勝者 vs トイレの花子さん
トイレの花子さんは個人的には好きじゃない。
「え?またここ?」
「あーーー久しぶりなんだよ、お姉さま」
「誰がお姉さまだ」
「え、確かそう呼べって言われたはずだよ?」
口裂け女と子泣き爺の死闘から1週間。2人は気づけばまたバトル会場に転送されていた。
「お風呂入ってる時とかだったらどうするつもりだ」
「安心していいよ。大人に興味無いわけでもないけどボク…基本ロリコンだから」
「奇遇じゃん、私もロリコンだよ。でも、興味無いわけないって時点で信用出来んわ。口裂けちゃん相手に可愛いとか言ってのけるし」
「お、おぉぉ、すごいよ、今日のボクのバケモノ。また超有名どころよ…トイレの花子さん」
「おぉぉぉ、ロリコンの星のバケモノじゃん」
「トイレってのがエッチだよね、花子さん」
「わかるじゃねぇか、金髪」
「金髪じゃなくて先生って呼んで欲しいんだよ。で、お姉さまは?」
「私は…口裂けちゃんだ、また。勝ち抜き戦なのかな?」
そして前回同様バトルフィールドにスポットライトが当たる。
「今回は口裂けちゃんからか」
「勝ち抜き側からって事なんじゃないのかな?…な、何かこっち見てるよ?」
「こっちっていうか先生を熱い目で見てるのかな?やるじゃねぇか、ロリコン先生。口裂けちゃんと相思相愛だぜ、おい」
「え?あ…可愛いとは思うけど……あ、スポットライト移ったよ?」
スポットライトが当たった先は複数並ぶトイレの個室だった。
「バトルフィールドにトイレ持ち込むのありなんだ」
「トイレ無いとバトルフィールドの花子さんになっちゃうからね、当然アリなんだよ…多分」
「花子さんのコマンドって何あるんだろ?うーん、花子ちゃんを包丁で攻撃かー。でも、それ以外に攻撃コマンド無いしなぁ」
どうやら黒髪女性はロリコンというのが本当かどうかはともかく見た目が子供のバケモノを包丁で攻撃するのを躊躇している様子、だが、バケモノをコマンドで操作すると、前回のように本来は攻撃対象になっていないはずの子泣き爺を包丁で攻撃というバケモノ特性を無視した事態になってしまうため、今回からオートバトルになっている。
「あ、今回からオートバトルになるって書いてあるよ」
「オートって見てるだけ?………私たちの役目は?」
「バトルを見る?」
「いらないじゃん、全然。何でこんなとこでバケモノの血なまぐさい戦いなんて見なきゃいけないのか」
「でもわめいても多分意味無いと思うよ。…あ、なんかもう戦い始まっちゃったみたいだよ?」
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
「まただよ。こういう事態の為にボク達がいるのかもしれないね。…口裂けちゃんはキレイだよ」
金髪男性は熱い目で見られた事を困ってはいたが、それでも前回のと同じく律儀にキレイだと答える。
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
『ねえ私キレイ』
「止まらないよ?何で?」
「相手を花子さんに設定されていて、私たちの声には応じないようにしたんじゃないかな?ギャラリーからの声に反応しちゃ1対1の戦いになんないし」
「それでボクらの希望、花子ちゃんは?」
「……多分だけど、呼び出されてないから出てこれないんじゃないかな?」
「はい?」
「いや、だって花子さんって詳しくは知らないけど、花子さん花子さんとか名前呼んで、一緒に遊ぼうとか言わないといけないんじゃなかったっけ?なのに口裂けちゃん、ずっと私キレイ?って聞き続けてるだけだし」
「は?いやいやいやいやおかしいよ、それは?」
金髪男性は納得いかないようで黒髪女性に疑問をぶつけるが、黒髪女性もおかしいとは思っているのだ。
『ねぇ、私キレイ?』
『ねぇ、私キレイ?』
「基本、バケモノって会話成り立たないっていうか自分が好きな事してるだけだし、召喚する系のバケモノってバトル無理なんじゃないかな?」
「じゃあ何で捕まえてくるんだよ」
『ねぇ、私キレイ?』
『ねぇ、私キレイ?』
「オートバトルって言っても一応先生のバケモノでしょ、どーにかしてよ、帰れないじゃん」
「ボクにどーしろっていうんだよ」
「テロップ出た」
「トイレの花子さんは戦意喪失とみなし、口裂け女の勝利とする……ヒドいよ」
「花子さんも可哀想に。いや、勝っちゃってまた次のバトルしないといけない口裂けちゃんの方が可哀想なのかな?」
こうして口裂け女vsトイレの花子さんの戦いは幕を閉じた。口裂け女強し、これで2連勝である。
召喚する系は「先に召喚してバトル会場に置いておこう」と、新たなルールが定まった。