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クローバー(3)  作者: ディライト
第2章
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第2章―(3)

「おわぁっ!」

 足場の悪い下りの砂利道をがむしゃらに走り出すと、広げたビニール傘が強風に煽られ、すぐさまおちょこになってしまう。

「ダメだ! 使い物にならねえ!」

 体勢を保つのも一苦労の風の中、俺は骨がバラバラになって負傷した傘に「俺に構うな先に行け!」と促されて、俺は「絶対後で助けに来るから!」という眼を向けてから、傘を木の根っこに引っ掛けて走り出す。

 昼間の清涼感あった森も、今は悪魔に魂を売った様にダークなオーラを放っている。散弾銃のように降り注ぐ雨は視界を曖昧にし、俺の身体の動きを重くさせる。裸足のまま履いた靴の中はすぐにぐちゃぐちゃになって、足を踏みしめる度になんとも気色の悪い感触を感じさせる。下のほうから蠢く様に襲い掛かる風は、行く手を阻む門番のようだ。

 それでも、俺はその風と雨に逆らうように足を動かす。

 俺の予想が正しければ、花咲はきっとあの仔猫のもとに向かったのだ。あの時の仔猫を見つめる花咲の眼は、ただ仔猫が好きというだけの眼ではなかった。どこか寂しそうで、切なくて、物悲しくて、それでいて何かに諦めているような、そんな眼をしていた。

 それは以前、火事被害に遭っていた一葉のそれと同じ。そしてそれは、俺も前に同じ眼をしたことがあるから。

 だからきっと――――、

 

「――っ! 花咲!」

 視界の悪い先にひっそりと丸くなる影が見える。急いで近づいていくと、次第にそれは姿を色濃くして、花咲の姿を鮮明にする。花咲は水浸しになった砂利道で女の子座りをして背中を丸めていた。

「花咲!? 大丈夫か!?」

 俺は花咲の肩を掴んで顔を上げさせる。

「……っ!」

 その眼には涙が浮かんでいた。雨にまみれているが、顔を近づけるとすぐにわかった。虚ろな眼をして胸元に視線を落としている。手には先ほどの茶トラの仔猫が、後生大事そうに胸元で抱きしめられていた。

「ごめんねっ……! ごめんねっ……!」

 嗚咽にも似た掠れた声で、ひたすらに謝罪の言葉を繰り返している花咲。顔中には自慢のふわふわな髪を疎らに張り付かせて、いつもの余裕な表情は一切消え去っている。

「どうしたんだよ!? なんでこんな嵐の中……!?」

 震える肩に置く手に力を少し加えて、花咲に発言を促す。

「私は……っ! 私は……あの人たちと……同じことを……っ!」

 過呼吸のように肩を上下させ、鼻を啜りながらも、つらつらと言葉を零していく花咲。

「あの人? 同じことって!?」

 俺は未だにぎゅっと抱いて離さない仔猫を一瞥して、再び涙と雨に濡れる花咲の顔を見直す。しかし、その後の言葉は続いてこない。とにかくこの雨と風じゃ落ち着いて話すこともできない。

「花咲、とりあえずペンションに帰ろう?」

 俺は花咲の手を取りながら立ち上がろうとすると、それにつられて花咲も身体を起こすが、拒否するように、再び座り込んでしまう。

「……足が」

「……ひねったのか?」

 仔猫を抱く手を左腕に持ち替えて、右手で右の足首を押さえる花咲。暗くてよくは見えないが、腫れているようにも見受けられる。

「おし、じゃあおぶされ!」

 俺はすぐさま花咲に背を向けてその場にしゃがむ。

「……大丈夫、一人で歩けるわ」

 その声に振り向くと、悲痛な表情をしながらも、生まれたての小鹿のように立ち上がる。そして仔猫を抱いたまま覚束無い足取りで歩き出すが、右足は痛々しく引き摺っていた。

「無理だって! またどっかで滑って転んだりしたらどうすんだ!」

「……大丈夫……って――きゃ!?」

 言っても聞かなそうだったので、俺は花咲の歩く先に回りこんで、躓かせて半ば強引に俺の背中に着地させた。

「……一葉にも言われたんだよ。花咲を頼む――ってさ」

 そう言うと、拒否していた花咲は、少し思案するように間を置いた後、そのまま諦めたように何も言わずに俺の背中に体重を預けてきた。そして、俺の首に右腕を回してくる。どうやら背中越しの感覚で、仔猫は左腕に器用に抱いているようだった。

「うし、行くぞ!」

 俺はやる気の息を入れなおして、足場の悪い上り坂を登り始めた。

 暫くぬかるみになっている砂利道を踏みしめてゆっくりと歩く中、会話は一つも無かった。

 轟轟しい風の音と、冷酷に降り注ぐ雨の音、そして滑りやすい砂利道を歩く音だけが鳴り響く。そんな危機的状況であるのに、背中に感じる花咲の柔らかな女の子らしい感触が俺の鼓動を不謹慎に早く動かさせる。少し冷たくなった花咲の体温も感じるし、等間隔の吐息が俺の耳元に届いてきてとてもくすぐったい。

「少しは落ち着いたか?」

 無言の間と、如何わしい煩悩を押さえ込むようについ言葉を発してしまう。

「……ええ」

 耳元でハスキーな声が囁かれる。俺の声に返事をするように、仔猫ものん気に一つ鳴いた。

「そっか……」

 俺は二の句を告げる言葉を失って、再び黙り込む。すると、俺の首に回す右腕が一層強く抱かれた気がした。そして、

「…………独りで……歩ける」

 と再びそう呟いた。

「そうかもしれないけど、今は怪我してるんだから――」

「……独りで……歩けるのに――」

 俺が全て言い終える前に、花咲は三度そう零した。でも、どうやら一回目のそれとは些かニュアンスが異なるようだった。

「……? なんか……あるのか?」

 俺は問うた。

「……別に……あなたには関係ないわ」

「関係あるだろ! 仔猫とニアミスしてからずっと何か考えてるようだったし、それで思い立って駆けつけてみれば、お前は仔猫抱いて泣いてるじゃねえか! ……そんなとこ見て放っておけるほど、自分の事薄情だなんて思ってねえぞ?」

「…………私のことは気にかけなくていいから」

「そう言うわけにいくかよ。――……もう見たくねぇんだよ。誰の悲しい顔も」

 そう言って、俺は木々の隙間から暗雲たちこめる空を見上げた。未だにスコールのような雨は無常に降り注いでいる。

「……わかったわ。話すわよ。できる範囲でね」

 少し余裕が戻ったような声が耳元で響いた。

「おう」

「後悔しても知らないわよ?」

「おう」

「ふふ……」

 何故か後ろでくすりと微笑を零す花咲。

「なんで笑うんだよ……?」

「……いえ、何か前にも同じやりとりをしたような気がしただけ」

 そう言って、花咲は俺の首に回す右腕を緩めて、身体を少し起こして俺の肩に手をかけると、淡々と話し始めた。

「――――私の父と母はね、私が物心ついた時からとても仲が悪くて、いつも喧嘩ばかりしていたわ。そんなだから、私はずっと居心地の悪い思いをしてきた。中学を卒業する頃には既に離婚の話が持ち上がっていて、父と母はどちらが私を引き取るかでずっと揉めてた……」

 一つ息を吐いてから、花咲は続ける。

「私を求めて争ってたんじゃない。私を拒絶して遠ざける話し合いをしてた。言ってしまえば、異分子の押し付け合いね。……私だってもう子供じゃない。二人から愛情のかけらもないことなんて、とうに気付いてた……」

 俺の肩を握る手が強まる。

「だから言ってやったの……。どちらも願い下げよって。私は独りでも歩いていけるって。……そう言って、私は単身花岡町にやって来た。子供の頃からお小遣いだけはいっぱい貰ってたから、それを溜めたお金で、今のおばさんのアパートを借りて、一人でアルバイトも始めて……」

 俺の背中で少し心配そうな声で鳴く仔猫。

「女優になろうと思ったのもその時からなのよ。あの人たちを見返してやろうと思った。あんた達の娘はすごい娘だったんだって……。テレビに出て、広告に出て、雑誌に出て、日本中の至る所に顔を出して、愛情を注いで来なかったことを後悔させてやろうって思ってた……」

 再び花咲は俺の首に右腕を回してくる。今までで一番強い力で。

「でも……、無理みたい……。エキストラから成り上がろうなんて話、最初から無理に決まってた。私は強がって逃げてきただけ。現実から眼を背けて、逃げてきただけなのよ……」

 そう零した後は、抱きつくように腕を回しながら俺の首におでこを付けて黙ってしまった。

 俺は今までずっと、花咲は強いヤツだって思ってた。自分の将来のビジョンをちゃんと持っていて、生活や夢のためにアルバイトも掛け持ちして、学校にも休まずしっかり来てて……。尊敬してるぐらいだった。恨んでるやつからお零れのように振り込まれる金で生活を続けている俺とは大違いだから。

 でも違った。そう思ってたそいつも、実はとても儚くて脆くて悩んでた。頼れる奴もいなくて、たった一人で苦しんでた。ただひたすら孤独に抱え込んで、その想いも吐露することもできなくて……。

「だったら頼ってくれよ」

 気付けば口を開いていた。

「…………え?」

「なんでもいいよ。バイトでの愚痴でもいいし、学校のことでも、テレビの話でも、なんなら……お前の好きそうな恋愛の話とかでもいいし、とにかく何でも話してくれてもいい。なんなら部屋にゴキブリでも出たら倒しに行ってやる。俺は、ほら……すぐ真上にいるしさ」

「…………もしかして、元気付けてくれてる?」

「……なんていうかさ、俺も……花咲のその境遇、わかるんだよ……。俺の母親は昔から優しかったけど、父親はいつもいなかったし……今もいやしないし……さ。そりゃ花咲に比べりゃ俺なんて恵まれてるのはわかってるよ。でもさ、放っとけないんだよ」

 俺も感じたことがあるからなんだろう。独りの寂しさを。一葉や葵や花咲に自分を重ねてしまうのはそのせいなのかもしれない。

「そうだ、なんなら家に飯食いに来いよ! 一葉も喜ぶと思うしさ!」

「…………それは、どうかしらね……」

 花咲が小声でなんか言った気がしたが、風と雨音でよく耳に入らなかった。

「ん? なんか言ったか?」

「なんでもないわ。でも――、」

 花咲は一拍置いてから、

「この仔に……私と同じ想いをさせるところだった…………っ!」

 と心を締め付けられるような声でそう呟いた。仔猫はわかっているのかいないのか、こんな暴風と豪雨でも、ただひたすら可愛らしい声で鳴いている。まるで感謝の気持ちを伝えたいように。その言葉の後、また暫く会話は止んだ。ただひたすらペンションまでの道のりを、降頻る雨と攻撃してくるような風を掻い潜りながら歩く。

「……ねぇ」

「ん?」

 ふと花咲の掠れるような声が、降りしきる雨に混じって耳に入る。

「どうして……あなたと一葉は……、本当の家族でもないのに、そうやって仲良く一緒にやっていくことができるの……?」

 ふとした花咲の疑問。

「本当の家族だって……そうやっていられないのに……」

 いや、もしかしたら、アパートでの俺たちの会話を下で聞きながら、ずっと考えていたのかもしれない。

「私には、どれだけ考えてもわからない……」

「……さぁなぁ。俺にもわかんねぇよ、そんなの。確かに、俺の父親も我関せず状態だし、今みたいな家族団欒なんて俺もほとんど記憶にないもんな」

「じゃあどうして……――!」

「でもさ、血が繋がってるとかいないとか、そんな細かい理屈は関係ないんだと思う。本当に信頼し合ってるからこそ、ああやって飯とか囲んで笑っていられる。もしかしたら自然なことなのかもしれないって……、最近思い始めた。そこに血縁だとかなんだなんて建前は存在しないんだよ。俺が一葉や二葉や三葉に、幸せであって欲しいって思ってることって、実際の家族を想う気持ちと大して変わんないんじゃないかって……さ」

 俺の言葉に花咲は追求するのをやめた。

「…………羨ましい」

「え?」

 それから何かを小声で呟いた気がしたが、再び暴風と豪雨に掻き消された。それと同時に、俺の首に回す右腕が強まる。しかしそれは、どこか優しい、と感じる力だった。

「なんでもないわ。さ、早く私をペンションに連れて行って。このままじゃ風邪引いてしまうでしょ?」

「ちょ、いきなりこき使い始めたな!」

「いいから走りなさい。みんなも心配してるでしょう?」

「マジでドSだな! 走ってこけても知らんぞ!」

 後ろから鞭で打たれる馬の気持ちが今分かった気がした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

「カホ!? ハルキ!」

 うねる様な暴風で、向こうからドアノブを持って引っ張られているように、開け難くなったドアを目一杯の力で強引に開く。すると、俺たちの帰りを待っていたようで、玄関先には俺が出て行ったときとほぼ同じように、四人が心配そうな面持ちで立っていた。そしていち早く一葉が俺たちに気付いて、一瞬安堵の表情を浮かべたが、すぐに声を張り上げる。

「二人とも無事で良か……って花咲どうしたんだ!?」

 俺が花咲をおぶっていることで、佐久間も花咲の身に何事かがと思っているようだ。

「ちょっと足をひねってしまって」

 そう言いながらも、花咲は俺の背中から降りて、ひょっこりと足を浮かしながらも器用にしゃがんで、仔猫を部屋に放してやった。

「あ! その仔、さっきスケボーの帰りにいた捨て猫ちゃんだよねっ!?」

 葵が筑紫に目を向け、同意を促す。

「そうだ! さっきは喧嘩してて、なんか流れでスルーみたいになってたけど……」

 ちょっとばつが悪そうに頭を掻く筑紫。

「カホ、もしかしてその仔を助けに?」

 一葉が驚いたように元から大きな眼をさらに大きくする。

「ええ、ごめんなさいみんな、心配かけてしまって……。でも、どうしてもこの仔は放っておくことができなかったの……」

 すっと立ち上がって、片足でバランスが悪いながらもペコリと頭を下げた。

「うん、とりあえずなんともなくて良かった! 花咲とハルキはとりあえずシャワー浴びさせないと、流石に夏でも風邪ひいてしまうぞ」

 佐久間がそう促して、俺たちにタオルを差し出してくる。

「花咲先浴びちゃえよ。花咲は怪我もしてるし、先に暖まってから治療した方がいい」

「ええ、ありがと」

「……一人で入れるか?」

「そんなことまで頼らないわよ」

 そう釘を刺して、花咲は覚束無い足取りで洗面所の方へ歩いていく。その様子を見て一葉は肩を貸しに行って、二人して洗面所へ消えていった。

「ハルキもお疲れさま」

「ハルっちゃんナイスだぜ! とりあえず上だけ脱いでリビングにいようぜ!」

 二人のサムズアップに肩を竦めて答えて、玄関マットで泥だらけの足を拭く。先に二人がリビングに消えて、俺も肖ってリビングに入ろうとすると、急に後ろから手首を掴まれた。

「ハルくんちょっといいかな?」

「ん、どしたアオイ?」

「カホがシャワーから出てくるまででいいから、二人でちょこっと話せないかな?」

「ああ、いいけど……」

 葵は笑顔であるが、どこか真剣味も含んだ表情をしていた。なんとなくリビングにいる二人が気になって、

「悪い、ちょっと腹冷えたみたいだから、トイレ行ってくるわ」

 とリビングに顔だけだしてそう言っておいた。葵も俺の後で二人に花咲の服を取ってくる旨を伝えて、俺たちはリビング前を後にして、花咲の部屋へと歩を進めた。

 

「アオイ、改まってなんの話だ?」

 花咲の部屋に一緒に入って、葵は花咲のボストンバックから服を取り出していて、俺はその様子を見ながら突っ立っている。

「昼間は筑紫くんに合わせてビックリした振りしたけど、あたしは認めてないよ?」

「ん? 何の話だ?」

 葵はこちらを見ずに、花咲のバッグを漁っている。

「佐久間くんがヒトハを好きだ~ってことと、佐久間くんとヒトハをくっつけちゃおう大作戦~のことだよっ!」

 と思えばくわっと花咲の下着を見せつけながら叫ぶ葵。

「待てアオイ、それは流石に男に見せ付けてはならないもんだ」

 俺は視線を外して必死に見たい気持ちを押さえ込む。

「おっと失礼っ! じゃなくて、ハルくんはそれでいいのかい!?」

 花咲の下着を他の衣服の間に挟んで、葵は開いた手で再度ビシッと指を向けてくる。

「いいって、だから何がだよ……?」

「あ~も~この人は~っ!! ヒトハと佐久間くんがくっついちゃってもいいのかいって話だよ!」

「いいも何も、俺と一葉は別にそういう関係じゃねえし……。っていうかアオイは佐久間のこと嫌いなのか?」

 俺がそう聞くと、葵は何やら両のこめかみに人差し指を当てて少し考える。

「ん~ん、全然嫌いじゃないよっ! いい友達だよね! 明るいし、カッコイイし、気立ても良くて、勉強もできて、スポーツ万能で、学校のアイドルだもん! 私には勿体無いくらいの友達さ!」

 なんかイラッと来たが、まぁそれは置いとこう。

「言いたくはないが、そんなこれ以上求めようの無い完璧な男が一葉に言い寄ってるのに、葵は認めたくないのか?」

「そうじゃなくてっ! あたしはただ一葉には幸せになって欲しいだけだよ! 佐久間くんが悪いとかそういうことを言ってるんじゃなくて、一葉が本当に信頼している大好きな人と一緒になってほしいだけだよ!」

「……俺は今の葵の言ってることがさっぱり理解できないんだが……」

 俺は考えが及ばず眼を細めると、葵は花咲の衣服を落としながらこちらに寄ってきて、俺の肩をかなりの力で掴んできた。

「ハルくん! それは本気で言ってるの!?」

 葵の眼は真剣だった。いつもの明るい向日葵のような笑顔はどこかに種ごと置いてきてしまったように、真摯な眼を俺の眼に突き刺してくる。

「ほ、本気も何も、マジで葵が何の話をしてるのか――――、」

「前言ったよね? 一葉を泣かせたら承知しないって」

 一葉との同居生活に終止符を打とうとしていたあの時だ。俺は一葉との生活を取り戻すために、葵に一葉との件は俺に任せて欲しいと言った後に、葵は笑ってそう言っていたっけ。

「なんで気付いてやんないんだよっ!?」

 葵は俺の肩を握る手を更に強める。この状況を理解できていない俺は、力なくされるがままに揺らされる。

「見ればわかるじゃんっ! 一葉が好きなのは、ハルくんだろっ!」

「…………え?」

 

 

 

 第2章――完

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