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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
142/206

兄弟盃

 ジャンパール城内、レンのために用意された部屋でレンは、眠れずに居た。明日は、マルス、ラーズと義兄弟の盃を交わす日である。寝不足でぼうっとした状態で儀式を受けるのは、儀式を執り行うカツとシンに申し訳ないと思い無理やり寝ようとしたが眠れない。ベッドの上に座りしばらくぼんやりしているとふと誰かに呼ばれたような気がした。

 (誰だろう?気のせい?)

 レンは、気にせず今度こそ寝ようと布団の中に入ろうとした時、はっきりと頭の中で声が聞こえた。女性の声である。ジャンパール皇国を興したタケルヤが祀られている部屋に来いと言って来た。どこかで聞いた声だ。レンは、迷わずタケルヤが祀られている部屋に行く事にした。真夜中なので巡回の近衛兵が居るはずだったが、不思議と誰にも会う事もなく部屋まで来た。部屋にそっと入るとピリッとした空気を感じた。

 「レオニール来たわね、少しお話ししましょう」

 「あぁアストレア女王」

 声の主は、ヘブンリーの女王アストレアだった。タケルヤが祀られてある祭壇を見ると白い光が見えた。

 「フウガの家の事やら半イビルニア人の事で大変でしたね、おまけに女の格好までさせられて、うふふふ」

 と、アストレアは、悪戯っぽく笑った。白い光が大きくなったり小さくなったりした。アストレアの感情を表しているかの様だった。レンは、その光りに向かって珍しく愚痴をこぼした。

 「何でマルスとコノハは僕にあんな真似させたんでしょうか…結局騒ぎを大きくしただけに思います」

 「でも結果的には半イビルニア人にも人間としての特別な感情がある事が分かったわ、そしてそれが切っ掛けでイビルニアの血の力を覚醒させてしまう事も…半イビルニア人はやはり危険です…ところで」

 と、アストレアは、妙な事を話し出した。それは、テランジンやルーク、カツ、シンに関係する事だった。メタルニアにテランジン達と関係する男が居て何やら企んでいると言う。その男は、右腕が義手だと言った。

 「どうして分かったんですか?」

 「カイエンの使いの者が教えてくれたの」

 カイエンが龍神となったドラクーンでは、人間の観光客のためにメタルニアから大型の魔導車を購入しようと考えていた。カイエン自身が買い付けに行きたかったがカイエンを補佐するシーナの兄ドラコに「龍神が軽々しく国を出てはいけない」と言われ渋々諦め、使いの者をメタルニアに行かせた。その使いの者がメタルニアの飲み屋でテランジン達に酷く恨みを持つ男を見かけたのだった。義手の男は、仲間の男達にこう言っていた。

 「テランジンの野郎とルーク、カツ、シンの小僧が今じゃトランサー王国の軍人だとよ、まぁ軍人でも海賊でも関係ねぇ奴らは絶対にこの手で殺してやる」

 それを聞いたカイエンの使いの者は、慌ててドラクーンに帰りカイエンに報告した。カイエンは、テランジンのあにぃが、そんなサンピン野郎に負けるはずはないと使いの者に言ったが、念のためトランサー王国内に置いた大使館に連絡をしてテランジンとルークに伝えた。そして、その使いの者は、公用でヘブンリーに行ったついでにアストレアに何となくテランジン達の事を話したのだった。

 「じゃあテランジンとルークはもうその男の事を知ってるんですね」

 「そのようね、カツとシンにはあなたから伝えてちょうだい」

 「分かりました」

 この後、レンは、マルス、ラーズと兄弟盃を交わす事を話した。アストレアは、幼い頃にやったのにまたやるのかと笑った。

 「来年にはあなたの戴冠式と結婚式ね、その時は私もトランサーに行くわ」

 「はい、お待ちしています」

 「エレナを大切にするのよ、おやすみ」

 と、アストレアが言うと白い光は、静かに消えて行った。レンは、今聞いた事は、盃事が終ってからカツとシンに話そうと決め祭壇部屋を出て自分に用意された部屋に戻り眠りについた。

 

 翌日、レン、マルス、ラーズは、朝食を取り各々(おのおの)正装に着替え、盃事を行う広間に向かった。そこには、祭壇が設けられていた。周りを見渡すとやたらと椅子が並んでいる事に気付いたレンがマルスに聞くと儀式を見たいと言う皇族や貴族などが座る席だと言った。

 「僕達だけじゃないのかい?」

 「ああ、珍しいからな皆見たがってんだよ、ほれ、そろそろ集まって来たぞ」

 と、マルスが言ったので広間の出入り口を見るとぞろぞろと人が入って来た。皆ちゃんと正装している。その中にステアゴールド公爵の姿が見えた。レンとマルスにとって親戚になる男性皇族が二人を見るなり声を掛けて来た。

 「お二人は従兄弟なのに義兄弟の契りを交わすとは面白い事としやるのぅ、ほほほほ」

 レン達がその男性皇族と話しをしているとイザヤとナミを先頭にアルス皇太子夫妻、コノハとカレン、ヨーゼフとラーズの義父でユリヤの父であるアンドリエ子爵がユリヤを連れ部屋に入って来た。先に広間に居たレン達や皇族、貴族達が席から立ち上がり、イザヤとナミが座るのを見て座り直した。その後、さらに新聞記者達まで広間にやって来て与えられている席に着席した。

 「ど、どういう事だよあれは新聞記者じゃないか?」

 と、驚いたレンが小声で言うとマルスは、当然の様に答えた。

 「当たり前だ、俺達が義兄弟になると言う事は国同士の同盟関係を強化する意味合いもあるだろう、だからそれを国内外に知らせるため記者達を呼んだのさ」

 何やら事が大袈裟になって来たとレンは、思い複雑な気分になった。マルスに座れと促されてレンは、祭壇に向かって右側に用意された三人分の座布団の真ん中に座った。左側にマルス、右側にラーズが座る。向かい合う様にしてイザヤ達が椅子に座っている。隣部屋から宮中儀式を行う役人達が低い台や盃が入った箱や儀式で使う道具、座布団を持って現れ祭壇から距離を取ってそれらを準備すると広間に居る全員に言った。

 「テランジン一家盃事師、カツ・ブロイ中佐、シン・クライン中佐が入られます」

 隣部屋から正装したカツとシンが緊張した面持ちで現れ皆に一礼した。

 「只今よりぃジャンパール皇国、マルス・サモン大公爵殿下ぁトランサー王国レオニール・ティアック王子ぃランドール王国ラーズ・スティール王子のぉ兄弟盃の儀を執り行いますぅ、媒酌人はぁ手前テランジン一家、トランサー海軍中佐ぁカツ・ブロイとぉ、介添え人と致しましてぇ同じくテランジン一家、トランサー海軍中佐ぁシン・クラインがぁあい務めさせていただきますぅ、見届け人はぁジャンパール皇帝皇后両陛下ぁレオニール王子御側御用人ヨーゼフ・ロイヤー閣下ぁラーズ殿下の義父になられますぅアンドリエ少将閣下ですぅ」

 ちなみにアンドリエ子爵の階級は、大佐だったが娘ユリヤがラーズと結婚した事でイザヤが気を遣って昇進させたのだった。カツとシンは、まず祭壇前まで進み出て祭壇に向かって平伏し、供えられているこの世界で最も高級とされる魚が載った白い大皿をカツが捧げ持ち、同じく供えられている酒瓶と三つに盛られた塩が載った銀の盆をシンが捧げ持ち先ほど役人達が置いた台の上まで運んで行った。カツは、台の前に真正面を見る形で座りシンは、カツのやや左後ろに座った。

 「それではぁ執り行わさせて頂きますぅ」

 と、カツが言うとマルスが小声でレンとラーズに言った。

 「テランジンの時もそうだったがあいつらこの儀式の時は必ず妙な声と口調でしゃべるよな」

 「う~む、確かに妙だな笑いそうになる」

 「笑っちゃ駄目だよ」

 そんなレン達を他所よそにカツは、真剣な眼差しで台の上に盃を用意し供えられていた酒を注いだ。

 「必要無いかとは存じますがぁ手前、役目がらぁ試飲をさせて頂きますぅ」

 そう言うとカツは、盃を両手に持ちグイッと飲み干した。そして、腹を両手で軽く二回叩き腹を揺さぶった。

 「大変美味しゅうございましたぁ問題はぁございません」

 カツは、自分が飲み干した盃をシンに手渡し新しい大きな盃を台に置き酒を注ぎ酒が載っていた銀の盆の上に三つに盛られた塩に銀で出来た二本の棒の先をちょんちょんと当てては盃にも同じように当てた。そして今度は、魚の腹に銀の棒に先をちょんちょん当て盃にも同じように当てていった。カツの合図でシンが盃の載った銀の盆をレン達の前まで待って行った。

 「え~お三方に申し上げますぅそのお盃はぁお三方の義兄弟としての契りを結ぶお盃ですぅ、気持ちだけお飲みになってお下げを願います」

 と、カツが言うとレン達は、マルス、レン、ラーズの順に飲み銀の盆の上に置いた。シンが盃が載った銀の盆を仰々しく捧げ持ちカツの前へ持って行った。

 「え~お三方にお尋ねしますぅこのお盃はぁ義兄弟としての契りを結ぶおめでたいお盃ですぅお三方の益々の隆盛発展を願いましてぇなみなみと差し添えさせて頂きたいと存じますがぁいかがなものでしょうか」

 と、カツが言った。レン達は、声を揃えて「けっこうです」と答えた。

 「それではぁなみなみと差し添えさせて頂きますぅ」

 と、カツは言い新たに三つ小ぶりの盃を用意した。まずその盃に酒を注ぎ先ほどレン達が口を付けた盃に銀の棒の先を三回当て小ぶりの三つの盃それぞれに銀の棒の先をちょんちょん当てていった。何度もそれを繰り返し今度は、三つ盛られた塩に銀の棒の先を当てて盃にちょんちょんと当て、魚の腹にも同じようにしては、盃に当てていった。カツの合図でシンが小ぶりの盃を乗せた盆をレン達の前に持って行きレン達の斜め後ろに座った。

 「え~お三方に申し上げますぅそのお盃はぁ義兄弟としての契りを結ぶ意義深ぁいお盃です、そのお盃を飲み干すと同時に義兄弟としての強い絆が結ばれます、心してそのお盃三口半に飲み干しましてぇ懐中しっかりとぉお納めを願います、それではご一緒にどうぞ」

 と、カツが言いレン達は、同時に盃を両手に持ち三口半に飲み干し懐紙で包み懐にねじ込んだ。この瞬間、新聞記者達の写真機の照明器が光った。居並ぶ皇族や貴族達は、顔を見合わせ感心していた。

 「あの二人は、一体どこでこの儀式を学んだのだ」

 と、皇族の一人がカツとシンを見て言った。兄弟盃の儀が終ると祝宴となった。記者達がレン、マルス、ラーズの前に集まり会見が開かれた。

 「マルス殿下このたび、レオニール王子、ラーズ王子と義兄弟になられた感想をお聞かせ下さい、そしてどうして皆様が義兄弟になられたのでしょうか?」

 「うむ、それはだなレンの家来に本物の盃事師が居る事を知っていつかちゃんとした儀式をやってもらいたいと思ってたんだよ、そしてどうして俺達が義兄弟になったのか、それは我がジャンパール皇国とトランサー王国、ランドール王国の同盟関係をより一層強化するためだ」

 「そう、一時的にトランサー王国とは国交を断絶していたがレオニールがティアック家を再興して以前の同盟関係に戻った、それとレオニールの戴冠式の事だよ、まぁ俺とアルス兄は王位継承権はあっても実際に継ぐ事は無いがレオニールは来年には正式にトランサー国王となる、戴冠式の際には兄弟としてティアック家側に参列出来るからな」

 と、ラーズとマルスが答えた。兄弟として、それはレンの身内が余りにも少ないからであった。トランサー国内で実際の血の繋がりがある者と言えばとラストロ・シェボットとその息子ミハエルだけであった。かつて謀反を起こしたザマロ・シェボットの息子ラストロのみがレンの唯一のトランサー国内における身内とは、余りにも寂しい。従兄弟であるマルスは、改めて義兄弟となり身内を増やしてやろうと考えたのだ。

 「レオニール王子、お二人と義兄弟になられたご感想は?」

 「はい、子供の頃マルスがどこで聞いたのか盃を交わすと兄弟になれると言い三人で盃を交わした事がありましたが、まさか今頃になってこの様に盃を交わすとは夢にも見なかったです、それに身内の少ない僕にとって戴冠式の際に二人がティアック家側に居てくれる事が何より嬉しいです」

 と、レンは、答えた。この三人が義兄弟となった事は、直ぐに世界に広められた。記者会見が終わりレン達も祝宴に参加した。カツとシンがある老皇族に質問されていた。

 「あの儀式、どこで覚えたのか?」

 「へ、へぇ、あれは俺達がデスプル島に居た頃にある爺さんから無理やり教えられたもので」

 「無理やり?ふむ、それでその爺さんとは?」

 それは、テランジンがヘブンリーを出てデスプル島に渡る少し前の事だった。レンがまだニ、三歳頃だろう。カツとシンは、ランドール王国の隣国メルガドと言う国の別々の地域で生まれ育ち少年期を過ごしていた。カツ、シン共に十八歳の頃、事件は起きた。偶然酒場で知り合いになり仲良くなった二人は、よく二人で悪さをしていた。そんな時、同世代の若者と喧嘩にになり殺してしまったのだった。追われる身となった二人は、メルガド国を出奔、流れ流れてデスプル島に到着した。十九歳の冬の事だった。当時、デスプル島を支配していたのがカンドラと言う極悪人で島に来る者は、どんな凶状持ちでも受け入れたが去る者には、死の報復をしていた。カツとシンは、カンドラの言う事なら何でもやったと言う。やらなければどんな酷い目に遭わされるか分からなかった。先に居たルークは、二人の面倒を見るようカンドラに言われていた。悪事を働く日々を送っていた頃、テランジンが現れ極悪人カンドラを成敗追放し自分がデスプル島の首領となりテランジン海賊団を結成しルーク、カツ、シンは、テランジンの側近となった。

 そんなある日、一人の老人が島に流れて来た。老人は、フジスミと言った。どこの国の者とも言わなかった。デスプル島では、誰がどこの国の出身かなどは問わないし気にもしない。ただデスプル島に来る者は、悪事を働いたと言う事だけが事実なのである。皆、同じ穴のむじななのである。ただ、テランジンだけは、悪事を働いた訳ではない。

 「その爺さんは確かフジスミって言う爺さんで俺とシンに良い事を教えてやるからちゃんと覚えろと言って盃事の儀式のやり方を毎日教えて来ました」

 「そのフジスミ爺さんがしつけぇの何のって、嫌がる俺達に無理やり教え込んで来たんでさぁ」

 と、カツとシンが言うと老皇族は、顔色を変えた。

 「フジスミと言ったか…あやつめ…そうかデスプル島に…そのフジスミと言う爺さんは麿まろもよう知っておじゃるぞ」

 と、老皇族の言葉にカツとシンが驚いた。老皇族は続けて言った。

 「フジスミはのぅ元々はジャンパールの宮中儀式を執り行う役人でおじゃった、ある時ちょっとした不正を働いてお役御免となり姿を消したのじゃ…そうかフジスミめデスプル島に流れておったのか、で、フジスミはどうしておるのじゃ?」

 「へぇ肺を患い島に来て三年ほどでぽっくり逝きましたです…そうかフジスミ爺さんジャンパール人だったんだな」

 と、シンが妙に懐かしそうに答えた。老皇族との会話が終った頃を見計らってレンが、カツとシンに声を掛けた。二人は、先ほどの老皇族との会話をレンに話した。

 「そうだったんだ、ジャンパール人から…そうだ今日は本当にありがとう、改めてマルス達と兄弟になれた…ちょっと良いかな?」

 と、レンは、皆が集まる中央から少し距離を取ってカツとシンにタケルヤの祭壇の前でアストレアから聞いた事を話した。カツとシンは、顎に手をやり少し考えて答えた。

 「右腕が義手?…さぁ心当たりがございませんねぇ」

 「メタルニア…あそこは移民の国ですからねぇ、俺達も人から恨まれる事はそれなりにやっては来ましたが義手の奴は記憶にありませんぜ」

 と、カツとシンは、答えた。

 「とにかく君達やテランジン、ルークに強い恨みを持ってるそうで気になってね」

 「まぁトランサーに帰ってからテラン兄貴やルーク兄貴にも聞いてみやしょう」

 祝宴も終わりこの日の夜、レンは、イザヤとナミの前で改めて来年、戴冠式と結婚式を行う事を報告した。イザヤとナミは、涙を流して喜んだ。

 「思い起こせば四年前フウガが非業の死を遂げお前は、マルスと共に旅に出た…ヨーゼフ、テランジンそして亡くなったシドゥを見つけ出し見事フウガの遺言でもあるトランサー王国奪還を成し遂げた…それからイビルニアとの戦争、この四年間でレオニールお前は大きな成長を遂げた、王としての器は十分に備わったであろう、のうヨーゼフや」

 「はい、おかみ若は十分なご経験をされました、王となる時期が来たと思いまする」

 「フウガもあの世で大いに喜んでいる事でしょう、ねぇお上」

 「うんうん、そうだな…しかし寂しくもある、こうして簡単に会えなくなってしまうではないか、レオニールおいで」

 と、イザヤは言うとレンを抱き締めた。あの幼い頃、フウガに手を引かれやって来た時に比べれば随分と大きくなったと当たり前の事だがイザヤは、その事に感動した。ナミもレンの手を握り締め涙を流した。レンは、これが今生の別れとなるのかと思うと熱いものが込み上げて来てたまらず涙を流した。

 「嫌だなぁ伯父上も伯母上も、まるでもう会えなくなるみたいじゃないですか、僕はまたジャンパールに来ますよ、必ず…ねぇヨーゼフ僕が王になってもジャンパールやランドールに行っても良いだろ?」

 「もちろんでござる、若のお心のままに」

 と、言ったヨーゼフの目にも涙が光っていた。マルスは、湿っぽいのは嫌だと言ってわざと笑ったが、泣きそうになる自分を誤魔化すためだった。

 翌朝、レン達トランサー人は、帰国の準備をして港に向かった。イザヤは、海軍の高速艇を使えと言ったが、のんびり帰りたいとトランサー行きの民間船に乗る事にした。

 「本当に大丈夫か?うちのふね使って良いんだぜ」

 「良いよ、帰りはのんびり帰りたいんだ」

 「そうか、じゃあテランジンやリリーさん達によろしくな、来年には必ずトランサーに行くからな」

 「ああ、その時にはひょっとしたら俺達にも子供が出来てるかも知れねぇがな、あははは」

 と、マルスとラーズは、明るく言った。カレンとユリヤは照れ臭そうにしていた。

 「レオニール殿、戴冠式にはわたくしもアルス殿下と参列しますわ、お元気でね」

 と、マルス達と共に見送りに来ていたアンが言った。そして、レン、ヨーゼフ、カツ、シンは、トランサー行きの民間船に乗り込んで行った。そして船がゆっくりと出港しレン達は、船の後方へ回った。

 「みんなぁぁぁ待ってるよぉぉぉ!また来年会おう!」

 マルス達が見えなくなるまでレン達は、手を振った。

  


 

 

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