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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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ランドール入国

 川辺の村からレン達を乗せた船は、ゆっくりと川を下っている。船の大きさは、レン達が連れている馬を乗せても十分な広さがある立派な船だった。この船は、空を飛ぶ事が苦手なドラクーン人のための船である。レン達、人間の他にドラクーン人が数人乗っている。彼らは、レン達を見ても何とも思わないようだった。

 「ランドールに着いたらまず城下にあるジャンパール大使館に行こう、手紙も出したい」

 と、マルスが、船の舳先へさきで仰向けに寝そべりながら言った。その時、船底に何かが衝突しマルスが危うく川に落ちそうになった。

 「うわぁ、危ねぇ!何だ今のは?」

 と、マルスが慌てて起き上がり言った。船の横で大きな生き物の背中が見えた。この辺りに生息する大きな魚でドラクーン人は、捕まえてよく食べる。

 「何だ魚か…でっかい魚だなぁ」

 と、マルスは、変に感心して見ていた。そして、船は都から三つめの町の船着場に到着した。ここが最終の町になる。ここは、海にも通じる港町でドラクーン人しか居ないが結構な賑わいを見せている。レン達は、船を降り宿屋を探した。ここで一泊しランドールに通じていると言われる、飛び石島に向かう事にした。市場を通ると先ほど見た魚より小さい魚が売られていた。宿屋は、直ぐに見つかりレン達は、そこで一泊した。

 翌日、市場で食料を買い込み、飛び石島を目指した。港町を出たレン達は、海沿いを歩いた。ドラクーンに入国してからほとんどが森の中だったので、海の匂いが妙に懐かしく感じた。

 「あっ、あれだよ」

 と、シーナが指差した方向に飛び石の様に並んだ島が見えた。島は、真っ直ぐランドールに続いていてお粗末ながら木と石で出来た橋が架かっている。ここに来るドラクーン人は、滅多に居ない。橋の手前には、門があったが門番も居ない。レン達は、勝手に門を開けて橋を渡った。橋がギシギシ音を立てて揺れる。

 「怖いなぁ大丈夫かなぁ、この橋」

 と、レンが、馬を引き歩きながら言った。同じく馬を引いて歩くヨーゼフも心配して言った。

 「ゆっくり渡れば大丈夫でございましょう」

 「ぼくは平気だよ」

 と、シーナが突然走り出した。

 「こ、こらっ走るんじゃねぇ」

 と、マルスが怒鳴ったが、シーナは、ヘラヘラ笑いながらランドールに向かって走って行った。橋は、ギシギシ音を立て揺れた。レン達は、橋が崩れない事を祈りつつゆっくり渡り、渡り切った頃には、疲れ果てていた。

 「こんな事ならイビルニア人と戦ってる方がマシだよ」

 と、マルスが額の汗を拭きながら言った。橋の前には大きく立派な門がありレン達に気付いた門番兵がこちらを見つめていた。レン達は、ゆっくり門に近付き門番兵に声を掛けた。

 「こんにちは、僕達ドラクーンから来ました、門を開けて下さい」

 と、レンがにこやかに言った。門番兵は、驚いていた。自分がこの門の門番になって外から人が来たのは、初めての事だった。二十五年前、イビルニアと戦争をしていた頃、ドラクーンは、一時的に人間と手を組んだその時以来の事だった。その時、この門番兵は、子供だった。

 「ド、ドラクーンから?嘘だ!何でドラクーンから人が来るんだ」

 ドラクーン人が人嫌いな事を知っている門番兵は、信じない。レンは、シーナを門の前に立たせ言った。

 「この子はドラクーン人です、証拠を見せましょうか?」

 「この娘が?本当かね」

 「そうだよ」

 と、言ってシーナは、光を放ち門番兵の前で龍の姿に変身した。門番兵は、腰を抜かしその場にへたり込んだ。

 「ほ、ほほ本物だ!…し、しかし何の用でランドールに来た」

 「それはいずれお前さんにも分かる時が来る、拙者らはランドール王に会いに来た、門を開けてくれ」

 と、ヨーゼフが言った。

 「我が王にドラクーン人を連れて何の用事がある、お前達は何者だ?」

 「俺は、ジャンパール皇国皇子マルス・カムイ、そして同じくジャンパール皇国のレン・サモン公爵、この人はヨーゼフ・ロイヤー殿、この子はドラクーンの龍神殿の使いのシーナだ、さぁ自己紹介は済んだぞ、門を開けろ」

 と、マルスが淡々と自己紹介を済ませた。ジャンパールの皇子や公爵などと聞いた門番兵は、益々混乱した。

 「う、嘘だ、何でこんな所にジャンパールの皇子がいる」

 マルスは、やれやれと言った顔で門番兵にお忍びの遊学中だと説明し最後に、もし俺達を通さず別の方法で俺達がランドール王に会ったら必ず今日の事を話すと言った。軽くおどしている。このやり取りが王に知れたらどうなるか分からないと思った門番兵は、すぐさま門を開けレン達を通した。

 「ありがとう」

 と、門番兵に礼を言ってレン達は、ランドール領内の国境の村に入った。シーナは、元の姿に戻り、いつの間にかドラクーンにしか生えていない葉っぱで編んだ冠を門番兵に渡した。

 「これ、ぼくが作ったんだよ、あんたにあげる」

 「へぇ?」

 と、手渡された門番兵は、呆気に取られていた。レン達は、この門のある国境の村からランドール城を目指す。かなり距離があり数日は掛かりそうだった。ドラクーンの港町の市場で食料を買い込んでいたので野宿になっても心配なくレン達は、早々に国境の村を出てランドール城に向かった。

 「この辺りは、のどかですなぁ」

 と、ヨーゼフがランドールの草原を眺めながら言った。イビルニア人が出て来る気配など微塵も感じなかった。レン達は、交代で馬に乗り進んだ。三頭の馬のうち二頭の背には食料や野宿に使う道具を乗せてある。今、馬上に居るのはレンであった。夕暮れになり適当な場所を見つけて野宿する事にした。

 翌朝早く出発し城を目指した。丁度、昼頃に畑が見え始め人もちらほらと人も見るようになった。近くに村か町があるのだろう。

 「この辺りまで来るとやっと人も見え始めたなぁ、ちょっと聞いてみよう」

 と、マルスが畑仕事をする男に声を掛けた。男は、無言でマルスを見た。

 「俺達ランドール城に行くんだが、ここからどれくらいかかるんだ?」

 「…お城に?よそ者が何の用で行くか知らねぇが行かねぇ方がええぞぉ」

 と、男が意外な事を言った。詳しく聞くと最近ランドール国内で異変があり、北と南に別れてしまったようだった。今、レン達が居るランドールは北ランドールと呼ばれていた。

 「どう言う事じゃ?インギ殿はどちらのランドールに居るのじゃ」

 と、ヨーゼフが困惑して言った。

 「ああ、インギ様はこっちのランドールだよ」

 と、男が答えてくれた。レン達は、男に礼を言ってまた城を目指し歩いた。

 「何があったんだろね、でもヨーゼフが知ってるインギって人がこっちのランドールで良かったね」

「はい若、拙者も気になりまする、インギ殿の身に何もなければ良いのですが」

 レン達は、小さな町に入った。宿屋を見つけると宿泊の手続きを済ませ皆で町に出た。シーナは、見る物全てが珍しくはしゃいでいた。ここで少し情報を集める事にした。レンとマルス、ヨーゼフとシーナに別れて聞き込みを開始した。夜になり宿屋に戻って話し合った。

 「どうやら俺達がジャンパールを出た辺りに事が起きたみたいだな」

 と、マルスが言い出した。

 「そうみたいだね、インギって人の従兄弟いとこが急に領土を分割しようと言い出したとか」

 「拙者もそう聞きました、元々南の一部を領地に持っていたそうです」

 「何だっけ、その従兄弟の名前…ライン・スティールとか言ってたね」

 レン達四人は、丸いテーブルを囲み座っている。レンが難しい顔をして言った。

 「城下は、凄い警戒態勢を取ってるそうで僕達みたいな他所から来た者を入れない様にしてるとか」

 「そりゃあ心配ねぇさ、俺とヨーゼフが居るから大丈夫だ、インギのおっさんは俺とヨーゼフの事は十分知ってるしな」

 と、マルスは、自信たっぷりに言った。その様子を見てレンは、少し安心した。レン達は、夜遅くまで集めた情報を言い合い眠りについた。

 翌朝、早く宿屋を出た。この日は、時折突風が吹いた。ランドール城がある城下町まであと少し、この辺りまで来るとちらほらと魔導車まどうしゃを見る様になった。

 「ああぁ!魔導車だ、久しぶりに見たなぁ」

 と、レンは目を輝かせた。

 「おお、良いなぁ魔導車なら楽に旅が出来るのになぁ」

 と、マルスが言った時、マルスが乗る馬が急に暴れ出した。

 「うわぁ、おいおいどうしたんだよ」

 と、マルスが必死で馬をなだめてるとシーナが笑って言った。

 「あははは、あにぃが、魔導車の方が良いって言ったからその子怒ってるんだよ」

 「ええぇ、お前馬と話せるのか?」

 シーナは、ニヤッと笑って答えなかったが、何となく分かるようだった。馬を何とかなだめマルスは馬から降り代わりにシーナが乗った。その後、何事もなく城下に続く街道を歩いていると遠くで男女が木に向かって何やら叫んでいるのが見えた。近付くにつれ姿がはっきり分かって来た。男女の老人が木の上の方を見て叫んでいた。レン達は、気になって彼らに近付いた。

 

 

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