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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
57/206

メタルニア

 ランドールの港からテランジンの三隻の海賊船でメタルニアに向かったレン達は、丁度ランドールとメタルニアの真ん中辺りの海域を航行していた。

 「ねぇテランジン、あとどのくらいで着きそうなの?」

 と、操舵室から望遠鏡を覗きながらレンが聞いた。

 「はい若、あと三日もあればメタルニアに到着出来ます」

 と、テランジンは答えた。レンとテランジンが操舵室で話しをしていると甲板で寝そべっていたシーナが急に起き上がり舳先に行きじっと海面を見ているのが見えた。何があるんだろうと気になったレンは、テランジンと一緒に見に行った。

 「シーナ何か見えるのかい?」

 と、レンは聞きながら海面を見た。大きな影が見えた。

 「何だブラッキーじゃないか、若、今下に居る奴は我々がブラッキーと呼んでいる海獣です、こうしてたまに現れてはまたどこかに行ってしまうのです」

 「へぇ~」

 と、レンはじっと海面を見つめた。黒っぽい身体をしている。船の速度に合わせて泳いでいるようだった。

 「この子、気を付けてって言ってるよ」

 「えっ?」

 シーナは、ブラッキーと会話が出来るようだった。

 「気を付けろってどう言う事かね?」

 と、テランジンがシーナに聞いた。シーナはじっと海面を見つめながら言った。

 「この先に真っ黒い船が一杯いるからって」

 「真っ黒い船?…イビルニアの軍艦か」

 そう言うとテランジンは操舵室に走って行った。シーナはまだ何かブラッキーと会話をしている。話し終わったのかブラッキーは、海の底へと消えた。レンとシーナも操舵室に行った。テランジンが魔導無線で他の二隻の海賊船に指示を出している。

 「この先にイビルニアの軍艦がいるそうだ、何時でも砲撃できる状態にしておけ」

 「分かりました、お頭」

 テランジンは、指示を出し終わるとレンとシーナに気付き振り向いた。

 「若、海の事は我々に任せて部屋にお戻り下さい」

 と、テランジンは、レンに言った。レンは、シーナを連れて部屋に戻った。部屋には、何も知らないマルス達がくつろいでいた。

 「大変だよ、この先にイビルニアの軍艦がいるそうなんだ」

 「何?イビルニアの?」

 と、レンがマルス達に言うとテランジンの操舵室に行こうとしたので止めた。

 「海の事は我々に任せろって言ってたよ、テランジンのあにぃが、それに大丈夫だよきっと、あの子が何とかしてくれるから」

 と、シーナが言った。レンは、あの子がブラッキーの事だと分かりマルス達に説明した。そんな大きな海獣が居るのかとマルス達は興味を持った。しばらくすると、船が大砲を撃ち始めた。一発撃つごとに部屋が振動する。どうしても外の状況が気になったレン達は、テランジンが居る操舵室に向かった。

 「どうじゃ様子は?」

 と、ヨーゼフが聞いた。

 「はい、閣下先ほど一隻沈めました、まだ四隻残ってますので油断は…」

 と、テランジンが言いかけた時、船が大きく揺れた。

 「うわっ!?何だ?」

 「あはは、ブラッキーだよ」

 と、シーナが笑いながら言った。海獣達が海面から飛び上がりイビルニアの軍艦に向け大きな身体を海面に打ち付けて波を起こした。イビルニアの軍艦を転覆させようとしているようだった。

 「おおっすげぇな!あはは良いぞもっとやれっ!」

 と、マルスとラーズが喜んで言った。海獣達が波を起こしている間、テランジンは砲撃を止めさせ見守る事にした。イビルニアの軍艦は大砲を撃とうとしている様だったが波に揺られて撃てず、とうとう一隻が転覆した。残る三隻も転覆寸前だった。

 「こ、こんな事は初めてだな、ルーク」

 と、テランジンが子分頭とも言える側近のルーク・メタールに言った。

 「はい、兄貴ブラッキーが俺達を助けてくれるなんて考えもしなかったぜ」

 と、ルークは言った。以前にもブラッキーを見た後にイビルニアの軍艦と戦った事は何度もあったが、今回の様に加勢してくれたのは初めてだった。そうこう言ってるうちに残る三隻も転覆した。軍艦から出て来たイビルニア人達を海獣が食っていた。そして、ブラッキー以外の海獣達は、海底へと姿を消していった。レン達は、甲板に出てブラッキーを見た。シーナがまた何やらブラッキーと会話をしている。

 「何て言ってるの?」

 「ブラッキー達あのイビルニア人が大嫌いなんだって、あいつらが海を渡るたびに物凄く嫌な感じがするって」

 「へぇ人も海獣も同じなんだ」

 と、この世界の生きる者は皆イビルニア人に対して嫌悪感を感じる様だった。

 「シーナ、ブラッキーに礼を言ってくれ」

 テランジンがシーナに言うとにっこり笑ってブラッキーと会話を始めた。

 「お安い御用だって」

 と、シーナは、ブラッキーが言った事を皆に伝えた。そして、ブラッキーが海底へと消えて行った。その後、イビルニアの軍艦に遭遇する事無くレン達は、メタルニアを目指した。途中何度か嵐に見舞われたが三隻とも無事にメタルニアの港に到着した。

 レンは、マルスとヨーゼフを連れてジャンパール大使館に行った。シーナ、ラーズ、シドゥそしてテランジンは、海賊船の強化をするため、ある兄弟の経営する工房に向かった。

 「ここは面白いところだな、海賊共を見ても誰も騒がない」

 と、マルスが大使館に向かう道すがらレンとヨーゼフに言った。

 「そう言えばそうだね、何でだろ?」

 「この国は移民の国でござるゆえイビルニア人以外、誰が来ても驚かんのでしょう」

 と、ヨーゼフが答えた。メタルニアは、移民が興した国だ。ドラクーン人とエンジェリア人以外の各国の人々が集まり様々な文化に触れられた。市場の横を通りがかった時、店先に吊りかけられた足が六本もある動物が売られているのが見えた。色々な物を見ながら歩いていると後ろから声が掛かった。

 「ヨーゼフ様!」

 レン達が後ろを振り向くと男が一人走り寄って来た。男は、ヨーゼフにすがり付くように言った。

 「ヨーゼフ様よくぞご無事で」

 「そなたは…もしやテランジンに助けられたトランサー人か?」

 「はい、そうです」

 と、男は行方知れずとされた自国の英雄と知られるヨーゼフを見て思わず声を掛けたのだった。奴隷としてイビルニアに連れて行かれる所をテランジン達海賊に助けられたと言う。男は、ふとレンに気付いた。そして、声を震わせ言った。

 「ももも、もしやティアック家の…レ、レオニール様ですか?」

 「そうじゃ、いかにもレオニール・ティアック様である」

 「おおおおおぉぉぉ…」

 男は、泣き出した。ザマロの謀反で死んだと言われていた王子レオニールが目の前に居る。ヨーゼフは男の肩に手をやり言った。

 「レオニール様が生きている事は今はまだ他言無用じゃぞ、わしらはジャンパールでレオニール様の立太子式を行う、それまで絶対にしゃべってはならぬぞ、必ずザマロを倒しお前さん達がトランサーに帰れるように致すゆえな、さぁもう行け」

 「はい、はい、よう分かりました、レオニール様が国王となられる日をお待ちしております」

 そう言って男は町に消えて行った。それからしばらく歩いてジャンパール大使館に着いた。職員達はマルスが来た事に驚いたが、そんな事はお構いなしにリューガ・サモンの墓はどこにあるか尋ねた。墓は、直ぐ近くの墓地にあると言われ三人は、花を買って墓地に向かった。

 「ここだ、酷いな誰も参ってないのかな」

 と、レンは、墓を見て言った。リューガ・サモンここに眠ると書いてあったが、墓石は苔生こけむし周りは雑草だらけであった。墓地の管理人に清掃道具を借りて墓を掃除した。綺麗になった墓に花を飾った。

 「ずっと僕はここに眠るリューガさんがお父さんだと聞かされてたから、一度は来たかったんだ」

 と、レンは墓に手を合わせて言った。マルスとヨーゼフも手を合わせた。

 「なぁレン、墓をジャンパールに移すか?その方がフウガも喜ぶんじゃないか」

 と、マルスが言うとレンが驚いて言った。

 「出来るのそんな事?」

 「ああ、大使館の職員に墓をジャンパールに移すよう言い渡すよ」 

 レン達は、ジャンパール大使館に戻るとマルスが職員にリューガ・サモンの墓をジャンパールに移すよう手続きを取れと命じた。ジャンパールのどこに移すのか聞かれたので、あの時、イビルニア人に殺された女中のセンとリク用人のバズが眠る墓地に送って欲しいと言った。本当は、フウガの墓に入れてやりたかったが、フウガは、ジャンパールの軍神、国の守り神として祀られているので出来なかった。レンは、素直に礼を言った。

 「ありがとう、マルス」

 「ジャンパール人はジャンパールの土の上が一番良いんだ」

 と、ちょっと照れ臭そうにマルスが言った。それから三人は、港に戻った。港に着くとルークがレン達を待っていた。

 「殿様、お待ちしていました、さぁ行きましょう」

 と、ルークはレン達をテランジン達が居る工房に案内した。デ・ムーロ工房と看板が見えた。扉を開け中に入ると職人風の男二人とテランジン達が話しをしている隣でシーナが妙な機械をいじって遊んでいた。

 「あっ若、紹介します、こいつらはミランとクリフのデ・ムーロ兄弟です」

 「こんにちは」

 と、レンは兄弟に挨拶した。デ・ムーロ兄弟は、レンに駆け寄り言った。

 「あんた、テランジンの殿様なんだってね、あの野郎に言ってくれよ、海賊船を軍艦にするなんて無茶だってね」

 「何も軍艦にしろとは言ってない軍艦に近付けてくれって頼んでるんだ、お前達なら出来るだろう」

 と、テランジンが言った。この兄弟とテランジンの繋がりは、数年前、兄弟がランドールに行く船に乗っていた時、イビルニア人の軍艦に襲われ連れ去られようとした時に始まる。その時テランジン達海賊に助けられ兄弟は、お礼にとテランジンの義足を作ってあげた。すっかり仲良くなったテランジンは、この兄弟の家の事を知り大変驚いた。何とこの世に魔導機を発明したデ・ムーロ家の者だったからだ。兄弟の祖父フォード・デ・ムーロが魔導石を発見した事から始まった。不思議な力を持つ石をどうにか利用出来ないかと考え魔導機を発明し世に広めた。軍艦や一般の船、魔導車に魔導力は利用されている。

 「ううむ、仕方がねぇなぁやるだけはやってみるが、どうなるか分かんねぇぜ」

 と、兄ミランが言いうと弟のクリフは、やれやれといった表情を見せ言った。

 「船をドックに回しな」

 テランジンとルークは、それ来たと言わんばかりに工房から出て行き船をデ・ムーロ家が所有するドックに着けに行った。工房に残ったレン達は、珍しい物がある工房を見学した。

 「これは何ですか?」

 と、レンが鳥の様な形をした模型を指差し言った。ミランは、得意げな顔をして答えた。

 「ふふふ、これは俺達人が飛ぶ事が出来る様になる物さ」

 「俺達は、飛行魔導機って呼んでるんだ」

 と、クリフも答えた。

 「これで空を飛べるようになるの?」

 と、レンは興味津々で聞いた。マルス達は、ホントかよといった顔をした。

 「まぁ実際はこの模型よりはるかにデカくなるんだがね、まぁ見ててくれ必ず俺達が空を飛べるようにしてやるさ」

 と、兄弟は、自信たっぷりに答えた。テランジンの子分が船をドックに着けたと言いに来た。

 「よし、それじゃあ、あの汚ねぇ船を見てやるか」

 と、兄弟は言いドックに向かった。レン達もその後に続いた。

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