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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
24/206

助太刀

 橋を渡りきりドラクーン領内に入ったレン達は、広大な森の中を進んでいた。全く整備されていない道を歩いていて本当に都までたどり着けるのか不安になった。

 「ヨーゼフ、本当にここを通って都まで行ったんだよな?」

 と、マルスは、道を隠すように生えている雑草や倒れている木を見て言った。

 「はい殿下、以前より荒れてはおりますが確かにこの道でござる」

 「すごいな…」

 と、マルスは、ヨーゼフがこの太古の昔から生えているであろう木々の中を一人で歩いたのかと思うと変に感心した。森の中は常に薄暗く時折射す木漏れ陽がとてもありがたく思えた。

 「ところでヨーゼフはどうして僕がレオニールだと分かったの?」

 と、レンは、不思議に思っていた事を聞いた。

 「それは、若がお父上とお母上にそっくりだからです、見間違うはずもございません」

 ヨーゼフは、自信たっぷりに答えた。

 「そんなに似てるの?」

 と、レンは、ジャンパールを出る前にイザヤ皇帝から見せられた母ヒミカの幼少の頃の写真を思い出した。確かに母ヒミカは自分の小さい頃とそっくりだったが、父レオン王の姿を見た事が無い。

 「はい、御髪おぐしはティアック家の象徴とも言える赤毛、お顔の輪郭や鼻はお父上、目や口はお母上でござるかな」

 「良く覚えてるもんだな」

 と、マルスは驚いて言った。

 「主君のお顔は片時も忘れた事はございません」

 と、またヨーゼフは自信たっぷりに答えた。レンは、自分の顔を撫でた。自分が知らない自分の家の事や両親の事を知る人間は、フウガやヨーゼフ以外にあと何人居るんだろうと思った。

 レン達は、ジャンパールやサイファには、生えていない木の前で昼食を取った。先は長いここで少し長めの休憩を取った。レンは、不死鳥の剣を取り出しじっと見つめた。

 「おお、それは不死鳥の剣ですな」

 ヨーゼフが宝物を見るような目で言った。実際ティアック家の宝剣でもある。

 「うん、初めてイビルニア人を斬った時、この剣が僕の頭の中で話しかけて来たんだ、私を使えって」

 「ほほう、やはりティアック家のお血筋でございますな」

 「どういう事?」

 「代々ティアック家の方々には不死鳥の剣の声が聞こえると聞いております、なぜ聞こえるのかはトランサー王国を建国した初代国王ロックウェル・ティアック王と関係するそうです」

 と、ヨーゼフは話したその時、動物の雄叫びの様な声が森に響いた。

 「何だ?」

 皆、声がした方を見た。バキバキと木が折れる音も聞こえる。そして、音はだんだんと近づいて来て、それとともに人影も見え始めた。

 「ああ、あれはイビルニア人だ!」

 と、マルスが叫んだ。真っ黒のフード付きのマントを着ている。三人のイビルニア人を相手にしているのは、翼のある龍の姿をしたドラクーン人だった。

 「助太刀するぞっ!」

 と、マルスが父イザヤ皇帝から受け取った刀、叢雲むらくもを抜いて走って行った。レンは、不死鳥の剣を持ちマルスの後を追った。ヨーゼフは、シーナにここに居なさいと言い刀を抜きレン達の後を追った。ドラクーン人は、三人のイビルニア人に囲まれかなり斬られていた。

 「おらおらっクソ悪鬼ども、俺が相手だ」

 マルスは、叫びながら突撃した。いきなり現れたマルスにイビルニア人達は、驚いて跳び下がった。ドラクーン人も急に現れた人間に驚いている。レンとヨーゼフも追いついた。

 「大丈夫かあんた、後は俺達に任せろ」

 と、マルスが言った。龍の姿をしたドラクーン人は、傷だらけだった。

 「一人一匹づつだ、行くぞ!」

 マルスの掛け声でレンとヨーゼフもイビルニア人達に斬りかかった。撃剣の音が森の中に響いた。レンは、不死鳥の剣で戦った。初めてイビルニア人の首を刎ねた時の事を思い出した。あの時、初めて不死鳥の剣の声を聞いた。あれ以来、剣は何も言わない。ヨーゼフは、その昔フウガ屋敷に行った時、剣を持っていなかったヨーゼフにフウガが気遣って刀をヨーゼフに進呈した。その刀で戦った。

 「ええい、忌々しい奴等め」

 ヨーゼフは、巧みにイビルニア人の攻撃を防いでいる。レンは、必死で攻撃した。イビルニア人達は、両手に武器を装備している。どちらかの腕を斬り落とさない限り討ち取るのは難しい。

 「この野郎っ!」

 と、マルスが相手をしているイビルニア人の左腕を斬り飛ばした。イビルニア人は、怯むことなく右手に持った剣で突いてきた。マルスは、紙一重で避け首を刎ねた。

 「良しっ」

 と、マルスは、ヨーゼフに加勢した。

 「拙者より若を頼みます」

 と、ヨーゼフは、言った。レンが苦戦している。レンが相手をしているイビルニア人は、二刀流だった。

 「レン、大丈夫か」

 と、マルスが駆け寄りイビルニア人を挟み撃ちにした。イビルニア人は、レンとマルスに剣先を向け腰を落とし構えた。レンとマルスは、目で合図を送り二人同時に斬りかかった。イビルニア人は、二人の攻撃を受け止めた。マルスがわざと怯んだ様に見せると案の定イビルニア人がマルスに攻撃を仕掛けてきた隙をレンは、見逃さない。すかさず左足を斬りつけた。ガクッと態勢が崩れたイビルニア人の右腕をマルスが斬り飛ばすとレンが、後ろから首を刎ねた。

 「助かったよ、ありがとう」

 と、レンがマルスに礼を言った。レンとマルスは、ヨーゼフに加勢しようと駆け寄ろうとした時、ヨーゼフがイビルニア人の首を斬り飛ばしたところだった。

 「ふう、久しぶりに相手をしましたわい」

 と、ヨーゼフは、斬り飛ばしたイビルニア人の首を見ながら言った。レン達は、龍の姿をしたドラクーン人に駆け寄った。ドラクーン人は、まばゆい光を放ち龍の姿から尻尾の生えた人型に戻った。服は着ている。

 「ありがとう、命拾いした」

 と、言ってドラクーン人が倒れ込んだ。

 「しっかりして下さい」

 レンがドラクーン人を抱えた。

 「馬を取って来る」

 と、マルスとヨーゼフがシーナの待つ木の前に行った。しばらくしてマルスとヨーゼフがシーナと馬を連れて帰って来た。シーナは、傷だらけのドラクーン人を見て驚いていた。

 「おじさん」

 「おお、お前シーナじゃないか、どこに行っていたんだ」

 シーナにおじさんと呼ばれたドラクーン人は、シーナの事を知っている様子だった。レンとヨーゼフがドラクーン人の傷の手当てをした。

 「ところで何でイビルニア人と戦ってたんだ?」

 と、マルスが聞いた。

 「私がこの先の村に行く途中偶然見かけてね、やつらは恐らく龍神様を暗殺するためにドラクーンに侵入したんだろう」

 と、ドラクーン人が説明した。

 「暗殺?」

 「ああ、ここ最近で何人か確認されている見つけたイビルニア人は全て殺しているが、まだどこかに居るかも知れない、ところでシーナどうしてこの人達と一緒に居るんだ?」

 と、ドラクーン人は、シーナを見て言った。シーナは、へへっと笑って答えなかった。ドラクーン人は、深く聞こうとはしなかった。レン達は、怪我をしたドラクーン人を馬に乗せこの先の村に向かった。

 「自己紹介が遅れた、私はセージこの先にある村に住んでいる」

 と、セージは、馬上から話した。レン達も自己紹介した。しばらく歩いていると急に開けた所に出て来て小さな村が見えた。辺りは薄暗くなっていた。

 「もう夜になる、今日は私の家に泊まってくれ、助けてもらったお礼もしたい」

 と、セージが言った。レン達は、野宿するつもりだったのでこの申し出はありがたかった。セージの家に着いた頃には、真っ暗になっていた。家の中に案内されると家族がレン達を見て騒いだ。

 「ひ、人だぁ父さん何で人を連れて来たの」

 と、セージの子供が隠れて言った。

 「あなた、どうしたの怪我してるじゃない」

 セージは、森の中で起きた事を妻や子供に話した。妻は、また出たのかと言った顔をした。子供は、珍しそうにレン達を見ていた。セージの妻がレン達にお礼を言った。

 「主人を助けて頂きありがとうございます、今日は我が家でゆっくりしていって下さい」

 「イビルニア人は、僕達にとっても敵なんです」

 「ああ、まぁ俺達が居て良かったぜ、一人で三人相手にするのは大変だからな」

 と、レンとマルスが言った。ヨーゼフがセージに旅の目的を話した。

 「なるほど、龍神様に会いに行くのか…んんっ?!では、あなたが、あのヨーゼフ殿か?」

 「左様、わしはヨーゼフ・ロイヤーじゃがどうしてわしの事を?」

 「ははは、たまにサイファから龍神様に会いに来る変わった人間がいると以前、都で聞いてね」

 ヨーゼフは、ドラクーンではちょっとした有名人になっていた。

 「ははぁ、わしは変わった人間かいな」

 皆が笑った。セージ家族は、精一杯レン達をもてなした。ドラクーン人も人間も食べる物は同じなんだなと変にレンとマルスは、感心した。夜も更けて行きレン達は、セージの奥さんが用意してくれた寝床で眠りに着いた。

 




 

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