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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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修行が終わって

 レンが真空斬を三回に一回は放てるようになった頃、マルスの傷も完治に近付いていた。

 「シーナかなり使えるようになったんじゃないか、もうほとんど痛くないぞ」

 マルスは、神殿内を歩き回れるほど回復していた。

 「うむ、ここまでくればもう傷口が破れる事はなかろう」

 龍神も納得していた。シーナも体力が年相応になって来たのか簡単に疲れる事はなくなっていた。

 「やったね、後は上手く変身出来るようにならなきゃね」

 と、シーナは喜んで言った。

 「龍神様ぁ俺も剣の修行しても大丈夫かな?」

 と、マルスは、早く真空斬の練習がしたくてうずうずしていた。龍神は、今一度傷口を見て言った。

 「まぁ大丈夫じゃろうが無理は禁物ですぞマルス殿、痛みが出たら早々に止める事じゃ良いな」

 「うん、分かった、じゃあ行って来るぜ」

 と、龍神の許しが出たのでマルスは、叢雲むらくもを持ちレンとヨーゼフが居る神殿の裏庭に向かった。シーナも変身の練習のためマルスを追って裏庭に向かった。カイエンが例の変な鼻歌を歌いながらレンとヨーゼフの様子を見ていた。

 「あれぇマルスあにぃもう良いのかい」

 と、カイエンがマルスに気付いて言った。レンとヨーゼフもマルスに気付いた。

 「マルス、大丈夫なのかい?」

 「ああ、龍神様の許しが出た、ただし痛みが出たら止めろってさ、ヨーゼフ俺にも稽古をつけてくれ」

 マルスは、まず気をる事から始める事になった。マルスもあの時、ジルドに放った真空斬が偶然出た事を感じていたので、素直にヨーゼフの言う通りにした。シーナもカイエンの指導の下、龍に姿に変身するための練習をした。レン、マルス、シーナは、日が暮れるまで練習した。

 「あいてててて、痛み出しやがった、ちくしょう」

 マルスは、傷付いた脇腹を押さえた。

 「今日はここまでですな、殿下」

 と、ヨーゼフが練習の終了を告げた。マルスは、寝る前にまたシーナの治療の練習台になって寝た。翌日も翌々日もレン、マルス、シーナ三人の練習の日々が続いた。

 「お見事です若、殿下、もう拙者が言う事はありません」

 と、ある日ヨーゼフが満足げに二人に言った。レンとマルスは真空斬の他、真空突きも覚えた。真空突きとは、真空波を弾丸の様に飛ばす技で真空斬より敵に当て難いが当たるとかなりの破壊力がある。

 「ありがとうヨーゼフ」

 「ヨーゼフのおかげで俺はまた強くなれたよ」

 レンとマルスは、ヨーゼフに礼を言った。ヨーゼフは照れていた。シーナもカイエンから変身技のお墨付きをもらって喜んでいた。そんな時、ふとあの嫌な何とも言えない嫌悪感を神殿に居る皆が感じた。

 「何だ?どこかに居るんじゃないか」

 皆、辺りを警戒した。居る、木の影からイビルニア人がこちらを見ていた。それに一番に気付いたカイエンは、変身しようとしたが、マルスが止めた。

 「ちょっと待ったカイエン、あいつらは俺達が仕留めるぜ」

 「うん、僕達の練習の成果を見てて」

 と、レンとマルスが言った。

 「カイエンとじいちゃんは手を出さないでね」

 と、シーナがカイエンとヨーゼフに言うと光を放ち龍の姿に変身した。カイエンとヨーゼフが後ろに下がった。レンとマルスは、真空斬を放つため練気に入った。十分に気を溜めた二人は、同時にイビルニア人に向け真空斬を放った。ボボッと音を立て真空の刃が飛んで行く。二人のイビルニア人は、素早く真空斬を避けながらこちらに向かって走って来た。シーナがイビルニア人に向け炎を吐いた。イビルニア人は、両腕で顔を覆い炎を避けシーナに襲い掛かった。

 「シーナ、飛ぶんだ」

 と、レンが叫んだ。シーナが飛び上がるとレンは、シーナに襲い掛かったイビルニア人に真空突きを放った。真空波が弾丸の様に飛びイビルニア人の胸を貫通したが頭をやられていないイビルニア人は笑いながらレンに向かって来た。

 「アハハやるじゃないかコゾウ、今度はこちらの番だ」

 「中位の者か、若お気を付け下され」

 と、ヨーゼフは、中位のイビルニア人と気付きレンに注意をうながした。マルスが相手にしているイビルニア人も中位者だった。

 「キャキャキャ、それそれそれ~」

 と、やたらめったらマルスに斬りかかる。マルスは、冷静に攻撃を受け流している。

 「ジルドの野郎は国に帰ったのに何でお前達はドラクーンに残ったんだ、逃げ遅れたのか?それとも最近来たのか?」

 マルスは、攻撃して来るイビルニア人に話しかけてみた。イビルニア人はヘラヘラ笑って答えない。仮面の下から聞こえる笑い声に腹を立てたマルスは、力任せに足払いを掛け倒れたイビルニア人の顔目掛けて刀を突き入れた。イビルニア人の身体がビクンとなって動かなくなった。マルスは、死んだと思いイビルニア人の顔から刀を引き抜き背を向けた瞬間また動き出したので驚いた。

 「そうか刺したくらいじゃこいつら死なねぇのか」

 そう言ってマルスは、飛び下がって距離を取り真空斬を放ちイビルニア人の首を刎ねた。その頃、レンとシーナもイビルニア人に止めを刺していた。

 「見事でござる」

 「良くやったなシーナ」

 ヨーゼフとカイエンは、三人を褒めた。

 「しかし、ジルドの野郎が居なくなったのに何でこいつらこんな所に居たんだろう」

 と、マルスが殺したイビルニア人を見ながら言った。

 「最近イビルニア本国から送り込まれた者共でしょう、あれから日は経っておりますからな、油断は出来ませぬ」

 と、ヨーゼフが答えた。レン達は、穴を掘ってそこにイビルニア人の死体を入れシーナが炎で焼き灰にして埋めた。その後、夕食の時に龍神に報告した。

 「何と神殿の裏庭に現れおったのか…ジルドの時もいつの間にか侵入されていたからのう、神殿の警戒をもっと強めねばならんな」

 と、龍神は深刻な顔をして言った。レン達が殺したイビルニア人は龍神の命を狙いに来た訳ではなく、おそらく尻尾を切りに来るドラクーン人を狙っていたのかも知れない。

 「カイエン、ドラコ、もうドラクーン中に触れは出し終わったかのぉ」

 「はい龍神様、私とカイエンそして古龍党の連中やセージなどが全国にお触れを出しました」

 「しっかし、集まりが悪いよなぁ、俺っちちゃんと話したんだけどなぁ」

 龍神が出した触れとは、尻尾を切っていない者には神殿に来て切る事と各地に現れているイビルニア人の退治とイビルニアとの戦争に備えて志しある者は都に集い戦闘訓練を受けよと言う内容のものだった。カイエン達が触れを出して数日、パラパラとは集まって来るが、まだまだ人数が足りない。

 「全く情けねぇ話しだぜぇ」

 と、カイエンは、ご立腹だった。そんな時ふとレンもマルスもジャンパールに居る家族や恋人の事を思った。手紙を出したいと思いレンとマルスは、思い切って龍神に相談してみた。

 「あの龍神様、僕達、国元に居る家族に手紙を出したいんですが…」

 と、レンが遠慮がちに言った。

 「ほほぉ手紙をな…しかし我がドラクーンには残念ながらお前さん達の様な手紙を受け付ける機関が無いのぉ」

 と、龍神は、申し訳なさそうに言った。そこでレンとマルスは、カイエンを見て申し訳なさそうに言った。

 「俺達手紙を書くからそれをサイファの港町の近くにあるジャンパールの大使館に持って行って欲しいんだ、俺達がこの都からサイファに戻るとなると相当時間が掛かるし、あんたら飛べるんだろ」

 「シーナの修行も終わったし、カイエンに頼みたいんですが良いですか?」

 「ふむふむ、なるほどのぉ確かに人の足や馬に乗っても相当時間が掛かりますのぉ…カイエンどうじゃ、レン殿達の頼みを聞いてやってもらえるか?」

 と、龍神は、カイエンを見た。

 「何でぇ何でぇ他人行儀な、そんな事なら俺っちに直接言ってくれりゃあ良いのに、もちろん構わねぇぜぇ」

 と、カイエンは、快諾してくれた。レンとマルスは、カイエンに礼を言って急いで食事を済ませ手紙を書き始めた。ヨーゼフもイザヤ皇帝とナミ皇后宛に手紙を書いた。手紙の入った封筒を一つの袋にまとめカイエンに渡した。マルスが大使館の場所を細かく説明した。

 「な~る、そこに行ってこいつを渡せば良いんだな、でこいつを見せるのかい?」

 と、カイエンは、マルスが書いたカイエンの紹介状を見て言った。

 「大使館に行ったらまずそいつを見せるんだ、そしたら大使館の者は俺の友達って分かるからな」

 「な~る、分かったぜ兄ぃ、んじゃちょっくら行ってくらぁな」

 「おいおい、明日の朝で良いぞ」

 と、マルスが慌てて止めたがカイエンは、早い方が良いと言って龍の姿に変身して飛んで行ってしまった。

 「行ってしまった…ごめんなさい龍神様」

 「ほほほ、カイエンが納得して行ったのじゃ気にする事はありませんぞレン殿、カイエンは外の世界が見たくてたまらないようじゃの、ほほほ」

 カイエンが行ってしまった後、食堂が急に静かになった気がした。レン達は、カイエンが無事に大使館の職員に手紙を渡す事を祈り眠りについた。その頃、カイエンは、妙な鼻歌を歌いつつサイファに向かって飛んでいた。


 

 



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