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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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再会

 ジャンパール皇国の港に到着した船から馬を引き連れレン達は降り立った。この港は、最初にレンとマルスがサイファに行くために来た港だった。

 「懐かしいなレン、あれからもう一年以上経ったが何も変わってないな」

 「ホントだね、ほらあのサイファ行きの船、相変わらずボロボロだ、あはは」

 と、レンとマルスは、あのボロ船がサイファ行きの船だと気付かずに何度も目の前を通り過ぎた事を思い出し笑った。魔導車を使えばこの日の夕方には、ジャンパールの都に着いたが馬を連れているためせっかくだから馬で都まで向かう事にした。

 「まぁテランジンとシドゥが来ないと何も出来ねぇんだし、ゆっくり帰ろうぜ」

 と、マルスが母国の景色を眺めながら言った。ヨーゼフも景色を眺めながら言った。

 「しかし、こうして街並みを見ているとどことなくヘブンリーに似てござるなぁトランサーにも似ておりましたが」

 「そうだな、やっぱり俺達の血にエンジェリア人の血が混ざってるって事か」

 と、マルスは、先祖でありジャンパール皇国を建国したタケルヤの事を思った。ヘブンリーより遠く離れたこの地に国を興し町を作った時、故郷を思い出し自然と似せて作ったのだろう。レン達は、一列に並び馬で街道を行く。途中に通った町でマルスに気付いた者が居て大騒ぎになった。

 「あああっ?!マルス皇子だ!おおーい、マルス皇子が帰って来られたぞぉー!」

 と、男は叫びながら町中を走り回った。人がぞろぞろと集まり始めレン達の行く手を塞いでしまった。

 「殿下お帰りなさいませ、どちらに行ってらしたのですか?」

 「おお、あの人がサモン公爵か」

 「お連れの方々は、ご遊学中にお知り合いになったのですか?」

 と、皆がそれぞれにレン達に質問などを始めた。レンとマルスは、自国に帰れば二人とも名の知られた存在である事を忘れていた。

 「ああ、皆すまんが我々は今疲れている、そして早く都に帰らねばならん、通してくれ」

 と、マルスが申し訳なさそうに町の者達に言った。お疲れならばいっそこの町で一泊されてはどうかと言う者が居て、レン達は断ったが、半ば強引に宿に連れて行かれた。連れて行かれた宿でもやはり人が集まり遊学中の話しをする事になった。マルスは、ヨーゼフ達の事はあまり話そうとはせず主に自分がイビルニア人を退治した事を話した。皆、固唾を飲んで聞いていた。

 「殿下、かなり前から都でもイビルニア人が出没し人をさらっているそうです」

 と、町の者が都に言った時に聞いた話しをレン達に話した。

 「何?本当か?俺達が居ねぇ間に物騒になったな都も」

 「はい、殿下、海軍や陸軍の目を盗んで一体どうやって我が国に侵入してくるのか…」

 マルスの顔が深刻なった。そんな時、急に役人が部屋を訪ねて来た。

 「殿下達がここにおられるとか…ああマルス殿下」

 と、役人が近づいて来た。役人は、マルスに深々と頭を下げ早急にジャンパール城に帰るようにと伝えた。マルスが驚いて言った。

 「えっ?もう皇帝おやじ達は俺達が帰って来た事をしっているのか?」

 「はい、数ヵ月ほど前から魔導話と言う物が全国に広がりジャンパール国内ならどこに居ても会話が可能でございまして、私が先ほどお城に連絡させていただきました」

 と、役人はにこやかに答えた。テランジンの船に装備されていた魔導無線は、範囲が狭かったが魔導話は、ジャンパール各地に設置された基地から各施設や家庭の魔導話に線で繋がれているため会話が可能だと言う。そんな物が出来たのかと皆は感心したが、マルスは、馬が居るから直ぐには帰れないと答えた。

 「それに疲れてるんだ、今日はここに泊めてもらうよ、その魔導話ってやつで話しをさせてくれよ」

 と、マルスは言って役人と部屋を出て行った。部屋に残ったレン達が町の者達から質問攻めを受けた。役人と役所に行ったマルスは早速、魔導話を使い侍従達が詰めている部屋の魔導話に繋いだ。

 「あーもしもし、俺だ、マ、マルスだ、父上と話しがしたい繋いでくれ」

 と、マルスが本当に会話が出来るのかと思いながら受話器にしゃべった。すると返事が返って来てざわざわと音が聞こえてただ今お繋ぎしますと返って来た。マルスはホントに繋がってるんだと思い思わず役人の顔を見た。役人はにっこりした。数分後、聞きなれた声が聞こえた。

 「マルスか?今ワルカサに居ると聞いたが、直ぐに帰って来れんのか?」

 と、父イザヤ皇帝の声を聞いて思わず泣きそうになったマルスだったがグッと堪えしゃべった。

 「ただいま父上、皆疲れてるんだ、今日はワルカサで一泊して明日の夕方頃に帰るようにするよ」

 「ふむ、そうか分かった、して皆無事か?レンやヨーゼフ達と一緒なんだな?」

 「うん、居るぜ、あっ!シドゥ・モリアとテランジン・コーシュがまだメタルニアに居るんだ、来月の半ば頃にジャンパールに来るはずだよ」

 「そうか、分かった、早く元気な姿を見せておくれ」

 と、親子の会話が続きマルスは適当な所で会話を打ち切り魔導話を切った。明日、ワルカサの役人が用意した魔導車で都まで帰る事にした。馬は後ほど都に送ってもらう事にして、マルスは宿に戻って行った。

 「明日は魔導車で帰るぞ、馬は後で都に送ってもらう事にした」

 と、マルスが皆に伝え疲れているからもう寝ると言い町の者達を帰した。

 「田舎者め、こっちは疲れてるんだ、少しは空気読めよ」

 と、マルスが疲れ顔で言った。

 「まぁそう言うなよ、それだけジャンパール皇室が国民に愛されている証拠じゃないか」

 と、ラーズが同じ一国の王子として言った。マルスがそれもそうだなと言い横になると眠ってしまった。本当に疲れていた様だった。シーナがちょっかいを出そうとしたがヨーゼフが止め皆、静かに寝る事にした。

 翌日、朝早くからまた町の者達が集まり、また質問攻めを受けた。そんな中やっとレン達を都まで送る魔導車が来てレン達は慌てて乗り込んだ。シーナは、残された馬達に何か言ってから乗り込んだ。

 「何て言って来たの?」

 と、レンが気になってシーナに聞いた。

 「ちゃんと、ぼくたちとまた会えるから安心してって言って来た」

 それを聞いたマルスが役人に馬をちゃんと都まで届ける様にと釘を刺した。

 「では出発します」

 と、魔導車の運転手が言い都に向けて走り出した。その頃、ジャンパール城内でハープスター伯爵親子がはしゃいでいた。

 「やっと殿下がお帰りになられるよカレン」

 「はい、お父様こんなに嬉しい事はありません」

 と、はしゃぐ親子を見てイザヤ皇帝とナミ皇后がクスクス笑っていた。

 「まぁそんなに嬉しいの?もちろん私達も嬉しいけど、ねぇおかみ

 「そうだねぇ、マルスとレンがどんなに成長しているか楽しみだよ」

 「お兄ちゃん達何時頃帰って来るの?」

 と、コノハがイザヤに聞いた。イザヤが昨日マルスと話した事をコノハに言った。

 「じゃあ夕方頃にはここに居るのね、あっエレナさんに伝えてあげなきゃ、私行って来るね」

 と、言ってコノハは、護衛官二人を引き連れ女学校のエレナが居る寮に向かった。そして、エレナが住む部屋に行き今日の夕方にはレンに会える事を伝えた。

 「ええっ?!レンが帰って来てるの?ホントに?」

 と、珍しく興奮してエレナが言った。コノハがうんと答えるとエレナは、コノハを抱き締めた。部屋に一緒に居た友人のユリヤ・アンドリエがクスクス笑っていた。

 「だから今日はお姉ちゃんもユリヤさんもお城に来て、皆でレン達の帰国をお祝いしましょ」

 「賛成ーっ!」

 コノハは、しばらく部屋で話しをして直ぐに城に帰って行った。

 「良かったねエレナ、やっとレンさんに会えるじゃない」

 と、エレナの事をユリヤは、自分の事の様に喜んだ。

 「ありがとうユリヤ、あっそうだ、夕方までまだ時間があるから服でも買いに行きましょ」

 「そうね私までお城に招待されたし行きましょう」

 と、二人は、早速買い物に出かけた。城下で昼食を取り散々店を巡って夕方頃に二人とも城に上がっても恥ずかしくない服を買えた。

 「ああやっとレンに会える早く会いたい」

 「もう、お惚気のろけはよそでやってよ」

 と、二人が話す傍を一台の魔導車が通り過ぎた。レン達を乗せた魔導車であった。魔導車の中で皆が居眠りをしている中マルスだけが都に入ってから目を覚まし運転手と会話をしていた。そのマルスがエレナに気付いた。

 「あっ!エレナだ!おい、レン起きろエレナが居たぞ」

 「…え、何もう着いたのかい?」

 「馬鹿、起きろエレナだよ、運転手、もう少し先で一人降りるぞ」

 と、マルスが言った。

 「レン、エレナが居た多分この道を来るだろう、お前ここで降りてエレナに会え、城には二人で来いよ、分かったな、さぁ降りろ」

 と、マルスは半ば強引にレンを降ろした。降ろされたレンは、ぼんやりと来た坂道を見ていた。すると二人連れの女の子がこちらに向かって坂道を上がって来るのが見えた。レンは、エレナだと直ぐに気付いたが、エレナは夕陽の眩しさで目を細め坂の上に誰が居るのか分からない。坂道をゆっくりと上がって行くとそこにレンが立っていた。エレナは、買った服が入った袋を落とし固まった。城で会うと思っていたレンが目の前に居るではないか。一緒に居たユリヤは、直ぐに目の前の綺麗な顔をした男がレンだと気付きエレナに言った。

 「わ、私先に帰ってるね、それじゃあ」

 と、ユリヤはレンに一礼して寮に戻って行った。

 「た、ただいまエレナ」

 と、レンが照れ臭そうに言った。エレナの目から涙が溢れ出てレンに抱き付いた。しばらく二人は抱き締め合いキスをした。道行く者の目など気にもしなかった。エレナは、本当にレンなのか確かめる様にレンの顔を撫でたり髪に指を通したりした。

 「夢じゃないのね、本当に帰って来たのねレン」

 「うん、帰ったよ夢じゃないよ」

 そう言うともう一度キスをした。そして、エレナの寮に向かって歩き始めた。

 「私、今朝コノハさんからレン達が帰って来るって聞いたの、お城に呼ばれてて私てっきりお城で会えるとばかり思っていたから驚いちゃった」

 「僕もそのつもりだったんだけど、さっき魔導車の中でマルスが君に気付いてね、僕は寝てたから気付かなかったんだけど」

 二人は、手を繋ぎながら歩いた。そして、エレナの寮に着きレンは、エレナが着替えを済ませて出て来るのを待った。エレナは、ユリヤを連れて出て来た。

 「ユリヤ・アンドリエさんよ、私のお友達なの」

 と、エレナは、レンに紹介した。レンも自己紹介を済ませ三人で城に向かった。ユリヤは、エレナの話しで聞く以上にレンが美しい容姿をしている事に驚いていた。

 その頃、城内の広間では、マルスが凍り付いていた。もうランドールに帰ったと思い込んでいたハープスター伯爵親子が城に居たからだ。しかも家族の様に打ち解けている。ラーズとシーナは、ニヤニヤ笑ってマルスを見ていた。

 「ヨーゼフ、今まで息子達の面倒を良く見てくれた本当にありがとう」

 と、イザヤがヨーゼフの手を取り礼を言った。

 「いやいや、陛下、マルス殿下が居られたからこそ我々は無事に旅を進める事が出来ました、マルス殿下のご活躍は語りきれませぬ」 

 と、ヨーゼフが大げさに言うのをマルスは尻がこそばゆい思いで聞いていた。そんな中カレンが愛しい人を見つめる目でマルスをじっと見ていた。

 「マルス、カレンが遥々ランドールから来てあなたの帰りを待っていたのよ、何か言ってお上げなさい」

 と、ナミ皇后が言った。マルスは、らしくない様子で何かぼそぼそと言った。それを見たラーズがフフッと笑い言った。

 「なっ!マルス俺が言った通りだろ」

 「う、うるせぇ」

 と、マルスは、顔を赤くしてぼそっと言った。ナミは、カレンにマルスの隣りに座るよう促した。カレンが伏し目がちにマルスの隣りに座った。その時、レン達が侍従に連れられマルス達の居る広間にやって来た。レンは、直ぐにイザヤとナミの前に進み出て帰国の報告をした。

 「お帰りレン、よくぞフウガの言いつけ通りヨーゼフや他の者を探し出した、後々の事は明日話すとして今日は大いに飲んで食べて疲れを癒しなさい」

 「ありがとうございます陛下」

 「もう伯父上と呼んで良いんだぞ」

 と、イザヤが言った時、ハープスター伯爵親子とユリヤがどういう事だろうと不思議な顔をした。

 「さぁ皆食べましょう」

 と、ナミの声でレン達の帰国歓迎会が始まった。相変わらず食欲でシーナは、目の前の料理を美味い美味いと片っ端から食べまくった。その様子を見てイザヤとナミが驚いていた。カレンは、終始マルスの傍から離れようとはせずマルスが酒を飲み干すと給仕の代わりに酒を注いでいた。コノハは、レンとエレナの間に座り込み二人きりになるのはまだ早いと言って邪魔をしていた。ラーズは、侍女を口説いていた。

 「ジャンパールの女性はホント神秘的だね、ランドールには居ないよ」

 「まぁ殿下ったらお口がお上手ね」

 と、軽くあしらわれていた。ハープスター伯爵は、満面の笑みを浮かべてマルスとカレンを見ていた。ヨーゼフは、イザヤとナミと何か話し込んでいた。そして、シーナがもうお腹いっぱいと言った頃には、夜も更けていたのでエレナとユリヤは、城内の客室に泊まる事になった。

 「ユリヤさん私の部屋に来て」

 と、コノハがユリヤとシーナを自分の部屋に連れて行きエレナをレンと二人きりにしてやった。

 「おいおい、新しい命が誕生するんじゃないか」

 と、酔っ払ったラーズがレンとエレナに言うと二人は、顔を真っ赤にした。ラーズは、マルスの部屋で寝る事になった。カレンは、以前から与えられている部屋に親子で帰って行き、ヨーゼフは、皇帝夫妻の部屋に行った。そして、客室に入ったレンとエレナは、見つめ合った。

 「やっと二人きりになれた、エレナ会いたかった愛してるよ」

 「レン…」

 と、二人きりになったレンとエレナは、抱き締め合いキスをした。それ以上の事は何もしなかった。ただ、ベッドの中でレンは、今までの旅の事をエレナに話していた。エレナは、レンの右腕に線が一本入っている事に気付きそっと撫でた。ランドールでグライヤーに斬り落とされた右腕をシーナに繋いでもらった時に付いた線だった。エレナはその部分にそっと唇を押し当てた。もう危ない事はしないでと言いたいが言えない。

 「エレナ、僕はジャンパールで立太子式をやる事になる、そしてレン・サモンからレオニール・ティアックとしてトランサー王国を取り戻しに行く、また離れ離れになるけど待っていてくれるかい?」

 と、レンは、エレナの頭を撫でながら言った。エレナは、レンの胸に抱かれ、うんと返事をした。二人は、いつの間にか眠ってしまい夜が明けた。

 

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