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少年と老人は遭遇する

一人の老人が鬱蒼とした森の中の獣道を大きなかめを背に担いで歩いていた。ここは天領区に広がる広大な神獣の森。人が住む事の出来ない神聖な場所で、樹齢数百年の巨大な樹が大地を覆いつくし地面には太陽の光が届き難い為に、シダ類やコケ類しか生えていない。しかもそのシダ類も人間の地に生えている物の数倍はあり、老人の肩に届くものもあった。住んでいる獣たちも色々な種がいるが、その中には神の眷属である神獣も多く住んでおり、それぞれの縄張りを持っていた。


神獣は色々な獣の巨大な姿で神力を有しており身体能力も高い上に、中には言葉を操るモノもいる。決して人には従わず、自分の縄張りに立ち入る事の許され無いのだが、老人は神獣も危険な肉食獣にも気を払う事無く呑気に散歩を楽しむように歩いていた。


老人は薄汚れた、かつては白かったシャツにこげ茶色の皮の上着とズボンに黒いブーツを履いている。顔には多くの皴があるが、若い頃はかなりの容姿を思わせる精悍な顔立ち。ほりの深い奥には青い目があり、以前は銀の髪だったが、今では真っ白で艶もなく無造作に皮ひもで後ろに縛っていたが、白いあごひげだけは美しく整えられていた。


「やれやれ、最近は水汲みも骨じゃの。そろそろ鳳核ほうかくが現れのかもしれんな~~」


鳳核とは鳳凰族が体内に宿す神核――それは神族の源で命。神族は殆ど不死の体だが寿命はある。死ぬとすれば老衰か首を切り落とされるしかない。老衰の場合は寿命が来ると神核が体に現れて、徐々に抜け出して1,2年で抜け落ちる。抜け落ちた神核は直ぐに光を失い石化すると同時に肉体は消失し丸い石と化した神石だけが残されるのだ。一方、首を切り落とされると神核が肉体から消失し、肉体は消える事なく人間として死ぬ事になり、神族としては恥辱的な死に方だった。


つまりこの老人は人間ではなく鳳凰族。かつて愛する人間の娘カチャと婚姻するために、闘技大会で優勝したが、女王の機嫌を損ない願いは叶わず、親族からは誹られ、神を唆した悪女としてカチャの命が危うくなった。仕方なく国を捨て天領区に逃げ込み神獣の森でひっそりと愛する女と暮らしていたエトムフォンだった。


愛するカチャとは、もう八百年も前に死別していたが、国に帰る事もせずこの森に住み着いてしまっていた。老婆になったチャカを看取って、一時期は後を追って死のうかと思ったが、カチャの死際に『こんなお婆ちゃんの私も愛してくれて生涯幸せでした。だから私の分も生きて……そして次に…貴方に相応しい女性を…見つけてください…』しわがれた声だが、エトムフォンには愛しさしか湧かなかった。


『嫌だカチャ…お前が死んだら俺も死ぬ』と涙ながらに骨ばったしわしわの手を握り締めて言うと、老女は仄かに微笑んで『いつまでたっても泣き虫ねエトム様は…カチャは…またあなたの前に愛する女とし…現れますから待っ…』最後まで言い終わらない内に息が途絶えてしまった。


『カチャーーーーーーー!!』


未だ瑞々しい若者のままのエトムフォンは、妻の亡骸にしがみ付いて何日も泣き通したが、死んだカチャが生き返る訳でもなかった。 神力を使えば永遠にその姿を朽ちさせず保存できたが、カチャが好きだった白い花が咲く丘に埋葬し土に返した。そうすればカチャが愛した小さな白い花になって会えるような気がしたからだ。


最後の言葉が心に残り、今世は無理でも来世を共に生きるためにも生きる事にした。


何故なら自ら命を絶つ神族は天帝の布いた理に反し、魂は消滅し二度と生まれ変われないのだ。


それ以来エトムフォンは自分の死期が来るのをひっそりと待って生きていたのだが――あまりに深く純粋な想いだ。普通なら百年も経てば、そんな想いも薄らいで、新しい相手を見つけるだろうがエトムフォンは違ったようで八百年以上も思い続けていた。


よく考えれば、ある意味偏執的な想い……。


だが、そこまで愛された女は幸せなのかもしれない。



そして、「早くカチャに会いたいの~~きっと冥府で待ちくたびれておる」と毎日死ぬのを待ち焦がれている痛い老人になってしまった。


そんな独り言を呟きながらエトムフォンは水場である大きな泉に到着した。


泉の上には、ぽっかりと穴が開いたように青空が見えて、明るい日差しが降り注いで水面を明るく照らしていた。透明で綺麗な水は深い水底をくっきりと映し出し、湧き出る水に揺れる水草の中を泳ぐ小魚まで見えていた。しかし今日は様子がおかしいのに老人は気が付く。


水辺には何かしら水を飲みに獣たちがいるはずだが、その気配すらなく小首を傾げながら背負っていた瓶をひょいと下に降ろして辺りを見渡す。


「ん?」


そして泉の中央に何か黒い物が浮かんでいるのを発見する。


「なんじゃ? 獣の死骸か。面倒な」


このままでは水が腐っては不味い。仕方なく神力でどけようと死骸を空中に浮かせると、それは黒い服を着た人間の子供だった。


「何故こんなところに子供が??」


神獣の森で暮らすようになってカチャ以外の人間に会うのは初めて。


慌てて、そのまま手元に引き寄せてみれば更に驚く。


「黒に紅い髪とは珍しいの……しかも微かに鳳気ほうきを纏っとる。わしと同族か……訳ありじゃな」


神族が神獣の森にいるのも珍しいのだ。


天領区にいる神族は天帝の神殿がある崋山に住んでおり、森に降りて来るなどあまりなく、暇つぶしの散策か神獣狩りくらいだ。


よく見れば少年は気を失っているだけ。見捨てる訳にもいかないので拾う事にした。


たまには話し相手が欲しかったので丁度よかったのだ。


とりあえず瓶に水を汲んで担いでから子供を抱っこして歩き出す。水を入れた瓶は人間の大男でも運ぶのは困難な重さだが、エトムフォンは軽々と担いだ上に、子供を抱っこしてスタスタと元来た道を進むのだった。











「へっ、へっくしゅん!」


自分のくしゃみで目が覚める。


「風邪ひいたかな」


起き上がり辺りを見渡すと真っ暗で何も見えない。電気を点けようと辺りを探ると横に誰かが寝ているのに気が付く。


「誰だ?」


まさか母親が添い寝するはずもなく、相手が分からず恐怖してしまう。慌てて離れようとするが


「カチャ~~~~」と聞き覚えのない老人の声がしたかと思うと抱き込まれてしまう。


「ぎゃーーーーーっ! 変態じじーー離せ!」


大声で叫ぶが、反対に寝ぼけた様子で俺に顔を擦り付ける。


「寂しかったカチャ~~~」と甘えるように言われぞっぞっと鳥肌が立つ。


「目を覚ましやがれ、このボケ老人!!」


「ん! どうしたんじゃカチャ…」


「カチャカチャ煩い! 俺は宰幸平で男だ!」


どうやらカチャと言う女と間違えているらしく、貞操の危機とばかり必死に暴れる。そもそも誰だこの爺は??


何故俺のベッドにいる?


そして爺も漸く人違いだと気が付いたらしく「おっお~~すまん、すまん。寝ぼけておった~」と悪びれない口調で離れると同時に明かりがつく。


あまりの眩さに一瞬目が眩むが、目の前にいた見知らぬ爺さんがおり驚く。


それは、やたらとカッコいい爺さん。白く長く生やした髭が似合い、はっきり言って渋い。しかも上半身裸なのだが、老人のくせに筋肉でムキムキの細マッチョ。若い頃は絶対にモテモテだったろうと羨ましくなる。


ん!?


そう言えばここはどこだ?


明らかに俺の部屋ではなくベッドも違った。


俺は、なんで見知らぬ爺さんと同じベッドに寝ているのかと、思い起こそうとすると、神社の鏡が光った映像が蘇る。


そうだ!俺は光と共に体を何処かに飛ばされたのを思い出す。


「爺さん! ここは何処だ」


慌てて、先ずは状況確認だとばかりに聞いた。


「うん~、ここは天領区の神獣の森じゃよ」


「はっ!?、天領区? 神獣の森?」


聞き覚えのない言葉に冷や汗が出る。非常に不味い状況だ。


「どうした? お前は鳳凰族じゃろ。そんな事も知らんのか」


爺さんが変な事を言う。鳳凰族とは今時流行らない暴走族かなんかの名前しか思い浮かばなかった。


「そんな族は知らねえよ。俺は日本人で宰幸平十三歳で普通の中学生で不良じゃないぞ」


確かに赤いメッシュに左目は金色だがヤンキーじゃない。


「何を言っておる? しかし…お前の色は本当に特殊だな。左目に天帝色を宿し、右目は稀有な黒色。面白い子供じゃ」と言いながら繁々と俺を見る。


そういう爺さんの目は青色で外人かと思うが、話す言葉は日本語だ。


それに天帝色てなんだ??


「爺さんの方が訳がわからん。それよりここは日本じゃないんだな」


もう一度聞き返し確かめる。


「日本なんて場所は知らんぞ。恐らくこの四神国のどこにも存在しない」ときっぱりと言われてしまった。


「四神国? アメリカもロシアも中国も知らないのか」それでも諦めきれずに、ダメもとで大国の名前を出してみた。


「知らんな」


その一言でどん底に突き落とされる。


こ、こ、これは俗にいう異世界トリップ!?


鏡が光り、最後に聞いた声を思い出す。



『 恐れるな我子孫よ、我地に導こう。 そこは安住の地なり 』



それにお鳥様の言い伝えが被さると、答えは一つしかない。


つまり、あの言い伝えは本当の話で俺は神様の世界に来てしまったことになるのだ。


「マジかよ…」


もう元の世界に戻れないのを理解した途端に悲しみが押し寄せる。


「うっうう… どうしよう… 俺…家に帰れないじゃん… 母さん、父さん 雛… うえぇえんえんえん」と男なのにとうとう泣き始めてしまった情けない俺。


それを見かねたように爺さんが俺を優しく抱き締めて頭を撫でてくれる。


「よくわからんが余程辛い目に遭ったんだろう。泣いてすっきりするがよい」


爺さんの、何も着ていない胸で泣くのは結構嫌だが、贅沢も言えず泣くしかなかった。


自分の迂闊さから、大好きな人達と別れの言葉も交わせずに異世界に来てしまったのだ。もう二度と会えないのが悲しくて悲しくて思いっきり泣くしかなく、そして泣きつかれた俺はいつの間にか寝てしまったのだった。







次に目を覚ますと俺は一人でベッドに寝ており、頭も泣き過ぎた所為でガンガンと傷む。


「やっぱ、夢じゃなかった。 はぁ…」


溜息と共にポロリと涙が落ちた。


部屋は粗末の一言。岩をくり抜いたような部屋に木で作ったベッドが一つだけ置かれていた。ベッドには毛皮が敷かれて、布団は毛織物ような布が一枚だけ。日が差し込む窓にはガラスもない岩壁をくり抜いた丸い穴だった。


とても文明が発達した世界とは程遠いのがそれだけで分かってしまう。


泣くだけ泣いた俺は現実を少しづつ受け入れるしかない。


「でも神様の国にしては粗末だな」


眉を顰めてしまう。


「それに神様の国なら天使のような美少女に助けられるんじゃないのか…依りによって半裸の爺さん…不幸だ…」


自分の運の無さにぼやいてしまう。


だが、いつまでもいじけている訳にもいかず、ベッドを下りるがスニーカーも靴下も履いてなく素足。そして着ているのは下着だけで学ランを着ていなかった。


素足で石畳の床に足を着くとひんやりとした石の冷たさを感じ、現実なんだと改めて知る。


「何が神様だ。やり逃げしないで責任取って娘を連れて帰れよ」


そうすれば、俺が向こうの世界で生まれず、こんな面倒な状況に陥らなかったはずだった。


これから俺はこの見知らぬ世界で暮らすしかないのかと思うと落ち込む。


助けてくれたのが美少女なら、もう少し明るくいられたかもしれないが、現実は白い髭の爺さんだ。


優しくて親切な爺さんには悪いがつい思ってしまう。



そこへ、ドア替わりの布が掛けられた所から、爺さんが現れる。


「目が覚めたな坊主。 腹が減っているだろうから飯を持ってきたぞ」


「ありがとう…ございます」


差し出された木の皿には肉の塊がワイルドにのっていた。一応は焼かれてあるが起き抜けに食べるにはヘビー。だが人の好意を無碍にもできず、フォークらしきものが刺さった肉を一口噛りつく。


その途端に肉汁が口に広がり、味付けは塩だけだが絶妙な塩加減が味を引き立てていた。


「美味い!」


何の肉か分からないが、とにかく美味かった。


そのまま一気に食べ自分が結構腹が空いていたんだと驚く。更に驚いた事に、フォークだと思ったのはナイフと言うより小刀だった。危うく口を切るところだったので冷やりとした。


なんてワイルドな料理。


明らかに目の前の爺さんの料理だろう。


俺が食べる姿をにこにこと眺める爺さんは、悪人ではなく善人だが神様には見えなかった。


服装も古臭いシャツと皮ズボンで貧乏ぽい格好。だがスタイルが良いせいか、おしゃれに見えるから不思議だ。


「ほれ、水じゃ」


最後に木のコップに入った水をくれるのをごくごくと飲み食事を終える。


「ごちそうさま」


と言うと変な顔をする爺さん。


「『ごちそうさま』とはなんじゃ?」


「えっ、ご飯を食べさせてもらった感謝の言葉??」そんな事をあらためて聞かれて戸惑い、自信なさげにそう答えるしかなかった。


「それは鳳凰国の新しい習慣なのか?」


また鳳凰と言う言葉が出る。


「俺は日本人で鳳凰国なんて知らないよ」


鳳凰つながりで御神体の鏡が祀ってあった鳳神社なら知っていた。安直だが鳳凰国に何かしら関係している気がする。


「お前が日本人??? 訳の分からん子供だ。一体何者なんだ」


改めて俺を不思議そうに俺を見る爺さん。


「それは俺も知りたいよ」


切実にそう思った。


信じるかどうか分からないが、爺さんに俺の生まれた世界と生い立ちを説明する事にするしかないのだった。







 

俺の説明を興味深さそうに聞いた爺さんは、こちらが拍子抜けするほど簡単に信じてくれる。


「成程。 それじゃあお前は異界生まれの鳳凰族なんじゃ。だからそんなに物知らずで神力も低い上に不細工なんだの~」


面と向かって失礼な事を言われてしまう。


「不細工! 俺って不細工なの」


これまで不細工なんて言われたことが無いのでぐっさりと胸に痛みが襲った。


チビで不細工なんて救いが無い。


決して美形では無いけど俺は普通顔だと自負していた。


町の爺ちゃん婆ちゃんたちには可愛いと評判なんだぞ、と反論したかったが空しいので止めた。


「すまんな~坊主。神族の中では不細工で、人間としたら普通じゃな。なにしろ我ら神族は美しい者しかおらんから、つい珍しくって言ってしもうた」


それって全然フォローになってないぞ糞爺と言いたいが、これから頼りになるのはこの爺さんだけなので口を噤むしかない。


それより、この世界の事を知りたかった。


「やっぱり爺さんも神様なのか? それに鳳凰族て何なの?」


「そうじゃ。わしは鳳凰族で神だ。この世界は天帝を頂点に多くの神がいる。そして四つ人間の国の一つの鳳凰国を治める神族が鳳凰族なんじゃ。 鳳凰族の本来の姿は鳳凰と言う神鳥で、人間の姿が仮初なんじゃ。  そして聞いた話で判断すると、理由は分からんが…恐らく高位の鳳凰族が昔のお前の世界に渡って子種を残していったのだろう。そして鳳凰族の血が生れたら戻すように神具を残した。よってお前も神となる」


「俺が神様…信じられね。しかも鳳凰!?」


イメージ的には某漫画の火の鳥のような存在なのだろうか?


「現に、お前はこの世界に帰ってきてしまった」


「俺の生まれた世界に戻れないのか」


一抹の望みを抱いて聞いてみる。


「無理じゃな。神と言って万能ではないんじゃ。異世界に渡れる力を持つ者は極わずかな神族で巨大の力を持っている者しか不可能だ。 きっとお前の世界に渡った鳳凰族は古の朱雀王だったのかもしれん」


「朱雀王って王様?」


「ああ。鳳凰国を治める王で鳳凰族で一番の神力を誇る者じゃ」何故か苦々しげに言う。


「それなら、今の朱雀王に帰れるようにお願いすれば戻してくれるんじゃないかな」


「どうじゃろ…今の朱雀王は女王だが、我儘で身勝手な女で鼻持ちならん。しかもお前のように不細工で低い神力しか持たない子供に会ってもくれんから諦めろ」


さり気無く、また不細工と言ったぞこの爺。


悪気が無いと思いたい。


「どうしたら会えるんだ」


「男好きの女王の好みの男になるしかないが、お前じゃな…大人になってもその顔ではたかが知れとる」


またしても容姿を貶められて悲しくなる。


だがそれより帰る事が俺には重要だ。


「そんな…爺さんは女王様に会える伝手は無いのかよ」


「ふん! あんな糞意地悪女の面など二度と見たくない!」


憤然と怒り出す爺さん。だが面識があるのが窺えて希望が湧く。


「知り合いなら頼んでくれ、お願いします」


土下座して必死に頼むが


「わしは国を追われた身じゃから戻れんのじゃ。すまないの」と申し訳なさそうに言う。


「俺はこれからどうすればいいんだ…」


見知らぬ世界に放り出された俺は途方に暮れるしかない。


無責任なご先祖は、この世界に子孫を呼び寄せたくせに、この扱いは無いだろうと呪いたくなる。


そんな俺を見兼ねたのか「一つだけ女王に会える手が無い事はない」と言い出す。


「本当か! どうすればいいんだ」


「百年に一度催される闘技大会がある。その優勝者には朱雀王がどんな望みも叶えてくれるのだ」


「それは何時やるんだ。俺も出場する」


思わず飛びつく。


「お前じゃ無理だ。そもそも剣を扱えるのか」


「剣なんて触った事も無いけど… 女王様が会場にいるなら出場者として入り込んで直談判する」


「辿り着く前に、護衛兵に間違いなく殺されるぞ」


「そんな…」


俺はその場にうずくまり泣きたくなるのを必死に堪える。


すると爺さんがぽんぽんと頭を撫でる。


「もしやる気があるなら、わしが剣を教えてやろうか」


「えっ」


「これでもわしは優勝経験者じゃ。剣には自信がある。どうする」


そんなすごい爺さんだったのかと初めて尊敬の眼差しで見る。


「おっ、お願いします。師匠!」


「よかろう。今日からお前はわしの弟子じゃ」


爺さんはにやりと笑う。


その時俺は分かっていなかった。


この糞爺がとんでもない奴だったと…。


後悔先に立たずを思い知るのだった。











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