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第1話 物語は始まり

数十年つづく戦争がおこっている地域があった、そこで育ってきた少年は逃げ延びて、隣国の辺境でひっそりと暮らす隠者に会う。

少年が生まれ育った国が敵国のものへと変えられ、自分はその国から追われ、その国の人々に虐げられ、殺されかけてきたことを隠者に伝える。隠者は少年に対して、自分には少年の境遇に同情できるような経験が、あるいは知識がある、と語る。そして隠者の過去を語り始める。


それは、ある国で生まれた隠者が、その国の王となり、その後、国を滅ぼしてしまった話であった……。

隠者は語る。貧しく寂しい土地で生まれ育った時のことを。

私が生まれたのは、貧しい国だった。美しい自然に囲まれていたが、食べ物はほとんど育たなかった。寒い土地だった。みんな痩せ細ろえ、皮と骨だけのような姿でかろうじて生きていた。私もそうだった。そして、飢餓は暴動をおこす原因となり、人々は飢えて死に絶えた。私は運よく、奴隷商人に買われたが、奴隷として売られる途中の道すがら、盗賊に襲われてしまった。私を買おうとしていた奴隷商人の仲間たちは皆殺されて、私は一人になってしまい、野盗に身を落とすことになった。


盗賊に身を奴していた頃、美しい女性と出会ったことがある。彼女は、近くの村からいく人かの村人と一緒に攫われてきいていた。しかしその美しさゆえに、盗賊たちは彼女を奴隷として売ることはせず、彼女の所有権を得ようとした。そして、その所有権をめぐって、盗賊たちは互いに争い合うようになった。もちろん、私も参加した。子供ながらに彼女に惚れていた。

そうして争った結果、野盗団の中で仲の良かったフィリピオを殺してしまった。

フィリピオは、仲間たちの中でも特に優しくて、賢く、いい人だった。私にとっては、兄のようにも、親友のようにも見えた。そのフィリピオを殺してしまったのだ。

フィリピオも彼女の魅力に取り憑かれていた。だが、彼女をめぐって仲間たちと争うのは、本意ではなかっただろう。

彼女が盗賊団に囚われていた時、彼女はよく言っていた。

「なぜあなたたちは、こんなことをするのです?こんなことで、なんになるのですか?」

そう言われた時、私は考えた。

彼女はいったい、何を言いたかったのだろう? 幼くして盗賊として生きる自分の生活に疑問などなかった。彼女の言葉の意味はわからなかったけれど、フィリピオが死んでからというもの、私の心に暗い影がさするようになった。

フィリピオは殺したが、彼女は私のものにはならなかった。盗賊団には私よりも強い大人は大勢いたからだ。やがて別の村を襲っていた盗賊団のリーダーが帰ってきた。もちろん、女性は彼のものとなり、盗賊たちの争いは治った。

しばらくして、その女性は大人しく、穏やかになった。そして、私に懐いてくるようになったのだ。

彼女は私のものにはならないだろうと思っていたが、それが自分に近付くようになったことに、私は喜んだ。彼女はユリアと言った。

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