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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
32/206

龍神エルドラとコルベ

 龍神とコルベが激しくぶつかり合った。その衝撃がレン達にも伝わる。カイエンと古龍党の連中、コルベの精鋭達は、戦いを止め龍神とコルベの対決を見守った。

 「昔、龍神の座を巡って対決したのを思い出すのう、ただしあの時はお前は黒龍ではなかったが」

 「エルドラ、昔のわしと思うなよ」

 その昔、エルドラつまり今の龍神は、コルベと龍神の座を巡り競っていた。その時、勝ちを得たのが今の龍神であるエルドラだった。龍神とは、ドラクーンを統治すれど君臨せず、だたその徳を持ってドラクーンの人々から愛され慕われ尊敬されドラクーン国の代表として国をまとめる存在なのだ。

 「なぜあの時、先代はお前を龍神にせなんだか分かるか?」

 「ふん、知れた事、貴様が先代に上手く取り入ったのだろう、実力ではわしの方が上だった」

 「確かに実力ではお前が上だったが、先代は見抜いておられたぞ、お前は龍神になってこの国の王になろうとしていた事をじゃ」

 「それの何が悪い!」

 と、言ってコルベは爆炎を吐いた。龍神もすかさず爆炎を吐く。熱風が周りに居た者を襲った。

 「あっちぃ」

 カイエンは、両腕で顔を覆った。カイエンと古龍党の者やコルベの精鋭達は、戦いを忘れ固唾を飲んで見守っている。レン達もまたジルドを警戒しつつ龍神とコルベの戦いを見守った。

 「この国に王は必要ない、ドラクーンは平和と自由を愛する民じゃ」

 「何をほざく、神殿に仕えている者共は貴様の家来ではないか」

 「違う、彼らは彼らの意思で神殿を守ってくれている、わしと主従関係はない」

 「同じ事よ」

 龍神とコルベの戦いは壮絶を極めた。互いの鉤爪で身体を斬り爆炎で互いを焼いた。辺りに血が飛び散った。

 「我々はどうするのかな?」

 と、不意にジルドがレン達に言った。龍神とコルベの戦いに見入っていたレン達は、慌てて身構えた。

 「やるに決まってんだろ」 

 と、マルスが斬りかかった。

 「血の気の多い小僧だな」

 ジルドは落ち着いている。マルスの攻撃をあの気味の悪い手甲で易々と受け止めている。ジルドの放った拳がマルスの腹に当たった。

 「ぐはぁぁ」

 マルスが吹っ飛んだ。腹を押さえて悶絶している。

 「マルスッ!」

 レンが慌てて駆け寄った。

 「あの野郎…」

 マルスは、レンの肩に掴まりながら立ち上がった。その時、ヨーゼフは、静かに刀を構え何か集中している様だった。

 「若、殿下、良く見ていて下され」

 と、ヨーゼフは言って気合と共に刀を振るった。ボッボッボッと、音を立て何かがジルドに向かって物凄い速さで飛んで行った。ジルドにはそれが何か分かっている。ジルドは、すかさず顔を両腕で覆った。服がズタズタに切り裂かれた。

 「何、今のは…」

 レンとマルスは、ヨーゼフが何をしたのか分からなかった。

 「し、真空斬…やはりヨーゼフ・ロイヤー侮れんな」

 と、ジルドは真空斬と言った。ヨーゼフは、また真空斬を放とうと意識を集中している。

 「させるかっ!」

 と、ジルドがヨーゼフに向かって襲い掛かった。レンとマルスは、ジルドの膝頭を狙って斬り付けた。斬られまいとジルドが高く飛び上がった。そこをヨーゼフがまたジルドに真空斬を放った。またすかさず顔を両腕で覆い受け止めた。身体がズタズタに切れてどす黒い血が流れているが、何ともない様子だった。やはり一般のイビルニア人同様、首を斬り落とすか頭を潰さない限り死なないようだった。

 「コルベッ、まだ勝負は着かんのか」

 と、ジルドは、レン達を警戒しながらコルベに言った。龍神とコルベは互いに血にまみれていた。

 「コルベよ考え直せ、イビルニア人とは手を切るのじゃ」

 「黙れ、わしは貴様を倒し、ドラクーンの王となる」

 そう言ってコルベは龍神に激しく噛みついた。

 「ぐわぁぁぁ…し、仕方がないのう」

 と、龍神は言い噛みつくコルベを引き離し突き飛ばした。コルベがまた噛みつこうとした時、突如龍神の身体が金色に光り出した。眩しさで皆手を顔にかざした。

 「そ、それは先代の…」

 「そうじゃ、わしが龍神となった時、先代から受け継いだ技じゃ、黄光爆おうこうばく、はぁぁっ」

 と、龍神が叫んだ瞬間、金色の爆炎を吐いた。物凄い爆音がコルベの村に鳴り響いた。

 「ぐ、ぐぐぐ」

 コルベは、黄光爆の直撃は避けられたが、身体の半分が焼け焦げ、もはや戦える状態ではなかった。ジルドは、それを見て撤退を決意した。

 「コルベ、もう良い撤退するぞ」

 「ふぅ…ふぅ…エルドラ、次は必ず貴様を倒す」

 と、言ってジルドを背中に乗せ、生き残った精鋭達と共に飛んで行った。

 「逃げるなぁ、このぉ」

 と、マルスがやけくそに真空斬を放とうと見様見真似でヨーゼフの様に刀を振るった。すると偶然にもボボッと真空斬が出た。真空波は、ジルドの頬を切り裂いた。

 「はぁぁぁぁ、わ、私の顔にまた傷がぁ…小僧~」

 ジルドが怒り狂ってマルス目掛けてコルベの背中から飛び降りて来た。

 「きえぇぇぇぇ」

 と、ジルドがマルスに猛攻撃を仕掛ける。マルスが必死に攻撃を受け止めていたが、受けきれなかったジルドの手刀がマルスの左脇腹を刺した。

 「ぐわぁぁぁ」

 「マルスッ!この野郎」

 と、レンがジルドに斬りかかった。ジルドは、手甲で弾き返そうとしたが、レンの斬鉄剣が手甲を叩き斬り腕の半分まで斬り込んだ。

 「ええぇい」

 ジルドがレンを蹴り飛ばし高く飛んでまたコルベの背中に乗った。

 「あの小僧共、ま、まさかフウガの斬鉄剣と真空斬まで使えるとは…覚えていろヨーゼフ、小僧共、次は必ず殺してやる」

 と、ジルドは、捨て台詞を残しコルベの背中に乗ってコルベの精鋭達と飛び去って行った。

 「あ、待ちやがれ」

 「よせ、勝負は着いたわしらの勝ちじゃ」

 と、龍神は追おうとするカイエンを止め元の姿に戻った。戻った瞬間片膝を着いた。

 「大丈夫ですかい龍神様ぁ」

 カイエンも元の姿に戻り龍神に駆け寄った。

 「わしは大丈夫じゃ、ちと張り切り過ぎたわい、それよりマルス殿じゃ」

 マルスが左脇腹を押さえ苦しんでいる。血がドクドクと流れている。

 「痛ぇ…ち、ちくしょうめ、あの野郎、次は絶対に殺してやる…痛ぇ」

 「マ、マルス…しっかりしろ」

 レンもマルスの左脇腹から流れ出る血を止めようと押さえた。

 「あにぃ、傷口見せてみな、おうおうこりゃひでぇな、血が噴き出してらぁな」

 と、カイエンは言って意識を集中させマルスの傷口に両手をかざした。カイエンの手が優しく光った。するとマルスの傷口が徐々にふさがり始めた。

 「ううぅぅ、な、何だこりゃ」

 「き、傷が…塞がっていく…」

 「…はぁ~はぁ~ふぃ~今の俺っちにゃこれが限界だぜぇ」

 と、カイエンは、かなり疲れた様子で地べたに座り込んで言った。

 「マルスごめんよ…僕が旅に付き合わせたせいで、こ、こんな目に…ううぅ」

 レンは、目にいっぱい涙を浮かべて心からマルスに詫びた。仮にマルスが死んだらイザヤ皇帝達に顔向け出来ない。

 「あほか、こんな事くらいで泣くな、お前と旅に出た時からこのくらいの事は覚悟の上だ」

 と、マルスは言ってレンの手を握り立ち上がろうとした。

 「いてててて」

 「おい、兄ぃ無理はいけねえぜ、直ぐに動いちゃ塞いだ傷口がまた開いちまいやがぁな」

 と、カイエンが慌ててマルスをその場に寝かせた。

 「マルス殿、傷を治すには時間が掛かりますぞ、しばらく神殿でゆっくりしていきなさい」

 いつの間にか傍にいた龍神が言った。古龍党の連中がコルベの精鋭達に殺された仲間数名を並べていた。

 「龍神殿、いや龍神様、我々はこれからどうすれば良いのでしょう」

 と、古龍党の連中の中で一番年長らしき者が言った。龍神は、古龍党の連中に振り返り話した。

 「コルベの事は誠に残念である、お前さんらがまだコルベの言う事を信じているのなら無理にとは言わぬが、まずは尻尾を切る事じゃ、無理強いはせぬ、ただ尻尾を切らずにいて半龍となりイビルニア人達に利用されたければな」

 「龍神様、お願いします尻尾を切って下さい、イビルニア人に利用されるのは御免です」

 と、古龍党の一人が言いだすと皆が切ってくれと言った。

 「うん、良く決心してくれた、ありがとう、しかし今日はちと疲れたでのう、明日神殿で切ろう、良いな」

 「はい」

 と、古龍党の連中が返事をして死んだ仲間を運びながら立ち去って行った。レン達も神殿に帰る事にした。カイエンは、龍の姿に変身してマルスを抱きかかえ空を飛び神殿に帰った。龍神がマルスの乗っていた馬に乗りレンとヨーゼフと神殿に帰った。

 先に神殿に到着したカイエンとマルスを見てシーナが驚いていた。

 「カイエン傷だらけじゃない、マルス兄ぃ大丈夫なの」

 と、言ってシーナがマルスの傷口を触った。

 「痛ぇ、馬鹿触るんじゃねぇ」

 「えへへへ」

 と、シーナがわざとらしく笑った。レン達は、かなり遅れて帰って来た。龍神がコルベの村で起きた事をシーナ、ドラコとセージ家族に話した。

 「これから忙しくなるぞ、ドラコ、カイエン、セージすまんがお前さんにも少々手伝ってもらわねばなるまい」

 「はい、龍神様何なりとお申し付け下さい」

 セージは事の重大さを十分理解している。セージは、明日の朝一番で村に帰り、龍神から聞いた話を村で話すと言って都に居る友人宅に家族を連れ泊まりに行った。神殿に残ったレン達は、傷を負ったマルスをベッドに寝かせた。

 「さてシーナよ、良くみていなさい、お前にも出来る事じゃ」

 龍神はそう言ってマルスの傷口に両手をかざした。カイエンと同様に手が優しく光り出しマルスの傷を少しづつ治して行く。シーナはじっとその様子を見ている。

 「ぼくにも出来るの?」

 「もちろんじゃ、ドラクーンの者なら大概の者は出来る、特にお前はその力が強いはずじゃ、マルス殿すまぬがシーナの練習台になってもらいますぞえ」

 「えええっ?!練習台?」

 こうしてレン達は、しばらくドラクーンに滞在する事となった。

 

 


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