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不死鳥の剣  作者: TE☆TSU☆JI
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忍び寄る黒い影

 「閣下、先日ジャンパール領海で怪しい船を発見し拿捕だほしようとしたのですが残念ながら逃げられまして…」

 と、海軍将兵の一人がフウガに話した。

 「どのような船だった民間の船かね?」

 「いえ、真っ黒な窓がどこにあるか分からない船でした」

 と、船の特徴を聞いたフウガの顔色が変わった。

 「それはイビルニアのふねだ…なんだ知らなかったのか」

 フウガの言葉にその将兵は、驚いている。二十五年前のイビルニア国との戦争の後で軍人になったようだった。そこへ、懐かしい人物が現れた十五年前フウガと共にトランサーから脱出したヤハギ中将である。当時は、大佐だった。

 「閣下、お久しぶりです、お元気でしたか?」

 と、ヤハギ中将は、ニコニコしながら言った。

 「やぁ久しいのぉ、艦長」

 と、フウガは、当時を思い出し艦長と言った。ヤハギ中将もレンの素性を知る一人でもある。

 「ははは、閣下、若い連中にイビルニアの事を詳しく話してやって下さい」

 「それなら君もよく知ってるじゃないか」

 「いえいえ、皆、閣下のお話が聞きたいのです」

 ヤハギ中将にそう言われて仕方なくフウガは、若い将兵達にイビルニアについて話始めた。話を聞く将兵達は、真剣にフウガの話を聞いていた。中には、顔を真っ青にして聞いている者もいた。

 「とにかく、イビルニア人を甘く見ない事だ、良いな?あの連中を見て話をしても一切の情は捨てろ、皆殺せ、必ず首をねるのだ、これからも、海上、港の警備を厳重にするように」

 と、フウガは、話を締めくくった。そして、軍部を後にした。夕暮れになりフウガは、イザヤ皇帝、ナミ皇后が待つ城に戻ろうといた時、ヤハギ中将が暗い顔で近づいて来た。

 「閣下、申し訳ありません、今の若い連中はあまりにもイビルニアの事を知らなさ過ぎまして、どうも危機感が薄いようで…」

 と、ヤハギ中将がフウガに詫びた。

 「仕方あるまい、あの戦争から二十五年じゃ…ところで他言はしてないな?」

 と、フウガは、レンの事を他にしゃべってないかヤハギ中将に確かめた。

 「ご安心下さい、閣下、拙者その事は墓場まで持って行きまする」

 と、ヤハギ中将は、答えた。フウガは、分かったとうなずいて、ヤハギ中将と、別れた。城内に戻ると侍従がフウガを探していた。

 「ああ、サモン閣下、夕食の準備が出来ておりますので早う食卓へとのおかみのお言葉です」

 「そうかね、では参りましょう」

 フウガは、城内の皇帝家族が食事をする部屋に向かった。部屋に入ると皆が待ってたと言った顔でフウガを迎えた。

 「遅かったなフウガ、早く座れよ」

 と、マルス皇子が言うと皇帝の長男で皇太子のアルスがフウガのために椅子を引いてやった。

 「さぁフウガ座って」

 「かたじけのう御座る」

 と、フウガは、頭を下げ椅子に腰を下ろした。その様子を見ていたカロラ侍従は、面白くないと言った顔をした。その表情を皇帝の長女コノハ皇女は、見逃さなかった。

 「皆、揃ったことだ、食べようではないか」

 と、皇帝イザヤが言って皆で乾杯をして食べ始めた。レンは、マルスの隣で食べていた。マルスにちょっかいを出されながら食べていると、ナミ皇后が思い出したように言った。

 「レン、あなた最近、い人が出来たんですって」

 急にエレナの事を言われてレンは、思わず噴き出した。その様子を見てマルスは、やっぱりなと言った顔をした。

 「どうして…あっ!おじいさん!?」

 と、レンは、頬を赤らめてフウガに言った。フウガは、ただニヤニヤ笑って食事をしていた。

 「ええ~どんな人?見てみたいなぁ」

 と、二つ年下のコノハ皇女が興味津津で言った。

 「母上ご提案があります」

 と、マルスは、急に大真面目に言った。

 「わたくし今宵は、フウガ邸に泊まり明日、その娘を偵察して参りますが、いかが?」

 ナミ皇后は、少し考えて言った。

 「許可します、しっかり偵察するように」

 「ははっ」

 レンは、今朝フウガが用人のバズにマルスが泊まるかもと言っていたのを思い出した。レンは、恨めし気にフウガを見た。フウガは、笑いを噛み殺そうと必死になっていた。そして、皇帝家族との食事も終わりレン達は、屋敷に帰る事になった。

 「ほんとに見に来るなんてどうかしてるよ」

 と、レンは、帰りの魔導車の中でふくれっ面をしてマルスに言った。

 「まぁ良いじゃないか」

 と、マルス皇子は、言った。レンとマルスは、幼い頃、義兄弟の盃を交わしている。どこで見聞きしてきたのか分からないが、マルスは、レンにその儀式を教え二人で行った。それ以来マルスは、本当の弟の様にレンを可愛がっている。レン達は、屋敷に着くと風呂に入り寝ることにした。

 

 翌朝、レンは、一人学校に行った。マルスには、学校が終わってからエレナを紹介すると言った。マルスは、よかろうと納得したが暇を持て余し我慢できず、レンの通う学校へこっそり出かけた。当然警護の者も付いて来る。学校に着いたマルスは、素知らぬ顔で学校の裏門から侵入した。丁度、昼休みだった。校内を人目に付かないよう物陰に隠れながら進んでいると誰かが数人と言い争っている声が聞こえた。マルスは、気になって見に行くと女の子一人を五人の男女が取り囲んでいた。エレナであった。

 「土曜の夜は、サモン邸で何をしてたのかしらね」

 と、土曜日の夜、レンがエレナを自宅に送り届けていたところを窓から見ていた少女が言った。この少女は、レンに惚れていてレンと二人で歩いていたのが気に入らないでいた。

 「別に何もないわ、お食事に招待されただけよ」

 と、エレナは、毅然とした態度で言った。その様子をマルスは、遠くから見ていた。

 「ほほう、あの娘か…確かに雑誌で見た女に似てるなぁ、しかし、様子が変だな…」

 マルスは、しばらく様子を見る事にした。

 「へぇ招待されたら手を繋いで歩いたりするんだ」

 と、少女は、憎らしげにエレナを見て言った。

 「あんな女みたいな顔の奴のどこが良いんだ?」

 と、不細工な少年が言った。この少年は、エレナが好きでレンと一緒にいたと少女から聞いて腹が立っていた。

 「俺の方が男らしいだろ」

 と、言って少年は、エレナの肩に手をやった。エレナは、その手を払ったが、それに腹を立てた少年は、エレナに抱き付こうとした。エレナは、必死で抵抗した。

 「嫌っ、やめて、触らないで」

 「っちゃいなよ、ここは滅多に人が来ないから大丈夫よ」

 と、少女が少年に言った。それならと、残りの二人の少年たちもエレナに挑みかかった。

 「きゃあっ」

 エレナは、少年達に手籠めにされそうになった。それを遠くで見ていたマルスが、走って行き少年を一人蹴り飛ばした。急に見たことのない長身の男が現れて皆びっくりしていた。マルスは、少女達の前に立ちはだかりエレナに小声で言った。

 「大丈夫、俺は、レンの兄貴分だ」

 エレナは、思わず叫びそうになり手で口をふさいだ。レンから聞いていた皇子が目の前にいる。

 「だ、誰だお前は、ここの学校の者じゃないな」

 少年たちは、身構えて言ったが、マルスにそんな事を言っても通じない。マルスは、物も言わずにアッと言う間に三人の少年達を殴り倒した。残った少女二人は、ただ震えているだけだった。

 「お前たちは、女だから手は出さん、しかし女が女を手籠めにさせようとは一体どういう了見だ、絶対に許さん…おいっ」

 と、マルスが言うと警護の男二人が現れた。

 「今からこの連中を校長室へ連れて行く」

 「ははっ」

 と、警護の男二人は、少女達の首根っこを掴んで校長室へ連れて行った。

 「君がエレナだな、なるほどレンが惚れるはずだな、ふふふ」

 マルスは、エレナをまじまじと見て言った。

 「まぁ早くレンのとこへ行きな、俺は、あの連中にお灸を据えて来る」

 そう言ってマルスは、校長室に向かった。危ないところを救われたエレナは、直ぐにレンの元へ走った。マルスは、校長室で少女達の親を呼び出し怒鳴り散らしていた。校長もこんな田舎の学校に皇族が来るとは夢にも思わず顔を真っ青にしていた。

 「とにかくっ、二度とこんな事を起こさんようにしろ、もしもまたあの娘にちょっかいを出したらお前達、生まれて来た事を後悔する事になるぞ」

 と、マルスは、少女達をおどし処分は、校長に任せて校長室を出た。学校中大騒ぎになっていた。マルスは、レンを探した。時折、近くにいた生徒にレンは、どこだ?と、聞いて回りレンとエレナのいる教室にたどり着いた。

 「何やってるんだマルス」

 と、レンがマルスを見て慌てて駆け寄った。

 「悪い悪い、退屈だったんだよ、でも俺が居て助かったんだぜ」

 と、エレナを見て言った。

 「それはそうだけど…でも、ありがとうほんとに助かったよ」

 レンは、納得いかなかったが一応お礼は、言った。確かにマルスがいなかったらエレナは、今頃とんでもない目にあっていた。

 「よし、エレナにも会えたし俺はもう帰るわ、んじゃあな」

 そう言ってマルスは、屋敷に帰って行った。マルスが帰った後、レンとエレナは、他の生徒達に質問攻めされた。帰るまで質問攻めに合い二人は、クタクタになり帰った。

 「今日はごめんね、変な騒ぎに巻き込んじゃって」

 「ううん、大丈夫、マルス皇子がいなかったら私…」

 エレナは、急に泣き出しそうになった。レンは、エレナの手を握った。

 「とにかく何もなくて良かったよ」

 「うん…」

 エレナは、レンに寄り掛かった。あんな事で身体をけがされたらレンに申し訳がないと思った。レンは、エレナを家まで送り届け屋敷に帰った。

 「ただいま帰りました」

 「おお、帰ったか、今日は大変だったらしいな」

 と、フウガは、マルスから一部始終聞いたのだろう心配していた。

 「エレナさんが無事で良かったな」

 「はい、でも本当なら僕が助けるべきなのに…」

 と、レンは、その場に居合わせなかった事を後悔していた。

 「なぁに、間が悪かっただけじゃ、その代わりにマルス皇子がエレナさんを助けてくれたではないか、もう二度とそう言う事はないじゃろう」

 と、フウガは、レンを励ました。それ以来レンは、学校でも許す限りエレナのそばにいるようにした。あの少女達は、マルスを恐れてレンとエレナに近づかなくなり、平和な時間を過ごしていた。

 しかし、黒い影は、刻一刻とレンとフウガに近づきつつあった。十五年前のフウガとの約束を果たすためついに動き出したのである。

 

 

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