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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
127/206

大評定

 ブラッツ達反乱軍の罪と罰を決める大評定だいひょうじょうの日、レンは、早朝から身支度をしていた。着替えを手伝うエレナと侍女の顔が緊張していた。大礼服に身を包んだレンは、何度も鏡で自分の姿を確かめていた。王子然としたレンの姿を侍女がうっとりと見つめていた。

 「若様、お美しゅうございます」

 「ふふ、ありがとう」

 と、レンは、少し照れながら答え最後にもう一度自分の姿を鏡に映した。腰には、フウガ遺愛の斬鉄剣を下げ、手にはティアック家の宝剣である不死鳥の剣を持っている。

 「レン、頑張ってね」

 「うん、ヨーゼフ達がいるから無事に終わるよ、きっと」

 支度を済ませたレンは、エレナとマルス達が集まっているはずの広間に行った。そこには、マルス達はまだ居らず着慣れない礼服を着たシーナがそわそわと部屋を歩き回っていた。

 「あっ!殿様、エレナさん、おはよう」

 「おはよう、シーナ、マルスとラーズは?ヨーゼフとテランジンもまだ来てないんだ」

 と、レンは、まだ四人が広間に来ていない事に気付き言った。しばらくするとマルスとユリヤを連れたラーズが広間にやって来た。

 「おはよう、いよいよだなあの連中どんなツラして出て来るのか楽しみだな」

 「おはよう、あれ?ヨーゼフさんとテランジンは?」

 「うん、ヨーゼフもテランジンもまだ来てないんだ、どうしたんだろ?」

 レン達は、ヨーゼフとテランジンが広間に来るのを待った。シーナが歩き回ったり座ったりと落ち着かずに居るのをマルスが見てげらげら笑った。そうこうしている内にヨーゼフとテランジンがリリーと一緒に広間にやって来た。

 「お待たせしました、久々に礼服のズボンをいたら腹の周りが苦しゅうて代わりのズボンを探しておりました」

 と、ヨーゼフが頭を掻きながら言った。皆が笑った。レンは、今のうちに思い切り和んでおこうと思った。これから始まる大評定では、こんな気分は味わえないはずだ。普段、服の胸のボタンを二つ三つ外しているテランジンも今日ばかりは大礼服を着ているせいかきちんとボタンをして着ていた。

 「では参りましょうか」

 と、ヨーゼフが言いレン達は、エレナ、リリーそしてユリヤを残し城下の大広場へ魔導車を使わず馬車で向かった。大広場へ向かう途中、大評定を見に行こうとするトランサー国民の列を見た。大広場に到着するとレン達、裁く側の椅子や机などが設置されていた。そしてディープ男爵やジャスティ大臣などらが既に着席していてレン達が来た事に気付くと一斉に立ち上がり礼を取った。レンは、一番中央に置かれた立派な椅子に座り、その少し前に置かれた綺麗な装飾が施された背もたれの無い椅子にヨーゼフが座り、マルス、シーナ、ラーズ、テランジンは、反乱を鎮圧した軍人席に座った。そして、レン達の周りには、境界線が敷かれ間隔を開けて近衛兵が立って居た。レンの直ぐ傍に近衛師団隊長のミトラが居る。国民も続々と大広場に集まって来た。

 「皆揃いましたな、ではこれより大評定を行う」

 と、トランサー王国法務大臣エイゼル・ジャスティ公爵の掛け声で大評定は、始まった。まず反乱に参加した陸軍の将兵の裁きが開始された。兵の指揮を執った軍人十名がレン達の前に連れて来られた。

 「平伏へいふくせよ」

 と、ヨーゼフが言うと将兵達は、素直にその場に平伏ひれふした。平伏しながら一人の将兵が恐れながらと言い出した。

 「恐れながらお聞きしたい事があります」

 「何じゃ?この期に及んで申し開きか?」

 「いえ、そうではございません、我々はどの様な罰にも服しますが…か、家族はどうなりましょう?」

 と、将兵は身を震わせながら言った。

 「心配致すな、の方らの家族にるいは及ばぬ、これはレオニール様のお慈悲である」

 と、ヨーゼフが威厳を込めて言った。そう言われた将兵達は、安心したのか泣いている様に見えた。この将兵の中に間違いなく死刑になる者が居る事を知っていたレンは、心が痛んだ。しかしこれは、もう決まった事なので今更覆す事は出来ない。おもてを上げいとヨーゼフが言いジャスティ大臣が一人一人名前を言って罪状を読み上げ懲役刑を言い渡した。そして、最後の一人に死刑が言い渡されると大評定を見に来ていた国民から低いどよめきが立った。

 「立ちませい」

 刑が言い渡された将兵達にヨーゼフが静かに言った。将兵達は、素直に立ち上がりレンとヨーゼフに深々と一礼しジャスティ大臣達が居る方に向き直って深々と一礼し、海軍兵士に刑務所へ連れて行かれた。そして、また将兵が十名連れられて来て、先ほどと同じような形で刑が言い渡されていった。誰も異議を唱える者は無く順調に進んで行った。昼頃になり一旦休憩を取った。レン達は、昼食を取るため大広場の近くにある大きな食堂に入った。レンは、浮かない顔で食べている。

 「お口に合いませんか」

 と、食堂の料理長が心配してレンに聞いた。

 「えっ?ああ、違うんです料理は大変美味しいですよ、考え事をしていて」

 「ははぁそうですか良かった」

 と、料理長は、冷や汗を流しながら厨房へと消えた。

 「午後からいよいよブラッツ達の裁きですぞ若」

 と、ヨーゼフが言うと皆の顔に緊張が走った。

 「あの野郎、国民達の前で何を言い出すのか楽しみだな」

 「ああ、それとザマロの隠し財産を目の前に持って行ったらどんな顔をするのかな」

 と、マルスとラーズが話している。シーナは、珍しくあまり食が進んでいないようだった。

 「どうしたシーナ余り食べていないじゃないか」

 「うん、テランあにぃ、ぼくちょっと気になる事があって」

 と、シーナが難しい顔をして答えた。レン達も気になり何が気になるのか聞くと上手く説明出来ないと言った。

 「ただ、大広場に着いてから変な胸騒ぎがするよ」

 と、シーナが言った。ドラクーン人には、レン達人間が持っていない不思議な力がある。

 「ふむ、悪い事が起きねば良いが」

 と、ヨーゼフが心配して言った。休憩時間も終わりレン達は、また大広場に向かった。同じく昼食を食べに行っていた国民達もぞろぞろと集まり出した。頃合いを見てジャスティ大臣が大声で言った。

 「これより午後の大評定を執り行う、罪人共を連れ来い」

 これからは、ブラッツ達貴族の裁きが始まる。最初に裁きに掛けられたのは、反乱軍には直接関わっては居ないが兵士達の取り調べで名の上がった貴族達六人であった。中には、テランジンから受けた盃を返した事でルークとサイモン大将の粛清を受けた貴族が混じっていた。その貴族がテランジンと目が合った瞬間、恐怖で震え上がっていた。全員粗末なむしろの上に座らされ平伏させられた。

 「面を上げい」

 と、ヨーゼフの厳しい声で全員が面を上げた。皆、恐怖で顔が引き攣っていた。ジャスティ大臣がそれぞれの罪状を読み上げ刑を言い渡していった。

 「ヴォイド・ハルア子爵、軍人達をそそのかし反乱軍に参加せしめたる事、重々不届きによって所領半減、謹慎を申し付ける」

 「そ、そんな!今よりさらに半減されたら貴族としての体面が取れませぬ」

 「控えい、貴族としての体面が取れぬのならばいっそ爵位を返上すれば良かろう」

 と、ヨーゼフが無表情に言った。ハルア子爵は、顔を真っ赤にして怒りを露わにした。

 「くぅぅぅ…そんなご無体な…お願いですどうか所領だけは何卒なにとぞご勘弁を」

 「黙れぇ!反逆罪を問われなかっただけでもありがたいと思え!」

 と、ヨーゼフに怒鳴られハルア子爵は、がっくりと肩を落としうな垂れた。反逆罪は、死刑あるいは、懲役刑である。他の貴族達は、余計な事を言って反逆罪を問われる事を恐れ読み上げられた罪状を認め刑に服した。そして、いよいよブラッツ達、今回の反乱の中心人物達の裁きの時がやって来た。それに気付いたのか国民達がざわつき始めた。

 「おい、いよいよ始まるぞブラッツ侯爵のお裁きだ」 

 「どうせ死刑は間違いないんだろ、あんな嫌な野郎さっさと殺しちまえよ」

 「そうだ、そうだ」

 などと好き勝手に騒ぎ出し「こっろっせ!こっろっせ!」と大声で叫び出した。

 「ヨーゼフ」

 と、レンが困った顔をした。ヨーゼフは、近衛師団隊長のミトラに国民達を静めろと命令した。

 「こらぁ静かにせんか!遊びで大評定をやってるんじゃないんだぞ!静まれぇ!」

 と、ミトラに怒鳴られ国民達は、落ち着きを取り戻した。静かになったところでジャスティ大臣が咳払いを一つ落とし大声で言った。

 「これより、反乱を起こした張本人であるヘルゲ・ブラッツ侯爵並びにリッチ・シャルワ公爵、マイデン・ガンツ伯爵、アーリット・ムルワ伯爵、カルム・ラットン男爵、タイラン・ムーン男爵の裁きを執り行う、連れて来い」

 ほどなくしてルークに縄を持たれたブラッツを先頭にぞろぞろと貴族達がレン達の前に引き出された。一列に並び終わったのを確認してヨーゼフが厳しい声で言った。

 「レオニール様の御前である、平伏せよ」

 ムルワ伯爵、ラットン男爵、ムーン男爵は、素直に平伏したがブラッツとシャルワ公爵ガンツ伯爵だけは平伏しようとしなかった。裁きを見守る国民から怒号が鳴った。

 「さっさと平伏しやがれ、てめぇら罪人だろう!」

 「くっ…ぶ、無礼な!平民の分際で」

 「平伏せよ!」

 と、少し声を荒げてヨーゼフが言った。ガンツ伯爵が怒りに身を震わせながら粗末なむしろの上で平伏した。残ったのはブラッツとシャルワ公爵だけである。ヨーゼフは、仕方がないといった顔をしてルークに目配せした。

 「さっさと平伏しやがれっ!」

 と、ルークがブラッツの腹に拳を突き入れた。ブラッツが痛みで前かがみになったのでそのままルークは、ブラッツをねじ伏せる様に平伏させた。シャルワ公爵の縄を持っていた兵士もルークと同じようにしてシャルワ公爵を平伏させた。

 「面を上げい」

 と、ヨーゼフの言葉でブラッツ達貴族が正面に向き直った。ブラッツは真っ直ぐにレンとヨーゼフを睨み据えた。シャルワ公爵とガンツ伯爵は、悔し気な顔をしている。他三名の貴族は、諦め切っているのかうな垂れていた。ジャスティ大臣は、一息ついて言った。

 「まず初めにレオニール王子、ロイヤー公爵の毒殺未遂の件から始める、其の方ら恐れ多くも王子とロイヤー公に毒を盛ったな、何故なにゆえ毒を盛る必要があったのか?国民達の前で申せ!」

 誰も答えない。

 「城内の牢での取り調べと思うなよ、これは大評定である、証人をこれへ」

 と、ジャスティ大臣が役人に言うと料理長が連れて来られた。ブラッツ達貴族の顔色が少し変わった事をレンは、見逃さなかった。

 「ケイン料理長に聞く、王子とロイヤー公の料理の中に毒を盛った者がこの中に居るはずだが誰か分かるかね?」

 と、ジャスティ大臣に聞かれた料理長は、憎らし気にブラッツを見て言った。

 「直接毒を盛った所は見ていませんがこの連中が珍しく俺の厨房に来て俺に若様と閣下にお出しする料理はどれかと聞いて来たんです、俺は毒を盛るなんて考えもしなかったから素直にこれとこれだと答えました、そしたらこの野郎が俺に文句を言い出して俺から料理を見えなくしたんです、俺は若様からこういう献立にしてくれって言われてると説明しました、その時にこの中の誰かが毒を盛ったに違いねぇんです」

 「何を言うか!お前が毒を盛ったんだろう!我々が直接毒を盛ったと言う証拠を出せ」

 と、シャルワ公爵が鼻息を荒げて怒鳴った。ブラッツは、ほくそ笑んでいる。

 「ほほう、証拠と申したな、良しならば証拠を見せてやろう、ルーク奴を連れて参れ」

 「ははっ」

 と、ヨーゼフに言われたルークは、大評定の場の近くに建てた簡素な小屋へ向かいカツ、シンと共にライヤーを連れて戻って来た。ライヤーをむしろに座らせレンとヨーゼフに一礼して下がった。ヨーゼフがジャスティ大臣に目配せしジャスティ大臣は、静かに頷いた。

 「これなるはメタルニアから来た殺し屋ライヤーである、其の方ら見覚えがあろう」

 と、ジャスティ大臣が言うとブラッツ以外の貴族の顔色が青ざめた。

 「知らぬ」

 と、ブラッツが平然と言ってのけた。構わずジャスティ大臣は、ライヤーに質問した。

 「ライヤー、其の方誰に呼ばれてこのトランサー王国に参った」

 「そこのブラッツ侯爵だ、ブラッツ侯爵の屋敷で王子とロイヤー公を暗殺してくれと頼まれた」

 と、ライヤーの言葉を聞いて国民がどよめいた。

 「殺し屋まで雇ったのか、何て酷い」

 「最低だな」

 「静粛に!」

 と、ジャスティ大臣は、国民達に言い静かにさせ続けた。

 「ブラッツ、其の方に呼ばれて来たと申しておるぞ」

 ブラッツは、何も言わない。レンに真空突きで吹っ飛ばされ失った右手首を擦っている。ライヤーを見た料理長が叫んだ。

 「ああ、あいつはブラッツの従者じゃねぇか、俺の厨房に一緒に来てました」

 「毒を盛ったのは私さ、暗殺を頼まれたんでね」

 と、ライヤーが言うとまた国民達がまた騒ぎ出した。ミトラ達近衛兵が静めた。ルークが盆に載せた毒の入った小瓶をライヤーの目の前に置いた。

 「その毒に相違ないか?」

 「間違いない、これは私がメタルニアの自宅で作った毒だ」

 と、ヨーゼフの問いに素直にライヤーは答えた。

 「完全には殺せなかったが危篤状態にあると聞いてブラッツ侯爵達は大いに喜んでたよ」

 「黙れ!黙らぬか!」

 と、シャルワ公爵が額に汗を光らせライヤーに言った。

 「私は納得がいかなかった、この毒を使って殺せなかった事は一度も無かった、ドラクーン人の力で一命は取り止めたが危篤状態だと知り私は確かめたくなりブラッツ侯爵達と城に行った」

 「しかし、わしとレオニール様の容体を確認する事が出来なかった、そうだなライヤー」

 と、ヨーゼフが言うとライヤーは、素直に頷いた。

 「そこのジャンパールの皇子や他の者の芝居にまんまと乗せられたのさ」

 「ええい、黙れと言っておるのだ!」

 と、シャルワ公爵は、ライヤーに飛び掛からん勢いで言ったが後ろに居る兵士に取り押さえられた。そこでヨーゼフが咳払いをして言った。

 「ところで其の方ら、このライヤーが何者かは存じていような?」

 その言葉を聞いてブラッツ以外の貴族達は、言葉の真の意味を悟りぶるぶると震え出した。

 「何者?先ほど殺し屋と言ったではないか」

 と、ブラッツが憎たらしいほど堂々と言い放った。ヨーゼフがブラッツを見て言った。

 「あくまで知らぬと申すのだな、ではライヤー其の方の口から言ってやれ」

 「私は半イビルニア人だ、あの時、城からの帰りに私は直接ここに居る全員に話したはずだが」

 「ほ、本当に我々は知らなかったんだ、ただの殺し屋としか思っていなかった…知っていたら私は関わっていなかった」

 と、たまりかねたムーン男爵が叫ぶように言った。するとムルワ伯爵、ラットン男爵も同じような事を言い出した。シャルワ公爵、ガンツ伯爵は、顔を真っ青にして震えている。

 「半イビルニア人と知ってなぜ役人に報告しなかったのか、イビルニア人と関わり悪事を働いた者は死罪、半イビルニア人とてそれは変わらぬ、これだけで其の方らは死罪確定である」

 と、ジャスティ大臣が冷たく言った。

 「それは…」

 出来る訳がない。元々レンとヨーゼフを殺してもらうために呼んだライヤーが半イビルニア人と分かったからと役所に報告すれば自分達の悪事が明るみに出る事になってしまう。

 「お許しを、お許しを」

 と、ただ貴族達は、許しを請うしかなかった。

 「馬鹿な連中だよ」

 と、軍人席に居たマルスが呟いた。ここで初めてレンが直接ブラッツに問うた。

 「僕とヨーゼフを殺してお前は何がしたかったのか」

 レンの声を聞いた国民から囁き声が漏れた。

 「レオニール様だ、王子が直接訊問されているぞ」

 レンの問いにブラッツは答えない。ほくそ笑んでレンを見返した。むしろの上に座っているブラッツの直ぐ後ろに立って居るルークがブラッツの後頭部を思い切り引っ叩いた。パチィンと小気味良い音が鳴った。

 「痛いっ!」

 「さっさと答えろ!馬鹿野郎」

 「チンピラめぇ何をするか!」

 「止めんか!」

 と、ヨーゼフが怒鳴った。ブラッツは、左手で後頭部を擦り恨めし気にルークを見て話し出した。

 「貴様ら二人を殺した後はラストロ殿下にこの国の王として君臨してもらい、ザマロ様の頃のトランサー王国に戻すつもりであった」

 と、ブラッツが話すと国民達がまた騒ぎ出した。

 「あの暗黒時代に戻そうとしていたのか、何て野郎だ!」

 「あんな時代は二度と御免だ」

 「くたばれブラッツ!」

 「レオニール様ぁ早く奴を死刑にして下さい!」

 国民達がブラッツに押し寄せようとした。ミトラ達近衛兵が必死で押さえている。ヨーゼフとジャスティ大臣が何とか国民達を落ち着かせた。

 「フフフ、ブラッツ、えらい嫌われようだな」

 と、既に死刑を覚悟しているライヤーが言った。ブラッツは、苦々しくライヤーを見た。

 「しかし、ラストロ殿はお前達の話しに乗らなかった、父ザマロが殺した人々の供養をする日々を選んだんだろう、どうしてその時点で諦めなかったんだ?」

 と、レンは、落ち着いて聞いた。ブラッツは、レンを睨み答えた。

 「レオニール、お前のせいだ、いやお前の父と母のせいだ」

 「僕のせい?そうだろうな、僕がこの国に帰って来て元の王子に戻ってお前達の生活が一変したんだろ?その恨みなら分かる気がするけど、僕の父と母とはどういう事だ?」

 と、レンが言った時、空が急に曇り出した。ジャスティ大臣は、雨が降っては困ると役人に野営テントを用意させ全ての席に建てた。無論ブラッツ達貴族には無い。

 「思い起こせばあの時、何が何でも反対するべきであった…よりによってジャンパールの小娘を選ぶなど」

 と、ブラッツは、レンが生まれる以前の事を思い出している様だった。軍人席に居るマルスは、ジャンパールと聞いて少し身を乗り出した。


 

 

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