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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
11/206

招かれざる客

 ジャンパール皇国領海ギリギリのところで船が二隻浮かんでいる。周りは、霧で見えない。一隻は、ジャンパールの船、もう一隻は、真っ黒な機体の船である。そうイビルニア国の船だ。ジャンパールの船は、軍艦ではなく民間の船だ。何か話し合っている。そして、イビルニアの船から一人、ジャンパールの船に乗り込んだ。イビルニアの船は音もなくその海域から離れて行った。ジャンパールの船も静かにその海域から離れて行った。


 レンとエレナがフウガ邸で一緒に時間を過ごしていた時、マルス皇子が突然やって来た。

 「邪魔するぞ」

 と、レンの部屋に勝手に入って来た。レンとエレナは、向かい合って勉強していた。

 「なんだ、乳繰り合ってると思ったのに勉強中か…残念」

 と、マルスは、言ってレンのベッドにどさっと仰向けに寝転がった。エレナは、慌てて椅子から立ち上がり挨拶しようとしたが、マルスが手で制した。

 「いいよ、堅苦しいのは苦手でね」

 「今日は急にどうしたんだい?」

 と、レンは、勉強どころではなくなったので本を閉じてマルスに聞いた。

 「退屈だったんでな、ちょっと遊びに来たのさ」

 「勝手に出歩いちゃ駄目じゃないか」

 レンは、マルスに注意したがマルスは、ヘラヘラ笑って取り合わない。

 「殿下は、いつもこんな風にこちらへ来られるのですか?」

 と、エレナが言った。

 「いつもじゃないよ、たま~に抜き打ちでこいつが何をしてるか見に来てるんだ」

 と、マルスは、レンを指差し言った。レンは、嫌な顔をして言った。

 「いい迷惑だよ」

 「まぁそう言うな兄弟、ところでお前カロラを知ってるだろ?」

 「うん、知ってるよ」

 と、レンは、あまり良い顔をしない。

 「あの野郎、最近変なんだよ、皇帝おやじ皇后おふくろがフウガやお前の話をするたびにビクビクするんだ」

 と、マルスは、カロラ侍従の近況をレンに話した。

 「滅多に休みを取らない奴が最近よく休みを取るんだよ、おかしいだろ?」

 「確かに変だね、でも僕たちがお城に行く時は休んでいて欲しいな」

 レンは、カロラ侍従が苦手であった。

 「レン、明日来るんだろうちに、そうだエレナ、君も来い」

 「えええぇ?そ、それは…」

 マルスに急に誘われ驚いたエレナは、レンを見た。

 「エレナさえ良かったら一緒に行かないかい?おじいさんも一緒だから大丈夫だよ」

 「…うん」

 「はい、決まったな、じゃあフウガにも話しておくから、レン必ずエレナを連れて来いよ」

 と、マルスは、言って慌ただしく帰って行った。

 「ホントに良いの?私の様な平民が行っても」

 と、エレナは、不安な顔をして言った。

 「マルスが来いって言っただろ、もしも役人や侍従がエレナを追い帰しでもしたらその人は、きっとマルスにとんでもない目に遭わされるよ」

 と、レンは、言ってクスクス笑った。エレナは、レンの様子を見て少しホッとした。そして、夕暮れになりレンは、エレナを家まで送り届けた。

 翌朝、城からの迎えの魔導車の中にレンとエレナそしてフウガの三人の姿があった。エレナは、完璧に正装して来た。

 「あの閣下、本当に私にような者が行っても大丈夫なのでしょうか?」

 エレナは、ジャンパール城が見え始めると急に不安になったようだった。

 「大丈夫だよ、マルス皇子が直々にお誘いしたのだ、心配することはないよ」

 と、フウガは、エレナに優しく言った。ジャンパール城の正門をくぐりいつもの場所で魔導車が停止した。城内を侍従とフウガが先頭を歩きレンとエレナは、並んでフウガの後を歩いた。途中、女官が二人レンとエレナを見て何かひそひそと話をしているのが見えレンは、不快に思った。本来なら謁見の間に通されるはずだが、エレナが気を使わないようにとマルスが直接、皇帝皇后両陛下のいる部屋に通すよう話はついていた。皇帝家族が普段使う部屋の前に辿り着き、侍従が扉を開けフウガ達を部屋に通した。

 「いらっしゃい、まぁ…あなたがレンのエレナね、よく来てくれました」

 と、ナミ皇后がにこやかに言った。隣で皇帝イザヤも微笑んでいる。

 「このたびは、城中にお招き頂き恐悦至極に存じます」

 と、エレナは、初めてフウガに会った時にしたしぐさで挨拶した。周りには、数人の侍従達がいた。皆、にこやかにフウガ達を見ていたが、一人しかめっ面の男がいる。カロラ侍従である。その顔をマルスが見逃さなかった。マルスは、カロラを殴りつけてやりたかったが、さいわいエレナやレンが気付いてなさそうだったのでこらえた。

 「なるほど、話で聞く以上に美しいな、さぁさぁこちらにお座りお茶でも飲もう」

 と、イザヤがエレナを椅子に座らせた。エレナは、目の前に本物の皇帝皇后が居る。夢を見ているようだった。レンと交際した事でまさか皇族とじかに話せるとは、思ってもみなかった。軽くお茶の時間を過ごしレンとエレナは、マルスの部屋に行った。マルスは、エレナにレンと初めて喧嘩けんかした時の事やいたずらしてレンに濡れ衣を着せた事などを話していた。エレナは、笑い過ぎて苦しそうにしていた。

 「はぁぁ、お腹が痛い…レン酷い目に遭ってるのね…」

 と、エレナは、お腹を押さえながら言った。

 「そう、小さい時からずっとこんな調子さ」

 レンは、苦笑いしながら答えた。そんな三人が楽しく過ごす部屋の前で中の様子をうかがうように立っている者がいた。カロラ侍従だ。

 「ふん、生意気な小僧め、女まで連れて来るとは…今に見ておれ」

 「何を見るの?」

 と、不意に声をかけられカロラ侍従は、心臓が飛び出るほどに驚いた。後ろに皇女コノハが立っていた。

 「コノハ様っな、なんでもありませぬ」

 と、カロラは、そそくさとその場を後にした。コノハは、マルスの部屋の扉をノックした。普段は、しないが今日は、エレナが来ているためお行儀良くしてみた。中からマルスの声がしてゆっくり扉を開けた。

 「なんだ、お前か」

 と、マルスは、妹が入って来るとは思っていなかった。コノハは、レンとエレナの間に無理やり入り込んで座った。

 「さっき部屋の前にカロラが居たよ、私が声かけたら物凄くびっくりしてどこかへ行っちゃった」

 と、コノハが言った。マルスは、ムッとした顔をした。

 「あの野郎、俺達を監視してるんだぜ」

 マルスは、吐き捨てるように言った。マルスが散々カロラの悪口を言ってる間に昼食の時間になり皆で食堂に向かった。食堂には、イザヤ、ナミの皇帝夫妻、午前中の公務を終えた皇太子のアルスそしてフウガが既に座って待っていた。カロラは、イザヤの隣に立っていたが、レンとエレナを見て一瞬、さげすんだ顔をしてイザヤに一礼して食堂を退出した。

 「あの野郎っ!」

 と、マルスは、座りかけた椅子から立ち上がって言った。

 「どうしたの、マルス?」

 と、ナミ皇后が驚いて言った。マルスは、最近のカロラの事やついさっき自分の部屋の前に用もないのに居た事などをナミ皇后に話した。

 「どうかしてるぜ、あの野郎、母上なんとかして下さいよ」

 「確かにお前の言う通り変だな最近のカロラは」

 と、イザヤがナミの代わりに答えた。二人とも様子がおかしい事には気付いていたようだった。カロラの事は、もう少し様子を見て決めるという事になり食事になった。レンとエレナは、皇帝夫妻、アルス皇太子から散々質問攻めに遭い食事どころではなかった。最終的にフウガにひ孫を見せなければという話まで行き二人を困らせた。フウガは、何とも言えない顔をしていたが嬉しそうだった。その後、フウガは、皇帝夫妻と別の部屋に行きアルスは、公務に就き、レンとエレナは、またマルスの部屋に行った。

 「どう考えてもおかしいぞ、あの野郎、今日は特におかしい」

 と、マルスは、レンとエレナとコノハに言った。コノハも同感だった。

 「私もそう思う」

 「そうだろう、あの野郎…一体何考えてるんだ…」

 単純にレンを嫌っていると言う訳でもなさそうだ。何かあるとマルスは、感じていた。

 「僕、あの人の気に入らない事でもしたのかな?全く心当たりが無いんだけど」

 と、レンは、小首をかしげて言った。首筋に妙な色気がある。

 「まぁせっかく今日は、エレナさんが来てくれたのにカロラの事なんてどうでもいいわ」

 コノハは、気を取り直して言った。その通りだという事になり四人は、城内を散歩した。皇族が直々に城内を案内してくれるなどエレナにとって信じられない事であった。城内は、広い。あちこち歩き回っている内に夕食の時間になりまた食堂へと向かった。皇帝夫妻、フウガ、アルス皇太子は居たが、カロラの姿が無かった事にホッとしたレンであったが、マルスは、不審に思った。夕食もやはりレンとエレナの話になった。そして、食事も終わりレン達は、帰る事になった。

 「またいらっしゃい、待ってるわ、レンと仲良くね」

 と、ナミ皇后がエレナにお土産を沢山渡した。エレナは、城に招いてくれておまけにお土産まで持たせてくれるとは、思ってもいなかったので恐縮していた。帰りの魔導車の中でエレナは、興奮気味にフウガとレンに言った。

 「まさか、皇帝様や皇后様とあんなに近くでお話が出来るなんて夢にも思ってなかった…」

 「ははは、おかみも皇后様もよほどエレナさんを気に入ったのさ」

 フウガは、満足げに答えた。魔導車は、エレナの家の前まで行きエレナを降ろしてフウガ邸に向かいフウガとレンを降ろして帰って行った。屋敷では、用人のバズと女中のセンとリクが待っていた。

 「お帰りなさいませ殿さま、若様」

 「ただいま、変わった事はなかったかね?」

 と、フウガがバズに聞いた。

 「ございません、もうお休みになられますか」

 「そうじゃな、レンお前ももう寝なさい」

 「はい、おじいさん」

 と、フウガもレンも眠りにつく事にした。しばらくして屋敷の明かりが消えた。皆、眠りについたようだ。

 皆が眠りについた数時間後、屋敷の前に真っ黒なフード付きのマントをまとった者が居た。そう、十五年前のフウガとの約束を果たすためイビルニアからあの男が現れた。

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