表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
144/206

カンドラ現る

 レン達を乗せた民間船が港に到着すると警備兵達が船から降りる階段に集まった。乗客の持ち物検査などを行うためであった。

 「さぁ列に並んでくれっ!」

 レン達の前に居た客が何事だと文句を言っていた。レン達は、一般人のふりをして民間船に乗っていたので大人しく警備兵達の指示に従った。警備兵達もまさか自国の王子とその側近が民間船で帰って来るなど思っても居ない。レン達は、帽子やフードを目深に被ったり顔を見え難くしていたので直ぐに怪しまれた。

 「おい、そこの四人組ちょっとこっちへ来い」

 と、厳つい警備兵二人がレン達を強引に船の甲板に作った取り調べ場所に連れて行った。レン達は、逆らわず大人しく連れて行かれた。

 「貴様らどうも怪しいな、まず帽子とフードを取れ」

 「やれやれ、一体何ごとじゃ」

 と、ヨーゼフが呟きながら帽子を取ると警備兵達は、呆然とした。

 「閣下ではありませんか!?…す、するとこちらの方はもしや?」

 「レオニール王子である、控えよ」

 警備兵達は、慌てて敬礼した。レン達が何事か聞くとサイモン大将の命で表向きは、危険物の持ち込み検査と言う事にしているが実際は、右腕が義手の男の警戒だと警備兵達は、話した。

 「テランジン達は知ってるんだね、良かった」

 と、レンは、安堵したがカツとシンは、益々顔色を悪くしていた。そんな二人の様子をヨーゼフは、見逃さなかった。警備隊長が城にレン達が帰って来た事を魔導無線で知らせた。レン達は、他の乗客や国民に気付かれない様に船を降り待っているとテランジンが魔導車に乗って現れた。

 「お帰りなさいませ若、おやじ、カツ、シンご苦労だった」

 「ただいまテランジン」

 レン達は、直ぐに魔導車乗り込み車内でジャンパールで起きた事を話した。祈祷師タリスの話しの途中で自分がマルス達に女装させられた事をうっかりしゃべりそうになったレンは、慌てて話題を変えカツとシンに盃事で世話になったとテランジンに礼を言った。

 「はい、若は改めてマルス、ラーズ両殿下と義兄弟になられたそうでトランサーでも話題になってましたよ」

 と、テランジンは、笑顔で答えたが、先ほどから浮かぬをしているカツとシンが気になっていた。

 「ところでカツ、シン先ほどから元気がないがどうした?」

 「あ、兄貴…」

 「カンドラの事だな」

 と、テランジンは、二人の元気の無さの原因を見抜いていた。レンとヨーゼフは、やっぱりと思った。城に到着したレンは、真っ先にエレナが居る部屋へ向かった。丁度、リリーや侍女達と裁縫事をしていた。

 「エレナ!」

 と、レンの声を聞きエレナは、針の動きを止めゆっくりと振り向いた。そこには、愛しい人の姿がありエレナは、誰憚だれはばかる事なくレンに抱き付き熱い口づけを交わした。

 「ただいまエレナ」

 「お帰りなさいレン」

 もう裁縫事どころではないとリリー達も作業を止め部屋から退出して行った。二人きりになったレンとエレナは、どちらからでもなく自然と身体を求め合ったが、事が終ると急に恥ずかしくなった。とりあえずヨーゼフ達が居る部屋へ向かった。

 「さぁ若が見えられたぞ、テランジン嬉しい知らせとはなんじゃ?」

 と、ヨーゼフ達は、レンとエレナを待っていた様子だった。テランジンとリリーは、照れ臭そうにしていた。レンとエレナが椅子に座るとテランジンが今まで見せた事のない様な顔をして話し始めた。

 「え~私とリリーに子供が出来ました、来年の戴冠式前には産まれるとの事です」

 「ええぇぇぇぇ?!やったじゃないかテランジン、リリーさん」

 「兄貴、おめでとうございます」

 レン達は、大喜びした。ヨーゼフは、突然娘が懐妊した事を聞き呆然としていた。

 「旦那もこれで本当に爺様になりましたね」

 と、ルークが言うとヨーゼフは、一瞬怒った様な顔をしたが、気を取り直したのかうんと頷き言った。

 「そうじゃもう歴とした爺になったわい、しかしわしにも孫の顔が見れるとは…ふふふ、ふふふふ」

 と、嬉しさの余り目に涙を浮かべていた。しばらくテランジンとリリーの子供の事について話していたが、話しがカンドラの事になるとルーク、カツ、シンの顔色が曇った。ルーク達三人がテランジンと海賊になる前、ただのならず者としてデスプル島に居た頃、カンドラの残忍性をありありと見ていたし散々酷い目にも遭わされた。若かった三人の心には、カンドラに対する恐怖心だけが根付いた。逆らえば自分達も虫けらの様に殺される。カンドラからの支配が解けた今でもカンドラと名前を聞くだけで身震いがする。

 「おい、しっかりしろお前達、お前達は今やトランサー王国海軍の士官だぞ、あんな野郎にビビッてんじゃねぇぞ」

 と、事情を良く知るテランジンが三人を励ました。

 「けどよう兄貴…あの野郎がまさか生きていたなんて考えもしなかったから」

 と、カツが子供の様な目をして言った。明らかに怯えている。レンもヨーゼフもこんな目をしたカツを見るのは初めてだった。

 「カツ、この国にカンドラが来たら必ずひっ捕らえてこの国の裁きに掛けるよヨーゼフ、ジャスティ大臣を呼んで」

 と、レンが言うとヨーゼフは、部屋に備えてある魔導話でジャスティ大臣を呼び出した。彼は、トランサー王国の法務大臣である。ほどなくしてジャスティ大臣が部屋にやって来た。レンとヨーゼフ、テランジンは、ジャスティ大臣にカンドラの事を話した。

 「何とそのような極悪人が我が国に来ると言うのですか、分かりましたメタルニア政府に連絡してそのカンドラなる者を国外に出すなと言っておきましょう、そして性懲りも無く我が国に侵入したあかつきには必ずやひっ捕らえて獄門台に送ってやりましょうぞ」

 そう言うとジャスティ大臣は、直ぐにメタルニア大使館へ向かった。そして、この日は、レン達ジャンパールからの帰国者の疲れを癒すため少し早めに休む事にした。

 翌日からは、皆普段通りの生活に戻った。レンは、ヨーゼフと溜まりに溜まった書類に目を通し、テランジン達は、海軍本部で軍務に励んだ。


 冬が来てジャンパールからエレナの弟リュウがトランサー王国に学校の冬休みを利用して遊びに来た。久しぶりに見る姉エレナに戸惑いを感じながらリュウは、エレナに話した。

 「あ、あの姉ちゃん、その久しぶり、何か雰囲気が変わったね」

 「そうかしら、お父さんとお母さんは元気?」

 と、姉弟が話している姿をレン達は、微笑ましく眺めていた。レンは、ジャンパールのエレナの実家でリュウとの約束事を思い出した。

 「そうだリュウ、釣りに行こう」

 「えっ?あ、はい、に、義兄にいさん」

 と、ぎこちなくリュウは、返事をした。そして、翌朝早くにレンとリュウは、近衛師団隊長の一人であるクラウドが率いる部隊に守られ城から遠く離れた釣り場に向かった。その頃、早朝一番のメタルニアからの船の中に義手の男、つまりカンドラが側近二人と若衆十人、そして見慣れない格好をした三人組の背の高い男達を連れて船が接岸するのを待っていた。

 「へへへ、とうとう来たぜトランサーによう、見ろやあの警備兵達を!旦那よろしく頼むぜ」

 と、カンドラは、船の窓から見える警備兵達を見ながら見慣れない格好をした三人に言った。船が接岸し乗客達を降ろすための橋が架けられた。続々と客が降りると警備兵達が持ち物検査を始めた。カンドラ達の番が回り鞄などを警備兵に見せた。警備兵達は、抜け目なくカンドラ達を見た。

 「トランサーへは観光かね?他に目的でも?」

 「へいまぁ観光ですかね」

 と、ありきたりの会話をしているが、警備兵達は、カンドラ達を怪しんでいる。そして、警備兵の一人がカンドラの右手の義手に気付き隊長に耳打ちしたのを見慣れない格好の三人組が見逃さなかった。

 「お前名は何と言う?」

 と、警備隊長がカンドラに言った時、三人組の一人が隊長の顔に手をかざした。その瞬間、隊長の目が虚ろになり「ようこそトランサー王国へ」と言った。それを聞いた部下達が驚いた。

 「た、隊長何を言ってるんですか?こいつは、あっ?ど、どうぞお通り下さい」

 と、部下もまた隊長と同じく手をかざされおかしくなった。

 「ご苦労様です旦那方」

 と、カンドラ一味と見慣れない格好をした三人組は、堂々とトランサーの港町に足を踏み入れたのだった。カンドラ達を通して次の乗客の検査の番が来たが隊長と部下は、まだぼんやりとしていた。

 「ちょ、ちょっと早くしてくれないか、メタルニアから仕事で来たんだから」

 と、検査を待つ乗客が言った。隊長と部下に手をかざした男が遠くで指を鳴らすと隊長と部下は、意識を取り戻したのかハッとして辺りを見渡した。

 「あれ?さっきの連中は?」

 「何言ってるんです、あんたらが通しただろ?早く荷物検査をやって下さいよ」

 と、乗客が大丈夫かといった顔をして言った。

 「そ、そうか、おかしいな何か大事な事を忘れてしまった気がするんだが…」

 と、言いながら隊長は、乗客の荷物検査を始めた。カンドラ一味と見慣れない格好をした三人組は、港町にある大きな宿屋に入った。

 「ああ、予約しているドラプルだが部屋へ案内してくれ…そうだメタルニアから来たドラプルとその一行だ」

 カンドラは、メタルニアから「ドラプル」と偽名を使ってこの宿屋の一番良い部屋と若衆が泊まる大きな部屋を予約していた。カンドラと側近二人、そして見慣れない格好をした三人組が一番良い部屋に通され、連れて来た若衆十人は、安っぽい大きな部屋に案内されていった。

 「良い部屋だな兄貴」

 と、カンドラの側近の一人チャーリーが窓から見える港町の風景を眺めながら言った。

 「ああ、良い部屋だろう、ここを拠点としてテランジン達をじわじわと苦しめてやるのだゲハハハ」

 「部屋ヲ少し暗くシテくれないか」

 と、見慣れない格好をした三人組の一人がカンドラ達に言った。もう一人のカンドラの側近コールが部屋の明かりを落とした。カンドラは、ドカリと椅子に座り三人組にも座るよう促した。

 「しかし旦那方も大変だな、日中はあまり動き回れないとは、そんなに陽の光りや照明の明かりが駄目なのかい?」

 と、カンドラは、話しながら葉巻を取り出しくわえるとコールが火を付けた。見慣れない格好をした三人組の一人が目深に被っていたフードを外しながら答えた。

 「私は何ともないのだがこの二人は駄目なんだよ」

 上位のイビルニア人であった。そして、この男の両隣に座っているイビルニア人は、中位者であった。上位のイビルニア人の名は、ダークス。イビルニア戦争当時ダークスは、他国に居て難を逃れたがイビルニア半島がレン達と海獣によって海の底にある黒流穴と言う異次元に繋がっているとも言われる穴に沈められた事で帰る場所を失い終戦後、共に生き残った中位者と密かにメタルニアに渡り裏社会で生きていた。そこでカンドラの目に留まり、用心棒として雇われていたのだった。

 「さぁテランジン達を苦しめる作戦会議と行こうや、旦那は何だそのこの国の王子に用があるんだろ?」

 「ああ、我々の帰る場所を奪った連中の一人、レオニール・ティアックの息の根を止めてくれる」

 と、ダークスは、憎らし気に言った。

 

 その頃、エレナの弟リュウと釣りに出かけていたレンは、大物と格闘していた。竿が大きくしなり油断をすれば糸を切られる。

 「凄いよ義兄さん!大物だよ、頑張って!」

 「ああ、こ、こんな大物久しぶりだよ…んんんん…もう少しで…魚体が見えた!」

 「でっけぇ!」

 クラウドが慌てて魚を取り込む網を伸ばし魚を取り込んだ。

 「ありがとうクラウド、リュウ、ジャンパールじゃこんな魚見た事ないだろ?」

 「う、うん見た事ないよ」

 「さぁリュウもどんどん釣らなきゃ、ここの水深は深いからもっと仕掛けを底に落とすと良いよ」

 と、リュウは、レンの助言通りに仕掛けを海に深く落とした。冬なので寒いが空は、晴れ渡っていて清々しい気分だった。釣果も良くレンは、先ほど釣り上げた大物を含めて五匹、リュウは、慣れない釣り場なのかまだ一匹も釣れていなかった。

 「……ん?今当たりが……それっ!良し義兄さん来たよ」

 「おお!?やったじゃないか、良い大きさなんじゃないか?」

 「うん、こ、こんな引きは初めてだよ…おおおおお…」

 リュウが持つ竿が大きくしなり糸が沖へと走って行く。魚が海底の岩の間に入らないようリュウは、竿を真上に立て魚が弱るのを待った。魚の力が弱まったと同時に竿に付けた糸巻きで糸を巻き取り魚を寄せるが、また魚が暴れ出し糸が物凄い勢いで出て行く。

 「頑張れリュウ、ゆっくり時間をかけて魚を弱らせるんだ!」

 と、レンは、自分の釣りを忘れてリュウを応援した。そして、三十分ほどの格闘の末リュウは、今までで最高の大きさの魚を釣り上げる事に成功した。

 「この魚ってこんなに大きくなったんだね、初めて見たよこの大きさは」

 と、レンは、リュウが釣り上げた魚の大きさを見て呆然とした。一メートルは優に超えている。レンは、何度も釣った事がある魚だったが、せいぜい五十センチほどだった。

 「義兄さん、僕トランサーに来て本当に良かったよ」

 と、リュウは、夢を見ている様な顔をして言った。十分釣りを楽しんだレンとリュウは、釣った魚を冷凍箱に入れクラウド隊に守られながら城へ帰った。

 夕方になりレンとリュウが釣った魚をブラッツ侯爵の反乱事件で濡れ衣を着せられたケイン料理長が腕によりをかけて調理し食卓へ持って来た。レンとエレナ、リュウそしてヨーゼフとリリーは、思いのほか豪華な料理に目を見張った。

 「坊ちゃんが良い魚を持って帰ってくれたんでねぇ今日は姿焼きにしてみました」

 と、ケイン料理長がリュウに親指を立てながら言った。そこへ軍務を終え帰って来たテランジンが食卓を見て驚いた。レンがこの魚は、リュウが釣り上げたんだよと説明した。リュウは、照れ臭そうにして頭を掻いた。テランジンが「君も海の男になるか」と言い皆を笑わせた。

 その頃、海軍本部で軍務を終えたカツとシンは、軍の宿舎に帰る途中で青い鳥で一杯やって行こうと話していた。

 「良いなぁおめぇらは、俺は今日当直だからなぁ」

 と、ルークが寂しそうに言った。

 「へへっ兄貴の分までしっかり飲んで来てやるよ」

 「んじゃあな」

 「おう、あんまり飲み過ぎんなよ」

 と、カツとシンは、ルークに見送られながら海軍本部を後にした。二人は、寄り道する事なく港町にある行きつけの大衆酒場、青い鳥に向かった。店は、相変わらず繁盛している。二人が店に入ると店員達が温かく二人を迎えた。

 「お勤めご苦労様、何にする?」

 と、カツとシンが密かに惚れているライラと言う可愛い女店員が注文を聞きに来た。二人は、いつものやつをと言った。ライラが可愛い笑顔で二人の注文を受け厨房へ向かった。

 「へん、タリスの野郎、いい加減な占いしやがって何がライラと結婚するのはシンの方だ絶対俺に決まってらぁな」

 と、カツがジャンパールで会った半イビルニア人タリスの占いの結果を思い出して言った。シンがくすくす笑っている。

 「何がおかしい」

 「くくく、いや何、半イビルニア人の言う事を真に受けてるのかと思うとおかしくてな」

 「まぁそりゃそうだが…しかし嫌なもんだぜ、ああはっきりと言われるとなぁ」

 ほどなくしてライラがカツとシンが注文した飲み物と食べ物を持って来た。

 「ごゆっくり」

 「ありがとう」

 二人が食事をしながら今日の出来事などを話していると全く見た事のない人相の悪い客が五人ほど来た。一目で他国者と分かった。ぎゃあぎゃあ大きな声で話しながら空いている席を探し席に着くといきなり注文を言い出したので、慌てて男店員が注文を聞きに行った。そんな様子を見てカツとシンは、面倒な客が来たなと思いつつ飲み食いしていた。

 「おい、あんまり目立つような行動は控えろとおやじに言われてるんだ、気を付けろ」

 と、先ほど現れた人相の悪い客の一人が他の者達に言った。どうやらこの男は、この中の兄貴分なのだろう。注意を受けた他の者達は、素直に返事をしたが、時間が経つにつれお構いなしになって来た。他の客達に絡み出し、挙句の果てには、注意をした兄貴分までうるさくなった。

 「うるさい連中だな、黙らせてやろうか」

 「ほっとけ、シン、相手にするな、ほれオヤジが手を振ってるだろもうじきゴンが始末するさ」

 と、カツが言うと青い鳥の店員兼用心棒をするゴンが五人組のテーブルの前へ行った。

 「お客さん、済まねぇがもう少し静かにやってもらえませんかねぇ、他のお客がね」

 と、ゴンは、大人しく注意したが聞き入れる様な連中ではない事は、最初から分かっている。案の定、喧嘩を売って来た。五人組の一人が立ち上がるといきなりゴンの胸ぐらを掴み殴った。

 「きゃあああ」

 と、女性客の悲鳴が上がる。店の常連客は、ある意味この店の名物とも言える用心棒ゴン対悪い客の戦いが見れると盛り上がった。

 「やりやがったな、ならこっちも遠慮は無しだ、おらぁぁぁ!!」

 乱闘が始まった。カツとシンは、傍観した。時折、ゴンに殴り飛ばされて来る男を押し返したりしてライラやオヤジと呼ばれ親しまれている店主と話しながら乱闘を見た。

 「ふん、情けない連中だな五人揃ってこの程度かえ、全く下らねぇ喧嘩を買っちまったもんだ」

 「何だとてめぇ…もう我慢出来ねぇ殺してやる」

 と、ゴンの言葉に憤った五人組の兄貴分が刃物を取り出すと他の者も一斉に刃物を取り出した。

 「こらぁぁ!てめぇらいい加減にしやがれ」

 「オヤジ、良いだろ?さすがに刃物いけねぇ、ゴン助太刀するぜ」

 と、カツとシンが腰に下げた剣に手をやり五人組に近付いた。

 「誰だてめぇらは、関係ねぇもんは引っ込んでろ馬鹿野郎!」

 「そう言う訳にはいかねぇ、俺達はトランサー海軍ブロイ中佐とクライン中佐だ!素手の喧嘩なら見逃してやるが、そんな物騒なもんを出す事は許さん、代わりに俺達が相手になってやる表へ出ろ」

 と、カツは、顎を扉へ向けながら言った。ブロイとクラインと聞いた五人組の兄貴分は、何か思い出したのかニヤリと笑い刃物を納めた。

 「止めだ、止めだ、軍人さんに出て来られたんなら敵わねぇ、悪かったな、おいおめぇら行くぞ」

 と、兄貴分は言い飲み代を置いて仲間を連れ大人しく店から出て行った。拍子抜けしたカツとシンは、互いに顔を見合わせた。

 「何だったんだあいつら」

 「さぁ分からねぇが妙に引っかかるなぁ」

 一方、店を出た五人組の一人が兄貴分に文句を言っていた。

 「ど、どうしたんだよ兄貴、あんな軍人野郎にビビったのかよ冗談じゃねぇぜ」

 「ふん、馬鹿を言えあんなサンピンどうと言う事はないがおやじがこの国に来る時に話していた事を思い出したんだよ、おやじの部屋に行くぞ」

 と、五人組は、泊まっている宿屋に帰りおやじと呼んでいる男が泊まる部屋へ向かった。

 「おやじ」

 「んん?どうした、あっ?!お前この町で暴れたな馬鹿者、あれほど目立つ事は控えろと言っただろ」 

 と、おやじと呼ばれた男は、五人組の顔を見て暴れて来たと分かり怒った。男はカンドラだった。五人組は、カンドラがメタルニアから連れて来た若衆だった。若衆の兄貴分は、素直に謝り青い鳥であった出来事を話した。カンドラの顔色が妙な明るさを出した。

 「確かにその男達はブロイとクラインと言ったのだな、そうかそうか、まさかトランサーに来て初日に小僧共を見つけられるとはな、グフフフ」

 カンドラは、若衆の兄貴分に顔が知られていない者にカツとシンの人体にんてい教えて毎日青い鳥に行きカツとシンの事を良く調べるよう命じた。

 「二人を調べればテランジンやルークの事も直ぐに分かるだろう、この右腕の恨みと痛みを思い知らせてやるわ」

 と、カンドラは、不気味な笑みを浮かべて言った。その笑みを見た若衆の兄貴分は、これから何が始まるんだろうと恐怖を感じた。その頃、海軍本部で当直のルークは、居眠りをしていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ