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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
113/206

最後の戦い

 ベルゼブの放った深紫色の大きな玉にレン達は、真空斬を放ち応戦する。玉と真空斬がぶつかり合った衝撃でまたレン達は、吹っ飛んだ。その様子を壁際で横になっているラーズが見ていた。

 「あ、あいつら…大丈夫か」

 ラーズは、ベルゼブの放った魔掌撃をまともに受け身体が思う様に動かせないでいた。そんなラーズの直ぐ傍にレンが飛ばされて来た。

 「ぐうぅぅ…ううう」

 「大丈夫かレン」

 「ラ、ラーズそこに居たのかい」

 レンは、斬鉄剣を杖の様にして立ち上がった。マルスとテランジンがベルゼブと戦っている。

 「レン、俺はまだ動けそうにない、死ぬなよ」

 「う、うん」

 と、ラーズの言葉に返事をしてレンは、斬鉄剣を構えベルゼブに向かって足を引きずるようにして歩いた。歩きながら斬鉄剣に気を溜めた。この一撃で何とか首を刎ねてやろうとしていた。マルスとテランジンが必死になってベルゼブに攻撃を加えている。二人もまた首を狙っているが、ベルゼブは、斬らせまいと巧みに防いでる。ベルゼブは、マルスとテランジンに気を取られレンには、気付いていないと思われた。レンは、ベルゼブの隙を探った。マルスとテランジンが交互に攻撃をしている一瞬に隙を見たレンは、真空斬を放った。

 「えいっ!」

 真空の刃がベルゼブの首に向かって飛んで行く。しかし、ベルゼブは、最初からレンに気付いていたのか気合を持って真空波を打ち消した。

 「グルワッ!!甘いわ小僧、もはや余にその様な技は通用せん」

 レンは、諦めずにまた練気を始めた。マルスとテランジンも攻撃を止め練気を始めた。三人は、ベルゼブを囲むようにして剣を構えた。気を最大にまで溜め込んで三人は、目で合図を送り合い、最初にマルスが斬りかかった。ベルゼブは、紙一重でかわしマルスの腹に拳を突き入れた。その瞬間テランジンが攻撃に出たが、これもベルゼブは、上手くかわしテランジンを殴ろうとした瞬間、レンの斬鉄剣がベルゼブの腕を斬り飛ばし斬鉄剣の刃がベルゼブの肩にまで入った。ベルゼブは、残った手で斬鉄剣を引き抜くとそのままレンを中庭にある女神像の台座に向け蹴り飛ばした。レンは、激しく台座にぶつかり気を失った。

 「ふん、愚か者め」

 ベルゼブが腕の傷口を斬り飛ばされた腕に向けると吸い付く様に元に戻った。マルスとテランジンは、イビルニア半島で戦ったベルゼブよりも目の前にいるベルゼブの方が遥かに強いと感じた。マルスとテランジンは、台座にぶつかりぐったりしているレンに何とか近付こうとするが、ベルゼブが邪魔をして近付けないでいる。そこにヨーゼフをエレナ達が居る場所まで運んでいたルーク達が戻って来た。

 「兄貴!」

 「ルーク、閣下は無事か?」

 と、テランジンは、ベルゼブから目を離さずに言った。

 「ああ無事だぜぇ、シーナちゃんが怪我を治したよ」

 「そうか、良かった」

 「ふん、しぶとい男だ後で必ず殺してくれよう…今はレオニールをるのが先だなグルゥフフフ」

 そう言うとベルゼブは、レンを踏みつけようとした。そうはさせまいとマルスが真空斬でベルゼブの足を狙った。ベルゼブは、マルスの動きを予測していたのか真空斬を手で撃ち払うと魔掌撃ましょうげきをマルスに放った。咄嗟とっさに防御したが防ぎきれずマルスは、吹っ飛び中庭に植えてある木にぶつかり動かなくなった。

 「殿下ぁ!」

 ルーク達がマルスに駆け寄った。ベルゼブは、高笑いして見ている。もう何をやっても駄目だと思ったテランジンは、思い切ってベルゼブに飛び掛かり組み付き足を掛けて倒し馬乗りになりボコボコに殴った。

 「グルゥワハハハ、とうとう頭に血がのぼったか、その程度の打撃で余を倒せるとでも思っているのか?」

 「そうでもないぜ」

 と、テランジンは、右足の義足に仕込んだ短剣を素早く取り出しベルゼブの首を斬ろうとした。これは、予想外だったようでベルゼブは、慌ててテランジンごと起き上がり体勢を崩したテランジンの腹を手刀で串刺しにした。

 「ぐはぁぁぁぁ」

 「あ、兄貴ぃ!てめぇ!!!」

 串刺しになったテランジンを見てルーク、カツ、シンは、血相を変えてベルゼブに襲い掛かった。ベルゼブは、串刺しにしたテランジンをルーク達に投げ付けた。

 「グルゥフフフ小うるさい蠅共め、そこに居れ殺してやる」

 と、ベルゼブは言うと右手にまた深紫色の玉を浮かび上がらせた。駄目だと思ったルーク達は、テランジンに覆いかぶさるようにして守った。そして、ベルゼブが攻撃しようとした瞬間、ベルゼブの真横から無数の真空波が飛んで来てベルゼブを吹っ飛ばした。

 「やっと身体が動く様になったぜ」

 ラーズだった。ベルゼブは、ラーズの存在を忘れていたようだった。

 「ルーク今のうちにテランジンをシーナの所に連れて行けっ!」

 ラーズに言われルーク達は、テランジンを運んで行った。この少し前にヨーゼフの治療をしているシーナは、妙な胸騒ぎを覚えていた。深刻な顔をしているシーナを見てヨーゼフが言った。

 「わしの身体はもう大丈夫じゃ、シーナ、早くレオニール様のもとへ行ってくれ」

 「うん、じいちゃんごめんね、ぼく行くよ」

 と、ヨーゼフの治療を止めシーナは、龍の姿に変身してレン達が居る中庭を目指した。その途中、テランジンを運ぶルーク達に出くわした。

 「テラン兄ぃどうしたの?あああ?おなかが?!」

 「頼む、兄貴を助けてくれ」

 と、ルーク達は、シーナに両手を合わせて言った。シーナは、シドゥが死んだ時の事を思い出した。直ぐに治療に掛った。傷口に手をかざした。幸いシドゥの時の様な事にはならず傷口が直ぐに閉じて来た。

 「良かったぁ、あの時みたいにならない」

 シーナは、ホッとした。これなら直ぐに良くなると思った。

 「う、うう…シ、シーナか…俺はもう良い早く、早く中庭へ行ってくれ若達が危ない」

 と、テランジンが痛みに耐えながら言った。シーナは、もう少しと言い治療を続けた。

 「シーナ、この戦いが終ったら好きなだけ食わせてやるぞ」

 と、テランジンが言うとシーナは、大喜びして中庭に向かって行った。中庭では、ラーズが奮戦していた。ラーズの予想外の働きにベルゼブが驚いていた。

 「小僧なかなかやるではないか」

 「ふん、認めたくないが貴様の攻撃を受けてまた目覚めたみたいだ」

 と、ラーズは、ベルゼブから飛び下がり気を十分に溜め込んだ剣を構えて言った。その時、気を失っていたマルスが目覚めた。

 「ラーズ、大丈夫なのか?」

 「ああ、俺は大丈夫だ、レンは、俺の後ろに居るぞ」

 と、ベルゼブから目を離さずラーズは、マルスに言った。

 「この野郎さっきはよくもやってくれたな」

 と、マルスは、叢雲むらくもを構え言った。ベルゼブが両手から深紫色の玉を浮かび上がらせようとした時、上空からシーナが爆炎を吐いた。

 「グルゥワッ?!ド、ドラクーンの!」

 「へっへ~んだ、ばぁか!」

 と、シーナは、上空から言った。

 「こらっシーナ危ねぇだろ、俺達が傍に居る時に爆炎を吐く奴があるか」

 と、マルスとラーズは、もう少しで大火傷おおやけどを負うところだった。ベルゼブは、怒り狂ってシーナに魔掌撃を連発した。しかし、シーナは、それを上手くかわしている。そこへラーズがベルゼブの頭を狙って真空突きを放った。真空波がまともに当たりベルゼブが倒れた。

 「やった!とどめだ」

 と、マルスとラーズがベルゼブの首を刎ねようとした時、身体が急に重くなり動けなくなった。ベルゼブが重地縛じゅうちばくを使ったのだ。上空に居たシーナは、重地縛の影響で下に引っ張られるのを何とか耐えていた。

 「遊び過ぎたな、余も飽きて来たそろそろ終わりにしよう」

 と、ベルゼブが言った。ベルゼブは、何とか立って居るマルスとラーズにゆっくりと近付いた。マルスとラーズの後ろで倒れていたレンがやっと目を覚ました。重地縛で動けない事に気付き目だけを動かすと目の前にマルスとラーズが立って居る。そして、その更に前には、ベルゼブの姿があった。

 「マルス、ラーズ」

 と、レンは、叫んだ。

 「やっと目覚めたか兄弟、しかし残念だが見ての通りだ、重地縛で動けん」

 と、マルスが悔しそうに言った。ベルゼブが不敵に笑っている。

 「何だ目が覚めたのかレオニール、そのまま気を失っておれば楽に死ねたものを…まぁそこでこやつらが八つ裂きになるのを見ておれ」

 そう言うとベルゼブは、マルスとラーズに手刀を突き入れようと構えた。その時、ベルゼブの後頭部に何かが当たった。ベルゼブが振り向くとヨーゼフとテランジンが真空突きを放っていた。テランジンは、シーナに治療してもらった腹から血を滲ませていた。

 「どいつもこいつも何故死に急ごうとする、本当に人間とは愚かな生き物だグルゥフフフ、逃げれば良いものを」

 「愚か者はお前だベルゼブ、主君を捨て逃げる家臣がどこに居るか!レオニール様や両殿下を殺させはせん、相手はわしらがなってやる、かかって来い!」

 と、ヨーゼフは言った。ベルゼブは、一瞬でヨーゼフとテランジンの間合いに入り攻撃した。怪我を負ったヨーゼフとテランジンは、必死で戦った。

 「ち、ちくしょう…この重地縛さえ解ければ」

 と、ラーズが憎らし気に言った。

 「ぐはぁぁ」

 ヨーゼフがベルゼブの拳を腹に受け倒れた。

 「閣下っ!」

 と、テランジンが一瞬ヨーゼフを見た瞬間、ベルゼブは、テランジンの右足を蹴った。その衝撃で義足が外れ倒れた。

 「し、しまっ…ぐおぉぉぉぉ!」

 仰向けに倒れたテランジンの腹をベルゼブが踏みつけた。テランジンの叫び声が中庭に響き渡る。

 「兄貴ぃ!」

 と、ルーク達元海賊が数十人ベルゼブに組み付き引き倒した。

 「シーナァ、兄貴を兄貴を治してくれ!」

 と、ルークが上空で重地縛に耐えていたシーナに言った。シーナは、すぐさま地上に降りテランジンの治療に掛った。ベルゼブは、ルーク達に取り押さえられている。

 「こいつの頭を押さえろ」

 と、ベルゼブの胸の上に乗っかているルークが言うとカツとシンがベルゼブの頭を押さえ付けた。ルークは、短剣を取り出し首を斬ろうとした瞬間、ベルゼブは、全身から衝撃波を放ちルーク達を吹っ飛ばした。中庭のあちこちに落ちた。

 「馬鹿共め、この程度で余の首を落とせると思ったか、まずはテランジンとドラクーン人から殺してやろう」

 と、ベルゼブは、シーナとテランジンに魔掌撃を放った。シーナは、テランジンに覆いかぶさり守った。魔掌撃がシーナに当たりシーナは、テランジンを抱いたまま吹っ飛び、そのまま動かなくなった。

 「シーナァ、テランジン!」

 レンは、叫んだ。ヨーゼフは、倒れ気を失っている。ルーク達も飛ばされ意識が無い。目の前のマルスとラーズは、重地縛で動けずレンもまた重地縛で動けない。このままでは、本当に皆殺されてしまう。ベルゼブは、レン達を見てゆっくりと近付いて来た。

 「これで最後だ」

 と、ベルゼブは言うと右手を上げて頭上に大きな深紫色の玉を浮かび上がらせた。バリバリと音を立てている。そして、その玉をレン達に向け放とうとした瞬間、突如レン達とベルゼブの間にズドンと何かが降って来てベルゼブの深紫色の玉をかき消した。

 「あ、あれは不死鳥の剣…ラムールが帰って来たんだ」

 レンがそう言うと中庭にある女神像と不死鳥の剣が共鳴し合った。

 「グルゥワアアアア?!な、何だこの音はぁぁぁ?ああ頭がぁぁぁぁ」

 と、ベルゼブが頭を押さえ苦しみ出した。その瞬間レン達の重地縛が解けた。

 「さぁレオニール、私でベルゼブの首を刎ねなさい」

 と、不死鳥ラムールの声が響いた。レンは、立ち上がり不死鳥の剣を手に取った。全身に力がみなぎって来る。レンは、苦しみもがくベルゼブに近付き言った。

 「さぁこれで本当に最後だ、二度とこの世に出て来るな、うおぉぉぉぉぉ!」

 と、レンは、気合と共にベルゼブの首目掛けて不死鳥の剣を振るった。赤く光りを帯びた刃がベルゼブの首に吸い込まれるようにして入った。そして、通り抜け首を刎ね飛ばした。

 「終わった、ベルゼブを倒したぞ」

 「やったな、倒したベルゼブを倒したぞ」

 いつの間にかレンの傍に来たマルスとラーズが言うと身体だけになったベルゼブがまた動き出しサリンとソーマンが姿を現し倒れた。それを見たマルスとラーズは、慌ててサリンとソーマンの首を刎ねた。首だけになったベルゼブが話し出した。

 「グルゥフフフこれで四度目か…お前達人間にやられたのは…しかし余は何度でも復活する…何度でもなグルゥフフフ…お前達人間に怒り、嫉妬、憎しみ…恨みの心がある限り何度でもな」

 「うるさい黙れ!その時はまた僕達がお前を倒してやる」

 「もうこの世に現れるなクソッたれめ」

 と、レンとマルスが言うとベルゼブの首は、ニヤリと笑って消滅した。完全にベルゼブの気配を感じなくなった事を確認してから比較的傷の少ないラーズがエレナ達が居る城外に知らせに行った。ラーズの知らせを受けたエレナ達やクラウド、ミトラ、サイモン大将達が中庭に来た。

 「レン!」

 エレナは、レンを見るや駆け寄り抱き付いた。カレンも同じくマルスを見て駆け寄り抱き付いた。コノハは、二人を見て安心したのか泣き出した。

 「レン…酷い怪我、大丈夫なの?」

 「僕の事よりテランジンが危ない、テランジン、テランジン」

 と、レンは、エレナの肩に掴まりながら足を引きずりテランジンのもとへ歩いた。クラウドがシーナを揺り起した。元の姿に戻り気を失っていたシーナが気付くと慌ててテランジンの治療を始めた。

 「テラン兄ぃ、しっかりして」

 「うう、うううう」

 ベルゼブに踏みつけられて塞がれた傷口がまた開いて血が流れている。

 「テランジン、しっかりせい」

 と、リリーに支えられてヨーゼフもテランジンのもとへ来た。皆に見守られてシーナによるテランジンの治療がなされた。傷口は、直ぐに塞がったが、全身の損傷が大きく生きているのが不思議なくらいだった。

 「はぁはぁはぁ…もう今日はこれで限界だよ、ぼくが死んじゃう」

 と、シーナは言うとその場に倒れ込み寝息を立て始めた。レンは、シーナの治療を受けれなくなったテランジンやルーク達を病院へ搬送するよう命じ、自らもヨーゼフ、マルス、ラーズと共に病院へと向かった。

 

 

 


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