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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
27/206

狙われたシーナ

 カイエンが住む村を出発したレン達は、都に向け順調に森の中の道を歩いていた。カイエンは、妙な鼻歌を歌い途中何度か道の脇に生えてある草を引きちぎっては、シーナにも渡して食べている。

 「カイエンもシーナも何で草食ってんだよ、美味いのか?」

 と、マルスが気になって聞いた。ヨーゼフがクスクス笑っている。

 「あにぃも食べるかい、ほれ」

 と、カイエンは、また草を引きちぎってマルスに渡した。マルスは、何も考えずに口に入れ噛んだ。マルスの顔色が段々と変わって行き草を吐き捨てた。

 「ぺぺっ何だこりゃ、うえ~苦い、ぺっぺっ」

 その様子を見たヨーゼフが爆笑した。マルスが恨めし気にヨーゼフを見て言った。

 「知ってたんなら何で言わないんだよ」

 「くくく、いやいや何事も経験でござるよ殿下」

 ヨーゼフは、笑いながら言った。マルスは、同じ草を取りレンにも食べさせようとした。マルスの様子を見ていたレンが食べるはずもなく逃げ回ったが、とうとう捕まり無理やりマルスに食べさせられた。

 「うう、苦い、ぺぺっ」

 と、レンも吐き捨てた。

 「二人ともよくこんなもの食べれるなぁ」

 と、レンは、シーナとカイエンに言った。二人ともへらへら笑っている。

 「ところでカイエン、セージには尻尾があったぞ、ありゃ危ないんじゃないのか?」

 マルスが草の後味と戦いながら聞いた。

 「その事よ兄ぃ、セージの奴イビルニア人が龍神様を暗殺しに来ていると思い込んでるんだが今回の事で悟ったと思うぜ、本当の狙いは尻尾を生やした自分達だってね、だからセージの奴も尻尾を切りに都に来ると思うぜ」

 と、先頭を歩くカイエンは、空を見上げながら話した。いつの間にか森の中を抜けてまともな街道筋を歩いていた。都に到着するには後、二、三日は掛かる。まともな街道と言っても坂道が多く人の足では、時間が掛かる。カイエン達ドラクーン人は、龍の姿に変身すると空を飛べるので移動に大した時間は掛からない。

 「しかし、こうした歩き旅もなかなかおつなもんだねぇ、ヨーゼフの旦那」

 「そうかえ、おぬしに言われると馬鹿にされてる様に思うわ」

 と、ヨーゼフは、あきれた顔で言った。レンは、ヨーゼフが疲れていると思い休憩を取る事にした。レン達は、適当な場所を見つけそこで休憩を取った。マルスが小便をして来ると言って森に入って行った。

 「ふぅ~」

 と、小便を済ませたマルスが皆が居る場所に戻ろうといた時、誰かのうめき声が聞こえた。マルスが辺りをよく見ると草に隠れるようにしてドラクーン人が倒れていた。

 「おい、あんた大丈夫か何があったんだ?」

 マルスが駆け寄り倒れているドラクーン人に声をかけた。そのドラクーン人には、尻尾があり全身血に塗れていた。ちょっと待ってろと言って皆を呼んだ。

 「お前さん古龍党のもんだな」

 と、カイエンは、真剣な顔をして倒れているドラクーン人に聞いた。

 「そうだ…」

 「まだ分からねぇのかよ、どうせイビルニア人にやられたんだろ、尻尾なんか生やしてるからなんだよ、いい加減切っちまえよ」

 と、カイエンは、少し怒りを込めて言った。

 「どうやらそのようだ、俺達が間違っていた…でももう遅いかも知れないコ、コルベ様は…」

 そう言って、このドラクーン人は、息絶えた。

 「お、おい!コルベがどうしたってんだよ、しっかりしねぇか、おい」

 カイエンは、ドラクーン人を揺さぶったが息を吹き返す事はなかった。

 「ちっ死んじまいやがった、畜生め」

 「コ、コルベって?」

 と、レンは、死んだドラクーン人を見ながら言った。

 「ああ殿様、コルベってのは龍神様に盾突く古龍党の首領よ、こいつが尻尾を切ると身がけがれると何とか言いふらして皆を惑わせてるのさ」

 カイエンは、吐き捨てる様に言った。死んだドラクーン人をその場に埋めレン達は、また都に向かった。絶対どこかでイビルニア人に遭遇するだろうとレン達は、辺りを警戒しながら進んだ。


 その頃、セージが妻と息子のレンジに話しをしていた。

 「父さん尻尾を切る事にした、明日都に行く」

 「あなたっ」

 と、夫の発言に驚いた妻が言った。

 「尻尾を切ると呪われるのよ」

 セージの村では、コルベの意見に賛同する者が多くセージもそうだったが、先日イビルニア人と戦った際に本当は、尻尾を生やした自分を狙って来たのだと悟った。

 「尻尾を生やしていればまたイビルニア人に狙われる事になる、だからお前達も尻尾を切ろう」

 「え~尻尾切っちゃうの」

 と、息子のレンジが尻尾を振りながら言った。

 「そうだ、シーナも切るんだお前も切れ、母さんもな」

 と、セージは、二人に言った。尻尾を切ればもうこの村には住めなくなるかも知れない。そうなればいっそのこと都に引っ越していいとまでセージは話した。夫の覚悟を聞いて妻は、渋々切る事にした。

 「では明日の朝一番で都に向かうぞ」

 と、セージが妻と息子に言った。


 レン達は、イビルニア人に遭遇する事無く進んでいたが、日も暮れて来たので今日は、野宿する事にした。火を焚き近くの川から水を汲み食事の準備に取り掛かり五人分の食事を作り食べた。

 「へへぇなかなか美味いもんだな人間の食い物も、しかし苦味が無ぇ、なぁシーナ」

 「うん、でもおいしいよ、ぼくは甘いのも好きだけどね」

 と、ドラクーン人のシーナとカイエンには、どうも苦味が足りないようだった。

 「何で苦いのが良いんだよ?」

 と、マルスが干し肉を食い千切りながら聞いた。

 「そりゃあれよ、マルス兄ぃ苦味の良さを分かるのはドラクーン人だからよ、まぁシーナみてぇに甘いのもいけるってのも居るがよ」

 と、カイエンが苦味の良さと言うものの話しを延々と続けた。マルスは、聞くんじゃなかったと後悔した。確かにセージの家で振る舞われた晩飯も多少苦いと感じたが、カイエンの家で振る舞われたお茶や晩飯ほど苦くはなかった。カイエンが特に苦味が好きなようだった。

 「そろそろ寝ようか、もう火を消すよ」

 と、レンが言って皆、毛布にくるまった。レンとマルスとヨーゼフは、いつでも刀を抜けるよう刀を抱いて寝た。辺りは、気持ちが悪いほど静かだった。何の夢を見ているのか分からないがマルスが訳の分からない寝言を言っている。それを聞いていたレンは、ふとあの嫌悪感を感じた。イビルニア人と対峙した時にいつも感じるあの感覚だ。

 (居る、近くに絶対居る)

 そう感じたレンは、静かにフウガ遺愛の斬鉄剣の鯉口を切った。そして、ゆっくりと毛布から這い出た。

 「殿様、気付いたのかい」

 と、カイエンが小さな声で言った。

 「カイエン起きてたの、居るよ奴らが」

 と、レンも小さな声で返した。どうやらマルスもヨーゼフも気付いた様子だった。

 「居るなどこだ?」

 「若、一人や二人ではありませんぞ」

 と、マルスとヨーゼフもゆっくりと毛布から這い出て刀の鯉口を切った。シーナだけは、静かな寝息を立て眠っている。カイエンは、意識を集中させ周りの気配を感じていた。

 「どうやら囲まれてるぜ、奴らの狙いは恐らくシーナだ」

 と、カイエンが小さな声で言った時、影が一斉にレン達に襲い掛かって来た。

 「来たぞ!」

 レン達は、立ち上がり刀を抜いて構えた。カイエンは、眩い光を放ちセージより一回り大きい龍の姿に変身した。カイエンは、雄叫びを上げ目の前に来た三人のイビルニア人に襲い掛かった。右手でイビルニア人の頭を鷲掴みにすると一気に握り潰し、左側に居たイビルニア人を蹴り飛ばした。もう一人のイビルニア人がシーナを奪おうとした。

 「させるかっ!」

 と、マルスが叢雲むらくもで斬りかかったが、イビルニア人は紙一重でかわし跳び下がった。レンとヨーゼフは、目の前に居るイビルニア人と戦っている。

 「おのれぇ悪鬼どもめ!」

 ヨーゼフは、フウガから貰った刀でイビルニア人の攻撃を受け止め弾き返した。撃剣の音が響き渡る。レンは、斬鉄剣を振るった。イビルニア人の剣と鉄の爪の二段攻撃を何とか凌いでいる。カイエンは、蹴り飛ばしたイビルニア人を討ち取り、シーナの傍で戦っているマルスの援護に向かった。

 「兄ぃ!こいつは俺っちが引き受けた、殿様達の援護に行ってくれ」

 と、カイエンは、叫んだ。先ほどのカイエンの戦いぶりを見たマルスは、安心して任せレンとヨーゼフの援護に向かった。この騒々しい中、シーナは平気で眠っている。カイエンは、大きく息を吸い込んだ。そして、目の前のイビルニア人に向かった炎を吐いた。一瞬で焼き付いたイビルニア人は、さすがに熱さで悶絶もんぜつしている。カイエンは、蹴り倒し頭を踏みつぶした。カイエンがレン達に振り向くといつの間にかイビルニア人の数が増え囲まれていた。カイエンは、眠っているシーナを抱きかかえてレン達に加勢した。カイエンは、雄叫びを上げ注意を自分に引き付けた。イビルニア人達がカイエンが抱いているシーナに気付くとレン達を無視して一斉にカイエンに向かって行ったが、その隙をレン達は、見逃さなかった。レン達は、イビルニア人が歩行出来ないようにするため、まず足を狙って斬った。

 「この野郎」

 と、足を斬られ倒れ込んだイビルニア人の首を後ろから刎ねた。斬り逃したイビルニア人がカイエンに襲い掛かったが、また炎にやられてのたうち回っているところをカイエンに踏みつぶされた。ヨーゼフは、一人だけイビルニア人を生かして捕えていた。両腕両足を斬り飛ばして仰向けにしていた。

 「これイビルニアの者よ、なんじらは何をしにこのドラクーンに来た、何故なにゆえドラクーンの子を連れ去ろうとした、答えよ」

 と、ヨーゼフは、刀の先をイビルニア人の喉元に付け聞いた。レン達は、辺りを警戒しながらイビルニア人の様子を見た。

 

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