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婚約破棄と宇宙戦艦

作者: 山田 勝

「婚約破棄だ。ミリンダ!」


「まあ、理由をお聞かせ下さい。王太子殿下」


「それは、真実の愛に目覚めたからだ!お前は真実の愛を邪魔した!男爵令嬢マリアこそが真実の愛の相手だ」

「そーだからね。殿下を自由にしてあげなさいね!」




 秋の空が高く見える快晴の日、陛下も出席する予定もある学園のガーデンパーティーでこの国の王太子のルートハルトが高々と婚約破棄を宣言した。

 傍らにはピンクブロンドの男爵令嬢がおり。王太子の手は男爵令嬢の腰に回っている。


 ルートハルトの婚約者ミリンダの周りには、

 第二王子、宰相の子息、護衛騎士、大商会長の息子、ミリンダの義弟が、まるで守るように囲んでいた。



 まあ、殿下は私と婚約しているからこそ、王太子の座にいられるとわかっているのかしら。

王妃殿下がお亡くなりになられてから、王宮での勢力は今一つ。我が公爵家が支えているのに。


 ミリンダは思考する。この恩知らずをどうやって料理しようかと、もう、貴族子弟の面前で宣言を出されたのだから婚約破棄の撤回は不可能だ。

 ここで華麗に振る舞い能力を示そうと。


 まず。この真実の愛というものを問いただそうと、扇を口元から放そうとした瞬間、

 ガーデンを影が覆った。

 まるで、太陽が隠れたようだ。


 思わず空を見上げるのはミリンダだけでは無かった。

 皆は口々に叫ぶ。



 ザワザワザワザワザワ~


「な、何だ。あれは!」

「巨大な船、空に浮かんでいる船よ!」

「魔王軍だ!」

「いや、魔道大国と名高いノーザン王国の侵略だ!」

「騎士団に連絡だ」



「ちょっと、何よ。あれは!」



 ピカッ!


 空の謎の物体から光が放たれ、まるでエレベータのように一人の男?が降りてきた。

 体は人族のようであるが、全身を何かで覆っている。まるで金魚鉢のような顔全体を覆うヘルメット、前面はガラスで真っ黒だ。

 体は分厚い白の衣服に覆われている。背中には大きな背嚢がある。


 ピピピ!


 地面に降りると、話し出した。やはり男の声だ。



「お前ら・・・にしている何。・・・・やめる!婚約破棄を・・・あ~ガガガー」


 男はヘルメットの右にあるツマミを調整すると、今度は流ちょうな王国下町の言語で話し出した。




「ボケ!ボンクラ!婚約破棄をしてんじゃねー!お前らは婚約破棄星の婚約破棄大陸の婚約破棄国の住人か?

 お前らが婚約破棄をすると、エネルギーを発し空間をゆがめ宇宙船の航行の邪魔になるんじゃーボケ!」




 皆、未知の文明に恐怖を覚えていたが、一人だけ、ピンクブロンドのマリアが食ってかかる。




「ちょっと、しょうが無いじゃない!好きになったんだから、こんな馬鹿と評判の王太子殿下でも可愛いところがあるのよ!

 ミリンダ様が外国の王子と話しているとき、子犬のような目でウルウル悲しんでいるのだからね!もうね。エスコートの近さよ!わざわざね。大陸共通語話せるのに、古典語を話すのだからね!密通と言われても仕方ないのだからね!」


ミリンダは反論する。まさか、外国の王子との会話の内容はこの世界の古典語で話していたからバレるハズはない。



「それは、友愛の情よ!やましいことはないわ!」


「はあ?『愛している』『カバンに入れて君を国に持ち帰りたい』とか言っていたじゃない!ルートハルト様も、ミリンダ様の会話、『私もお慕いしています』とか、『今晩如何ですか?』ぐらい分かるのだからね!」



「ヒィ、貴女、古典語分かるの?!」

「はあ、授業でやったじゃない。ミリンダ様の古典語は劇場なまり丸出しだけどねっ!」



「そ、そんなことはないわ!私は純潔よ!」


「フ~ン、その夜、外国の王子はワザワザ、ミリンダ様の公爵邸に泊まったじゃない?」



「ヒィ、お父様が招待したのよ」


 ミリンダは膝をついた。まるでやましいことを認めたようだ。

その後ろに第二王子が登場し、ミリンダを庇う。



「マリア嬢、ミリンダ様になんてことを・・公爵令嬢に対する無礼、男爵令嬢ごときが許されませんよ!」



「はあ、あんた。学生でしょう!衛兵隊動かせるの!?司法権あるの?第二王子でしょう?側妃腹でしょう?どうやって許さないか言いなさいよ!

 さっさとその浮気女連れて引っ込みなさい!」



「無礼な!私がミリンダ様を守る!浮気をしたのは義兄上の方だ!」


「あ、そう。じゃあ、あんたとミリンダ様を図書室の書庫で、『義兄上のことでお悩みですか?』

 と口説いていたことはいいの?!

 あんた。図書館で2時間ミリンダ様と話していて、子爵令嬢の図書員の子、困っていたわよ。私がルートハルト様に出会う前の話よ!」



「どこ情報だ!」


「フン、私は哲学の書庫にいたんだからね!哲学の書庫からあんたらのいた恋愛小説の書棚は丸見えなのだからね!

 何で、第二王子が令嬢向けの恋愛小説の書棚にいるかは別にいいけどね。その日に借りた本の名前は『自由恋愛の奨め♡』だからねっ!つまり、フリーセッ【黙れ!】」


「お前、何故、哲学の書棚にいる!怪しいぞ!」


「あ~ん。今は形而上学に興味をもっているのだからね。哲学は学問をつなげる潤滑油だからね。他の学問を学んでいるときに、フッと哲学の一節が浮かぶ。その瞬間が快感なんだからね」



「だからってやましいことはしていない!」


「ホホー、帰り一緒の馬車で帰ったじゃない!馬車がユサユサ揺れているのを王都中の市民が目撃したのだからねっ!」


「な、何だと!」


「市民が知っているくらいだから王太子殿下も知っているのだからね!ミリンダ様に瑕疵をつけないために『真実の愛』をうたい文句にして、身を引こうとしたのだからねっ!

 第二王子も見習いなさい。お兄ちゃんのものに手をつけてはいけないじゃない!」



 ドサッと第二王子は膝を地面につけた。


「後、ミリンダ様の義弟、護衛騎士!と、宰相の息子と何か分からんがトッポイ奴、お前らの事も話して欲しいの!」


「「「ヒィ」」」

「そんな。僕はレポートをやったご褒美だと」

「俺はドレスを融通した」

「義姉上!僕だけじゃなかったの?」


 四人は膝をついた。まるでミリンダとの関係を認めたようだ。



 その後ろを、近衛騎兵に警護された王が早足でやってきた。

 学園を襲った異変に対処する命令ではなく、マリアに話しかけた。



「これ、そこの男爵令嬢よ。何をしている。場をわきまえよ!」

「貴様、控えよ!」


 だが、マリアの口撃は止らない。


「あ~、王国法緊急事態時には、一部礼儀の序列は適用しないとあるじゃない。今が緊事態じゃない。変なおっさんが空から降ってきたのよ。私しか対処できないじゃない!ってかしていないじゃない!

 陛下、どう対処するの?!言いなさいよ!」


「フム、空の男よ。何が目的だ?」



 放置されていた空の男は話し出した。



「はあ、だから、婚約破棄をやめれ~言ってぺ!困るんだよ!毎回、航路を歪まされては!オメーが陛下か?」


「分かった。ルートハルトを断種の上、廃嫡、男爵令嬢と一緒に市井に下れ。それでいいな。なら、さっさと帰れ」


「ちょっと、何言っているの?王太子殿下は学生よ。学生の過ちでそんなことまでする?

 陛下だって、学生時代、盗んだ馬車を乗り回して、学園の窓ガラス割ったじゃない!大勢の平民が困っていたわよ!」



「貴様、何故、それを知っている!?」


「み~んな、知っているわよ!有名よ。箝口令を敷いたつもり?

 窃盗と器物破損をした陛下が許されるぐらないなら、王太子殿下のは可愛いものよ。ねえ、そう思わない。そこの空のおっさん!」



「はあ、オラにふられてもな」


「とにかく、廃嫡でもいいから、チンチンを取るのはやめさせなさい!私は王太子殿下と一緒に市井に下るのだからね!」



「はあ、何だかな。わかったぺ。このまま二人を速やかに一緒にさせるっぺ。チンチンを取っちゃダメだっぺ」


「・・・分かった」



「それで良かったじゃない!第二王子とミリンダ様を婚約させなさい。

 側妃が喜ぶわね。これでWin-Winじゃない」


 王は側妃の機嫌を取るため第二王子を王位につけたくて仕方なかった。

 これ幸いだ。


 しかし、マリアは気になる事を言った。


「そうそう、大公殿下、陛下のお義兄様、側妃腹だけど、軍功があって、陛下よりも人望のある大公殿下はルートハルト様をお気に入りだからねっ!

 子供がいないから、私と一緒に養子になるんだからね!私も王族になるのだからね!」



「まあ、これでいいっぺ。円満解決ならええっぺ。婚約破棄をするなっちゃ!」

「分かったからね」



 ・・・私、マリアは空のおっさんと約束し、王太子殿下を廃嫡になったルートハルト様と大公殿下のお屋敷に行った。



 ・・・・



「ルートハルト、マリアよ、これからよろしく」

「はい、伯父上」

「大公殿下よろしくお願いしますだからねっ!」


「辛かっただろう。ミリンダはワシにも色目を使っていた。しばらくはここでマリアと過ごすがよかろう」

「はい」

「部屋は別々だからね。純潔を捧げるのは結婚してからだかね!」

「もちろんだよ!」





 やがて、空の男に何も出来なかった陛下の人望は更に堕ち。ミリンダ様を巡って国内で内戦が起きた。

 内戦では空の男は動かないらしい。


 やがて、各勢力が疲弊した頃。

 大公殿下の軍勢が各個撃破をした。

 

戦いに勝利して大公殿下は即位をされた。



 私は盟約通り。空の男を呼ぶ。


 空に向かって、両手をあげて、


「ベントラー!ベントラー!」


 と三時間ほど呼ぶと巨大宇宙船がやって来た。

 どういう理屈かは分からない。


 あの男があの秋の日のように王宮の中庭に降りた。



「何じゃー!ボケ!呼んだか!」


「平和になったから呼んだじゃない!」


「ボケ!そうか、皆の衆は集まったか?」

「バッチリじゃない」


今日、空のおっさんを呼んだのは盟約だ。

婚約破棄をしないように貴族の子弟たちを教育する。



「おう、プロジェクターちゅうもんじゃ、これから説明するけえ、耳かっぽじって良く聞けや!」


「「「「はい!」」」



・・・・・・・




''この皆様が住む惑星はN48と我々は識別しています。文明は中世時代ですが、魔法が存在します。宇宙天然記念物に指定されており。干渉は最低限にするべしとの取り決めがあります。


皆様にお願いです。魔法のある方々が公開婚約破棄をすると時空が歪み付近を航行する宇宙船に影響を与えます。


皆様の方にもデメリットがあります。婚約破棄をすると、膨大なエネルギーが発生し。時空が歪み。

新たな未来が観測されるようになります。不安定な未来を生きることになるのです。


くれぐれも婚約破棄を控えてくださるようにお願い申し上げます。


天の川銀河帝国空宇宙航路管理局からのお願いです''



・・・・・・・



「分かったかボケ!公開婚約破棄をするなボケっつうことじゃ!」

「「「「はい!」」」



このおっちゃんは実は空の皇帝らしい。


「おっちゃん。ルートハルト様との結婚式の招待状よ。出席するでしょう?」


「おう、仕方ないな。来てやるわ!土産は隕鉄でも持って来てやる!それで剣でも作れや!魔剣になるっぺ」


「じゃあ、返礼はルートハルトと一緒に作った皿をあげるわ」

「この星も同じか!もう1000枚あるで、しゃあない!」



 案外、話せる奴らしい。











最後までお読み頂き有難うございました。

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