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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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思わぬ足止め

 レンは、外の様子がおかしい事にいち早く気付いていた。そして、あの思い出したくない感覚がよみがえってきた。イビルニア人が居る。フウガを殺したイビルニア人とは、ちょっと違うが、ほぼ同じと言えた。レンは、急いでマルスを叩き起こした。

 「いてて、何するんだ、何かあったのか?」

 マルスは、レンに起こされて眠い目を擦りながら言った。話を聞いて飛び起きたマルスは、そっと窓に近づきカーテンの隙間から外の様子を見た。昼間の借金取り達がいる。それと見た事のない真っ黒なフード付きのマントをまとった者もいた。それを見た瞬間、何とも言えない嫌悪感をマルスは、感じた。

 「何だあいつ…」

 「イビルニア人だよ」

 レンは、見なくてもイビルニア人だと分かる。レンは、フウガの残した斬鉄剣を左手に持った。それを見たマルスも父イザヤ皇帝から渡された叢雲むらくもを持った。

 「やるのか?」

 「うん、イビルニア人が相手なら素手じゃ無理だよ」

 二人は、中年夫婦に絶対に部屋から出るなと言って家の外に向かった。借金取り達が扉をバンバン叩き出て来いと叫んでいる。中年夫婦の代わりにレンとマルスが、扉を勢いよく開け外に出た。

 「こんな時間に迷惑な連中だな」

 マルスは、リーダー格の男を睨み付けて言った。

 「てめぇは、昼間の…まぁいいてめぇらもイビルニアに売り飛ばしてやる、やれっ!」

 と、リーダー格の男は、手下どもに命じた。手下どもが一斉にレンとマルスに襲い掛かった。

 「マルス、斬っちゃだめだよ」

 「分かってるさ」

 二人は、刀を抜き放ち一人二人と峰討ちで倒していった。やくざ者の剣術など二人の相手にならない。あっという間に手下どもを片付けた。残るは、リーダー格の男とイビルニア人だけである。

 「さぁ残るは、お前とそこの真っ黒い奴だけだ」

 と、マルスは、剣先をリーダー格の男とイビルニア人に向けて言った。

 「コロシテイイノカ?」

 と、イビルニア人がリーダー格の男に聞いた。リーダー格の男は、勝手にしろと言って逃げようとしたが、レンが回り込んで峰討ちで倒した。

 「お前は、後で役人に引き渡すんだ、そこでじっとしてろ」

 レンは、そう言ってイビルニア人に向き直った。イビルニア人は、右手に剣を構え左手には、鉄の爪をはめて構えた。レンとマルスは、じりじりと円を描くように間合いを詰めた。

 最初に撃ち込んだのは、レンだった。イビルニア人は、右手の剣でレンの攻撃を受け止めた。その瞬間マルスが斬りかかったが、その攻撃も左手の鉄の爪が防いだ。

 「ふぅ、手強いな…」

 と、マルスは、初めて相手にするイビルニア人を強いと感じた。レンは、これで二度目である。フウガを殺したイビルニア人と比べれば若干弱いと思った。でも油断はしていない。とにかく、首を斬り落とすか頭を潰さない限りイビルニア人は、死なない。どうやって首を斬り落とすかだけを考えた。

 「グフフ、モウオワリカ?」

 イビルニア人は、余裕があると言った感じだった。今度は、イビルニア人が仕掛けて来た。一瞬でレンの間合いに入り斬りかかった。レンは、斬鉄剣で受け止めたが、衝撃で吹っ飛んだ。続けざまに左手の鉄の爪で突いてきたが、マルスが、イビルニア人の太ももを斬り付けたおかげでレンには、届かなかった。

 「さぁ来い、次は、首を斬り飛ばしてやる」

 と、言ってマルスは、構え直した。レンも態勢を整えた。

 「オマエヲキリキザンデヤル」

 イビルニア人は、マルスに襲い掛かった。その瞬間レンは、イビルニア人の左腕を斬り飛ばした。マルスは、イビルニア人の攻撃を弾き返し両足の膝頭を撫で斬りにした。イビルニア人は、膝から崩れるように倒れた。

 「マルス、右腕も斬り飛ばすんだ」

 と、レンは、マルスに言った。立ち上がろうとするイビルニア人の右腕を斬り飛ばしたマルスは、イビルニア人の首目掛けて叢雲の刃を振るった。首は、勢いよく真上に飛び地面に落ちた。

 「ふう、ふう…」

 「やった…」

 マルスは、初めて人を斬った事で興奮している。レンは、フウガに言われた事を思い出した。

 「マルス、イビルニア人を人と思っちゃいけないよ、こいつらは悪鬼だから」

 「…ああ、分かってる」

 さすがに気分の良いもんじゃないなとマルスは、思った。イビルニア人の醜い顔がこちらを見ているようで吐き気がしてきた。そこへ近所の通報を受けて役人達がやって来た。

 「暴れていると通報があったぞ、お前たちは何者だ!」

 と、サイファの役人は、最初からレンとマルスを悪人を見るような態度で言ってきた。イビルニア人を斬った後で気が立っているマルスには、火に油のようなものだった。

 「何だと?この連中を見ておのれはどちらが悪人か判断出来ないのか」

 マルスは、サイファの役人の胸ぐらを掴み怒鳴った。家から中年夫婦が飛び出して来て役人に事情を説明した。役人は、素直に謝ったがマルスの怒りが治まらない。レンと中年夫婦が何とかなだめて、やっと落ち着きを取り戻した。

 「しかし、このイビルニア人を君たち二人で仕留めたのか?」

 と、借金取り達が全員捕まり役所へ連行されて行くなか役人の一人がイビルニア人の死体を見てレンとマルスを聞いた。

 「イビルニア人を見たら無条件で殺しても構わないのでしょう?」

 と、レンは、堂々と言った。この世界では、レンやマルスが生まれる前に起きたイビルニア国対連合国との戦争でフウガ達が、イビルニア人達をイビルニア半島に封じ込めた時に作った法がある。もし自国や他国でイビルニア人を見たら無条件で殺すべしと言う法だ。十五年前ザマロ・シェボットがイビルニア半島に人をやり結界を破り封印を解いたせいでイビルニア人は、復活した。また以前のように世界中のあちこちでイビルニア人は現れ、悪意を持つ者らと結託し悪事を行っている。

 「とにかく、悪いが君たちにも事情聴取をしなければならない、良いね?」

 と、役人がレンとマルスに言った。二人は、構わないと答えた。レンとマルスは、役所に向かった。

 「君がマルス・カムイで君がレン・サモンか、ジャンパール人だね、サイファには何をしに?」

 役人がレンとマルスの顔を交互に見て言った。

 「ある人を尋ねに来ました、その人は国境付近の村に居るそうでそこへ行く途中あの連中と会いました」

 「あの家の夫婦が連中に売られそうになってたから助けてやったんだよ」

 と、レンとマルスは、言った。ふむふむと、役人は、話しを聞いている。

 「ある人とは?」

 「あんたにゃ関係ない、もう良いだろ?俺達、先を急いでるんだ」

 「まぁ待ちたまえ、明日ジャンパール大使館に君達の事を照会するから、今日はここに泊まっていってもらうよ」

 「ええっ?!」

 レンとマルスは、ぶうぶう文句を言ったが解放してくれそうにない。これだから役人は、嫌いなんだとマルスが捨て台詞を言って二人は、役所が用意した部屋に行き何もする事がないので寝た。

 翌朝早朝に役人がジャンパール大使館のある街に行きレンとマルスの身元照会を頼んだ。夕方頃その役人が真っ青な顔をして帰って来て、昨日レンとマルスの事情聴取を行った自分の上司に報告した。上司の顔も青ざめて来た。

 「本当なのか?お忍びで?」

 「はい、間違いありません、いかがなさいますか?」

 「と、とにかく謝って帰ってもらおう」

 上司は、レンとマルスの部屋に行った。レンは、ぼんやりと窓から外の景色を眺め、マルスは、これでもかと言うほど不機嫌な表情であぐらをかいで座っていた。上司は、恐る恐る声をかけた。

 「あの~昨日は大変失礼致しました、マルス殿下とサモン公爵とはつゆ知らず…」

 「えっ?僕が公爵?」

 「ははっ、そのように大使館の方で聞きました」

 レンは、驚いた。いつの間にか自分が爵位を持っている。

 「ああ、忘れてた、皇帝おやじがお前にフウガの財産と家督を全て継がせたから」

 「そんな大事な事何で今言うんだよ」

 「すまん、ホントに忘れてたんだよ」

 と、こんなやりとりを冷や汗を掻きながら上司は見ていた。それに気付いたマルスが分かればそれで良いと言って身支度を始めた。

 「俺達の剣を返してもらおうか」

 「ただ今お持ちいたします」

 と、言って上司は、部屋から逃げるように出て行った。叢雲むらくもと斬鉄剣と不死鳥の剣を返してもらったレンとマルスは、また中年夫婦の家に行った。中年夫婦は、無事に帰って来た二人を歓迎した。そして、夜も更けているので国境の村に向かうのは、明日の朝に決め夫婦の家に泊めてもらった。

 翌朝、レンとマルスは、婦人が作ってくれた朝飯を食べ出発の準備をしていると二人分の弁当を持って来た。

 「本当にありがとうございました、これは途中で食べて下さい」

 「ありがとう、助かるよ」

 「いただきます」

 と、二人は、素直に弁当を受け取った。

 「国境の村に行かれるそうで」

 「はい、そうなんです、人を探していて」

 レンは、何気に答えた。

 「あの村は、数年前に村長が変わってからやたらと外者そとものにうるさいそうで気を付けて下さい」

 「へぇ~分かった気を付けるよ」

 と、マルスは、あまり気にしている様子はなかった。準備が整い二人は、中年夫婦に別れを告げリンゲの町を後にし再び馬上の人となった二人は、国境の村を目指して馬を走らせた。

 



 


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