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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
146/206

カツへの拷問

 港町で一番大きな宿屋の一番良い部屋でカンドラと側近であるチャーリーとコールが荒縄で縛られ気を失って倒れているカツを見下ろしていた。カンドラは、若衆一人に「起こせ」というような仕草をしてカツの気を取り戻させた。

 「う、うう…ってぇ…いててて、な、何だ?ど、どこだここは?」

 と、薄暗い部屋で目覚めたカツは、辺りを見渡した。そして、真正面に居たカンドラとチャーリー、コールに気付くと声を失った。

 「久しぶりだなぁカツ、元気そうじゃねぇかグフフフ」

 「…?ああっ?!カカカカンドラッ!」

 「馬鹿野郎、親分を付けろ!」

 と、チャーリーがカツの腹を蹴った。

 「ぐぅぅぅ」

 「おめぇこの国じゃ海軍の中佐だってな、島で毎日震えて小便ちびってた頃に比べると随分と出世したもんだなぁ、ええおい」

 と、カンドラが言うと周りに居た若衆達が大笑いした。

 「おい、静かにしろ、他の客に気付かれでもしたら面倒だ、兄貴、もうこの宿から出た方が良いぜ、直にテランジン達に見つかっちまうぜ」

 と、コールが若衆を静かにさせ言った。カンドラは、その通りだと言い荷物を若衆達にまとめさせ宿屋を出る事にした。宿屋を出てからの行き先は、元々ライラをさらって連れて行こうとしていた小屋だ。

 「こんな時間にお出になられるのですか、まだ夜明け前ですよ」

 「すまないねぇ急用が出来てしまったんだよ、まぁまぁこれで一つ」

 と、カンドラは、通常料金の二倍を宿屋に払ってやった。宿屋側もカンドラ達の事をガラは悪いがメタルニアから来た金持ちと思い込んでいたので特に疑う事もなく部屋を空ける手続きをした。カツは、若衆達に囲まれて見えないようにされていたので宿屋に気付かれなかった。青い鳥に火を付けに行った若衆二人の事が気になったが待っている訳にもいかず、カンドラ一味は、カツを連れ港町のはずれにある林の中の小屋へ向かった。


 「駄目だ、ここにも居ない他を当たろう」

 と、レンは、テランジン、ルーク、シンやテランジンの子分達、そしてサイモン大将らと手分けして一軒一軒宿屋や飲み屋を捜索していた。飲み屋を捜索するにあたっては、閉店している店も多くかなり難航した。

 「すいません!すいません!誰か居ませんか?開けて下さい!」

 と、レンは、ある飲み屋の扉をバンバン叩きながら叫んだ。

 「何だ、うるせぇなぁ今何時だと思ってんだ、店は終わってんだぞ!」

 と、怒鳴りながら扉を開けた店主が目の前に居る自国の王子を見て言葉を失った。レンは、店主に手短に事情を話すと店主は、血相を変えて答えた。

 「と、とんでもねぇうちにそんなのは来てませんし居ませんよ、ほ、本当です」

 レンは、念のため引き連れていたテランジンの子分達に店内を調べさせ居ないと分かると丁重に謝り直ぐに他の店の捜索を始めた。そんな時、テランジンと行動を共にしていた子分がレンを呼びにやって来た。

 「殿様、直ぐに青い鳥に行って下さい、カンドラの野郎の若い衆が捕まってます」

 「本当?良し行こう」

 と、レンは、急いで大衆酒場青い鳥に向かった。そこには、テランジン、ルーク、シンに既に訊問されているカンドラの若衆が口から血を流して店の床に引き据えられていた。

 「さぁ言えっ!カツはどこに居る、さっさと吐かねぇと歯が全部無くなっちまうぞ」

 と、言いながらルークが若衆を殴り倒した。

 「ぶべぇぇ」

 と、若衆が口から血と同時に奥歯を吐き出した。それを見たテランジンが店主に申し訳なさそうな顔をして言った。

 「オヤジすまんな、店を汚してしまって」

 「いやぁ掃除すりゃ良い事よ、おいゴン、新聞でも敷いとけ」

 「へい」

 と、ゴンが店に置いてあった新聞紙を若衆の下に敷き始めた時、レンが店に到着した。この日のレンは、違っていた。いつもならどんな悪党を見ても冷静さを保っているはずだが、カツがさらわれた事で気が立っていたのか若衆を見るなり思い切り蹴り飛ばした。それを見たテランジン達が驚いた。

 「わ、若、落ち着いて下さい、こんな事は俺達の仕事ですよ、お手が汚れます」

 「良いんだ、テランジン達ばかりに汚れ仕事はさせられない、おいお前、僕の家臣はどこに居る」

 と、テランジンが引きとめたが、レンは構わず若衆の胸ぐらを掴み言った。若衆は、一瞬レンを女と勘違いした。

 「お、女か?」

 カッとなったレンは、思い切り若衆を殴りつけ、以前ランドールでヨーゼフが女郎屋に居た男にやったように若衆の耳を引っ掴み思い切り引っ張り上げ言った。

 「良く聞け、僕の家臣カツはどこに居る、それとお前の親分のカンドラはどこだ?正直に言わないとこの耳を引き千切るぞ!」

 その様子を見てテランジン達は、虫も殺せない様な優しい顔をした自分達の主がこんな手荒い事も出来るのかと妙に感心していた。

 「いいいててててっ!は、放してくれよっ!カカ、カツって野郎は親分と一緒に居るはずだ、おおお親分はこの町の一番デカい宿屋に居る、本当だ信じてくれよ」

 と、若衆は、泣きそうになりながら一気に話した。それを聞きレンは、若衆の耳を放してやったが若衆は、ぶるぶる震えながら今度は、レンにすがる様に助けてくれと言い出した。

 「おお親分の居場所をしゃべっちまった…殺される、た、助けてくれよ、なぁ頼むよ助けてくれよ」

 「カンドラに関わった貴様らが悪い、諦めてこの国の法に従え」

 と、テランジンは、冷たく言った。レンは、カンドラの若衆二人を町の番所にある牢屋に入れるようテランジンの子分に命じ、テランジン、ルーク、シンを連れこの町で一番大きな宿屋に向かった。そこには、既にサイモン大将ら陸軍の者達が居て宿屋の番頭と話しをしていた。

 「ああ、レオニール様、テラン」

 番頭は、いきなり現れた自国の王子を見て益々血相を変えた。

 「いい、一体何事何ですか?ここにはカンドラと言う方はお泊りになってませんよ」

 「おい番頭、宿帳を見せろ」

 と、テランジンは、有無を言わさず番頭に宿帳を差し出させた。レン達は、血眼になり宿帳を改めたが「カンドラ」と言う文字は、見つからない。

 「おい番頭、この宿に右腕が義手の男が泊まったか?」

 「ははぁ先ほどからサイモン大将にも話しているのですが確かに右腕が不自由な方は居られましたが義手かどうかは分かりませんでした、それにその方はほとんどお部屋に居られたので」

 「そいつの名は何と言う?」

 「ええ、ドラプル様です十六人でお部屋を二つお取りになられてました」

 「ドラプル?」

 と、番頭から名を聞いたテランジンは、一点を見つめて考え出した。そして、ぶつぶつと独り言を言い出しハッとした。

 「ドラプル、ドラプル、カンドラデスプル…ドラプル…そうか、間違いない若、こいつですよこのドラプルって奴がカンドラですドラプルのドラはカンドラのドラ、プルはデスプル島のプル、あの野郎やっぱり変名を使っていやがった、で、番頭このドラプルはどこに居る?」

 「ははぁ夜が明ける前に宿をお出になられました」

 「何っ?」

 「行き先など言ってませんでしたか?」

 と、レンが言うと番頭は、泣き出しそうな顔をして答えた。

 「ここを出てどこに行くかは私は聞いておりません、一体そのカンドラと言う人はどういう人なのですか?」

 「簡単に言えば人の皮を被ったイビルニア人の様な男だ」

 「ええええ?」

 と、テランジンの言葉に番頭は、顔を青くした。レン達は、宿屋から出る情報は、もう無いと判断して、もう一度カンドラの若衆二人に訊問するため牢屋に向かった。

 

 レン達が牢屋に向かっている頃、カンドラ一味に捕らわれたカツは、宿屋があった港町から少し離れた林の中にある小屋へ連れて来られていた。この小屋には、滅多に人が来ない事を若衆が調べていた。カンドラは、念のため小屋の周りを若衆や中位のイビルニア人二人に警戒させた。既に夜が明けている。

 「さぁさぁカツよ、テランジンはどうしてる?元気にしてるのか?」

 と、カンドラは、床に座らせているカツを見下し言った。カンドラの後ろには、カツを捕えたイビルニア人ダークスが控えている。

 「……げ、元気にしてる」

 と、小さな声でカツは答えた。声が小さいとカンドラの側近チャーリーとコールがカツを蹴り回した。後ろ手に縛られているカツは、抵抗出来ないまま二人に蹴られた。

 「おい、止めろ、ところでカツよ、モリア屋敷と家具屋が燃えたの知ってるよな?ありゃあ俺が若い衆に言って火を付けさせたんだよ、テランジンに関わる奴を酷い目に遭わせてやろうと思ってなグフフ」

 そう言うとカンドラは、椅子から立ち上がりカツの目の前まで来て義手をした右腕を見せて言った。

 「この腕の恨み、片時も忘れた事はねぇ、俺達をあの島から追い出した張本人であるお前やテランジン達に復讐するためにメタルニアの木っ端役人に大枚たいまいはたいてトランサーに来たのだ、まず最初はカツお前からだ、おい準備しろ」

 と、カンドラは、言うと若衆達が鞄から拷問器具を取り出した。それを見たカツは、これから自分の身に起きる地獄を悟り恐怖で身体を震わせた。

 「へへっ、本当は四人揃えてやりたかったんだがな、まぁ良いだろう、始めろ」

 と、カンドラは、悪魔の様な笑顔で言い若衆達は、カツを小屋にあった椅子に座らせた。若衆達は、カツの両足を椅子の脚に縛り、台をカツの前に置き後ろ手に縛った縄を解きまず左手を台の上に置こうとした時、カツは、初めて抵抗した。椅子に座らされた状態で若衆二人を殴り倒し素早く足の縄を解こうとした。

 「この野郎!何してるさっさと押さえ付けねぇか!」

 と、コールが慌てて若衆達に言った。若衆達がどっとカツに襲い掛かったがカツには、敵わず皆殴り倒された。

 「ほほう、やるようになったなカツ、ここから無事に出られると思ってるのか?ふん、旦那ぁ手を貸してやってくれ」

 と、カンドラは、自分の後ろに居たイビルニア人ダークスに言った。ダークスは、無表情でカツに近付いた。足の縄を解いたカツは、身構え叫ぶように言った。

 「く、来るんじゃねぇ!」

 「フフ、抵抗しても無駄だ、お前はレオニールやテランジン、ヨーゼフのような練気を使えん事は知っている、ただの人間如きが私に勝てると思っているのか、ふんっ!」

 「ぐはぁぁあ」

 と、ダークスの鋭い拳がカツの腹を襲った。衝撃は、内臓にまで達したのだろう、カツは血を吐きながら床にうずくまった。殴り倒された若衆達がカツを袋叩きにした。

 「はぁはぁはぁ…」

 カツは、痛みで直ぐには立ち上がれなかったが、何とか立ち上がろうと頑張った。

 「グフフ、なかなか良い姿になったぞカツ、おいこいつの上着を剥ぎ取れ」

 と、カンドラは、若衆に命じた。カツは、上着を脱がされ仰向けに寝かされた。痛みで手足が思う様に動かせないカツは、カンドラ達を睨み付けるしかなかった。

 「何てぇ目しやがる小僧がぁ!」

 チャーリーが思い切りカツの脇腹を蹴った。カツの身体がくの字に曲がる。

 「うううっ」

 「生意気な、おいこいつの左手の爪全部剥がせ」

 と、チャーリーが若衆に言うと、ちょっと戸惑いながらも若衆は、カツの左手を取りやっとこで爪を剥がし始めた。カツの悲鳴が小屋に響く。

 「ぎゃぁぁぁぁ、や、やめろぉぉぉ」

 「ぎゃあぎゃあ喚くな!」

 と、コールがカツの腹を踏んだ。若衆は、震える手でカツの生爪をやっとこで剥いでいく。一枚剥がすたびにカツの身体がビクッと動く。

 「はぁはぁ…もう止めてくれ」

 「何言ってんだカツよ、この程度で済まねぇ事ぐれぇ分かってるだろ?ええ、おい、島に居た頃よく見てたじゃねぇか、おい、こいつの親指潰せ」

 と、コールが冷たく言い放った。カツは、左手を引っ込めようとしたが、若衆達に押さえられていて無理だった。若衆の一人がやっとこでカツの左手親指を掴んだ。またカツの悲鳴が小屋に響いた。

 「何やってんだ、最近の若い奴はこんな事も出来ねぇのか、よこせっ!」

 と、なかなか骨を砕く事が出来ない若衆を見て今度は、チャーリーが若衆からやっとこを取り上げるとカツの親指を掴み一気に握り締めた。ゴリゴリと骨が砕ける音がした。カツは、声にならない声を上げた。

 「ぐぐぐぐ…」

 カツの身体は、汗と血で塗れている。カツは、潰れた自分の親指を見て次は、どの指を潰されるのかと思うともう殺してくれと思った。若衆達は、顔を青くしてカツを見下ろしている。

 「おいおい、どうしたお前ら?情けねぇ顔しやがって、それでもこのカンドラ様の子分かえ?こんなのはまだ序の口だぞ、なぁチャーリー、コールよ」

 と、青ざめる若衆達を見てカンドラは、にこやかに言った。

 「おい、カツ、お前もこの程度で終わるとは思ってないよな?そうだろ?…ところでカツよ、テランジンの野郎、右脚が膝から下が義足なんだってな?どうだ?お前も尊敬するテランジン兄貴と同じようになるか?どうだ、んん?」

 「……い、いい、いや」

 「そうかそうか、なりてぇのか、良し決まった、おい、のこぎり出せ」

 と、カンドラは、有無を言わさず若衆にのこぎりを用意させた。カツは、直ぐに察しが付いた。

 「やや、やめてくれっ!」

 「そう言うなよ、お前の兄貴と同じ姿になれるんだぜ、おい、こいつの右脚を押さえろ」

 と、カンドラが言うと若衆の一人が、震える声でカンドラに質問した。

 「おお、親分、冗談ですよね、そののこぎりで、どど、どうするんですか?」

 「はぁ?何言ってんだお前?のこぎりとは何をする道具だ?ええ?物を切るための道具だろ、何言ってやがんだ、学校出てるのか?ほれっお前達もさっさとこいつを押さえ付けろ」

 若衆達は、力を振り絞って抵抗するカツを必死で押さえ付けた。カツが喚き散らすと直ぐにコールがカツを殴りつけ黙らせた。

 「のこぎりで何をするかって言ったなぁ、良しお前にのこかせてやる、やってみろ」

 と、カンドラは、先ほど質問した若衆にのこぎりを手渡しカツの右脚の膝から下を切れと命じた。若衆は、泣きそうな顔をしながらのこぎりのをカツの右膝の下辺りに当て、ゆっくりとのこぎりを挽き始めた。ズボンを切り裂き身に当たった瞬間、血がじわりと浮いた。それを見た若衆は、のこぎりを手放しカンドラに泣きついた。

 「出来ねぇ、出来ねぇよ親分、かか勘弁して下さいぃ」

 「何ぃ?出来ねぇだとぉ?駄目だやれ!出来ねぇならお前に罰を与えねぇといけねぇ、どうする?」

 親分の言動は、絶対である。やれと言われれば絶対にやらなければならない。罰と聞いて若衆は、覚悟を決めたのか震える手でのこぎりを持ち先ほど刃を当てた所にもう一度刃を当て挽き始めた。カツの悲鳴が上がった。刃は、直ぐに骨に当たりゴリゴリと音を立てた。血が一気に噴き出しそこら中が真っ赤になった。小屋の中が血なまぐさくなりのこぎりを挽く若衆は、吐きそうになりながらも血走った目で必死にカツの脚を切った。

 ぶちん

 と、ふくらはぎの肉が切れ右脚が切断された。カツは、激痛に耐え兼ね気を失っていた。

 「おうおう、良くやった、お前も一皮むけて男になったなグフフフ」 

 と、カンドラは、カツの脚を切断した若衆を褒めてやった。若衆は、泣きながら何度もカンドラに頭を下げ小屋から飛び出して行き外で思い切り嘔吐した。他の若衆達は、何とか耐えている様だった。気を失ったカツを容赦なくチャーリーが起こした。

 「う…うううう…も、もう殺してくれ」

 カツは、切断された自分の脚を見て呟くように言った。カンドラは、切断されたカツの右脚を持ちカツの顔に押し付け言った。

 「グフフフどうだ?自分の脚で踏まれる感想は?まだ殺しはしねぇ、まだだ、まだ足りねぇなぁ」

 カツは、もう抵抗する力も無かった。顔は、血と汗と涙でぐしゃぐしゃになっている。仰向けになっているカツの腹をコールが踏みつける。

 「ぐおぉぉぉぉ…」

 「何だ、まだ声が出るじゃねぇか」


 その頃、港町の番所にある牢屋でレン達は、青い鳥で捕まえた若衆二人に激しい訊問をしていた。

 「さぁ言えっ!カンドラはどこに行ったぁ?言わねぇとぉ…」

 「ぎゃぁぁぁぁ、ほほほ本当に知らないんですよぉ、助けて下さい」

 ルークとシンが若衆の指を折れない程度に曲げている。

 「俺達は、本当に店に火を付けて来いと言われただけなんです、信じて下さい、ぐぼぉぉぉ」

 「信じられるか馬鹿野郎」

 と、テランジンが若衆の腹を思い切り殴った。若衆は、泣きながら助けてくれと何度も言った。レンは、それを見てこの二人は、本当に知らないんじゃないかと思った。

 「お前達は、本当に知らないんだな?」 

 「はい、俺達は、ただ火を付けて来いと言われただけで…まさかあんなところで捕まるなんて思っても無かったから」

 「何か心当たりはないのか?カツを連れてどこかに行った事は間違いないんだ」

 「さっさと答えねぇか!」

 と、シンが思い切り若衆を殴った。若衆は、必死で考えている様だった。そして、何か思い出したのかすがるような目でレンに言った。

 「おお、親分がライラって店の看板娘をさらって来いと言ってました」 

 「それがどうした?ライラをさらってどうするつもりだったんだ」

 「その看板娘を町外れの林の中にある小屋で犯してやれって言って、ぎゃぁぁ」

 話しを聞いたシンが怒りで若衆の股間を蹴り上げた。若衆は、泡を吹いて動かなくなった。

 「あいつら元々ライラを連れ去るつもりだったのか、畜生め」

 もう一人の若衆は、自分も蹴られるんじゃないかと怯えた目でレン達を見ている。

 「今、この男が言った事は本当か?場所を詳しく言え、そうでないとああなるぞ」

 と、ルークが若衆の胸ぐらを掴み言った。若衆が場所を詳しく説明するとサイモン大将がその場所に心当たりがあると言ったので若衆二人をテランジンの子分に任せレン達は、急いで小屋へ向かった。

 

 「なぁカツよ、外はもう完全に朝になっちまったぜぇ今日も良い天気だぜぇグフフフ、しかしなぁカツよ、お前はもうお天道様を拝む事は出来ねぇなぁグフフフ」

 と、仰向けで虚ろな目をしたカツにカンドラが嬉しそうに言った。カツの身体は全身が血塗れであざだらけになっている。口の中は切れて血だらけになり、肋骨も数本は折れているだろう。左手の爪は全て剥がされ親指はやっとこで潰されている。そして、右脚は、膝から下がのこぎりで切断されている。まだ息をしている事が不思議なくらいであった。

 「グフフ、次はどこを攻めようか、目でもくり抜くか…おい、何か道具ねぇか?」

 と、カンドラが悪魔の様な笑みを浮かべて言った時、見張りに出していた中位のイビルニア人が小屋に入って来てダークスに何か囁いた。

 「親分、残念だがもう終わりにしよう、レオニール達がこちらに向かっているそうだ」

 と、ダークスが言うとカンドラは、軽く舌打ちをした。

 「あいつらどうやら捕まったようだな、それでここの場所を吐きやがったかクソッ!カツ、残念だが仕上げといく、右腕を出せ、おい」

 と、カンドラが言うとチャーリーとコールがカツの半身を起こし右腕を差し出させた。カツには、もはや抵抗する力など残っておらず、されるがままだった。

 「おい、カツこいつはお前の剣だ、なかなか上等な剣だな生意気な野郎だ、こいつで今からお前の右腕をぶった斬る」

 そう言うとカンドラは、カツの剣でカツの右腕に斬りかかった。しかし、剣術も何も習った事のないカンドラには、斬る事が出来なかった。腕の骨に当たり跳ね返った。何度も何度もやったが思う様に斬れない。無駄にカツを痛めつけているだけだった。

 「何だぁこの剣はぁ?全然斬れねぇじゃねぇかぁ、見掛け倒しのなまくらかぁ?ああ面倒臭ぇ旦那ぁ頼むわ」

 と、カンドラは、カツの剣をダークスに手渡した。ダークスは、剣をじっと見つめて言った。

 「親分、見当違いだぞ、この剣はかなりの業物だぞ」

 そう言うとダークスは、カツの右腕目掛けて剣を振るった。バサッと右腕が落ちた。チャーリーとコールがカツを乱暴に寝かせ立ち上がった。カツは、ピクリとも動かなかった。

 「親分、とどめは刺さなくて良いのか?」

 「ああ、面倒だから構わねぇほっとけ、そいつはもう死ぬ、さっさと行こうぜ、その何だっけ?ハーツ山ってところによぅ」

 と、カンドラは、面倒臭そうに義手の手を振り言った。ダークスは、カツの剣を斬り落とした右腕に床に縫う様に突き刺して手放した。そして、カンドラ達は、カツを捨て小屋からぞろぞろと出て行った。こうしてカツに対する凄惨を極めた拷問が終った。誰も居なくなった小屋で一人血塗れのカツだけが残った。




 


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