答えた。貴族の娘達の中で一番年長と思われる娘がエレナの顎に手をやり言った。

 「生意気ね、コノハ皇女のお気に入りだからって調子に乗らないで」

 「誰が調子に乗ってるって?」

 と、後ろから声がしてエレナとユリヤを取り囲んでいた貴族の娘達が振り向くとそこには、レンとマルスとラーズが立っていた。娘達は、突然現れた三人に驚いた。

 「あああ、ああマルス殿下」

 「お前達、ちょっと来い」

 と、マルスは、近くの公園に皆を連れて行った。マルスはベンチに座り目の前に貴族の娘達を並べた。

 「あのなぁお前達、エレナの何が気に入らないんだ?平民だからか?良いかよく聞け、エレナはここに居るサモン公爵の許嫁だ、その許嫁なんだから半分貴族みてぇなもんだ、それとエレナがお前達の学校に通うようにしたのは俺の妹と母上だ、文句があるならまずその二人に言え」

 と、マルスが話すと 娘達はレンを見た。レンは、恥ずかしくなって娘達から目を逸らした。

 「こ、公爵の許嫁だからって皇帝陛下や皇后様、皇太子様にコノハ皇女となぜそんなに良くしてもらえてるのか理解出来ません、殿下ご説明下さい」

 と、いかにも勝気そうな娘がマルスに噛みついた。マルスは困った。確かに言われてみれば不自然ではある。レンとは、兄弟の様な仲だし義兄弟の盃を交わした。本当は、従兄弟いとこになるが。弟と思っているレンの女の事でこうして今、揉めている事に改めて気付いたマルスの頭の中では走馬灯の様にレンとの思い出が蘇って来た。

 「あ、あの殿下ご説明を」

 と、勝気そうな娘に言われハッと我に返ったマルスは、貴族の娘達を見回し答えた。

 「お前達もエレナの様に父上や母上と飯が食いたいのなら一度城に来い」

 「いい、いえ何もそこまでは…」

 と、娘が言いかけたその時、その場の空気が一瞬にして変わった。あの嫌悪感を感じた。

 「えっ?何この感覚、気持ちが悪いわ」

 と、貴族の娘達が騒ぎ出した。エレナとユリヤはレンの手紙でこの感覚の事を知っていた。

 「近くにイビルニア人が居る、何でこんな所に?」

 と、レンが辺りを見回しながら言った。イビルニア人と聞いて娘達が悲鳴を上げそうになったのをラーズが止めた。

 「騒ぐな、俺達が居るから大丈夫だ、ここでじっとしてろ、良いな」

 「ああ、安心しろお前達には指一本触れさせねぇ」

 レン達は、刀を抜いた。エレナとユリヤ、貴族の娘達を真ん中にしてレン達は三方に別れて警戒した。意識を集中してイビルニア人の気配を感じ取った。

 「そこかっ!」

 と、レンが公園の木に向けて真空突きを放った。ボッと真空波が飛び木を貫通して何かに当たるとそこから五人のイビルニア人が出て来てレン達を襲った。

 「五人だ、公園だからあまり派手な事出来ないよマルス」

 「何を言いやがる、お前今さっき真空突き出したじゃないか」

 と、レンとマルスは話しながら二人のイビルニア人の首を刎ねた。それを見た貴族の娘が一人気を失った。ラーズが大丈夫かと抱き上げようとした時、後ろからイビルニア人が鉄の爪で突いて来た。

 「シェアー」

 「っと、危ない」 

 と、ラーズが鉄の爪の攻撃を剣で弾き返した。気を失った娘をエレナとユリヤに託しラーズはイビルニア人と対峙した。このイビルニア人は中位の者だった。残る下位のイビルニア人の首を刎ねたレンとマルスが加勢する。

 「レン、ラーズ、殺すなよ聞きたいことがあるからな」

 「分かった」

 と、レン達はイビルニア人を取り囲み攻撃した。手足を斬り飛ばし仰向けに寝かせ訊問を始めた。

 「イビルニアの者、汝は何故この国に来た答えよ」

 と、マルスがヨーゼフの物まねをして言った。レンとラーズは、こんな時にふざけるなと言ったが、マルスは、意外にも真剣だった。イビルニア人が仮面の中で笑っているのが分かった。手足を斬り飛ばされたイビルニア人をエレナや貴族の娘達が顔を青くして見ていた。エレナとユリヤがレンの両腕にしがみ付いた。

 「ぐふぐふふふ、我々が何故この国に来てるかだって?知ってどうする?どうせお前達には何も出来んぞ、ぐふぐふふふ」

 「出来るか出来ねぇかはやってみなけりゃ分からん、さぁ言え、何が目的でこの国に来た?何?答えないか、そうかじゃあ仕方がねぇな言えば楽に殺してやったのにな」

 と、言ってマルスは、イビルニア人を陽の当たる場所に引き摺って行き仮面を剥がした。以前ランドールでヨーゼフがやったイビルニア人に対する拷問だった。イビルニア人は、太陽の光を嫌う。ゆえに下位中位のイビルニア人は、いつも光を遮断できる真っ黒なフード付きのマントを着ていた。ところが上位のイビルニア人には、通用しない。

 「さぁ言え、何が目的だ!」

 「ぎいやぁあぁあぁぁ、わわ、分かった話すからかかか仮面を」

 と、イビルニア人が必死に言った。相当きつい様だった。マルスは、イビルニア人に仮面を被せしゃべらせた。イビルニア人は、世界中で若い娘をさらっている事が分かった。

 「何のためにさらっている」

 「我々の子を作るためだ」

 「何?」

 レン達は驚いた。イビルニア人は人間との間の子を作ろうとしている。以前は単純に奴隷として働かせるために人間をさらっていたが、近年ではイビルニア人の考え方が変わってきている様だった。

 「じょ上位者以外の者は、マントをしていても太陽の下では圧倒的に不利だ、だ、だから太陽の下でもじ、自由に動ける者を作らねばならない」

 人間との間の子を作れば上位者でなくとも自由に太陽の下で活動出来ると思っている様だった。何ともおぞましい事である。話しを聞いて気分が悪くなったマルスは、分かったもう良いと言ってイビルニア人の首を刎ねた。

 「危ない所だったな、お前達、俺達が居なかったらあの連中にさらわれていた、そしてあの連中の子を産まされる所だったぞ」

 と、マルスから聞いてエレナ達はゾッとした。イビルニア人の死体の処理を役人に任せレン達は、エレナ達の女子寮に向かった。寮の方では、マルスやラーズが来たとなって普段は男子禁制だが特別に寮に入れる事になり、寮の談話室に行きマルスが貴族の娘達に言った。

 「とにかくエレナの事はお前達がとやかく言う事は無い、それと近いうちに城でお前達を招いて食事会をする、良いな」

 と、言われた貴族の娘達は、本当に城に招待されるとは思ってなかったようで驚いていた。その後、雑談になりレン達は、エレナを連れて城に帰って行った。

 「あのマルス様、ありがとうございました」

 と、エレナが城に帰る途中マルスに礼を言った。

 「なぁに気にする事ないさ、お前はいずれレンの妻になるんだ、レンが立太子式を済ませ本当の身分になればお前は公爵夫人ではなく王妃になるんだぞ」

 と、マルスがにこやかに言った。城に着くと侍従が慌てた様子でレン達の元に駆けつけて来た。

 「ああマルス殿下、探しておりました、今ワルカサの港でサイファから船でやって来た大男が殿下やサモン公爵に会わせろと騒いでいるそうで、お二人はお心当たりがございますか?」

 と、レンとマルスに聞いた。サイファから来たと聞いて二人は、誰だろうと考えた。リンゲの町に居た役人かと思ったが彼はそんなに大きくなかった。

 「何でも殿下の事をあにぃだとかサモン殿の事を殿様だとか申しているそうで」

 「カイエンだ!」

 と、レンとマルスは顔を見合わせて言った。

 「その男はドラクーン人のカイエンって奴さ、俺達の友達だ、早くここに連れて来てやってくれ」

 「ド、ドラクーン人のカイエン殿ですか、わ、分かりました、では早速お城にお連れするよう手配いたします」

 そう言って侍従は、立ち去って行った。レンとマルスはラーズにカイエンの事を話して聞かせた。

 「へへぇ面白そうな男だな、早く会ってみたいな」

 と、話しを聞いてラーズも気に入った様子だった。レンとマルスは、カイエンが来る事を部屋でくつろいでいたイザヤ、ナミ、ヨーゼフとシーナに伝えた。マルスやレンの手紙で知っているイザヤとナミは喜んだ。

 「ほほう、彼が来るのか楽しみだな」

 「ええ、早く会いたいわ」

 「誰か来るの?」

 と、コノハとアルス皇太子が部屋に来たのでカイエンの事を話すと二人も喜んでくれた。侍従が部屋に来て今日は、日も暮れて来たのでカイエンをワルカサで一泊させてから明日の昼過ぎには、城に到着するよう手配したと言いに来た。それで結構だとマルスが言った。

 そして、翌日の昼を過ぎた頃、侍従に付き添われカイエンが謁見の間に現れた。

 

 

  

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