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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
21/206

コノハの活躍

 レンとマルスがサイファの国境の村に向かっている頃、ジャンパール城内では、コノハ皇女が自室でレンとマルスが最初に送った手紙を何度も読み返していた。その中には、レンの恋人エレナ宛の手紙もありコノハは、中身が気になって仕方なかった。

 「う~ん、気になるなぁ~見たいな~」

 コノハは、手紙を光にかざしたりして中身を見ようとするが見えるはずもなく、もやもやしていた。

 「あっ?!そうだ明日エレナさんに届けに行こう」

 週末に持って行く予定だったが我慢出来ず、明日は学校をサボることにした。コノハは、早速母のナミ皇后に話しに行った。学校をサボってまで行く事はないと言われたが、マルスが言っていたエレナに悪さをする連中から守って欲しいとの話しをしたらあっさり許しが出た。

 「よろしい、もしもまたエレナにちょっかいを出していたらコテンパンにやっつけなさい」

 翌日、魔導車で護衛二人を引き連れてエレナの通う学校に向かった。途中フウガ屋敷の前を通ったら今も境界線が敷かれてあった。学校近くに魔導車を停車させ学校に入った。

 「姫、学校側に知らせなくて大丈夫ですか?」

 護衛は、学校に無断で入っている事に後ろめたさを感じている。

 「大丈夫、大丈夫」

 コノハも兄マルス同様、細かい事は気にしない性格だ。丁度昼休みの時間でコノハ達は、人気のない校舎の裏側を隠れながら歩いた。護衛は、なぜ堂々と正面から入らないかコノハに尋ねると面白くないからとの答えが返ってきて兄妹そっくりな性格だと改めて思ったのだ。付き合わされる護衛は、いい迷惑である。何度か見つかりそうになりながらも校内をうろついているとエレナの怒った声が聞こえた。

 「今の聞いた、エレナさんの声よ」

 声のした方へこっそり近付くとエレナが五人の男女に囲まれていた。

 「もう、いい加減にしてよ、あなたたちには関係ない事でしょ」

 エレナは、怒っていた。レンとの事をしつこく聞かれてうんざりしていた。

 「サモン君はどこに行ったの、ホントはあんた知ってるんでしょ?」

 「サモンの野郎なんか忘れて俺と付き合えよ」

 以前にマルスに制裁された連中だった。レンとマルスが国外に行った事を新聞で知ったとたん怖いものがなくなった彼らは、またエレナに悪さをするようになった。

 「あの皇子はもうこの国に居ないんだから強がっても無駄よ」

 と、言ってレンに片思いしていた少女がエレナを突き飛ばした。

 「おいおい、何も突く事はないだろ、俺のエレナが怪我するじゃないか」

 と、エレナの事が好きな不細工な少年がニヤニヤしながらエレナの手を掴みながら言った。コノハは、物陰でこっそりと様子を見ていた。

 「あの連中ね、お兄ちゃんとレンが言ってた、気持ち悪いなぁ」

 エレナは、少年に掴まれた手を振り払った。

 「わたしに触らないで、もうほっといてよ」

 「こいつ、俺を怒らせたらここでっちまうぞ」

 不細工な少年は、エレナに抱き付いた。

 「あはは、っちゃえっちゃえ、私達が見ててあげるよ」

 「嫌っ!もうやめて」

 不細工な少年がエレナを押し倒して挑みかかろうとした時、コノハが飛び出て行った。

 「こらぁ、やめなさい!」

 「誰だ?!」

 少女達がコノハを見た。ここの学校の生徒ではない事は一目で分かった。

 「そこの不細工、エレナさんから離れなさい、汚い手でエレナさんに触るな」

 「何ぃ、お前からってやろうか」

 「こいつは俺達が」

 と、他の少年二人がコノハに近付いた。

 「姫様、逃げて」

 と、思わずエレナは姫様と言ってしまった。しかし、エレナの心配を他所よそにコノハは、腕組をして立っている。少年達がコノハを捕まえようとしたその時、物陰に潜んでいた二人の護衛が出て来て少年達を捕まえた。少年少女達の脳裏にマルスの顔が浮かんだ。逃げようとした不細工な少年をコノハが後ろから跳び蹴りして倒し、続けて少女二人に往復ビンタを食らわせた。

 「私の兄の言葉を忘れたのかしら、さぁ校長室へ行きましょ」

 コノハは、少女達に言ってエレナに駆け寄り引き起こした。

 「大丈夫?行きましょ」

 コノハと護衛二人は、少年少女達を校長室に連れて行った。エレナも後に続いた。校長は、何事かと少女に聞いたがまともに答えられるはずもなくコノハが、一部始終を話した。校長は、気を失わんばかりに驚いた。そして、目の前の部外者が自国の姫君である事に気付いた時には、立っていられない状態になった。直ぐに少年少女達の親が呼び出された。コノハは、怒鳴り散らしてエレナに対して誠心誠意の謝罪をさせた。

 「ジャンパール皇国の皇女としてお前達に命じます、これより未来永劫エレナ・アヤマに近づくな、良いな?次は死んでもらいます」

 と、コノハは、無表情で言った。少年少女達とその親は、震え上がっていた。少年少女達は、とりあえず一ヶ月間の停学処分を言い渡され正式の処分は、職員会議で決めるため後日、言い渡される形となった。

 「さぁエレナさんの教室に行きましょ」

 コノハは、何もなかったかのようににこやかにエレナに言った。コノハとエレナは、教室に向かった。急遽、皇族の見学となり学校は、大騒ぎになり一目姫様を見ようと生徒たちがエレナの教室に群がった。

 「あの子が皇女様だって、かわいいなぁ」

 「この前のマルス皇子や今回のコノハ姫やらエレナって何者なんだ?」

 生徒たちが口々に思った事を言っていた。授業が終わりコノハは、エレナの家に行った。父親は、仕事でいなかったが母親が驚いてアタフタしていた。

 「まぁああ、我が家に皇族の姫君がお越しになるなんてどうしましょ」

 「どうぞお構いなく」

 と、コノハは、お淑やかに言ってエレナの部屋に入って行った。エレナの部屋に入るなりコノハは、ベッドに飛び乗りごろごろした。

 「エレナさん、はいこれ」

 と、レンの手紙をエレナに渡した。本来の目的をやっと達成したわけだ。エレナは、静かに手紙を読み始めた。目に薄っすらと涙を浮かべた。

 「なんて書いてあったの?」

 コノハは、目を輝かせてエレナに聞いた。エレナは、少し考えてレンの手紙をコノハに渡した。

 「ふむふむ、ふ~ん…うわぁ~」

 手紙には、サイファの国の事やエレナに対する愛の言葉が書かれていた。手紙を読み終えたコノハは、顔を赤くして手紙をエレナに返した。

 「実は、レンとお兄ちゃんからあなたを守るよう言われてるの、今日は来て正解だったわ」

 「え?私を」

 「そう、お兄ちゃんがね俺達がいなくなったらあの連中が必ずまたエレナさんにちょっかい出すからって」

 実際にそうなったわけだ。

 「あんな連中、町から追い出してやろうか、ああ、そうだエレナさん都の学校に転校すればいいじゃない、私が何とかしてあげるわ」

 「ええっ?そんな急に」

 コノハは、本気で言っている。エレナを都の学校に転校させた方が自分にとっても都合が良い。

 「ね、考えてみてその方がお兄ちゃん達の約束を守りやすいし」

 エレナは、親と相談すると言った。後は、雑談になり日も暮れて来たのでコノハは、城に帰る事にした。コノハが帰った後、エレナは、学校の事を話した。以前にも同じ事がありその時は、マルスが助けた。今回は、コノハの活躍で事なきを得たのである。丁度帰宅した父親にも話した。父親は、大激怒し明日学校に抗議しに行くと行った。

 「それでねお父さんお母さん、さっきコノハ姫に都の学校に転校しないかって言われたの、どう思う」 エレナは、両親さえ良ければ転校しても良いと考えていた。

 「都の学校か…これで二度目だからな、姫様が来いと仰っているのだから転校も良いかも知れんな、レン君もいない事だし」

 「そうね、ちょっと寂しくなるけどその方が良いかも知れないわね」

 と、両親は、納得した。コノハは、魔導車の中で今度は、いつエレナに会いに行こうか考えていた。 

 

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