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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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半島の始末

 「半島をどうするんだよ、あっ?まさか本当に消しちまうつもりなのか?」

 と、マルスがロギリア帝国でベアドが言った事を思い出した。

 「そうじゃ、この半島がある以上またベルゼブが復活するかも知れんしな、何とかサウズ大陸から半島を切り離して海に沈めようと思う」

 と、ベアドが言った。

 「まぁこの事は直ぐに出来る事ではありません、あなた達の軍を国に返し今は皆ゆっくり休みましょう、それからでも十分時間はあります」

 と、アストレアが言った。そして、レン達は、イビルニア城外へ向かった。ベルゼブとの死闘が終わり空はもう薄暗くなっていた。レン達の姿を見たルーク達、トランサー軍やジャンパール軍、ランドール軍の兵士達は、大きな歓声を上げた。レン達が無事に姿を現したと言う事は、ベルゼブを倒した事でもある。

 「殿様ぁ!兄貴ぃ!」

 と、ルーク達が走ってレン達の前まで来た。

 「倒したんですね、あの化け物を!」

 「ああ、若とマルス殿下が止めを刺し倒した」

 と、テランジンが言うとまた大歓声が沸き上がった。この日は、イビルニア城外に張った陣屋に泊まり明日の朝、各国の指揮官達を集め、軍の帰国の準備を始める事にした。この日の夜レンは、陣屋を出て空を見上げていた。イビルニア半島に来て初めて星を見た。

 「こんなに星が輝いていたんだ、全然気付かなかったな、あははは…はぁエレナどうしてるかな」

 レンは、エレナも同じ星をトランサーで見てると思うと猛烈にエレナに会いたくなった。何もかも終わった今、半島の事は他の者に任せて自分は、帰国しても良いんじゃないかと思ったが直ぐに思い直した。

 「駄目だ、最後までやり遂げなきゃ」

 と、レンは、自分に言い聞かせまた星空を眺めた。

 「眠れませんか?」

 と、不意に後ろから声を掛けられ振り向くとテランジンが立って居た。テランジンは、失礼と頭を下げレンの隣に座った。シドゥと言う親友を亡くして以来、テランジンの雰囲気が変わったとレンは、思っていた。以前は、海賊をやっていただけあってどこか荒くれた雰囲気を持っていたが、今は荒くれた雰囲気が消え落ち着いた男になっていた。

 「ねぇテランジン、本当に半島を切り離す事なんて出来るのかなぁ?僕には信じられないよ」

 「はい若、私も信じられませんがベアド大帝やアストレア女王が言うからには何か手立てがあるのでしょう」

 「一体どうする気なんだろう?」

 レンは、星空を眺めながら言った。テランジンも同じ星空を見上げていた。しばらく二人で星空を見て陣屋に戻り眠りに就いた。

 翌朝、各国の指揮官達を集め帰国の相談をした。各国の輸送船をイビルニアの隣国の港に集め兵を国に送り返す事にした。各国の軍は、イビルニア城外に張った陣を引き上げ隣国の港へと行軍して行く。

 「えっ?ではマルス殿下達は帰国されないのですか?」

 と、陸に上がっていたジャンパール海軍のヤハギ中将がマルスに言った。マルスは、半島の始末の事をヤハギ中将に話した。ヤハギ中将は、信じられないといった顔をして聞いていた。

 「俺も信じられんがヘブンリーの女王が言うんだぜ」

 「ははぁしかしどうやって半島を大陸から切り離すんでしょう」

 「分かんねぇよ、でも俺もレンも最後まで付き合おうと思ってな、だから皇帝おやじ達によろしく伝えてくれ、全てが終わったら帰るって」

 「わ、分かりました、お伝えしておきましょう」

 そう言ってヤハギ中将は、ふねに戻って行った。ラーズも国には帰らずレン達と行動を共にすると父インギ王に話していた。

 「そうか分かった、まだ残ってるんだな」

 「はい父上、この半島をどうやって沈めるのか気になりますからね、兄上によろしくお伝え下さい」

 「うむ、ではな」

 と、インギは、ランドール軍を引き連れ港へ向かって行った。そして、トランサー軍もレンとテランジン、元海賊のルーク達を残して国に帰す事にした。レンは、魔導無線機を使ってヨーゼフに連絡を取っていた。

 「うん、半島を切り離して海に沈めるんだよ…さぁどうやるのか僕には分からないけど、アストレア女王やベアド大帝が言ってるから…うん、だからまだ戻れないんだ…エレナによろしく言っといて」

 と、だけ言いレンは、魔導無線機を切った。あまり長く話すとエレナが出て来るんじゃないかと思ったからだ。声を聞いてしまえば帰りたくなる。マルスは、そんなレンを見てクスッと笑った。ドラクーン人達は、シーナとカイエンを残して帰る事にした。

 「んじゃあドラコ、後は頼んだぜぇ」

 「ああ、ジャンパールの軍艦に乗せてもらう事にした、そうだカイエン、国にお前が新しい龍神になったと触れを出しておくよ」

 「そうだ、ぼく忘れてた、新しい龍神様はカイエンになったんだよね」

 と、シーナが嬉しそうにカイエンを見て言った。カイエンは、照れて鼻の頭をポリポリとかいた。ドラコは、微笑みカイエンの肩を数回叩くと他のドラクーン人達を引き連れて港に向かって行った。そして、ベアド大帝率いる獣人達もベアドと数名の獣人を残して国に帰る事になった。そして、イビルニア半島には、レン、マルス、シーナ、カイエン、ラーズ、テランジン、ベアド大帝と数名の獣人、アストレア女王、アンドロスとヘブンリーの迷いの森の番獣ヴェルヘルムだけが残った。

 「さてこの半島にはもう俺達しか居なくなったぜ、どうするんだよ女王」

 と、マルスがアストレアに言った。アストレアは、イビルニア城があった所から更に向こうの岩山を見つめていた。

 「あの山、あの山に行きましょう」

 「山?何しに行くんだよ?」

 と、マルスが眉をしかめて言った。アストレアは、マルスの持つ叢雲むらくもを見て言った。

 「あなたのその叢雲が役に立つ時が来ました」

 「これでどうするんだよ?」

 と、マルスが鞘に納めた叢雲を見て言った。

 「行けば分かるわ、あなた達はここに居て、さぁアンドロス、マルスを連れて来て」

 と、アストレアは、レン達にこの場に居るよう言いアンドロスにマルスを抱えさせ岩山に飛んで行ってしまった。

 「マルスを連れて行ってどうする気なんだろう?」

 と、レンは岩山に飛んで行くマルス達を見送った。徒歩で行けば三日は掛かる距離だったが、飛べばあっという間だった。岩山の頂上に降ろされたマルスは、レン達の方を見た。

 「レン達まるで豆粒みたいだな、ははは、で…女王ここで何すりゃ良いんだよ?」

 「マルス、この山の向こうがサウズ大陸よ、丁度この位置が半島と大陸の間になるわ、ここに叢雲を突き刺して」

 と、アストレアは、足元を指差した。マルスは、訳が分からないといった顔をして叢雲を鞘から抜き、言われた通りに突き刺した。

 「けっこうよ、マルスあなたは叢雲に気を送りなさい」

 「ええ?まさかこれで半島を切り離そうってんじゃないだろうな?そんな事出来る訳ないじゃないか」

 と、マルスが呆れ顔で言った。アストレアとアンドロスは大真面目な顔をしている。マルスは、馬鹿馬鹿しいと思ったが言われた通りにする事にした。叢雲の柄を握り練気を開始した。しばらくすると叢雲の刀身が淡く光り出した。そして、アストレアとアンドロスは、マルスの肩に手を置き練気を始めた。マルスは、アストレアとアンドロスの気が自分の身体に流れ込んで来るのを感じた。しばらくすると地鳴りが聞こえて来た。

 「えええ?どうなってんだよ?おおっ!揺れが…」

 「そのまま続けなさい」

 揺れが段々酷くなって来てマルスは、立って居るのがやっとだった。地上に居るレン達も大きな揺れを感じていた。

 「うわっ?!どうなってるんだ?マルス達は大丈夫なのか?」

 と、レンは、岩山を見上げた。岩山の頂上が光っていた。既にサウズ大陸と半島の間に地割れが起きていた。マルスは、チラリと後ろを向いて驚いた。

 「ええっ?ほ、本当かよ?!」

 「あなたは黙って叢雲に気を送りなさい、まだ足りないわ…タケルヤ、タケルヤあなたも手伝って」

 と、アストレアは、二千年以上前に亡くなったマルスの先祖で弟のタケルヤに話しかけた。すると叢雲を通して聞いた事のない声が聞こえた。マルスは、もう何が何だか分からなくなってきた。

 「何だよ姉さん?俺の子孫を使って何をやってるんだ?」

 「タケルヤ、久しぶりね、今イビルニア半島をサウズ大陸から切り離してるの、でも今一つ力が足りなくてね、あなたに手伝って欲しいの」

 「あははは何だ、変な事してるんだな、良いぜ、どうすれば良い?」

 「そうね、あなたも叢雲に気を送ってちょうだい」

 と、アストレアが言うと叢雲が更に強く光り出した。その頃、ジャンパール城のタケルヤを祀ってある祭壇に異変が起きていた。供え物をしていた侍従が慌てて皇帝イザヤの部屋に行った。

 「おおお、おかみ大変です!タケルヤ様の像が」

 「何事だ!ご先祖の像がどうしたのだ?」

 「とと、とにかく祭壇にお越し下さい」

 そう言われてイザヤは、侍従と二人で祭壇に向かった。イザヤは、大いに驚いた。タケルヤの像が眩いばかりの光りを放っていた。

 「な、何と?!一体どうなっておるのだ?こんな事は初めてじゃないか」

 イザヤは、あまりの眩しさで顔を手で覆った。そして更に強く光ったと思うと光りが消え何事も無かったかのように元の像に戻った。

 「な、何だったのだ今のは?も、もしやマルス達の身に何か起きたのか?」

 と、イザヤは心配した。レン達がベルゼブを倒した事とまだイビルニア半島に居る事は、既に報告があり知っていたが息子の顔を見るまで不安が残っていた。

 「マルスよ、無事に帰って来ておくれ」

 と、イザヤは、タケルヤの像に手を合わせ呟いた。そんな事などつゆ知らずマルスは、岩山で叢雲に気を送り続けていた。物凄い地鳴りと揺れが半島全体に起こったが、直ぐに治まり静かになった。

 「切り離せたわ、ありがとうタケルヤ」

 「お安い御用さ!姉さん、マルス、もういいぞ」

 「えっ?」

 と、タケルヤに言われたマルスは、叢雲を見た。刀身が淡く光っている。アストレアとアンドロスがマルスの肩から手を離した。マルスは、身体に強烈な疲労感を感じその場にへたり込んで後ろを向くと半島が大陸から離れているのが見えた。

 「ふぅぅぅ、ま、まさか本当に切り離せるとは…それにしても疲れた…もう立てねぇよ」

 「マルス良くやったわ」

 「姉さん一体何があったんだよ、大陸から半島を切り離すなんて尋常じゃないぞ」

 と、タケルヤが叢雲を通してアストレアに問いかけた。アストレアは、今までの経緯をタケルヤに話した。

 「イビルニア人?ふぅん俺が死んだ後にそんなのが出て来やがったのか、で俺の子孫とミストレア姉さんの子孫がやっつけたってのか、そうか良くやったなマルスよ」

 と、タケルヤに言われたマルスは、変な気分だった。まさか、こんな所で自分の先祖と話しが出来るとは夢にも思っていなかった。

 「ど、どうも…」

 と、マルスは、恐縮して見せた。そんなマルスの様子を見てアストレアとアンドロスがクスクス笑った。マルスは、ばつの悪そうな顔をしていた。

 「マルスよ、ミストレア姉さんの子孫をあんまりいじめるんじゃないぞ、じゃあアストレア姉さん、アンドロス俺は戻るぜ」

 そうタケルヤが言い終わると叢雲の刀身から光が消えた。アンドロスが叢雲を引き抜きマルスに渡した。そして、アストレアとマルスを抱えたアンドロスは、レン達の居る場所に帰って行った。

 「女王、一体何が起きたのですか?物凄い地鳴りと地震がありましたが」

 と、レンは、フラフラになったマルスに肩を貸しながら聞いた。酷く弱ったマルスを見てシーナがげらげら笑った。

 「この半島を切り離しました」

 「ええ?ホントかよ?」

 と、アストレアの言葉をラーズが疑った。ラーズは、カイエンに龍の姿に変身してもらい空を飛んでもらった。

 「ほ、ホントだ…大陸から離れてる」

 「おうおう、すげぇなぁラーズあにぃ」

 と、ラーズとカイエンは、上空で感心した。ラーズとカイエンは、レンとテランジン、ベアド大帝ら数名の獣人に半島の様子を説明した。ベアドは、事前にアストレアとアンドロスから半島を切り離す方法など聞いて別段驚く事もなかった。

 「それじゃあ今この半島は浮いてるって事?」

 と、レンが何となく言いそんな馬鹿なといった顔をした。隣に居たテランジンがふと思い出し話した。

 「若、この島は今浮いてますよ、だからベルゼブはリヴァーヤを閉じ込めた檻をイビルニア城の真下に位置する海底に沈める事が出来た、そしてリヴァーヤに管を通し城のどこかでベルゼブは力を吸い取っていたのでしょう」

 「あっ?!そうだった!元々この半島は大陸から突き出てたんだね」

 と、レンは納得した。しかし、切り離した事には成功したが、浮島になったイビルニア半島をどうやって沈めるのかと思いレンは、アストレアを見た。アストレアは、海がある方を見て言った。

 「リヴァーヤに手伝ってもらいましょう」

 

 

 

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