戴冠式前日
ライオット達イビルニア人は、音も無く磯を軽々と歩き大きな石碑の前まで来た。石碑には、レンがジャンパールから帰国し初めてこの地に足を踏み入れた事が刻まれている。石碑の周りは綺麗に整備されていて、ちょっとした観光地になっていた。その観光地が見える道を歩く男が一人いた。この男は、近くの村の住人でよく夜釣りに出かける。トラズ湾は、知る人ぞ知る釣りの穴場だった。
「今日は、波も穏やかだからなぁ、どんな大物が釣れるのやら」
と、男は、嬉しそうに歩いていたが、ふと石碑の周りに黒づくめの集団に気付いた。
「こんな時間に…何者だあいつら」
好奇心の強い男は、しばらくその場で黒づくめの集団、つまりイビルニア人達の様子を伺った。男は、集団がイビルニア人だとは、気付かなかった。ライオット達イビルニア人もまだ男に気付いていない。
「ふん、生意気にこんな石碑など建ておって…壊してやりたいが」
ライオットは、石碑を破壊しようと思ったが、考え直した。ライオットは、他のイビルニア人達を引き連れ、ここから城下町まで行こうとしていた。無論レンやマルス、各国の要人達を殺すためである。戴冠式は、ライオットにとってうってつけの好機だった。音も無く動き出す黒い集団に何か異常を感じた男は、思わず声を出してしまった。当然ライオット達に気付かれた。
「人か…我々を見た、殺せ」
「ははっ」
と、ライオットの命令に一人の中位のイビルニア人が静かに答え一瞬で男の目の前まで行った。男は、驚きと恐怖で動けない。目の前には、フードを目深に被った得体の知れないものが立って居る。
「な、何者だ…」
と、男は、震える声で言った時、イビルニア人の手が素早く男の首を掴み持ち上げた。男は、手にしていた釣り道具で激しく抵抗したが、イビルニア人に敵う訳も無くやがてその手から釣り道具が落ちた。
「かっ…かかか…かはっ」
死んだ。イビルニア人は、男の死体に石を抱かせトラズ湾に放り込んだ。釣り道具は、草むらに隠した。
「運の無い人間だ、さぁ先を急ごう」
ライオット達イビルニア人は、城下町に向かって歩き出した。途中で何かしらの情報を仕入れる事は、出来るだろうと落ち着いている。
夜が明けライオット達イビルニア人の侵入に全く気付いていないレン達は、明後日の戴冠式の話しで盛り上がっていた。国中が戴冠式の話しで持ち切りだった。
「レオニール様が国にお帰りあそばして四年、長いような短いような、この間に色んな事があり大変でしたが、やっと国王となられる日がやって来る、こんなうれしい事はありませぬ」
と、ヨーゼフは、皆が集まっている部屋で涙を浮かべながら言った。思い起こせば五年前、サイファの国境の村で初めて少年となったレンを見た。名乗られずともヨーゼフには、目の前の少年がレオニール・ティアックだと直ぐに分かった。思い出に浸っているヨーゼフの目を覚ます報告が舞い込んで来た。トラズ湾でイビルニアの船が見つかった事である。
「何?トラズ湾だと?」
「はい、閣下、それとトラズ湾の近くの村人が一人行方不明になったと」
「なんじゃと?行方不明者まで出とるのか…」
「はい、只今捜索中であります」
ヨーゼフは、報告に来た役人を下がらせ、レン達に話した。
「やっぱりベッサーラの艦隊はただの囮だったようだな、本当の目的はイビルニア人をこの国に送り込むためのな」
と、ラーズが訳知り顔で言った。ユリヤが不安そうにラーズ見た。ラーズは、そっとユリヤの手を握ってやった。
「やっぱり戴冠式は延期した方が良いんじゃないかな」
と、レンも不安気に言った。国民は、もちろん各国の要人達に何かあっては大問題になる。
「そんな事今さら出来ねぇだろう、安心しろレン、俺達が居るじゃないか」
「そうだぜぇ殿様、俺っち達が付いてるんだ安心しなよ、ところでアンドロスよぉあのワン公呼び寄せられねぇのかぁ?」
と、マルスとカイエンが言った。カイエンが言った「ワン公」とは、ヘブンリーの迷いの森を守る番獣ヴェルヘルムである。
「だからヴェルヘルムは犬ではないぞカイエン、ヴェルヘルムを呼び寄せるなど不可能だ」
と、アンドロスが呆れたように言った。
「でもトラズ湾からだと城下まで直ぐだよね、今どの辺りに侵入したイビルニア人は居るんだろう?ひょっとしたらもう城下に来てるんじゃ」
「それは大丈夫よレオニール、私がラストロに言って城下の四方にラダムの枝を備え付けさせました、異常があれば直ぐに私が気付きます」
と、アストレア女王がレンに話した。レン達は、ラダムの枝が備え付けられていた事に全く気付いていなかったので驚いた。
「戴冠式は、必ず明後日行います、レオニール良いですね?」
と、アストレア女王に言われレンは、何かホッとした。ヨーゼフは、サイモン大将を呼び出し城下町や付近の警戒を最大にするよう言い渡した。海上では、相変わらずベッサーラの艦隊が来ては、引き上げを繰り返していた。海の警戒に当たっているテランジン達は、それをむしろ不気味に思っていた。
「あいつら一体何がしたいのだ?」
テランジン達の耳にもトラズ湾で起きた出来事が伝えられた。
「我々を引き付ける囮だったか…ルーク、俺は陸に戻る、後はお前達で何とか出来るな?」
「はい、兄貴、任せてくれ」
テランジンを軍港に降ろしルークは、また艦隊へ戻って行った。テランジンは、まず海軍本部に行き部下や子分達に指示を与え登城する事にした。城下町付近まで来て陸軍兵士がやたら増えている事に気付き城に急いだ。登城し真っ先にレン達が居る部屋へと向かった。
「おおテランジンやはり戻って来たな」
と、ヨーゼフが言い役人からの報告を改めて詳しくテランジンに話した。
「なるほど、今回はかなりの人数で侵入した様ですね」
と、テランジンは、船の大きさを聞きどの程度の人数か想像した。そして、今どの辺りに居るのか考えた。かつては、自分達もザマロ支配下のトランサー王国に潜入した時の事を思った。通常の人の足だとトラズ湾から港町まで二日、三日はかかるがイビルニア人である、一日もあれば十分来ているだろう。
「もう、港町まで来ているかも知れません」
「何?良し退屈しのぎに俺達が見回ろう」
と、マルスが言い出した。するとカイエンも嬉しそうに行こうと言ったがアストレア女王とアンドロスに止められた。
「港町には各国の者が来てるのですよ、龍神のあなたが軽々しく表を出歩いてはいけません」
「何でぇ、この間は行かせてくれたじゃねぇか!何で港町は駄目なんだよ?」
「当たり前だ、田舎の町と港町では人の数が違うだろう?少しは控えろ」
と、二人に言われカイエンは、ぶつくさ文句を言ったが聞き入れられる事は無かった。
「じゃあぼくが行って来る」
と、シーナが言ったが「あなたもです」と、アストレア女王に言われシーナは、しょんぼりした。マルス、ラーズ、テランジンだけが港町に向かった。港町もまた戴冠式が明後日行われる事で大いに賑わっている。ベッサーラ王国とは、戦争中だと忘れている様子である。
「この町は、のん気と言うか何と言うのか一応トランサーは戦争中なんだぜ」
と、ラーズが呆れたように言うとマルスもその通りだなと笑った。
「まぁ仕方がねぇよ、戦争中っつったってイビルニアの時とは違うしな」
マルス達は、何となく町を歩いているがイビルニア人の気配を読み取る事を怠ってはいない。あちこち歩き回り昼過ぎもあって腹が減ったとマルスが言い出したのでテランジンは、マルスとラーズを大衆酒場兼食堂である「青い鳥」に連れて行った。
「オヤジ」
と、テランジンが店主に声を掛け三人は、奥の席に着いた。オヤジと呼ばれた店主とシンの恋人ライラが三人の前にやって来た。
「よう、テラン、何だ海は大丈夫なのか?あっ?こちらの旦那方は」
「久しぶりだな、元気にやってたかい?」
「この店は相変わらず居心地が良いなぁ」
と、マルスとラーズが言うと店主は、ぺこりと二人に頭を下げた。テランジンは、イビルニア人が侵入している事を話した。ライラが手を口にあて驚いている。
「こんな時に喧嘩を売って来たベッサーラ王国には呆れていたが、まさかイビルニア人が絡んでいたとは…で若様の戴冠式は大丈夫なのかい?」
と、トランサー国民である店主が心配した。マルスとラーズは、自分達やドラクーン人、エンジェリア人、獣人が居るから大丈夫だと話した。
「義兄弟としてもレンの戴冠式の邪魔は絶対にさせんさ」
「オヤジ、若の戴冠式は明後日だ、もしかすると今晩辺りにでもこの付近に現れるかも知れん、気を付けてくれ」
「ああ、気を付けるよ、テラン、旦那方どうそ若様の事お頼みしますよ」
と、店主は言いマルスとラーズに一礼して奥へ引っ込んだ。ライラがマルス達の注文を聞き厨房へ向かった。しばらくして注文した食べ物が運ばれ三人は、腹を満たしまた港町を歩いた。かつてカツがカンドラ達に拷問された小屋まで足を運んだ。しかし、全くイビルニア人の気配を感じる事は無かった。
「まだこの辺りには来てないのかな?」
「その様に思われますが、何か気になりますね」
「ふぅむ、戴冠式に合わせて暴れるかも知れんな、何とか明日までにひっ捕らえて始末しねぇとな」
三人が港町まで戻った頃には、日が暮れていた。
「今日はこのくらいにしますか、私は軍本部に用がありますので殿下らはもう城にお戻り下さい、今魔導車を呼びます」
と、テランジンは、持っている小型魔導無線機を取り出し連絡を取った。しばらくして城から魔導車がマルスとラーズを迎えに来た。テランジンは、海軍本部から直接屋敷に帰ると言いマルス達を見送った。テランジンは、海軍本部に向かい海の上のルークとシンに連絡を取った。
「そちらの状況はどうか?」
「ああ、兄貴さっきまたベッサーラの艦隊が見えたが攻撃すらしてこなかったよ」
「何か気味が悪いぜ」
「やはり連中は囮だな、ベッサーラの艦隊よりむしろ小船を警戒しろ、それが真っ黒なら構わん、沈めてしまえ」
「分かった、艦体に隠れてるかも知れねぇ、気を付けるよ」
と、テランジンは、指示を出し今度は、ジャンパール海軍のアイザ大将とランドール海軍、ロギリア海軍の司令官に連絡を取り、ルークとシンに話した事を話した。どの国の司令官も妙だと思っていたらしくテランジンの話しを聞き納得した。
「了解したテランジン大将、イビルニアの船を警戒しよう」
「よろしくお願いします閣下」
と、最後にアイザ大将と話しテランジンは、連絡を終え屋敷に帰る事にした。そして、深夜テランジンが言った事が的中した。丁度、トランサー王国から南西辺りを巡回していたロギリア海軍が見つけた。領海ぎりぎりに現れたベッサーラの艦隊の陰に隠れる様にしてイビルニアの真っ黒な船がいた。ロギリア海軍の司令官は、一旦気付かないふりをしろと艦隊に命じベッサーラの艦隊に向け砲撃した。撃ち合いになったがイビルニアの船が戦闘海域から離れた事を確認したベッサーラの艦隊は、撃ち合いを止め逃げ去った。ロギリアの司令官は、イビルニアの船がトランサー領海内に入った事を確認していた。撃ち合っていた最中に艦隊の中で一番足の速い艦にイビルニアの船を追うよう命じていた。ほどなくしてイビルニアの船を撃沈したと報告が入った。
「良くやった、イビルニア人はまだ生きている者がいるのか?」
「いえ、浮いて来たの者はことごとく頭を撃ち抜き殺しましてございます」
「うむ、ご苦労、夜が明け次第、大帝様に報告する」
そして、夜が明け司令官は、直ぐにティガー大帝に魔導無線で報告した。ティガー大帝は、大喜びでレン達に話した。
「我が軍の者が見つけて沈めたと言う、テランジン殿の申された通りだったな、ははははは」
「はい、ありがとうございますティガー大帝、助かりました、もうこれ以上イビルニア人を国に入れる事は出来ませんからね」
「ところで侵入したというイビルニア人どもは見つかったのかね?」
と、ティガー大帝は、父ベアド大帝に良く似た顔でレンに言った。レンは、首を横に振り、代わりにマルスが答えた。
「まだなんだ大帝、昨日俺とこいつとテランジンで港町に出かけたが全く気配を感じなかった、下位や中位の連中なら近くに居たら必ず分かるんだが」
と、マルスが難しい顔をして言った。ティガー大帝は、まだ港町にすら来てないのだろうと話したが、レン達は、あまり良い顔をしなかった。
「いいえ、大帝、僕達の足ならトラズ湾から城下までニ、三日は掛かりますがイビルニア人の足なら一日で来ると思います、どこかに隠れているのでしょう」
「な~る、気になりますな」
「今日も俺とこいつで港町を見て来るよ」
と、マルスがラーズの尻を叩きながら言った。カイエンとシーナがどうしてもマルス達と一緒に行きたいとアストレア女王に訴えていた。
その頃、ライオット達イビルニア人は、港町から少し離れた森の中で身を潜めていた。ライオットは、ここまで来る途中通り過ぎた村で明日レンの戴冠式が行われる事を知り、あえて危険を冒す事もなく戴冠式が行われる明日をこの森の中で待つ事にしたのだ。
「いよいよ明日だ、明日この世界は戦乱の渦へと落ちる、ククク、この地で各国の指導者達が死ねば必ずトランサーの責任問題となる、ましてやドラクーン人とエンジェリア人までこの国に来ていると言うではないか、面白くなるぞ、特にドラクーン人とエンジェリア人を殺せば世界の力関係は一気に崩れ混乱するだろう、その混乱に乗じて我々の国を興す」
「我ら中位者も恨みを晴らす事が出来ます」
「そうだ、お前達が上位になれぬきっかけを作ったレオニール・ティアックとマルス・カムイこの二人は必ずお前達で始末せよ」
「ははっ!」
と、そんな事が森の中で話されている事を全く知らないマルスとラーズは、また港町を歩いていた。カイエンとシーナは、結局アストレア女王から町を出歩く事を許されなかった。
「ふふ、あいつらふて腐れて城の中の食べ物全部食うんじゃねぇか?」
と、ラーズが妙な心配をした。
「それにしてもコノハやカレンが一緒に行きたいと言わないのが不思議だな、いつもなら必ず付いて行くと言うのに」
と、マルスは、ちょっと寂し気に言うとラーズが訳知り顔で答えた。
「そりゃそうだろう、あいつらもイビルニア人の恐ろしさは十分に分かっているだろうからな、まぁ大人になったんだろうぜ」
「そうかなぁ」
と、二人で話しながら歩いているとデ・ムーロ兄弟を見かけ声を掛けた。何をしているのか聞いてみると退屈しのぎに散歩しているだけだと答えた。
「お二人は何をしてるんです?一国の王子と大公爵様がこんな所を歩いて」
マルスがイビルニア人の事を話すとデ・ムーロ兄弟は、少し顔色を変えた。
「テランの野郎何やってやがんだい、さっさと始末してくれりゃあ良いのに」
「まぁそう簡単にはいかないさ、連中は戴冠式の時に動きを見せるだろうからな、その時には必ず皆殺しにしてやる、襲ってきても下手に騒がず役人の指示に従う様に」
と、ラーズが言いデ・ムーロ兄弟と別れた。その頃、トランサー城内に居るコノハとカレンは、ずっとレンとエレナの部屋でごろごろしていた。エレナは、ユリヤとアン皇太子妃、シャルロット太子妃と結婚生活について話していた。エレナの父母トラヤとタカは、今度いつ来るか分からないからと城内を歩き回っていた。そして、レンは、ヨーゼフ、アルス皇太子、ヨハン太子、ティガー大帝と政務室でイビルニア人の事を話し合っていた。
「今回、侵入して来たイビルニア人もまた中位者だけかな?下位の連中なら大した事ないけどメルボンの町に現れた中位者は相当強かったって言ってたし、心配だな」
と、レンが浮かない顔で話しているとトラズ湾で行方不明だった村人の死体が上がったと報告が入った。死因は、首を絞められた事による窒息死だった。殺したのはイビルニア人だと直ぐに分かったと言う。それを聞いてレンは、ジャンパールのフウガ屋敷に女中奉公していたセンとリクを思い出した。彼女らも絞め殺されたり首の骨を折られたりして死んだ。レンは、センとリクが良く作ってくれた料理や遊んでくれた事を思い出し、つい涙を溢した。
「若、いかがなさいましたか?」
と、ヨーゼフが驚き声を掛けた。レンがセンとリクの話しをするとアルス皇太子は、子供の頃フウガ屋敷に遊びに行った時の事を思い出した。ヨーゼフもザマロ支配下のトランサー王国を脱出し一時フウガ屋敷に匿われていた頃を思い出した。
「おセン殿とおリク殿の料理は絶品でしたなぁ…もちろん奥方のマーサ殿の料理も絶品でした」
「うん、ヨーゼフ、殺された村人の家族に見舞金を送ってやって欲しいんだ」
「ははっ、その様に手配致します」
そう言ってヨーゼフは、役人を呼び殺された村人の家族にレオニール王子からだと10万ユール届けるよう言い渡した。
「話しは変わるがあの木を見ていると何か不思議な気分になりますなぁ」
と、窓から見えるラダムの木を見ながらティガー大帝が言うとアルス皇太子とヨハン太子も同じ事を言った。レンは、ラダムの木と実の話しをした。時々、実を食べないとまた先祖返りを起こすかも知れない事も話した。王族であるラストロと息子のミハエルも食べている。
「そう言えばアストレア女王がラダムの枝を城下の四方に備えさせたと言ってたけど何でだろ?」
と、ヨハン太子が言うとヨーゼフがうんうん頷き答えた。
「女王は何か細工を施したのでしょう、イビルニア人共が城下に入り込めぬように」
「結界みたいなものかい?」
「左様、女王を信じましょう」
と、ヨーゼフは、にっこり笑い答えた。そのアストレア女王は、中庭のラダムの木の前にアンドロスと居た。ラダムの木の前にある妹ミストレアに良く似た女神像を見つめていた。渡り廊下を通りがかった侍女が、中庭に居るアストレア女王とアンドロスを見てあまりの美しさにため息を吐き通り過ぎた。
夕方になり港町を歩き回っていたマルスとラーズが城に帰って来て町の様子を皆に話した。今の所、トラズ湾から侵入したはずのイビルニア人達の気配は、感じられない。しかし、どこかに必ず居るはずだと言った。レンは、やはり戴冠式を延期しようと言ったがヨーゼフ達に反対された。夕食を終え明日は、いよいよ戴冠式だと言う事で皆、早めに就寝する事にした。そして、深夜、ライオット達イビルニア人が行動に出たのだった。彼らは、隠れ潜んでいた森から城下町付近の森へと移動した。人間がどんなに厳戒態勢を執っていても本気のイビルニア人には、通用しなかった。
「さぁレオニール、首を洗って待っていろ、戴冠式が貴様の命日となる、ククク」




