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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
25/206

エレナとコノハ

 セージの家で一泊したレン達は、ドラクーンの都ドラゴニアに向けて出発の準備をしていた。

 「もう行っちゃうのかい?」

 と、セージの息子のレンジが寂しそうにレン達に言った。昨日一晩でかなり打ち解けていた。

 「うん、僕達のんびりしてられないんだ」

 レンが馬に荷物を載せながら言った。

 「都までの道はヨーゼフ殿、知っているな?」

 「ああ大丈夫じゃ、何度も行っとるからの」

 セージは、ヨーゼフの手伝いをしながら言った。シーナも手伝っていたが、はっきり言って邪魔だった。マルスは、シーナにレンジと遊んでろと言って手伝いを止めさせた。そして、出発の準備が整った。

 「それではセージ殿、奥方殿、わしらはもう行きますわい」

 「道中気を付けて、またイビルニア人に遭遇するかも知れない」

 と、セージは心配して言った。奥さんも心配そうにしていた。レンジは、しょんぼりしていた。

 「その時はまた俺達が叩き斬ってやるさ」

 「うん、イビルニア人は、絶対に生かしはしない」

 レンもマルスも意気込んだ。そんな二人を見てセージは、心強く思った。

 「ではお世話になりました、セージさん達もイビルニア人に気を付けて下さい」

 と、レンが最後に言って都ドラゴニアに向けて出発した。セージ達は、レン達が見えなくなるまで見送った。他のドラクーン人が珍しそうにレン達を見ていた。

 「レンジ、また遊ぼうね~」

 と、シーナが馬上から叫んでレンジに手を振った。


 レン達がドラクーンの森の中を歩いている頃、ジャンパール皇国では、コノハ皇女がレンの書いたエレナ宛の手紙を持ってエレナの家に居た。

 「はいこれ、この間サイファから届いたレンの手紙よ、エレナさん読んで」

 と、コノハは、目を輝かせて言った。エレナ宛の手紙なのに気になって仕方がない。エレナは、静かに読み始めた。その様子をコノハは、じっと見ていた。エレナは、笑顔になったり恐ろしいと言った顔になったりしている。読み終えて手紙を胸に押し抱いた。

 「姫様、どうぞお読みになって下さい」

 と、エレナは、コノハにレンの手紙を渡した。コノハは、手紙を読み始めた。エレナに対するレンの愛の言葉の所を読んでいるとニヤニヤ笑った。その様子を見てエレナは、顔を赤らめた。そして、リンゲの町でイビルニア人を退治した事を書いてある所は真剣な顔をして読んでいた。

 「お兄ちゃんも同じ事を書いてたけどイビルニア人ってどこにでも現れるのね、それからドラクーンに行くって、しばらく手紙は、来ないわね」

 「そのようですね、でも無事にフウガおじい様が言っていたヨーゼフ・ロイヤーと言う方に会えたようで良かったです、やっぱり大人の方が一緒に居ると分かると安心できます」

 エレナは、心からそう思った。マルスが一緒に居ると分かっていても不安だった。

 「そうね、確かにお兄ちゃんだけだと絶対無茶しそうだしね」

 コノハは、兄マルスがレンに無茶苦茶な事をさせるんじゃないかと不安に思っていた。それは、父イザヤ皇帝、母ナミ皇后、兄アルス皇太子も思っていた。

 「ところでエレナさん、都の学校の件、考えてくれた?」

 と、コノハは、急に話題を変えた。今回エレナ宅に来たのは、その事の返事を聞く事にもあった。

 「ええ、父も母も都の学校に行く事を賛成してくれました」

 「ホントに?!やったぁ、いつから来れそう?」

 と、コノハは、飛び上がって喜んだ。転校の手続きや寮住まいとなるのでその準備などしなければならず時間が掛かる。

 「早ければ再来週辺りには行けると思いますが」

 と、エレナは、答えた。コノハは、大喜びした。男兄弟の中で育ったコノハにとって新しい姉が出来た気分だった。コノハは、すぐさまエレナの両親にお礼を言いに行った。エレナの両親は、恐縮するばかりだった。都の学校への編入手続きは、皇室側でやっておくと言い渡した。

 「エレナさんは、私にとって姉の様な人です、都に来る事を楽しみに待っています」

 と、コノハは、おしとやかに言った。そんな様子を見てエレナは、笑いそうになった。コノハは、エレナの両親の前では、必ず大人しくなる。コノハなりに気を使っているのだとエレナは思った。エレナとコノハは、またエレナの部屋に戻って行った。 

 「我が家の娘が皇族方とご学友になるのか…信じられんな」

 と、エレナの父が呟いた。

 「そうね、レン君もおじい様のサモン閣下の家督を継いで十五歳で公爵様よ、もし結婚でもしたら公爵夫人になるのよ、もしもそうなったら近所に思いっ切り自慢してやるんだから」

 と、エレナの母が言った。エレナの両親は、レンが本当はトランサー王国の王子レオニール・ティアックである事をまだ知らない。知れば公爵夫人どころではない。レンがザマロ・シェボットを討ち取りティアック家を再興すればトランサーの王妃になる。

 「まぁエレナには、コノハ皇女や皇族方が付いていると思えば心強いな」

 エレナの父は、誇らしげに言った。エレナの部屋では、コノハがエレナに膝枕をしてもらっていた。

 「ホントは、レンにしたいんでしょ?」

 と、コノハは、悪戯っぽく言った。

 「さ、さぁどうかしら…」

 エレナは、ちょっと照れながら答えた。エレナには、三つ年下の弟がいる。コノハが来る時は、必ずどこかに遊びに出てまだコノハとは会った事がない。エレナは、自分に妹がいたらこんな感じなのかなと思ったが、直ぐにちょっと違うなと思い直した。

 「私ね、エレナさんみたいな綺麗なお姉さんが欲しかったの」

 と、コノハは、エレナの太ももに顔を埋めて言った。

 「そう、私、姫の良いお姉さんになれるかしら」

 エレナは、無礼を承知でコノハの髪を撫でながら言った。艶々した黒髪をしている。

 「二人の時は、コノハって呼んでレンも呼んでるんだから」

 コノハは、そう言うと今度は、エレナを半ば押し倒す様にしてエレナの胸に顔を埋めた。

 「きゃっ、ちょ、ちょっとコノハさん」

 「呼び捨てで良いよ…う~ん凄く良い匂いがする…おっぱい大きいね、私も後二、三年もしたら大きくなるかなぁ?」

 「さ、さぁどうかしら…く、くすぐったい、止めてあははは」

 コノハは、エレナにじゃれついた。コノハなりに甘えているのだろうが甘え方が尋常じゃない。そうこうしているうちにコノハは、眠ってしまった。エレナは、そっとコノハを寝かせ自分は、机の椅子に座った。妙な気分だった、胸がドキドキして身体が熱い。エレナは、気分を変えようとレンの手紙を読み返した。すると、さっきまでの妙な気分は薄れたが、レンがコノハの様に甘えたらどうなんだろうと考えたらまた妙な気分になった。この気持ちをどうして良いか分からず、もやもやしてきた。

 「はぁ~」

 と、エレナは、ため息をした。レンに会いたい、そう思っていると部屋の扉の向こうからコノハを呼ぶ声が聞こえた。エレナは、眠っているコノハを起こした。

 「何?」

 と、目を擦りながらコノハが言った。

 「お付きの方がお呼びよ」

 「えっ、ああもうこんな時間だ」

 コノハは、慌てて飛び起きた。城に帰る時刻になっていた。

 「じゃあエレナさん、学校で会えるの楽しみにしてるね」

 そう言ってコノハは、エレナ宅から城に帰って行った。エレナは、自室でしばらくぼんやりとしていたら弟が帰って来て部屋に入って来た。

 「もう、ノックくらいしなさいよ」

 「ごめん、今父さんと母さんから聞いたけど姉ちゃん、ホントに都の学校に行くのか?」

 「ええ、そうよ」

 「ふ~ん行くんだ…」

 と、言って弟は、部屋から出て行った。弟なりに寂しいのだろう、そう思うとエレナは、後ろ髪を引かれる思いがした。

 

 

 

 

 

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