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「まずは名前を教えておこう! 名はユリア! ルシアに似て優しくて可愛い七歳の女の子さ!」
(女の子! 僕の姉になる子はユリアって言うんだ)
「しょっか、おねーたまになるおんなのこ……。なかよくなれりゅといいんだけど……」
「ハハハっ! 何、心配しなくても大丈夫!! 姉弟になるんだ、焦らずにゆっくりと仲良くなればいいさ!!」
(そう、だよね。でも、せっかく姉弟になるんだし。早くユリア姉様に弟として認めてもらいたいな)
「そうそう、亡くなったユリアの父であるユーステウスは名のある冒険者だったんだ! 冒険家ならではの色んな技を教えてもらってると私によく自慢してたよ!!」
(冒険者! 異世界ならではの定番な職業! すっごく気になる。僕も一度でいいから冒険者やりたいな。どうやったらなれるのかな? あ、でも公爵でもなれるのかな?)
「ん? レイ、冒険者に興味があるのかい? でもね、冒険者は危険を伴うとても危ない職業さ! 興味本位で首を突っ込むのは良くない!! まあしかし、もう少し大きくなってもまだ興味があればこの私が直々に鍛えてあげようではないか!!」
(あ......。もしかしたらユリア姉様のお父さんは、冒険家の仕事で命を落としたのかもしれないんだ……)
魔物と戦うのは命懸けだ。勿論分かっているつもりではある。敢えて言えばルシータが強過ぎるのだと思う。
確かにルシータに教えを請えば冒険者になれそうだが、命が幾つあっても足りない気がする。安易に返事しないでおいた方が賢明だろう。
レイルークはとりあえず微笑んでおいた。
「かーたま。ユリアねーたまは......。......ぼくたちとかじょくになりゅのいやがーてない?」
「それはな......はっきり言って分からない!!」
(えー……分からないんだ)
「私が引き取ると言った時、特に何も言わなかったな! ユリアの心情はユリア本人でしか分からない。だが! 私達がちゃんと家族として真摯に向き合えば、きっとユリアと本物の家族になれるさ!!」
「......うんっ!」
ルシータらしい前向きな考えに、自分も仲良くなれる様に頑張ろうと決意を新たにする。
程なくして応接間の大きな振り子時計が夕刻の時間を知らせる鐘を鳴らした。
「おや! もうこんな時間か! レイ、少し早いが夕食の時間にしようか!」
テーブルに置いてあるガラスのベルを優雅に鳴らした。するとシンリーを筆頭にメイド達が続々と入室して来る。ルシータはソファーから勢いよく立ち上がると、大きく両手を打ち鳴らした。
「さて! 今日はレイの誕生日!! 難しい話は魔物に喰わせるとして! 盛大にお祝いしようじゃないか! 皆、用意を頼む!!」
「「「畏まりました奥様」」」
メイド達は一斉に頭を下げた。
その日の夜はレオナルド、ルシータ、レイルークで楽しい夕食のひと時を過ごした。
折角の誕生日なのだ。レイはお祝いを大いに楽しんだ。