葬儀の後で
カツの死後、五日が経ち城下にある葬儀場でカツの葬儀が行われた。軍港では、軍艦から弔砲が撃たれていた。カツの故郷メルガド国にカツの親兄弟が居るか確認したが、確認が取れなかった。葬儀を取り仕切ったのは、ラストロであった。レンは、ラストロにカツの葬儀の指揮を執るよう命じていた。葬儀には、各国の大使や海軍関係者が弔問に訪れカツの死を悔やんだ。中でもジャンパール皇国からは、一番関係が深かったヤハギ中将が高速艇で来て人目も憚らず泣いていた。
「惜しい人を失ってしまった…テランジン君、本当に残念だ」
「閣下にそう言って頂けてカツも喜んでいるでしょう」
と、テランジンは、心からそう思っていた。ルーク、カツ、シンは、イビルニア戦争でヤハギ中将の指揮のもと戦った。ヤハギは、ルーク達元海賊らの持つ航海技術や戦場での勇猛ぶりを高く評価していた。
「カツ君を殺った下手人は?」
「ははっ、その事なんですが閣下、後でお話しします」
と、だけテランジンは、答え弔問に訪れている各国の海軍関係者達にあいさつ回りに行った。シンは、終始カツの棺の傍に居て涙を流していた。ルークは、テランジン一家の若衆である元海賊達にあれやこれやと指示を出して弔問に訪れた各国の海軍関係者達の相手をさせていた。
「シン、カツはきっと極楽へ行けるよ」
と、レンは、シンに声を掛けた。シンの目から涙がとめどなく流れた。シンにとっては、カツは、最高の相棒だった。メルガド国では、出身は別の地域だったが、十七、八の頃、初めて酒場で出会った時から気が合い二人で組んでよく悪さもして来た。シンは、自分の身体の半分を失った気分だった。
「シンさん、必ずカツさんの無念を晴らしましょう」
と、リュウが鼻息を荒げて言った。
「坊ちゃん…ありがとうごぜぇやす、ありがとうごぜぇやす…くっふぅぅぅぅ」
と、嗚咽に耐えながらシンは、リュウに礼を言った。葬儀も終わりを迎えラストロが最後に弔辞は、海軍中佐シン・クラインが読み上げると言うとシンは、とうとう来たかといった顔をして涙を拭いカツの棺が置かれた祭壇に向き壇上に立ち読み上げた。
「我が永遠の友カツ・ブロイ…君、失くして我語られん…君、死に給い我が身半分を失い思う、我今日有るは君の…君の…あぁぁぁ畜生!おいカツッ!俺が必ずカンドラの野郎をぶっ殺してやるからな!お前が味わった痛みをあいつらにも味あわせてやるからな、ふぐっ…ううう、絶対、絶対お前の無念を晴らしてやるからな!だから…だから安心してあの世に行け!カンドラの野郎がそっちに行ったら今度はお前があの野郎をぶっ殺してやれ!ふぅぅぅ…畜生!うわぁぁぁぁぁ」
シンは、弔辞を読み上げる途中、張り詰めていた気持ちが一気に爆発したのだろう、徹夜で考えた弔辞を読み上げず今、この瞬間に思った事を叫ぶように言い泣き崩れた。葬儀場からもすすり泣く声が聞こえた。泣き崩れるシンにヨーゼフが近付きそっと立たせ壇上から降ろし葬儀は終わった。レンとヨーゼフ、エレナとリリーは、カツに最後の別れを言い城に戻りそして、テランジン達元海賊とエレナの弟リュウ、シンの恋人ライラは、カツが入った棺を火葬場へ持って行くため残った。海軍なら水葬だろうと誰もが思ったが、シンの要望で火葬に決まった。
「水葬なんかにしちまったらカツが魚の餌になるだけだ」
と、言い火葬にした。カツの棺が火葬場に運ばれテランジン達も最後の別れを言い火葬した。数時間後、骨だけと化したカツを骨壺に納めながらシンが手ごろな大きさの骨を見つけるとそれを食べた。
「な、何してるんだお前?」
と、驚いたルークが言うとシンは、大真面目な顔をして答えた。
「これであいつは俺と共に生きる」
「な~る、そういう事か、では俺も」
と、今度はテランジンとルークが同じ様に骨を食べた。
「カツさん、僕に勇気を与えて下さい」
と、今度は、なんとリュウまで骨を食べた。そうして、その場に居たテランジンの若衆達も食べ骨壺には半分ぐらいしか骨が入らなかった。
ハーツ山のカンドラ達は、偵察に出していた若衆からカツの葬儀が今日行われたと報告を受けていた。
「ふん、カツの葬式やってたのかあいつら、どうりで海から聞こえる大砲の音がうるさい訳だ」
と、チャーリーが目を細めて言った。
「ところで旦那ぁお仲間が一人まだ帰って来ねぇそうだな、どうしたんでぇ?」
と、カンドラがダークスに言った。ダークスは、少し間を空けて答えた。
「ふむ、そうなんだ親分、ハーツ山の見張りを命じていたのだが…ひょっとしてレオニール達に殺されたのかも知れん、山の北側に腕と脚が転がっていたと聞いた」
「何だって?大変じゃねぇか」
と、コールが慌てて言うとダークスは、手を軽く降り言った。
「なぁに気にするほどでもないさ、我々は痛みを感じん、仮に連中に捕まって訊問を受けていたとしても何も答えないさ」
「ほほう、痛みを感じねぇのか、そりゃあスゲェなぁグフフフ」
と、カンドラは、興味深げに笑った。そして、カンドラは、既にメタルニアから呼び寄せた若衆百人を別荘前に集めた。
「おう、お前達、改めて言う良く来てくれた、この俺様をこんな姿にしたテランジン、ルーク、シンに復讐する時が来た」
と、カンドラは、右腕に装着した義手を高々と上げ若衆達に言った。
「この復讐が成功すれば俺達カンドラ一家の名が世界中に広まると同時に世界中の者共が恐怖するだろう、そして、ここに居るダークスの旦那の復讐が上手くいけばこの国を俺達の物に出来るかも知れねぇ、野郎共ぬかるんじゃねぇぞぉ!気合入れて行けっ、良いな!」
「おおーーーっ!」
と、若衆達は、親分の復讐と言うよりも国を盗るという事に興奮したのだろう、一気にカンドラ一家の士気が高まった。そんな様子をカンドラと側近であるチャーリーとコールが満足気に見ていた。
(ふん、全く単純な連中だ、こんな人数で勝てると本当に思っているのか?まぁどちらにせよ私は、レオニール、テランジン、そしてヨーゼフを殺せればそれで良い)
と、ダークスだけが冷ややかな目でカンドラ一家を見ていた。
カツの葬儀を終え火葬を済ませたテランジン、ルーク、シンは、ヤハギ中将を連れ捕えたイビルニア人が居る陸軍本部に居た。そこでは、陸軍の士官がイビルニア人に厳しい訊問をしていたが、痛みを感じないため一向に進まなかった。
「困ったなぁ、どうすればこいつに痛みを感じさせれるんだ?」
「グフフ、我々ニハ人間ノ拷問など通用シナイ、クェクェクェッ」
「親分、どうしましょう?」
と、イビルニア人を捕えた陸軍少尉がテランジンに言った。テランジンは、ヨーゼフからどうやってイビルニア人を苦しめるか聞いていた。
「こいつを外に出せ、面白いものを見せてやる」
イビルニア人を縛り付けた椅子ごと外に運び出した。イビルニア人は、仮面の奥で不敵に笑っている。空は、曇り模様であまり晴れ間が無かった。
「コンナ所デ訊問カ?」
「まぁそういう事だ、ではまずその仮面を取ろう」
と、テランジンは、イビルニア人の仮面を剥ぎ取った。醜い顔が現れ皆、不快に思った。
「ふん、相変わらず下位、中位の者は不細工だな、吐き気がする、しかしどうして上位になるとああも人間らしくなるのか、不思議でならないな」
と、テランジンは、余裕だ。イビルニア人は、顔を引きつらせた。
「何をオレに聞コウトシテイルノカ知らないがコンナ事をしても無駄ダゾ」
「絶対話すさ、とりあえずカンドラとはどういう繋がりだ?」
「カンドラ?誰だそいつは?ヒヒヒ」
「ほう、一応とぼけるのか…しかし」
と、向かい合って座っているテランジンが空を指差した。
「そろそろ、晴れ間が見える頃だ」
そう言うと雲の隙間から太陽が出て地上を照らした。パッと明るくなった瞬間イビルニア人の表情が一変した。醜い顔が更に醜くなり大量の汗を拭き出し始めた。
「ヤ、ヤメロ…」
「何をだ?」
「ココに居タクナイ部屋の中でハナソウ」
「断る」
と、テランジンは、無表情に言った。イビルニア人の身体がガタガタと震え出した。その様子を傍で見ていたヤハギ中将は、その昔フウガやヨーゼフが今と同じような事をしていた事を思い出し感心していた。
「義理とは言えさすがはヨーゼフ閣下の息子だなぁテランジン君」
「えっ?」
「いや、昔そうやってよくヨーゼフ閣下やフウガ閣下が捕えたイビルニア人を日光に当てて拷問してたのを思い出したんだよ、君が若い頃のヨーゼフ閣下に見えて来たよ」
と、ヤハギ中将に言われテランジンは、少し照れた。ごほんと咳払いを一つ落としてテランジンは、続けた。
「さっさと質問に答えねぇと永遠に苦しむ事になるぞ」
「ワ、ワカッタからとにかく顔に仮面をシテクレ」
と、イビルニア人が苦しそうに言った。テランジンは、イビルニア人の顔が少しだけ隠れる様にしてやった。すると落ち着きを取り戻したイビルニア人は、カンドラ達との関係をあっさり話し始めた。
「用心棒?ふ~ん、半島が無くなり帰る場所が無くなったからなぁ、それでカンドラの用心棒になったのか…お前と一緒に来ているはずの上位の者の名は何と言う?」
「……」
「この野郎生意気に庇ってるつもりか?仮面を剥ぎ取るぞ!」
と、ルークが脅すとまたもやあっさりと答え始めた。よほど日光に当たるのがきついのだろう。
「ダ、ダークスだ」
「ダークス、それでお前も含めて何の目的でやって来た?ただカンドラにくっ付いて来た訳ではあるまい」
と、テランジンは、彼らの目的を知っていながら確認の意味を込めてイビルニア人に問うた。
「モ、目的ハ、練気ヲ扱える貴様やレオニール、ヨーゼフの抹殺ダ」
それを聞いたヤハギ中将が驚いている。
「カツと言ウ男ヲサラッタ時、ソコニ居ル男がダークス様が言ッタノヲ聞イタハズだ」
と、イビルニア人は、顎でシンを差し言った。
「ふむ、やっぱりそうか、で、この国に来ているイビルニア人は、お前とダークスともう一人中位の者の三人だけか?他にも居るのか?」
「フフ、サァナ、一緒に来タノハ三人ダケダガナ」
と、他にも居る様な言い方をイビルニア人はした。
「この野郎、はっきり言いやがれ!」
と、シンが仮面を剥ぎ取った。日光がまともに当たりイビルニア人は、悲鳴を上げた。
「ギイヤァァァ…ジュ純血ハ我々だけだ!後は半人ダ!ハ、早ク、カカカ仮面ヲ!」
シンは、イビルニア人に荒っぽく仮面をしてやった。
「半人…半イビルニア人まで子分にしてるのかカンドラは!益々生かしておく訳にはいかんな」
「それと兄貴、カンドラが人数集めて何をやろうとしてるのか聞き出さねぇと」
「おお、そうだった、カンドラが俺達に復讐しようとしている事は分かっている、しかもかなりの人数を呼び寄せてるそうだな、しかしいくら人数を集めてもこちらには軍隊がある、復讐のために勝ち目の無い戦でも始めるつもりなのかあいつは」
「ハァハァ…知ラナイ、親分ガ貴様ラニ復讐シヨウトシテイル事は知ってるがドウヤッテ復讐スルノカハ知ラナイ、ハァハァ…俺ニハ興味も無い、俺ハただダークス様に従ウダケダ」
と、イビルニア人は、苦しそうに答えた。直射日光を浴びて相当苦しい様だ。テランジンは、ヤハギ中将に意見を求めた。ヤハギ中将は、イビルニア人をじっと見つめて答えた。
「そのカンドラと言う男はひょっとして町に火でも付けようとしているのではないか?大昔の話しで少数で戦に臨む時に相手方の城や町や村に火を付けその混乱に乗じて相手方の大将を討ち取るという話しを聞いた事がある、イビルニア人を味方に付けているのなら案外本気なんじゃないのかね、そのカンドラは」
それを聞いたテランジン達は、納得した。シドゥの弟ルディや母親のミーシャが住む屋敷に火を付けテランジンの二人の兄が経営する家具店に火を付けた。その時は、ただ自分達の縁者が狙われているだけかと思っていたが、ヤハギ中将の話しを聞き確信した。
「そうだ、きっとそうだ、カンドラの野郎城下を火の海にするつもりだ、サイモン達に言って山より町の警戒をさせよう」
テランジンは、目の前のイビルニア人からは、もう情報はないと見て直ぐに首を刎ね殺した。そして、ヤハギ中将をジャンパール大使館まで送りルーク、シンを連れて登城した。カツの葬儀の後と言う事もあっていつもより静かだった。城全体がカツの死を悔やんでいる様だった。
「若、おやじ、カンドラ達の真の目的が分かりました、カンドラの野郎この国を乗っ取る気です」
と、レン達が居る部屋に入るなりテランジンは、言った。
「国を乗っ取る?」
「馬鹿な、わずか百人ほどでこの国を乗っ取ると言うのか?」
と、レンとヨーゼフは信じられないといった顔をした。テランジンがヤハギ中将から聞いた話しをするとヨーゼフは、ハッとしてレンを見た。
「若、今晩あたりが危険です、葬式の後というものは皆、故人の事を思い過ごします故に警戒心が薄れ隙が出来ます、ハーツ山の警戒に当たっているサイモンの部下達には城下やその周辺の地域を警戒させましょう」
「俺の子分達も警戒に当たらせます」
そう言うとヨーゼフ、テランジン、ルーク、シンは、慌ただしく部屋から出て行った。部屋に一人残ったレンは、ぼんやりと天井を見つめた。カツが「殿様ぁ~」と明るい笑顔で自分を呼んでいる光景が目に浮かび涙が溢れた。
「カンドラがテランジン達を狙う真の目的はこの国の乗っ取りか…そしてイビルニア人は僕とテランジンを狙っている…協力し合う理由はそこにあったのか、そんなことは絶対にさせない、この国もテランジン達もあの連中には奪わせない」
と、レンは、独り言を言い気合を入れるため自分の両頬をパンパンと叩いた。そして、フウガ遺愛の斬鉄剣を引っ掴み部屋を出ようとした時、不死鳥の剣、ラムールの声が頭に響いた。
(レオニール、カツ・ブロイの事は本当に残念でした…彼は必ずフウガ達のもとへ行けるわ)
「ラムール、うん、僕もそう信じてるよ、でもどうしたの?」
(今、この国に来ているイビルニア人ダークスを侮ってはなりません、あの者はお前達やアルカト、フラック同様に練気の技を持っています)
「えっ?じゃあダークスはフラックみたいに真空魔波みたいなのを撃てるの?」
(そう、いやそれ以上かも知れません、気を付けなさい、侮ってはまた大事な人を失う事になるでしょう)
「分かった、気を付けるよ」
(レオニール、テランジンにはイージス鋼で出来た帷子を着せておきなさい、分かりましたね?)
「えっ?テランジンに?何だか良く分からないけど必ず着させるよ」
と、レンが返事をするともうラムールの声は、聞こえなくなった。レンは、ラムールから言われた通りにするため城内の武器庫に行き、イージス鋼と呼ばれるこの世界で最も硬いとされる金属で出来た目の細かい鎖帷子を取り出しテランジンを探した。城内にある兵士達の詰め所に行きテランジンを探した。
「テランジンはどこ?」
「レオニール様?ああテランジン大将ならお屋敷に戻られました、一体何が起きてるのですか?」
と、突然現れた王子に驚いた兵士が答えた。この兵士は、カンドラ一味の事を一切聞かされておらず、最近、海軍や陸軍のごく一部の将兵達が妙に忙しくしている事が気になっていた。レンは、この兵士にカンドラ達の事を話そうか迷ったが、下手に話して心配させては、良くないと思い話さなかった。
「そう、分かった屋敷に行ってみるよ」
と、レンは、言って詰め所を後にして今度は、ヨーゼフの部屋へ向かった。ヨーゼフに不死鳥ラムールから聞いた事を話して屋敷に行って来ると言うとヨーゼフは、近衛師団隊長のクラウドを呼びレンの護衛をさせた。
「クラウドよ、お城からわしの屋敷まで遠くは無いがイビルニア人が関与している以上油断は出来ん、しっかり若を護衛するように」
「ははっ!この命に代えましてもレオニール様をお守り致します!」
と、クラウドは、いつも大真面目に答える。そして、イージス鋼で出来た鎖帷子を手にレンは、クラウド隊に守られながら屋敷へ向かった。丁度、テランジンは、魔導車に乗り込み港町に向かおうとしている所だった。
「待って、テランジン!」
と、レンは、慌ててテランジン達を止めた。レンは、ラムールから言われた通りテランジンにイージス鋼の鎖帷子を着るよう言った。
「ははっ若、大丈夫ですよ、ほらこの通り着てますよ」
と、テランジンは、服を捲り帷子を着ている事をレンに言った。
「その帷子は撃剣用の鋼鉄製だろ?ラムールが言ったんだテランジンにはイージス鋼で出来た帷子を着せる様にって、僕も何だか良く分からないんだけどラムールが言うから絶対着た方が良いよ、ねっ、お願いだからこれに代えてくれ」
と、主君であるレンに頼まれては断る訳にはいかず、テランジンは、撃剣用の帷子を脱ぎイージス鋼の鎖帷子を着た。
「これでよろしいので?」
「うん、絶対にカンドラ達の事が決着するまで他の帷子に代えちゃ駄目だよ、良いね!」
「ははぁ分かりました」
と、テランジンは、不思議そうな顔をして返事をした。レンは、言い知れぬ不安を感じていた。レンは、ラムールから聞いた事を全てテランジンに話した。
「ほほう、そのダークスって野郎はなかなかの手練れなんですね」
「そうみたいだよ、フラックみたいな技も持ってるらしい」
と、二人で話していると城下や港町の警戒の指揮を執っていたルーク、シン、サイモン大将らがロイヤー屋敷に集まって来て、それぞれレンとテランジンに報告した。外は、もう薄暗くなっている。
「テランジン、先ほどルークとシンとで話したんだがお前はレオニール様と城に居た方が良いんじゃないか?」
「えっ?どういう事だサイモン」
「そうだよ、どうして?」
と、テランジンとレンが言うと今度はルークが真剣な顔をして話した。
「イビルニア人の事です、あの中位者を訊問した時、ダークスって上位者は殿様、兄貴、ヨーゼフの旦那を狙ってると言ってやした、だから兄貴達にはイビルニア人に集中して欲しいんです、おそらくダークスはカンドラ達とは別行動に出るはずです、カンドラ達が町に火を付け混乱させたら、当然お城も慌ただしくなります、そのどさくさに紛れてお城に侵入して来るんじゃねぇかと」
「そこを俺や若で迎え討てと言うのか?」
「はい、恐れながら…だって中位者なら何とかなるが上位者だと俺達じゃ敵わねぇし」
と、ルークが情けない顔をして言った。
「その代り絶対にカンドラ達を捕まえるから、殿様、兄貴、どうかお願いしやす」
と、シンが深々とレンとテランジンに頭を下げた。
「分かった、ルーク達の言う事を信じよう、そうだカンドラ達の事だけどカンドラの手下なら手に余れば殺して良いよ、ただしカンドラと二人の側近、それにカツの拷問に直接関わった手下だけは生け捕りにしよう、カツと同じ目に遭わせてやらないとね」
と、レンは、大真面目な顔をして言った。ルーク達は、まさか手に余れば殺せと言われるとは、思っていなかったらしくちょっと驚いた。そして、夜も次第に更けて行きレンとテランジンは、城に戻り、ルーク、シン、サイモン大将らは、城下や港町の警戒に向かった。そして、いよいよカンドラ達が動きを見せ始めた。




