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レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか  作者: 宮崎世絆


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「かしこまりました。では、給仕に伝えておきます。準備が整い次第ご案内致しますので、暫くこちらでお待ち下さい」


 そう言うとシンリーは出て行った。



 レイルークはベッドから降りると側のソファーに座り直した。


(うーん。お昼食べる時に何を話そうかな?)



 気の利いた話題がないかウンウン唸って沈思黙考していると、扉のノック音が聞こえた。

 シンリーが迎えに来たようだ。


 話題が見つからないが、ぶっつけ本番で行くしかない。



「どうじょー」



 レイルークの声に扉のドアが開かれた先にいたのは……。



「……ねーたま……」



 ユリアが、少し困ったように立っていた。


「レイルーク……。少し、良いかな? 貴方と話がしたくて。あ、私がここに居ることは、シンリーさん達も知っているから。……あの、……入っても、良いかな……?」


「ふ、ふあい!!」


 混乱したレイルークはテンパった声で了承した。


 ユリアは安心した様に微笑んで部屋へと入って来たので、レイルークは混乱しながらも座っていたソファーへと誘導した。


 ユリアが座るのを確認してから、レイルークも向かい側に座る。



(でも、どうしたんだろ? ……あ、そうだ! ユリア姉様をテラスに置いてきぼりにした事、まだ謝ってなかった!!)



「「あの、さっきはごめん!」ね!!」



 声が被る。


 驚いて顔を上げるとユリアも下げた頭を上げる所だった。二人の視線が交わる。


「どうちて、おねーたまがあやまりゅの……?」

「どうしてって、レイルークに酷いこと言ったから……。レイルークこそ、どうして?」

「どうちてって、ねーたまをおいてけぼりにしたかりゃ……。ねえ? ねーたまは、ぼくにひどいことにゃんて、いってにゃいよ?」


 レイルークの言葉に、ユリアはかぶりを振った。


「ううん。私はレイルークには酷いことを言ったわ。……あのね、私の事なんだけど。……少し、話しても良いかな?」

「うん、もちりょん(もちろん)


「ありがとう……」


 そう言うと、ユリアは少し辛そうに瞳を閉じた。


「……私ね、今まで幸せだったんだ。大好きな父さん母さんと一緒にいられるだけで。……でもね、お父さんが事故で死んじゃったの。後を追うように、病気でお母さんまで。

……二人の命を奪ったこの世界を、心の底から恨んだわ。

そしてルシータさん…いえ、お義母さんに、家族になろうって言われた時も。……どうせ口だけだって。半ば、自暴自棄になってた」


「ねーたま……」


 ユリアはゆっくりと目を開いた。


「でもね、レイルークのおかげで目が覚めたんだ」

「ほぇ? ぼく?」


「うん。レイルークが大切な事に気付かせてくれたから。あの時、レイルークの言葉が無かったら。私は今も、そしてこれからも、この世界を恨み続けてたと思う。

でもね、そうじゃないって。レイルークが、私に気付かせてくれたんだよ」


 ユリアはゆっくりと立ち上がってレイルークの隣に座ると、レイルークの髪を優しく撫ぜた。


「……私、頑張る。ちゃんと前を向いて生きていく。新しい両親の気持ちに報いる為にも、自分自身のためにも。

……お父さん、お母さんも。きっと、それを望んでいるだろうから」


 真っ直ぐにレイルークの瞳を見つめた。


「......大切な事を気付かせてくれて、ありがとう。……レイ」


 ユリアの憑き物がとれたような柔らかい表情を見て、レイルークは優しい微笑みを浮かべた。


「うん。どういたちまちて!」




 その後、昼食を食べに食堂に二人で向かった。

 どうしてもとユリアが言うので、ちょっと恥ずかしかったがユリアと仲良く手を繋いで。



 その後とても楽しい昼食となったことは、言うまでもなかった。

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