表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
147/206

カツの最後

 レン達は、町外れの林の中にある小屋を目指し魔導車を走らせていた。

 「サイモンここか?」

 「ああこの奥に確か小屋があったはずだ」

 魔導車では、林の中に入れそうにないのでレン達は、魔導車を降り走って小屋に向かった。

 「カツ無事でいてくれ」

 と、レン達は、祈りながらひた走った。

 

 「全員集まったな?良し、旦那ぁやってくれ」

 と、カンドラ達一味は、小屋の前に集まっていた。ダークスは、懐から紫色の玉を取り出し言った。

 「行き先は、ハーツ山ブラッツの別荘」

 と、玉を地面に叩き付けた。紫色の煙がもうもうと立ちカンドラ達を包み込んだ。

 「あっ?!あの煙は!逃げるなぁ!!」

 煙に気付いたレンが、斬鉄剣で抜き打ちざまに真空斬を放ったが、煙を通り抜け小屋の一部に当たり切り裂いた。煙が上がっていた場所からは、イビルニア人の気配だけが残っていた。小屋の前まで来たレン達は、辺りを見回し警戒した。

 「さっきの煙はイビルニア人が持ってる物の煙だった、気配もする、どこに行ったんだ?」

 「若、周りには人はもう居ません、小屋の中を見ましょう」

 と、テランジンが言いルークが小屋の扉を蹴破った。そして、テランジンが剣を抜き小屋の中へ先に入った。続いてルーク、シン、サイモン大将が入り最後にレンが入った。血塗れになり右腕右脚を切断されたカツが目に入り絶句した。皆、息を飲みカツを見た。

 「こ、こんな事って…」

 レンは、カツを見て何と言っていいか分からなかった。

 「殿様、これがカンドラのやりかたです、デスプル島にテラン兄貴が来る前に何度も見て来ました…ふぅぅ…ふぅぅぅぐっ…カツ、カツッ!」

 と、ルークは、血塗れのカツの半身を起こしながら言った。死んでいると思った。シンも死んでいると思いカツの傍に膝立ちに立った。カツの目は、見開かれたままである。レンは、傍に落ちていたのこぎりに気付きカツの切断された腕や脚を見た。

 「ま、まさか、こののこぎりで…」

 「殿様、カンドラにとってはこんな事、何でも無い事なんです、人を人とは思わない…だから平気でこんな事を…ううぅぅぅカツ…」

 と、シンは、泣きながらカツの爪が全て剥がされ親指を潰された左手を取った。

 「し、信じられない…これが同じ人間がやった事なのか…」

 レンは、ゆっくりとカツに近付いた。そして、ハンカチを取り出しカツの血と汗で汚れた顔を拭いてやった。涙がとめどなく流れた。

 「うぅぅ…カツ…」

 「う、ううぅぅぅぁぁ」

 「えっ?カツ?カツ、しっかり!僕だレオニールだ!」

 カツは、まだ死んではいなかった。テランジンもルークと同じようにカツの半身を起こしながら叫ぶように言った。

 「しっかりしろカツ、俺だテランジンだ!俺達は、ここに居るぞ」

 「あ、ああ兄…貴…カ、カンドラ達は…ハ…ハーツ山に…イ、イビル…ニア人と…い、一緒…に」

 「奴らはハーツ山に行ったんだな、分かった」

 「と、とにかくカツを病院に運ぼう」

 テランジンは、子分達に命じて即席の担架を作り林の手前に駐車してある魔導車までカツを運んだ。大急ぎで病院へ運び、直ぐに傷の手当てをさせた。切断された腕と脚も繋いだがのこぎりで切断された脚の縫合だけが上手くいかず医者が困り果てていた。レンは、ドラクーン大使館に使いを出し治療が得意なドラクーン人に病院に来てもらいカツの脚を繋いでもらった。

 「レオニール王子、彼は一体何をされたんですか?あんな酷い怪我をした人間を見るのは初めてですよ」

 と、脚を繋いだドラクーン人が言った。カツの腕と脚は、元に戻ったが多くの血を失っていて死を避けられない事は、誰の目にも明らかだった。手術室から出て来たカツを病室へ搬送する間、レンは、医者から現状を聞かされた。

 「王子、カツ中佐は血を失い過ぎてます、意識があるのが信じられないくらいです残念ですが、死は目の前まで来てるでしょう、最後を看取るお覚悟を」

 病室では、男達が必死で涙を堪えカツを見守っていた。シンは、カツの剣を抱き持ちルークは、繋がった右腕をそっと握っていて、テランジンは、静かに見守っていた。

 「あ、兄貴、ど…こだ?どこに…居る?」

 「俺は、ここに居るぞカツ、皆ここに居る」

 「そ…そうか、よ、良かった…お、俺…は…もう…だ、駄目だ…カ、カンド…ラ達を…ぜ、絶対…やっつけて…くれ」

 「分かっている、必ずカンドラ達を討つ、だから安心しろ」

 「た、たのん…だぜ、ル、ルー…クあにぃシンを…シ…シンをよろしく…頼んだ…ぜ…こ、こいつ馬鹿…だから…兄ぃの…兄ぃのたす…けが必要…だ」

 「心配するな、俺がいつも見ている」

 「うるせぇ馬鹿は余計だ、こんな時に下らねぇ事言ってんじゃねぇぞ兄弟」

 と、シンは、耐えられなくなり涙で顔をぐしゃぐしゃにして言った。病室に集まっているテランジンの子分達も低い嗚咽を出していた。

 「お…おい…シ、シン…ライラを…ライラを幸せにしてやって…くれよ…ふ、不幸に…したら…ば、化けて出て…やるか…らな…ぐっぅぅぅ」

 「安心しろ兄弟、必ず、必ず俺がライラを幸せにしてみせるぞ」

 と、シンは、カツのボロボロになった左手をそっと握り言った。カツは、微かに頷いた。そこへ、レンが病室に入って来た。

 「おい、カツ、殿様だぞ、しっかりしろ」

 と、ルークが励ましレンを見た。レンは、涙で頬を濡らしカツに言った。

 「カツ、カンドラ達は必ず僕達が殺してやる、一緒に居たイビルニア人達も倒す、約束するよ」

 「へ、へへっ…と、殿様…お、俺達みてぇな…きょ、凶状持ちを…け、けら…家来に…し…してくれて…あり…がとう、ございま…した、ト、トランサー…こ、国民とし…て…し、死ねる…事…を…誇りに…おも、思い…ます」

 「死ぬなんて言うなっ!カツ、頑張れっ!」

 レンは、カツを死なせまいと必死になって励ました。カツの目は、見開かれているが、もう何も見えていないようだった。

 「ああ、あに、兄貴…テ、テラン兄貴…お、俺…みてぇな…半端もん、を…お、おと…男にしてくれて…ありが…とう…み、みんな…ありが…とう…」

 「おい、カツッ!しっかりしろ!カツ、おいカツッ!」

 「カーーーーーーーツッ!」

 カツは、レン達に見守られて静かに息を引き取った。その顔は、穏やかだった。カツ・ブロイ三十四歳の短い生涯だった。十八歳の時、喧嘩で人を殺めてシンと共に母国メルガドを出奔して十六年目の冬の事だった。カツの遺体は、防腐処理が施されテランジンの屋敷へと運ばれた。屋敷内は、騒然となった。

 「カツの兄ぃがられた!」

 と、屋敷に居たテランジン一家の若衆達が大騒ぎしている。家をカンドラに焼かれテランジンの屋敷で厄介になっているシドゥの弟ルディと母親ミーシャやテランジンの二人の兄家族が何事だと若衆を引きとめ聞いた。

 「伯父貴おじき、大変です、カツ兄貴がカンドラ達に殺されました」

 二人の兄は、若衆達から伯父貴と呼ばれていた。海軍本部に詰めていた子分達も続々と屋敷に集まり出していた。近所の者が何事だと不安になり城に連絡した。知らせを聞いたヨーゼフが屋敷に魔導話を掛けた。

 「一体、何事じゃテランジン」

 「おやじ…カツが、カツがカンドラ達に殺されました」

 「何じゃと?誠か?」

 テランジンは、カツの亡骸を屋敷に運び入れた事を話しハーツ山に居るはずのカンドラ達を成敗しに行くと話した。

 「若も今、屋敷に居られるのじゃな?うむ、わしも屋敷に行く、カンドラを討つのは今しばらく待て」

 ヨーゼフは、慌ただしく政務室から出るとエレナと娘のリリーの所へ行き話した。

 「そ、そんな…カツさんが」

 「はい、エレナ様、誠に残念でござる、拙者今から屋敷に帰り今後の事を話して参ります」

 と、ヨーゼフ達が話しているとエレナの弟リュウが三人の様子を見て何かあったのか聞いた。話しを聞き信じられないといった顔をした。

 「う、嘘だ!カツさんが死んだなんて、あんな強い人がなんで?」

 「リュウ殿、残念ながら誠でござる」

 「…閣下、僕も連れて行って下さい、あの時ジャンパールの家の近所に現れた盗賊達をやっつけてくれなかったら僕達今頃どうなっていたか分からない、カツさんは僕や父母、近所の人の恩人なんです、カツさんに酷い事をしたカンドラって奴に復讐したいです」

 「ちょっとリュウ止めなさい!あなたが出て行ってもレンやテランジンさん達の足手まといになるだけよ」

 と、姉であるエレナは、リュウを止めたが、頑として聞かなかった。ヨーゼフは、一人うんうんと納得していた。

 「良う申されたリュウ殿、カツの事をそこまで思って頂けてありがとうございまする、カツも喜んでおるでしょう、ではカツのためリュウ殿のお手をお借り致します」

 「ちょっとお父さん!」

 「閣下まで」

 「エレナ様、リリー、大丈夫でござる、若や拙者、テランジンが付いております」

 そう言ってヨーゼフは、リュウを連れて自分の屋敷に向かった。屋敷では、テランジンが集まった若衆達に何があったのか話していた。話しを聞いた若衆達は、今にも飛び出さん勢いだった。

 「待て、連中がこの国に居る事は間違いない、それに連中はイビルニア人を伴っている、軽率な行動を取る事は絶対に許さん」

 と、テランジンが厳しい顔つきで言った。そこへヨーゼフとリュウが屋敷へ来た。

 「カツさん…何で…」

 「坊ちゃん」

 と、シンは、リュウを抱き締めた。ヨーゼフは、カツの亡骸を見て静かに怒りの炎を燃やしていた。この日、ジャスティ大臣やディープ男爵といった重臣達を屋敷に集め会議した。

 「メタルニアの役人め、カンドラ達を国から出すなとあれほど言ったのに、何と言う事だ!」

 と、ジャスティ大臣は、怒りを露わにしていた。

 「おそらく他の小役人がカンドラにまいないを貰っていたんでしょう、だから変名を使って出国した」

 「許せん!私は今からメタルニア大使館に行き抗議して来ますぞ」

 「大臣ちょっと待って、考えがあります」

 と、レンは、ジャスティ大臣を引き留め話し出した。こうなったらカンドラ一味をトランサーで一網打尽にしようと言った。

 「カンドラもたった十数人でテランジン達を狙おうとは思ってないはずだよ、きっと子分達をトランサーに呼び寄せてるはずだ、それに一緒に居るというイビルニア人が気になる、カツがハーツ山に行ったと言っていたけど、どうしてハーツ山を知ってるんだろう?」

 「ふむ、確かに妙ですな、ザマロ時代に来た事があるのでしょうか?」

 「ラストロ殿下をお呼びして聞いてみましょう」

 直ぐにラストロが呼び出された。ザマロ・シェボットの息子であるラストロは、父ザマロがトランサーを支配していた時、多くのイビルニア人に合っている。

 「ハーツ山の存在を知るイビルニア人?私が知ってる限りでは名のある上位者で言うとアルカト、ジルド、ダークスだけです」

 と、ラストロは、答えた。当時ハーツ山の所有者は、反乱を起こしたヘルゲ・ブラッツ侯爵でハーツ山にあったブラッツの別荘にこの三人は、間違いなく行った事があるとも話した。

 「アルカトとジルドはもうこの世には居ない…すると一緒に居るイビルニア人とはそのダークスとか言う奴でしょうか」

 と、テランジンが言うとラストロは、多分そのはずだと答えた。

 「ダークス…知らんのう、初めて聞く名です」

 と、ヨーゼフは、知ってる限りの上位者の名前を思い出しながら言った。

 「ダークスは父が半島の封印を解いた後に上位に昇格したと言っておりました、元々ジルドの部下の様な者だったそうです」

 と、ラストロが話すとヨーゼフが何か思い出したのかあいつかと独り言を言った。

 「拙者が昔ジルドを倒した時に一緒に居た中位のイビルニア人でしょう、拙者やフウガ殿が放った真空斬から逃げおおせた者が居ました」

 「とにかく、カンドラ一味を我が国で捕えるのなら一芝居打たねばなりませんぞ」

 そこでディープ男爵の提案でこちらは、まだカンドラ達とは、気付いていないとしカツは、何者かに暗殺された事にした。ジャスティ大臣は、メタルニア大使館に行き抗議するとともにカンドラの子分達をわざとトランサーに送るよう伝えた。

 「左様、カンドラ一味は我が国で始末する、文句はありませんな?それとカンドラから賄賂を貰っているであろう役人共に厳しい罰を与えるようお願いする、それとこれは極秘である、カツ中佐は何者かに暗殺されたという事で」

 メタルニア大使は、額に汗を滲ませ話しを聞いていた。メタルニアとしても国家の恥である。

 カツが亡くなり会議を終えた翌日、世界各国の新聞には「トランサー王国海軍カツ・ブロイ中佐、何者かに暗殺される」との記事が掲載された。カツの事を知る人々の驚きは、隠せなかった。直ぐにマルスから魔導話で連絡が来た。

 「おい、どうなってるんだ?新聞見て驚いたぞ!カツが殺されたって」

 「うん…実は」

 と、レンは、マルスにカンドラ達の事を話した。マルスは、怒り狂ってトランサーに行くと言い出したがレンは、断った。その後、テランジンに代わり話しをさせた。

 「殿下、お気持ちだけで結構です、カツも喜んでくれてますよ、カンドラの事はデスプル島に居た俺達で始末します」

 「そうか、分かった、でも上位のイビルニア人の事が気になる何かあったらいつでも言ってくれよ」

 「ありがとうございます」

 と、その後ラーズからも連絡があり同じ事を話した。ジャンパールのエレナの実家では、父トラヤと母タカが近所の人々と新聞片手に話していた。

 「カツってあの時、盗賊を退治してくれた人だよね、殺されたなんて信じられないよ」

 「私も信じられないが、この記事にはイビルニア人が関与していると書いてありますよ、またイビルニア人だ」

 「イビルニア半島はもうこの世には無いんでしょう?マルス殿下やアヤマさんの婿になるレオニール王子らが海の底に沈めたと聞いてますが」

 「話しではメタルニアにまだ多く残ってるそうだ、メタルニアは一体何をしてるんだろうね」

 「全くだ」

 と、そのメタルニアでは、極秘に捜査を行っていた。カンドラの子分達をわざとトランサーに行き易い様にしてカンドラに留守居を命じられた子分達を一斉に捕まえていた。ドラクーン大使館からは、龍神となったカイエンの言葉を伝えに大使が城に来ていてレン達に言葉を伝えていた。

 「自分が応援に行けない事は誠に残念である、カツ・ブロイ中佐のご冥福を祈ると共に自分の代わりに大使館の者を使ってもらいたいと、そして何事もレオニール王子らの意に添う様にとの仰せであります」

 「ありがとうございます、大使殿、その時がくればお力をお借りします」

 と、レンは、丁重に言いテランジンを見た。

 「お申し出、感謝します、必ずあなた方の治癒の能力が必要になりますのでよろしくお願いします」

 カツの死後、表向きは、イビルニア人のみを的に絞った捜査が行われていてカンドラ達は、何も知らずハーツ山のブラッツの別荘でのんびりとメタルニアから呼び寄せている子分達を待っていた。

 「へへ、後三日もすれば全員揃うだろ、それまでゆっくりしようや、なぁ兄弟」

 「そうだな兄貴、それにしてもここは別荘ったってボロボロじゃねぇか、まぁ雨風はしのげるが」

 と、カンドラとチャーリーが話していた。コールは、若衆を使って別荘付近の警戒に当たっている。

 「以前は、豪華な作りの別荘だったのだがこんなに朽ちているとは思わなかったな」

 と、ザマロ支配下の頃、この別荘に何度か来た事のあるダークスが言った。

 「ところでよぅ何でテランジン達は俺達の事気付いてないんだ?」

 と、カンドラは、てっきりテランジン達に自分達の存在を気付かれていると思っていた。

 「俺達が小屋から出た時にゃカツは死んでたんだろ?それに捕まった若いの二人はしゃべってないんじゃねぇか?」

 「ふむ、しかし何で連中が小屋に来やがったんだ?」

 「さぁなぁ、偶然だろ?」

 と、カンドラとチャーリーの話しを黙ってダークスは、聞いていた。

 (いや、レオニール達は、知っているはずだ、何か魂胆があるんだろう…まぁ良い、私はレオニールやテランジン、ヨーゼフと言った練気使いを殺せればな、カンドラ達がどうなろうが私の知った事ではない)

 と、イビルニア人上位者ダークスは、密かに思っていた。一方、港では、カンドラの子分が身なりを堅気風にして続々と入国していた。

 「ありゃあ堅気風だがどう見てもやくざ者だな、カンドラの子分達だろう午前中の便で三十人は居たな…おうおう、今度は五十人は居るぞ、一体どんだけ呼び寄せたんだ?」

 と、港を見張っていたシンが弟分と話していた。カンドラの子分達は、どこで調達したのかボロボロの魔導車で数台に分けてハーツ山に向かって行った。この日だけで八十人のカンドラの子分がトランサーに入国した。ハーツ山の見張りも万全の態勢を取っていた。陸軍のサイモン大将の部下達が見張っていた。

 「ぞろぞろとやって来るなぁ、あいつら本気でテランジン親分達を狙ってるのかなぁ、こっちは軍隊だぞ、やくざが軍隊に勝てると思ってるのか?」

 と、テランジンの結婚式のおり親子盃を受けた士官が言った。士官の部下も呆れたような顔をしていた。

 「ソコデ何ヲシテイル?」

 「えっ?」

 と、士官と部下が後ろを振り向くと真っ黒のフード付きマントを身にまとった男が一人立って居た。中位のイビルニア人である。二人は、驚き慌てて剣を抜き構えた。

 「イビルニア人か?!ええぇぇい!」

 と、士官が先に攻撃を仕掛けた。部下がその直ぐ後に攻撃を仕掛ける。イビルニア人は、するすると攻撃をかわし反撃して来た。右手に持った剣と左手に装備している鉄の爪で激しく二人に攻撃する。

 「うわぁぁぁ斬られたぁ!」

 と、部下が倒れた。部下がやられた事で士官の闘争本能に火が付いたのか凄まじい攻撃をイビルニア人に仕掛けた。まず、イビルニア人の左太腿から下を斬り飛ばし体勢が崩れた所で剣を持つ右腕を斬り飛ばした。倒れ込んだ所でとどめに首を刎ねようとしたが、思い返し生け捕りにする事にした。

 「大丈夫か?しっかりしろ」

 「少尉、早く奴に止めを!」

 と、斬られた部下が必死になって言ったが、少尉と呼ばれた士官は、生け捕りにすると言った。

 「こいつは親分への土産だ」

 そう言って士官は、サイモン大将に魔導無線で報告し生け捕ったイビルニア人を魔導車に乗せ陸軍本部へ向かった。直ぐにテランジンにも報告があり、テランジンは、ルーク、シンを連れて陸軍本部へ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ