表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
52/206

戦闘の後で

 イビルニア人達と睨み合っていたアンドロスは、剣を一人のイビルニア人に向け言った。

 「貴様は上位者だな、どうやって結界を破ったのだ」

 「知りたいか?簡単な事よ、こやつらの目を使えばな、ハハハハハ」

 と、上位のイビルニア人が言った。こやつらと呼ばれた数人がフードを取った。アンドロスは驚愕した。ドラクーン人だった。彼らは、コルベ率いる古龍党の精鋭達だった。イビルニア人には見えない結界を張るための石は、ドラクーン人には見える。結界石を見つけ壊したのだ。白い獅子のヴェルヘルムが唸り声を上げている。上位のイビルニア人がやれやれといった顔をして言った。

 「まぁ待て、我々は話し合いに来たのだ、その獅子を大人しくさせてもらおうか」

 「話し合い?イビルニア人と話す事など何もない、大人しく半島へ帰るかこの場で死ぬか」

 と、アンドロスは平然として言った。

 「なぜ人間に肩入れする、お前達も本来は人間嫌いのはず、協力して人間共を根絶やしにしようではないか」

 と、上位のイビルニア人が大げさな身振りで言った。アンドロスは、首を横に振り言った。

 「確かに我々も人間は嫌いだ、しかし分をわきまえている者いる人間全てが悪い存在ではない」

 「ふん、フウガ・サモンやヨーゼフ・ロイヤーの事か?しかし人間はいつ裏切るか分からんぞ」

 「イビルニア人のお前が言うな!」

 と、アンドロスは言って上位のイビルニア人に斬りかかった。それが合図の様に他のエンジェリア人とイビルニア人、古龍党のドラクーン人と戦闘が始まった。ヴェルヘルムは、あっという間に二人のイビルニア人を片付け古龍党のドラクーン人に襲い掛かった。古龍党の精鋭達は、すぐさま龍の姿に変身して応戦した。爆炎を吐きヴェルヘルムを寄せ付けない。アンドロスは、爆炎に苦しむヴェルヘルムを見て大きな翼を羽ばたかせ爆炎をかき消した。爆炎が消えた瞬間、マルス達にやった様に光を放ち精鋭達を吹っ飛ばした。マルス達が戦いの場に到着した頃には、敵は上位のイビルニア人一人と古龍党の精鋭二人だけになっていた。

 「大丈夫か?」

 と、マルスがアンドロスに声を掛けた。アンドロスは、イビルニア人達を見据えて答えた。

 「ああ、残るはあの三人だけだ」

 「ああぁぁぁ?!古龍党のおじさん」

 と、シーナが言った。おじさんと呼ばれた古龍党の精鋭の一人が驚いていた。

 「何?お前シーナじゃないか尻尾を切ったのか?」

 「切ったよ、ぼくには必要ないからね」

 「馬鹿な…しかし、尻尾を切っても力は変わらんはず、良い所で見つかった、お前をイビルニアへ連れて行けばコルベ様がお喜びになる」

 精鋭達は、シーナをさらう事に決めた。精鋭達は、シーナに襲い掛かった。

 「ドラクーン人を斬るのは気が引けるがシーナを連れて行くなら容赦はせんぞ!」

 と、マルス、ヨーゼフ、ラーズがシーナの前に立ちはだかった。シドゥは、シーナをマルス達に任せ上位のイビルニア人と対峙した。

 「シドゥ、お前…」

 と、ヨーゼフが精鋭達を相手に横目でシドゥに言った。

 「閣下、私も十年以上も何もせずにヘブンリーに居た訳ではありません、イビルニア人は私が引き受けました」

 と、シドゥは、剣を抜き構え気を練り始めた。イビルニア人は、ニヤニヤ笑っている。上位のイビルニア人ともなれば少しは落ち着きを見せるはずだが、このイビルニア人は上位に成り立てなのだろう攻撃を仕掛けて来ないシドゥにおどけて見せたり馬鹿にする様な態度を見せた。

 「愚か者め」

 そう言うとシドゥは、真空斬を放った。ボボボッ!っと凄まじい勢いの真空波がイビルニア人を襲う。紙一重でイビルニア人は、真空斬を避けたが避け切れなかった真空波が、イビルニア人の肩を裂いた。

 「ほほほう、人間の癖になかなかやるな、しかしこの程度でオレに勝てると思うなよぉ」

 と、裂けた肩など全く気にしていない様子のイビルニア人がシドゥに襲い掛かった。奇声を上げながらシドゥに攻撃するイビルニア人、シドゥは攻撃を余裕で受け流す。

 「上位のイビルニア人だからもっと骨のある奴と思ったが大した事ないな」

 「何を!貴様っオレを馬鹿にするな!キィィィィィ」

 と、シドゥに挑発されたイビルニア人が怒り狂って襲い掛かる。

 「お前の様な者にこの技を使うのは勿体ない気もするが、今日は閣下がおられる有り難く思え」

 シドゥは、凄まじい気合と共に剣をイビルニア人に振るった。

 「雷光斬!!」

 ドーンと、イビルニア人の頭上に雷が落ちた。イビルニア人の身体は真っ黒焦げになり頭は潰れて死んだ。その様子を見てコルベの精鋭達二人は、逃げようとした。

 「奴がやられた、シーナは諦めよう行くぞ」

 と、二人が飛び立とうとした時、マルスとヨーゼフが真空斬で精鋭二人の翼を切り裂いた。バサバサと地面に落ち素早くエンジェリア人達が取り押さえた。

 「くっ!こ、殺せ、さぁ早く殺すがいい」

 精鋭二人は、覚悟を決めたのか自分達を殺せと言った。そこに龍の姿から元の姿に戻ったシーナが歩み寄り言った。

 「おじさんたち、今ならまだ間に合うよ、コルベ爺とは縁を切ってドラクーンに帰りなよ」

 「そうじゃ、龍神殿の元に帰れ、お前さん達を斬りとうはない」

 ヨーゼフは、頼むように言った。マルス達は、龍の姿から元に戻った精鋭二人をヘブンリーの宮殿に連れて行った。アストレアは、じっと精鋭二人を見つめて言った。

 「ドラクーンへ帰りなさい、エルドラはきっとあなた達を許すでしょう、イビルニア人はあなた達を利用してるだけよ、コルベは洗脳されてるわ」

 「何を言うか、コルベ様は洗脳などされておらん、汚らわしい人間共をこの世から消すためにイビルニアと手を組まれたのだ」

 と、精鋭の一人がマルス達を見て言った。シーナが悲しい顔をして言った。

 「おじさん、それは間違ってるよ、殿様や兄ぃ、じいちゃんみたいな人間も居るんだよ、龍神様が言ってたよ、もう人間を拒む時代じゃないって…共に繁栄するんだって」

 「シーナよ、お前は龍神や人間に騙されているんだ、尻尾を切ってドラクーン人の誇りを捨てた連中など見捨てろコルベ様に従うんだ」

 「嫌だね、ぼくは人間が好きだ、べっ~だ!」

 と、シーナは、舌を出してヨーゼフの後ろに隠れた。マルスは、精鋭二人を見て言った。

 「レン、不死鳥の剣でこいつらの尻尾切っちまえ」

 「そうだね、そうした方がこの人達のためだ」

 レンは、そう言うと不死鳥の剣を取り出し鞘から抜いた。止めろっと、精鋭達は暴れたがアンドロスや他のエンジェリア人達に押さえ付けられて身動きが取れない。レンは、尻尾に不死鳥の剣をそっと当て一気に切った。

 「ぐわぁぁ、な、何て事をする…あああ、しし尻尾がぁ…」

 尻尾を切られた精鋭は、うな垂れた。もう一人の精鋭の尻尾も切った。

 「駄目だ…もうコルベ様の所へは帰れない…くそ…」

 「これで良かったのよ、さぁエルドラの元へ帰りなさい」

 と、アストレアは、厳しく言った。精鋭二人は、諦めたのかフラフラと立ち上がりエンジェリア人に付き添われて宮殿から出て行った。アストレアは、シーナに優しく言った。

 「彼らもドラクーンに帰ればきっと考えが変わるはずよ」

 「うん、龍神様が変えてくれるはず」

 シーナはそう言うと何だか訳の分からない涙が込み上げてヨーゼフに抱き付いて泣いた。シーナが泣き止み急に静かになった宮殿でマルスは思い出した様に言った。

 「ところでシドゥ、あの技は凄かったな、雷光斬って言うのか俺にも出来る様になるかな?」

 「はい殿下、修行次第で必ずや出来る様になります」

 「どんな技なの?」

 と、レンは見ていなかったので気になって仕方がない。シドゥは、テランジンと二人でヘブンリーに居てヨーゼフがレンを連れて来るのを待っていた。ただ待っているだけでは意味が無いと二人は、エンジェリア人の持つ不思議な力を自分達も身に付けたいとアストレアに願い出た。来るべきトランサー奪還、イビルニア国との戦争に備えて自分達に力を与えて欲しいと言った。当然、人間がエンジェリア人の力を持つ事は出来ないが、訓練次第で近づく事は出来ると言われアンドロスの指導の下、二人は修行に明け暮れた。アンドロスは、レンとマルスを見て言った。

 「真空斬が出来るのなら直ぐに出来る様になるさ」

 「ホントに?」

 と、レンとマルスは目を輝かせた。ラーズがしょんぼりしてぼそりと呟いた。

 「真空斬も出来ない俺には無理じゃないか」

 その様子を見たヨーゼフとシドゥが励ました。そして、翌日からレン達は、新たな力を付けるためアンドロスの指導の下、修行を始めた。一週間も経てばアンドロスが言ったようにレンとマルスとヨーゼフは雷光斬を放てるようになったが、ラーズだけが出来なかった。真空斬も出来なかった。

 「何で俺だけ出来ないんだ、ちくしょう」

 と、愚痴をこぼした。レン達も不思議に思った。ラーズも剣の実力が無い訳ではない。アンドロスが意味深な顔をしていた。ラーズには申し訳ないが、テランジンに会いに行かなければならない事もあり修行を打ち切る事にした。

 アストレアにイビルニアと戦争になったら協力してもらう事を約束してもらい、テランジンが居ると言うデスプル島に向かう日が近付いて来たある日、皆で話しをしていた時レンは大事な事を思い出しアストレアに聞いた。

 「そうだ女王様、先祖返りの事ですがマルスが居る時に話すと言ってましたよね、どう言う事なんですか?」

 と、ちょうどマルスが傍で叢雲むらくもの手入れをしていた。アストレアは、遠い目をして思い出に浸っている様な顔をした。アンドロスは、レンとマルスを見つめていた。

 「レオニールが先祖返りを起こしたのはあなたの先祖にエンジェリア人が居るからなの」

 「えっ?」

 皆が驚いた。アストレアは、椅子から立ち上がりレンに近付きレンの髪を撫で顔を撫でた。

 「本当によく似ている、レオニール特にあなたは私達の血を多く受け継いだようね」

 「に、似てるって誰に似てるんですか?」

 「私の妹のミストレアにね」

 妹と聞いてレン達は、不思議に思った。目の前に居るアストレアの何歳なんだろうと。

 「レンの先祖があんたの妹だったら、あんたいったいいくつなんだよ?」

 と、マルスが思い切って聞いてみた。アストレアはふふっと笑い答えた。

 「三千年以上は生きてるわ」

 「三千年?」

 ドラクーン人の寿命も永いがエンジェリア人の寿命も永い、特にアストレアやアンドロスらヘブンリーの指導者的な存在になると何か特別な力が働くようだった。

 「トランサー王国を建国したロックウェル・ティアック公と関係するのですかな?」

 と、ヨーゼフが聞いた。アストレアは、静かに頷き語り出しティアック家の謎が明らかになった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ