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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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来世でも…

 「ふん、やっと出てきおったか」

 と、ザマロ・シェボットが吐き捨てるように言った。

 「叔父上、満足か?」

 と、レオンは、右腕に刺さった瓦礫の破片を引き抜きザマロの足元に投げ捨て言った。ザマロは、投げ捨てられた破片を見てニヤリと笑った。

 「叔父上、なぜ父上が若輩の俺を国王にしたか解るか?あんたは、野心が強過ぎたんだよ」

 レオンは、そう言ってザマロをにらみつけた。先代の王でレオンの父グランデは、弟ザマロの有り余る野心を気にしていた。自分が亡くなり弟に王を継がせれば必ず戦争を起すだろうと。だから、あくまで後見役と言う事にした。しかし、後見役と言っても何の権力もなかった。国内外の政務は、全てティアック派の重臣たちで行っていた。宮中大臣などと呼ばれていたが、実際には、何の仕事もなかった。ザマロには、それが我慢できなかった。自分を例えば外務大臣にしてくれれば、他国に色々と難癖を付けて戦争に持っていけるのにと常々そう思っていた。それと、レオンの結婚である。トランサー国内の貴族の娘との結婚ならまだ許せたものをよりによって他国人との結婚は、到底ザマロには、許せる事では無かった。

 「おい、子供は、どうした?」

 と、ザマロは、ヒミカがレオニールを抱いていない事に気が付いて言った。ヒミカは、涙を流しながらレオニールを包んでいた布を見せ付けて答えた。

 「レオニールは死んだわ、さっきの砲撃で瓦礫に押し潰されたわ…」

 と、ヒミカは、言って泣き崩れた。それを聞いたザマロは、声を上げて笑った。レオン達の後ろに居たフウガは、ザマロを今すぐにでも殺してやりたいと思ったが、自分の腕の中にレオニールは居る。そして、ティアック家の宝剣、不死鳥の剣もある。どうにも出来ない事に腹が立った。

 「そうか、ガキは死んだのか、上々、手間が省けたわ」

 と、ザマロは、笑いながら言った。それを聞いたヒミカは、ザマロを睨みつけた。

「叔父上、頼みがある、今日の事はトランサー国内の事、ジャンパール人であるフウガたちにはいっさい関わりのない事だ、どうかフウガたちはジャンパールに帰してやって欲しい」

と、レオンは、ザマロに頼んだ。ザマロは、フウガたちを見た。フウガは、ザマロを鬼のような形相で睨みつけている。ザマロは、背筋が凍る思いがした。

「ふむ、まぁ良かろう、サモン閣下どうぞお帰り願おうか、ただし軍艦は置いていってもらう」

ザマロは、既にフウガたちが乗っていた軍艦まで奪う手筈てはずを取っていた。しかし、今は、そんな事よりも無事にこの場を離れる事が重要だった。

 「ザマロ大臣、どうかレオン様、ヒミカ様に穏便な処置を願いたい、では御免」

 と、フウガは、ザマロを大臣と呼びレオンとヒミカの助命を願った。そして、レオンとヒミカに一礼してその場を離れた。フウガとジャンパール人武官は、森の中に入り軍艦を停泊させてある港に向かって歩き始めた。レオンとヒミカは、フウガ達が見えなくなるまで見送った。フウガなら何とかトランサーから脱出してくれるだろうと信じた。そして、ザマロに向き直るとイビルニア人がザマロに何やら耳打ちをしていた。ザマロの顔色が見る見る変わっていった。

 「はかったな貴様ら、行けっフウガを追えっ!」

 と、ザマロは、真っ赤な顔でレオン達を怒鳴りつけイビルニア人にフウガを追うよう命じた。イビルニア人は、反乱兵数人を引き連れて森に入ろうとした時、レオンがイビルニア人に猛烈な体当たりを加えた。それがきっかけとなり戦闘が始まった。残っていた近衛兵三人は、鬼神の如き働きを見せた。ヒミカも戦った。まだジャンパールのお転婆姫の頃、フウガから剣術の手ほどきを受けている。並みの男では、敵わない腕を持っていた。レオンは、イビルニア人に必死に抵抗した。しかし、既に傷を負っているレオンには、限界があった。レオンの攻撃を巧みにかわしたイビルニア人は、レオンの胸倉を掴み片腕で投げ飛ばした。その隙にフウガ達を追って行った。

 「フウガすまない、何とか逃げ切ってくれ」

 レオンは、息も切れ切れにつぶやくと残る力を振り絞りヒミカ達の方に向かった。ヒミカ達は、返り血や自分自身の血で全身真っ赤に染まっていた。

 「あなたっ」

 「陛下っ」

 と、ヒミカと三人の近衛兵がレオンに駆け寄る。反乱兵達は、遠巻きに五人を囲った。

 「もはやこれまでだ…叔父上に捕まって辱めを受けるくらいならここで自害する」

 レオンは、悔しそうに言い短剣を手にした。

 「わたくしも…」

 と、ヒミカは、近衛兵が腰に帯びていた短剣を引き抜いた。レオンは、止めはしなかった。レオンは、剣先をヒミカの胸元に向けた。ヒミカも剣先をレオンの胸元に向け見詰め合った。

 「短い人生だったがヒミカ…俺はお前と一緒になれて本当に幸せだった、ありがとう…」

 「わたくしも、レオン…愛してるわ」

 「来世でもきっと俺の妻になってくれるか?そしてレオニールを産んでくれるかヒミカ…」

 「もちろんよ、レオニールと三人で幸せに暮らしましょう…」

 ザマロは、二人の様子を見て自害しようとしている事に気付き慌てて止めさせた。

 「いかん、自害する気だ!止めろ」

 と、ザマロが叫んだ。反乱兵が一斉に止めにかかったが、三人の近衛兵達が主君の最後の邪魔はさせまいと奮戦、そんな中レオンとヒミカは、互いの胸を短剣で深く突き刺した。その深さは、互いの愛の深さと言えよう。レオンとヒミカは、息が堪える前に手を握りあった。

 「トランサー、ティアック王家に栄光あれぇ!」

 と、主君の最後を見届けた近衛兵達が叫び、刃を首に当て二人の後を追った。

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