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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
110/206

城内の戦闘

 レンは、マルスがジャンパールから持って来てくれたフウガの形見の斬鉄剣を鞘包みで握っていた。大広間の中央に丸テーブルを置きそこにレン、ヨーゼフ、テランジンそして変装したマルスが丸テーブルを囲み座っている。

 「今日も来ないね」

 「ああ、来ねぇなぁ」

 と、レンが言うとマルスが答えた。ヨーゼフとテランジンは、全神経を集中させてイビルニア人の気配を読もうとしている。この日夜は、何事も無く過ぎた。

 翌朝、食事を済ませたレン達は、ヨーゼフの部屋で話した。夜にばかり襲って来ると思っているレン達は、もしかしたら昼間でも襲って来るんじゃないかと思い始めていた。

 「昼に来られたら寝る間が無いな」

 と、マルスが愚痴をこぼした。ここのところ昼夜逆転していた。

 「でも夜僕達はあの大広間に集まって話しをしてるって広めたんだろ?だったらやっぱり夜襲って来るんじゃないかな…」

 と、レンは、以前フウガ邸にあった甲冑を見つめながら言った。これは、レンがヨーゼフに与えた物だった。

 「分かりませんな、もう既に城内に忍び込んでいるやも知れませぬ、そして昼間の我々の行動をどこかで監視しているやも」

 と、ヨーゼフが怖い事を言った。何者かが忍び込んだとの報告は、上がっていない。

 「我々が一人になった時を狙っているやも知れませんね」

 と、テランジンが言った。確かにここ数日は、四人まとまって行動する事が多かった。しかし、レン達の心配を他所よそにサリン、ソーマンらイビルニア人は、相変わらずトランサー城近くの森の奥に居たのだった。森の一番高い木の上から城やその付近を監視していたサリンが、同じく監視しているソーマンに言った。

 「ソーマン、もうこの辺で攻め入ってはどうだろう?」

 「そうだな、ここも直に人間共に見つかってしまうだろうから、今夜やるか」

 と、手前の森でサリンが下位のイビルニア人を使って人一人と犬を殺し隠していたのが発見され騒動になっていた。レン達もその騒ぎを聞いていた。

 「南側の森で人と犬が殺されたと聞いています、どうも気になるので私が見て来ます」

 と、テランジンが言った。レンもマルスも見に行くと言ったがテランジンは、二人に仮眠を取るよう勧めた。

 「テランジンが申す通り若と殿下は仮眠を取って下さい」

 と、ヨーゼフも言うとテランジンがヨーゼフにも仮眠を取るよう勧めた。

 「こんな事は私の仕事ですよ、では行ってきます」

 と、テランジンは、颯爽とヨーゼフの部屋から出て行った。残ったレンとマルスとヨーゼフは、テランジンに任せる事にして仮眠を取る事にした。

 テランジンが、南側の森に到着すると役人が驚いた。まさか海軍の大将が出張って来るとは思ってもいなかったようだ。

 「閣下がどうして?」

 「閣下は止せ、ところで死体はどうした?」

 と、テランジンの問いに役人は、先ほど病院へ搬送したと答えた。

 「そうか、で、どこで発見したんだ?」

 「こちらです」

 と、役人は、テランジンを発見現場に連れて行った。現場に到着した瞬間テランジンは、あのイビルニア人と対峙した時に感じる嫌悪感を感じた。

 「イビルニア人の犯行だ」

 「えっ?誠ですか?」

 「そうだ、君は何も感じないのか?この何とも言えん嫌な感じを」

 と、テランジンは、言い辺りを見渡した。言われてみると確かに妙な感じがすると役人は、答えた。テランジンが用心のためにシドゥの形見の剣に手を掛けると役人が震え上がった。

 「か、閣下まさかここに奴らが居るんですか?」

 「分からん、この奥に行ってみよう、それと閣下は止せ」

 と、テランジンは、言って震え上がっている役人を置いて森の奥へと一人向かった。奥に行くにつれイビルニア人の気配が強くなって来た。テランジンは、剣を鞘から抜き練気をしながら歩いた。その様子をサリンとソーマンが一番高い木の上から目撃した。

 「ん?何者だあいつは、こんな所に一人で来て何をする気だ?」

 「剣を抜いている、我々に気付いたのか?」

 テランジンを見た事のないサリンとソーマンは、ただの兵士と思っている。

 「サリン様、ソーマン様あれがテランジン・コーシュです」

 と、中位のイビルニア人が言った。このイビルニア人は、かつてテランジンが海賊をやっていた時に一度だけ姿を見ている。

 「何?あいつが!?サリン俺達は運が良いぞ、奴を仕留めよう」

 「待てソーマン、一人で来ているとはどうもせん、罠かも知れんぞ、試してみよう」

 サリンは、そう言うと下位のイビルニア人を五人程選びテランジンを襲わせる事にした。

 「行けっ!」

 と、サリンが言うと下位のイビルニア人五人は、一斉にテランジンに襲い掛かった。テランジンは、即座に真空斬で応戦した。鋭い真空波がイビルニア人三人の首を刎ね飛ばした。残るイビルニア人二人が後ろから攻撃して来た。テランジンの反応は、早かった。振り向きざまに真空斬を放ちイビルニア人一人の上半身と下半身が分かれ、あと一人のイビルニア人を斬り付けられるより早く蹴り飛ばした。

 「あの男なかなかやるな」

 と、一番高い木の上から見ているソーマンが言った。テランジンは、木の上のサリンとソーマンにまだ気が付いていない。テランジンは、蹴り飛ばしたイビルニア人に真空突きを放ち頭を潰した。そして、胴体だけになったイビルニア人に振り向き訊問した。

 「おい、お前、ここに居るのはお前達だけか?答えろ!」

 「ブグジュ、グジュグジュ」

 「ちっ!下位か…どおりで弱いと思った、もう良い死ね」

 そう言ってテランジンは、胴体だけのイビルニア人の首を刎ね辺りを警戒した。その様子をサリンとソーマンは、見ている。

 「あの男我々に気付いているのか」

 「分からん仲間は居ないようだしここで奴を仕留めるか…いやちょっと待て」

 と、サリンとソーマンが話しているとテランジンが歩いて来た方から人の叫び声が聞こえて来た。

 「兄貴ぃー!」

 テランジンの海賊時代からの側近であるルークが数名の元海賊達を引き連れてやって来た。

 「どうしたんだお前達」

 「城でヨーゼフの旦那から兄貴が南の森に居るって聞いたんでって何だいイビルニア人じゃねぇか!」

 と、首を刎ねられ死んでいるイビルニア人に気付いたルーク達は驚いた。テランジンは、先ほどの事をルーク達に話した。

 「じゃあまだこの辺りに居るんじゃねぇのかい?」

 と、ルーク達は、剣を抜き辺りを警戒した。

 「いや、お前達が来るまで確かに気配はあったがもう居なくなったようだ、死体を片付けて城に戻る、応援を呼んで来い」

 と、テランジンが言うとルークが連れて来た一人の元海賊が走って役人に知らせに行った。テランジンが言う様にルーク達を見たサリンとソーマンは、他の下位中位のイビルニア人十五人を率いて場所を移動していた。

 「サリン様、ソーマン様、後から来た男もかつてテランジンと共に海賊をしていた男です」

 と、中位のイビルニア人が移動しながら言った。

 「やはりここは素直に夜を待とう、その方が我々には都合が良い」

 「その様だ」

 と、サリン達イビルニア人は、更に森の奥深くへと身を隠した。イビルニア人の死体を処理し終わってテランジンは、城に戻りレン達に報告した。

 「下位の者が五人…後何人居るんだろう?」

 と、レンが深刻な顔をして言った。

 「そんなに居ねぇんじゃねぇか、俺のとこに来た連中は二十人程だった、ラーズのとこにもそれ位だったって言ってたぜ」

 「単純に考えて残るはサリンとソーマンを合わせて十七八じゅうしちはち人ってところか」

 と、マルスの言葉に何となくレンが答えた。そんな時、城に仕える者からランドールからラーズが来ていると報告が来た。城下のランドール大使館に使いをやり城に呼んだ。

 「ラーズ直ぐに城に来れば良かったのに」

 と、レンは、久しぶりに会うラーズに嬉しそうに言った。

 「まぁ色々あって疲れてたんだ」

 ラーズは、自分が討ち取ったアルシンの話しをした。

 「強さは大したことはないが上位者だからな気を付けるに越した事はない、あっそうだ、マルス傷はもう治ったのか?」

 「ああ、シーナに完全に治してもらったよ、ほれこの通り」

 と、マルスは、ソーマンに刺された腹を見せて言った。薄く傷跡が残っている程度だった。そこへラーズが来ていると聞き付けたシーナがやって来た。

 「ああやっぱり来たんだねラーズあにぃ、はいこれ、カイエンからの親書ってやつ」

 と、シーナは、ラーズの顔を見るなり親書を渡した。ラーズは、受け取り中身を見た。

 「ふぅん、国交を結ぼうってか、分かった国に帰ったら父上に渡すよ」

 「当然賛成だろラーズ、僕もマルスも大賛成だよ」

 と、レンが言うとラーズが当たり前だと答えた。シーナは、珍しく礼を言ってエレナの部屋へ戻って行った。夕食を食べ終えいつもの様にレン達は、ラーズを加え大広間に集まった。マルスが顔を隠しているのを不思議に思ったラーズがどうして顔を隠してるのか聞いた。

 「ソーマンの野郎、俺を殺したと思ってるだろうからこうやって顔を隠してるのさ」

 「な~る」

 ラーズは納得した。そして、とうとうサリン達イビルニア人が動き出した。完全に真っ暗になるのを待っていたサリン達は、音も立てずに城近くまで来ていた

 「しかしどうなっているのだ、隙だらけではないか」

 と、城外に警備兵が居ない事を不思議に思ったソーマンが言った。

 「城内に集めているのだろう、とにかく侵入してみよう」

 と、サリンが言い下位中位のイビルニア人達を引き連れ音も無く城壁を登り城内を見た。

 「居ない…これではまるで入ってくれと言ってる様なものではないか…ん?何だあれは、あそこだけ警備がやたらと厳重だな」

 と、サリンが見て言った所は、エレナ達が居る部屋の外側だった。近衛師団隊長ミトラが厳重に守っている。サリン達は、ゆっくりと近付き様子を伺った。そこがレン達が居る大広間と思ったが、しばらくして違うと気付いた。

 「人間の女の声がする、あそこではないな、しかし、あれほど厳重に守っているという事は何か大事な人間がいるのだろう…面白い事を思い付いた」

 と、ソーマンが言うとサリンに付いていた中位のイビルニア人二人に下位のイビルニア人を四人ずつ従えさせ部屋の外と内側から攻め入れと命じた。そして、サリンとソーマンは、残りの下位のイビルニア人五人を連れ大広間を探す事にした。

 「面白くなるぞククク」

 自分達が狙われている事など全く考えもしなかったエレナ達は、のん気に部屋で本を読んだり遊んでいた。

 「ああもう、いつまでこんな事が続くんだろ?」

 と、直ぐに決着が着くと思っていたコノハがうんざりした様に言った。カレンもあまりマルスの傍に居れない事でイライラしていた。リリーは、ソファに座り編み物をしている。

 「そんな事言わないの、油断大敵っていつもヨーゼフさんが言ってるでしょ」

 と、本を読みながらエレナがコノハに言った。ベッドに寝そべってぼんやりと天井を眺めていたシーナが急に起き上がった。驚いたコノハが言った。

 「ど、どうしたのシーナさん」

 「感じる、この嫌な感じ連中来てるよお城に」

 「ええ?ホントに?」

 その時だった、外が急に騒がしくなった。エレナ達は慌てて窓を見ると剣を抜いた近衛兵達が何者かと戦っていた。イビルニア人である。ミトラの怒号が聞こえた。

 「何としてもここを守れ!首を刎ねろ!」

 「おおっ!」

 近衛兵達は、下位のイビルニア人の首を次々と刎ねていったが中位のイビルニア人をなかなか倒せないでいた。

 「ぐぬぬ、おのれは中位の者か」

 と、ミトラが凄まじい形相で中位のイビルニア人に言った。

 「そうだこいつらは倒せてもオレはそう簡単にはいかんぞキキキ」

 「おのれぇ」

 と、ミトラと中位のイビルニア人の攻防が始まった。その頃、城内に侵入したサリン達は、大広間を探していた。

 「どこだ大広間と言うのは…ん?あれは…あの厳重さ、そうかあの部屋だな、お前達行け」

 と、ソーマンが中位のイビルニア人に言うと不気味な笑い声を上げ中位のイビルニア人は、下位のイビルニア人四人を連れ近衛師団隊長クラウドが守るエレナの部屋の前に向かって行った。サリンとソーマンは、残る下位のイビルニア人を連れ大広間を探した。

 「ん?何だこの妙な…ああ?!イビルニア人!」

 と、クラウドが向かって来たイビルニア人に気付くと直ぐに戦闘に入った。

 「えっ?何今度は廊下から…私達囲まれてるの?」

 と、クラウド隊が戦闘になっている事に先に気付いたカレンが震えながら言った。コノハは、ジャンパールから持って来た刀を抜いた。

 「もしもこの部屋に入って来たら私がやっつけてやる」

 と、鼻息を荒げコノハが言った。シーナは、落ち着いてミトラと中位のイビルニア人の戦いを見ている。レン達を狙うサリンとソーマン残る下位のイビルニア人達は、やっと大広間の扉を見つけ出していた。

 「ここまで警備兵に会わずに来たが、どうなっているのだこの城は…」

 「我々をおびき寄せているのだろう、まぁ良いじゃないか」

 と、サリンは、ソーマンに言うと先に下位のイビルニア人を突入させる事にした。無論、捨て駒である。サリンは、出来る限りレン達の気を引けと命じた。

 「お前達に期待はしていない、もしも奴らのうちの一人にでも傷を負わせれば上々だ、行けっ!」

 下位のイビルニア人が派手に大広間の扉を壊し奇声を上げ突入して来た。

 「ふん、やっと来たか」

 と、マルスは、叢雲むらくもを鞘から抜きながら言った。レンは、マルスから受け取った少し短くなった斬鉄剣を鞘から抜き構えた。ヨーゼフとテランジンは、落ち着き払ってゆっくりと椅子から立ち上がった。窓辺に居たラーズも剣を抜いた。そして、レン達の戦闘が始まった。

 

 

 

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