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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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カロラの始末

 マルスは、カロラ侍従の首根っこを掴んで病室に入って来た。

 「これ、騒々しいぞ場所をわきまえぬか、たった今フウガが息を引き取ったというのに」

 イザヤが注意した。それを聞いたマルスの顔が鬼のような形相に変わった。カロラを床に叩きつけるようにして座らせ言った。

 「お前がイビルニア人をこの国に引き入れたせいでフウガが死んだ」

 「そそそ、そんななぜサモン閣下が…私は何も知らない…」

 カロラは、怯えきっていた。レンは、握っていたフウガの手をそっとフウガの胸の上に置いた。そして、椅子から立ち上がりカロラを見た。目には、怒りが現れている。

 「あなたが僕を殺すように依頼したイビルニア人は、元々僕もおじいさんも殺すつもりだったんだ、十五年前の約束を果たすためにと言っていた」

 レンの目からまた涙が流れ出た。

 「あいつはこうも言っていた、さすがにあの厳戒態勢では、イビルニア人とて侵入出来ないと…あなたの協力があったからジャンパール国内に入り込めたと…」

 「わわ私は、何も知らない」

 カロラは、震えながら答えた。目は、きょろきょろと泳いでいる。

 「へぇ~知らないか、じゃあなぜ俺がお前を見つけた時、あんなところに居たんだ?大きな荷物を背負って」

 マルスがあきれ顔で言った。マルスがカロラを見つけた場所は、侍従達が詰めている部屋ではなく、城外に続く通路だった。

 「お前を探し回ったおかげでフウガの最期を看取れなかったじゃないか、どうしてくれるんだ」

 マルスの目にも涙が浮かんでいる。本当は、大泣きしたい気持ちを必死で抑えている。普段は、ヘラヘラして冗談ばかり言ってるように見えるが本来涙もろく情に厚い。

 「そのほう」

 と、イザヤは、皇帝の威厳を出して厳しく言った。

 「何故なにゆえレンを殺そうとたくらんだ、レンが実はトランサー王国の王子レオニール・ティアックと知っての事か?申せ!」

 「イビルニア人は、あなたが僕の素性を知ってるんじゃないかと言っていた、それと僕はあなたに何か恨まれる事をしましたか?」

 レンは、今すぐにでも殺してやりたい気持ちを抑えて出来るだけ冷静に言った。部屋にいる皆が床に座らされているカロラを見下ろしている。もはや言い逃れは出来ないと観念したのかカロラは、開き直りレンを睨み付けながら話し出した。

 「この小僧が悪いんだ、サモン閣下の孫と言うだけでおかみの寵愛を受け皇族方と親しくし、さらに平民の小娘までこの城内に連れて来て…自分がトランサーの王子だと分かって好き勝手にやっていたのだろう」

 「ぼ、僕がおじいさんの孫だから?トランサーの王子だから?あなたは何を言ってるんだ?僕は、今日まで自分がトランサー王国の出身と言う事も王子だという事も知らなかった…なぜ、あなたは知っていたんですか」

 と、レンは、珍しく声を荒げて言った。

 「どこでレンがレオニール・ティアックと知った、余も皇后もフウガも誰にも話したことはないぞ」

 イザヤが厳しい顔で言った。

 「ぐ、偶然聞いてしまったんです、どどど、どうかお許しをお上」

 カロラは、どうして自分がレンの素性を知ったのか説明した。

 「なんと…あなたは私達の話を立ち聞きしたのね」

 と、ナミ皇后があきれ顔で言った。イザヤは、怒りで顔を真っ赤にして言った。

 「では、レンが余の妹ヒミカの子で余の甥と言う事も分かってイビルニア人に暗殺を依頼したのだな」

 「そそそ、それは…おお、お上どうか、どうかお許しを…」

 「ならぬ、レンの暗殺を考えただけでも重罪と言うに、そのほうがせいで余が一番信頼し一番の臣下であるフウガを死に至らしめた事は事実、絶対に許さぬっ!」

 イザヤが、今にも殴りかからん勢いで言った。カロラは、床に頭を擦り付けるようにして許しを請うた。

 「フウガが眠っている、外で話そう」

 と、アルス皇太子は、死んだとは言わず眠っていると言って皆を部屋の外へうながした。カロラは、またマルスに首根っこを掴まれ部屋の外に引きずり出された。部屋の前では、他の侍従や侍従長が待っていた。カロラは、侍従長に助けを請うたが相手にされなかった。

 「あなたが僕を嫌う理由なんてどうでもいい、あなたが、イビルニア人をこの国に引き入れたおかげで僕のおじいさんは殺されてしまった、おじいさんだけじゃないバズやセンもリクも殺された…返して下さい…おじいさんもバズもセンもリクも、僕の家族を返せっ!」

 レンは、怒りを込め怒鳴り馬乗りになりカロラを殴りつけ、首を絞めた。レンの美しい顔は、怒りにゆがみ、ここにいる全員が見た事のない顔に変っていた。

 「殺してやる」

 「待て、レン」

 と、マルスがカロラからレンを引き離した。その時、一瞬カロラがニヤリと笑った。その顔をコノハ皇女は、見逃さなかった。

 「笑うなっ」

 と、言ってコノハは、カロラの顔を蹴った。カロラは、顔を押さえてのたうち回った。

 「そんなにあっさり殺すんじゃない」

 そう言ってマルスは、父のイザヤに何か耳打ちをした。イザヤは、驚いた顔をしたが大きくうなずいて侍従長に言った。

 「ヲの十三番隊を呼びなさい」

 それを聞いた侍従長の顔が青ざめた。ヲの十三番隊とは、ジャンパール国内で起きた犯罪、主に国事犯や無差別殺人犯などの極悪犯罪者の取り締まり及び尋問じんもんを担当する部隊で滅多に出動する事が無かった。泣く子も黙る十三番隊と呼ばれている。

 「ひいいいいい、そそそ、それだけはご勘弁を、お上お上、どうかどうか…」

 十三番隊と聞いてカロラは、錯乱状態になった。

 「そのほうの魂は、永久に癒されることもなく天に召される事もなくただただ、暗闇をさまよい続けるのだ」

 イザヤは、おごそかに言った。カロラの錯乱状態は、頂点に達した。

 「何もかもお前がいけないんだっ!きぃぃぃぃ」

 カロラは、レンに襲い掛かった。レンは、受けて立った。その時、侍従長がヲの十三番隊三名を連れて来た。彼らは、職務上覆面をしている。

 「陛下、お呼びでございましょうか」

 と、十三番隊の一人が言った。カロラの目に十三番隊が映った瞬間、カロラは、レンを突き飛ばして逃げようとしたが、マルスが思い切り蹴り飛ばした。壁に叩きつけられたようにぶつかり倒れた。十三番隊の三名が取り押さえた。

 「陛下、こやつ一体何をしたのですか?」

 イザヤは、事の経緯を十三番隊の三名に説明した。覆面をしていて顔の表情は分からないが、かなり驚いている事は、見て取れた。

 「良いな、レンの事は一切他言は無用じゃ」

 「ははっ!心得ましてございます、では直ちに取り掛かりまする」

 と、言って十三番隊の三名は、カロラを拷問部屋に連行した。これからカロラは、生き地獄を味わう事になる。急に辺りが静まり返った。

 「今回の事件に関与した連中を粛清せねば…」

 イザヤは、厳しい顔で言った。レンは、またフウガの病室に入り泣いた。イビルニア人との戦闘の疲れもあっていつの間にか眠ってしまった。どれ程眠っていたのか目が覚めると外は、薄暗くなっていた。フウガの亡骸も部屋になかった。レンは、慌てて部屋から飛び出しフウガの亡骸を探した。フウガの亡骸は、病院の霊安室に安置されていた。

 「ここでしたかレン殿、閣下のご遺体は、しばらくここに安置されます、おそらく国葬になりましょう」

 レンを探していた侍従長が言った。侍従長は、レンを城に連れて来るよう言われている。フウガにしばしの別れを告げレンは、侍従長と城に向かった。


 


 

 

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