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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
15/206

フウガの死

 レンが長椅子に座りうな垂れていると、イザヤ達が駆けつけてきた。

 「レン、大丈夫か、フウガの容体は」

 イザヤ皇帝が急いで言った。ナミ皇后もアルス皇太子、マルスやコノハが一斉にしゃべりだした。

 「屋敷で何が起こったの?」

 「レン、怪我はないのか?」

 「誰にやられたんだ?」

 「どうしてレン達が酷い目に遭うの?」

 と、皆に一斉に質問攻めにされレンは、倒れそうになった。イビルニア人との戦闘の疲れもあり体中が痛い。

 「おいっ、しっかりしろ」

 マルスが倒れそうになったレンを支えた。レンは、屋敷で起きた事を話した。皆息をのんで聞いている。

 「じゃ、じゃあそのイビルニア人は、元々、十五年前の約束を果たすために来たっていうのか」

 と、マルスが言った。マルスもアルス皇太子、コノハは、まだレンがレオニール・ティアックだとは、知らない。イザヤとナミだけが知っている。そして、レンは、自分が実は、トランサー王国の王子だという事を話した。

 「レン…ごめんなさいね…隠していた訳じゃないの、本来なら私たちがあなたを引き取らなければならなかったの…でも」

 と、ナミが言い後は、イザヤが話した。

 「当時、余の妹、つまりお前の母ヒミカと父レオンそしてお前は、トランサーで死んだ事になっていたのだ、お前を城内で養育するには無理があった、城内で共に暮らせばお前の事を知りたがる連中に必ず秘密が暴かれていただろう、そうなればトランサーのザマロ・シェボットの耳に入るだろう、そうなるとザマロは、イビルニアと組んで戦争を仕掛けて来ただろう」

 レンは、イザヤの話を聞いても何とも思わなかった。全く記憶に無い両親の事よりフウガと過ごした時間の方がはるかに長く、今も自分の祖父は、フウガしかいないと思っていた。

 「色々意見を交わした結果、フウガにお前の養育を頼んだのだ、フウガは、常々言っていたよ、出来る事なら話したくないと、しかし、いつか話さねばならない…つらかっただろうよ」

 と、言ったイザヤの目に涙が浮かんでいた。ナミは、すでに泣いている。そんな両親の姿を見たマルス達も暗い顔をしていた。

 「でもおかしいな、海上も港も厳戒態勢を取っていたはずなのに、そのイビルニア人は、どうやって我が国に入って来たんだ」

 と、アルス皇太子が言った。

 「イビルニア人を手引きしたのはカロラ侍従です、僕を殺すよう依頼したそうです」

 と、レンは、自分の手に残っているフウガの血を見ながら言った。

 「何だって?カロラが…なぜだ、聞き間違えたんじゃないのか」

 イザヤは、信じられないといった顔をして言った。カロラと聞いてマルスは、何も言わずその場から姿を消した。

 「僕の事を相当恨んでいたようだと、イビルニア人が言ってました」

 「どうしてレンが恨まれなきゃいけないの?」

 と、コノハが言いレンの隣に座った。レンは、分からないと首を横に振った。その時、手術室の扉が開き中からフウガを乗せた担架が出て来た。ナミの計らいで特別な病室に運ばれた。

 「おじいさん、おじいさん」

 と、レンが呼びかけるとフウガは、ゆっくりと目を開けた。

 「フウガ、気が付いたのね」

 ナミは、フウガの肩を撫でながら言った。皆フウガを囲むように座った。イザヤが医師から説明を受けている。

 「陛下、残念ながらサモン閣下の容体は良くありませぬ、こちらに来るまでに多くの血を失っておられておりますので…」

 医師は、そう言ってうつむいた。

 「そうか…ご苦労であった、そちはもう休むがよい」

 イザヤは、悲痛な面持ちでレンの隣に座りフウガを見守った。レンは、ずっとフウガの手を握っていた。フウガの命が消えようとしているのは、誰が見ても明らかだった。レンは、涙を流しフウガを見つめていた。

 「二人だけにしてあげよう」

 と、イザヤが言った。悲しくてもう見ていられなかった。イザヤ、ナミ、アルスとコノハが部屋から出て行った。

 「…おじいさん」

 「レン…お前が無事で本当に良かった」

 と、フウガは、静かに言った。

 「僕は、おじいさんを守れなかった…ごめんなさい…僕のせいで酷い目に遭わせてしまいました」

 「何を言う…これで良かったのだ、お前の身に何かあったら死んでも死に切れん」

 「そんな死ぬなんて言わないで下さい…」

 「いや、もう駄目じゃ」

 レンは、嫌だと首を横に振った。

 「レン、今から話す事を良くお聞き…」

 「…はい」

 「レン…お前に忠誠を誓うヨーゼフ・ロイヤーと言う男を探しなさい、そしてその男と共に両親の敵を討つのだ」

 レンは、驚いた。まさか両親の敵を討てと言われるとは思ってなかった。

 「かたき?」

 「左様、今トランサー王国を牛耳っておるザマロ・シェボットだ、その手助けをヨーゼフはしてくれる」

 「そんな…敵討ちなんて…僕は…」

 今のレンにとって敵討ちよりフウガの容体が良くなる事が第一だった。もう家族と呼べるのはフウガ以外にいない。用人のバズも女中のセンとリクもイビルニア人に殺されている。

 「ザマロを討ち果たしトランサーの王になってくれ、そのためにわしはお前を育てたのだ…それがわしの願いでもある」

 「ぼ、僕は、ずっとレン・サモンでよかった、ずっとおじいさんの孫でよかったのに…」

 「すまぬ、今まで本当の事を話さずにいた事を許してくれ…レン」

 フウガは、出来る事ならずっと祖父と孫の関係でいたかった。レンの頭の中では、フウガとの思い出が滝の様に溢れた。武術の稽古の時は、本当に厳しかったが、稽古が終わるといつも大きな手で頭を撫でてくれた事や初めて病気になった時、ずっと傍にいてくれた事など、それもこれも全ては、両親の敵を討たせトランサー王国の王レオニール・ティアックにするためだったと知った。そしてそれが、フウガの願いである事も…レンの心は決まった。フウガの願いを叶えようと決めた。

 「おじいさん、分かりました、父と母の敵であるザマロ・シェボットを討ち取りトランサーの王になります…でも、でも忘れないで下さい、僕は、フウガ・サモンの孫レン・サモンである事を」

 「ありがとう…レン…」

 フウガは、レンが自分の孫、レン・サモンと言ってくれた事が本当に嬉しかった。涙が溢れた。

 「…しかし、あの世でバズや…センとリクに詫びねばのぉ…巻き込んでしまった…」

 「おじいさん…」

 レンは、フウガの手を強く握った。しかし、フウガには、握る返す力が無かった。

 「おじいさん、そのヨーゼフと言う人はどこにいるんですか?」

 「うむ、サ、サイファのドラクーンとの国境付近に居るはずだ」

 「サイファのドラクーンとの国境付近ですね、分かりました、必ず行きます」

 「レン…お前のこれからの道は、と、遠く険しい道のりになる…しかし一人ではない…お、お前を待つ者はヨーゼフ以外にもいるはずじゃ、それらを探し出せ」

 「はい…」

 レンは、フウガの息が荒くなってきている事に気付いた。

 「レン…どこじゃ?」

 「ここにいます、僕はおじいさんの傍にいます」

 「そうか、も、もう何も見えんわい」

 フウガの目はもう見えないようだった。レンは、フウガとの別れがもう直ぐだと悟った。

 「ああ、迎えが来たわい…レン…今までわしの孫でいてくれてありがとう…わしは何時いつでもお前を見守ってるぞ、レン…愛してるよ」

 そう言って、フウガは、永久に目が覚める事のない眠りに入った。死んだ。

 「おじいさん、おじいさんっ!目を開けて下さい、おじいさん…うわああああぁぁぁぁ」

 レンは、泣き叫びながらフウガをかせまいと身体を揺さぶった。病室の外にいたイザヤ達が部屋に入って来た。

 「フウガ…」

 イザヤ達は、フウガを囲むようにベッドの脇に立った。ナミは、レンの肩を抱き一緒に泣いた。部屋は、悲しみに包まれた。その時、部屋の外が急に騒がしくなった。マルスがカロラ侍従を連れて来た。

 

 

 

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