第 伍拾陸 話:灼熱の太陽の下で
衝撃的な出会いの後、行われた話し合いでアッバース朝イスラム帝国もムガル帝国と共に今回の欧州征伐に参加する事を決め正式に日ノ本と同盟関係を結ぶ事となった。
その後、真斗達はラシードが宮殿の大広間で開いた歓迎パーティーに参加し、出されたイラク料理とジュースのハームドを味わっていた。
皆が床に敷かれた絨毯の上で胡坐をして盛り上がっている中で真斗は右手に銀のコップを持ちながら玉座の前で胡坐をして信長と楽しく会話をするラシードの左隣りへゆっくりと座る。
「ビッラー・・・あ!いや!陛下。少しよろしいでしょうか?」
真斗からの問い掛けにラシードは信長との会話を一旦、やめ横を向き笑顔で尋ねる。
「ああ、どうしたかね友よ」
「はい、陛下。先程は知らなかったとはいえ馴れ馴れしく接してしまい大変、失礼いたしました」
一国の皇帝に対して余りにも馴れ馴れしく接してしまった自身の無礼さを一礼し謝罪する真斗の姿にラシードは笑顔で左手を横に振る。
「いいんだよ友よ。それにもう俺と君は友達ではないか。今まで通りに俺の事をビッラーと呼んで構わんよ」
ラシードの寛大な姿に真斗は感激を受け、再び深々と一礼をする。
「ありがとうビッラー」
すりとラシードの右隣で胡坐をする信長が笑顔で二人の会話に割り込む様に入る。
「はははっ他者から見ると二人は兄弟の様じゃの。それとすまないが真斗、実はラシードが自身の妻達と娘達に日ノ本を教えてもらいたそうなんじゃ」
「え⁉そうなのかビッラー?」
少し驚いた真斗からの問いにラシードは笑顔で頷く。
「ああ、そうなんだよ。俺を含めて妻達と娘達はジパングの言葉や習慣、宗教は学んではいるが、どうしても文化を知る者がこの国はいなくてなぁ。信長と話して真斗が適任と言われたので頼めるかな?」
ラシードからに頼みに真斗は笑顔で頷き、承諾する。
「ああ、構わんよ。明日の朝からでいいかな?」
「ああ、それでいいよ。じゃあ明日の朝、宮殿に来てくれ」
その後はイラク料理を摘みながら、お互いに楽しく会話をするのであった。
⬛︎
翌日の朝、和服姿を着こなした真斗は美しい着物を着こなした景、直虎、義昭、鬼華を連れて宮殿に訪れていた。
従者の案内で中庭が見える吹き抜けの廊下を歩いていると真斗の後ろを歩く義昭が歩くながら尋ねる。
「ねぇ真斗、今日は源三郎達は呼ばなくてよかったの?」
すると真斗は歩きながら首だけを後ろに向け、笑顔で答える。
「ああ。今回は日ノ本の文化を中心に教えるから語学などが得意な爺達はお留守番だ。その代わりに爺達にはイスラムの文学について更に詳しく調べて来るよにしてあるから」
真斗からの答えに義昭は納得した表情で頷く。
「なるほどね。それじゃ私達は私達の勤めを果たしましょう」
「ああ、そうだな義昭」
などと会話をしているとラシードの妃達と我が子が待つ部屋の前に着き、そして真斗は小さく深呼吸をして右手で両開き型のドアを三回、ノックする。
「はーーーい」
部屋の中から女性の声が聞こえて来たので真斗は聞こえない様に咳き込んだ後に名乗り出す。
「ハールーン・アッ=ラシード陛下より日ノ本の文化を教えに参りました鬼龍 真斗と申します」
すると再び部屋の中から女性の声が聞こえて来た。
「夫が言っていた家庭教師の方ですね。さぁ入って下さい」
「分かりました。では失礼します」
そう言って真斗はドアを開けて部屋の中へと入る。
真斗達が入った部屋の中では床に敷かれた絨毯の上で美しいアラビアドレスを着こなし胡坐をして文房具を持つ、ラシードの妻である第一夫人の『ズバイダ・アッ=ラシード』と第二夫人の『マアムーン・アッ=ラシード』、そしてズバイダとマアムーンの娘である『ジャジャル・アッ=ラシード』と『マラージル・アッ=ラシード』が笑顔で待っていた。
真斗達は少し彼女達に見惚れながら前へと立ち、笑顔で自身の右手を胸元に置き一礼をする。
「改めまして皆様。本日、皆様の教育をさせていただきます鬼龍 真斗と申します」
「初めて皆様。私は鬼龍 真斗の側女、村上 景と申します」
「皆々様、お初にお目にかかれて光栄です。私は鬼龍 真斗の側女、井伊 直虎と申します」
「皆様、初めまして。私は鬼龍 真斗の側女、足利 義昭と申します」
真斗を含めた四人が丁寧な自己紹介を終えるとズバイダ達も笑顔で自身の右手を胸元に置き一礼をする。
「初めましてジパングの皆様。私がカリフ、ハールーンの第一夫人、ズバイダ・アッ=ラシードと申します」
「お初にお目にかかれて光栄ですジパングの皆々様。私がハールーン陛下の第二夫人、マアムーン・アッ=ラシードと申します」
「初めましてジパングの皆々様。私こそハールーン大帝を父に持ちますズバイダの娘、ジャジャル・アッ=ドゥッルと申します」
「お会い出来て光栄ですジパングの皆様。私こそ父、ハールーンと母、マアムーンの娘、マラージル・アッ=ラシードと申します」
彼女達が自己紹介を終えると真斗は笑顔で柏手をする。
「それでは早速、日ノ本の文化を紹介しましょう。えーと、まずは・・・」
そう言いながら真斗は笑顔で腰に下げているチャブクロに手を入れ手探りする様に持って来た物を出し始める。
その後、ズバイダ達は真斗達が持って来た物に触れ合いなが初めて知る日ノ本の文化を楽しんでいた。
「へぇーーーーっハイクと呼ばれるジパングの歌は短い歌詞ながら大きな世界を描いているなんて」
「ほほぉーーっこのショウギと言うのはヨーロッパにあるチェスにはない面白さがあるわね」
「あははっ凄く面白いわカルタ。遊びながらジパングのワカが聞けるなんて贅沢な遊びね」
「ふむふむ。このイゴと呼ばれるゲームはリバーシにない緊張感があるわね」
真斗達がそれぞれ、相手をしながらズバイダ達に日ノ本の遊びを通して食や文学、医学、習慣、行事などを丁寧に細く教えていった。
一方でバグダッドから少し北西に位置する“ラムル平野”では織田連合軍とチチャクヘルムとチャール・アイナを着こなしたムガル軍がアラビア風に作られたチチャクヘルムとチャール・アイナを着こなしたイスラム軍を交えた軍事演習をしていた。
初の砂漠地帯での演習に織田連合軍は当初、悪戦苦闘していたが、物凄い学習能力で僅か約三時間で砂漠の環境に適応した。
長い演習を終え、休息に入った三軍の兵士達は交流会の様にお互いに親しく会話や食事を楽しむ一方で少し高台に設置されたテント内では甲冑を着こなした信長達はチャール・アイナを着こなしたアクバルとラクシュミー、ラシードに加えてイスラム陸軍総大将の“バイバルス1世・アル=ザーヒル”とイスラム海軍総大将の“アルラ・ジャイード=シンドバッド”が参加していた。
「どうですか我が軍が使う新型小銃は?蘭英との共同開発で生み出した連発式機構はまさに時代を先取りしています」
マルティニ・ヘンリーMk.1小銃を両手で持ちラシードに向かって政宗が笑顔で説明していた。
一方で政宗の説明を聞きながらラシードはレバーを上げたり下げたりして動作を確認しながら関心する。
「確かにこの小銃は凄いなぁ。我々が使っているアーキバスライフルとはまさに雲泥の差だな」
そんなラシードの右隣で同じ様に両手でマルティニ・ヘンリーMk.1小銃を持ち、隅々まで見るアクバルが笑顔で話し掛ける。
「本当だよラシード。弾と火薬を銃口から差し込めする動作をなくしただけでなく弾と火薬を一体化させるなんてジパングは凄いよ」
アクバルがそう言うとラシードは納得する様に頷く。
一方で配置されたテーブルに広げられた事細かいラムル平野の地図に置かれた軍用の模型を元に小十郎と武吉がバイバルスとシンドバッドを交えて模擬戦闘を行っていた。
「うむ。やはり平野での戦いは正面向かって戦う他ないな。こう言う見渡しのいい場所での戦いは下手な小細工は効きづらいからな」
バイバルスが真剣な表情でそう言うと聞いていた小十郎が首を横に振る。
「いいえ、バイバルス殿むしろ逆です。見渡しがいいからこそ進軍する側は四方八方に意識が行ってしまい上手く戦に集中出来ない欠点があります。ですからこの欠点を突くのです」
小十郎は丁寧に説明しながら模型を動かし、配置を変えていく。
「この時の戦いでもっとも効果的なのは“刺股戦術”ですね。敵を正面で押さえておきながら徐々に自軍を後ろに下がらせながら、その隙に左右に配置した騎馬隊を動かし、敵を覆い被さる様に退路を断ち殲滅するのです」
小十郎が説明を終えるとバイバルスは少し驚いた表情をしていた。
「なるほど。確かにそうだ。いやぁーーーっ小十郎殿、貴方様の戦略眼に感服しました」
「ありがとうございます」
小十郎は笑顔で礼を言うと二人は笑顔で握手をする。
また武吉は広げられたアラビア海の地図と地図の上に置かれた船の模型を使いながらシンドバッドとラクシュミーを交えて海上の模擬戦闘を行なっていた。
「敵のガレオン船は横列陣形をしているわね。だとすれば正面は避けて左右に艦隊を展開して背後と左右を突くのが効果的ね」
自信に満ちた笑顔でそう言うラクシュミーであったが、聞いていたシンドバッドは納得のいかない表情をしていた。
「ラクシュミー様、恐れながら敵の横列陣形は互いのガレオン船を隙間なく密着させ、進むまさに動く城壁です。一隻、二隻を沈めても無意味、近づく事すら出来ません」
長い間、海を旅して来たシンドバッドから来る現実的な意見にラクシュミーはウッとする。
「確かに敵が使うガレオン船は前後左右からでも砲撃出来る。近づく事すら出来ないわねぇ」
右手で下顎を触りながらどうするか考えるラクシュミーに対して武吉が声を掛ける。
「ラクシュミー殿、でしたら我ら村上水軍が使う小型船、小早船で敵ガレオン船団に一気に近付き、船上へ乗り込み激しい乱戦の後に殲滅します」
武吉の発案にラクシュミーは感心した様な笑顔をする。
「なるほど。確かに小型船なら機動力も高いし、飛んで来る砲弾は殆ど当たらないわね」
すると武吉の発案を聞いていたシンドバッドが右手を上げて挙手をする。
「すみません武吉殿、貴方様が言っていたコバヤブネは聞いたところによると一般的なボートとは違って穏やかな海でしか運用出来ないと聞いていますが、アラビア海は見た目以上に荒い海ですぞ」
すりと武吉はフッと笑顔になると軽く首を横に振る。
「ご心配なくシンドバッド様。我ら村上水軍が縄張りとしている瀬戸内海は日ノ本海に次ぐ荒い海でしてね。それに合わせて小早船は作られています」
それを聞いたシンドバッドは関心した様な笑顔をしながらある事を思い付く。
「武吉殿、もし時間がありましたら貴方様が指揮する村上水軍をもっと知りたい。無論、我らもアラビアの航海術を教えます」
シンドバッドからの提案に武吉は笑顔で承諾する。
「ええ、もちろんいいですよ」
それから再開された合同の軍事演習は恙無く行われ三軍はお互いに新たな知識を得る事となった。
⬛︎
合同の軍事演習が行われた四日後の昼、三カ国の軍は欧州遠征の為に補給を行なっており、補給が終わるまでの間、真斗達を含めた信長達はしばしの休息を取る事となった。
ラシードから貸し与えられた屋敷の一室で真斗は和服姿でベッドの上に寝転がり、笑顔で両腕を天井に向かって伸ばしていた。
「んーーーーーーーっ!日記も書いたし、日ノ本に居る竹取達に向けて手紙も送ったし今日は久しぶりに惰眠でもするか」
遠く日ノ本を離れ、各地域で戦の連続であった真斗にとってしばらくぶりの休息は胸が躍っていた。
すると突然、閉め切った両開き型のドアからノック音が響き、寝転がる真斗は身を起こす。
「はーーーい、開いているぞ」
「失礼するね真斗」
ドアの向こうから来たのは義昭の声でゆっくりとドアが開き、義昭が入って来た。
「!?!!⁈⁉︎‼︎」
部屋へと入り、ベッドの前に立った義昭の姿に真斗は言葉を失う程に驚く。
そのれもそのはず。なぜなら義昭は着こなしているのは彼女の髪色と同じ桃色を基調とし、明らかに男性の欲を極限まで刺激するバストとヒップを強調させた美しさを持ったエロティックなアラビアのビキニドレスであったからだ。
少し頬を赤くし恥ずかしそうな表情でモジモジとする義昭は真斗に問う。
「ど・・・どうかな?アラビアじゃ好きな人に対してこう言う服で愛情表現するんだとか。に・・・似合っているかしら真斗?」
あまりの衝撃的な光景に思考が止まっていた真斗であったが、すぐにハッとなり興奮する気持ちを落ち着かせながら答える。
「あ、ああ。凄く、似合っているし・・・その、あの、あれだ。か・・・可愛いよ」
少し頬を赤くし、目を背けつつオドオドしながら素直な感想を述べた真斗。それに対して義昭は素直に喜んだ。
「ありがとう!真斗‼」
そう言った後に義昭は笑顔で駆け足となって真斗の胸元に飛び込み、彼を押し倒す。すると笑顔だった義昭の顔はまるで獲物を狙う飢えた獣の様な目付きをして妖艶さを感じる笑顔をしていた。
「ねぇ真斗、征伐が始まってから全然、私を含めて景や直虎を“抱いて”いないわよねぇ♡」
義昭からの問いに真斗は戸惑いながら答える。
「あ、ああ。でもそれはもし征伐中に子供が出来たら大変だろう」
すると義昭はまるで真斗の口を塞ぐ様に突然、お互いの舌を絡める熱いキスをする。そして義昭からのキスが終わると真斗はまるで魂が抜けた様なボーッとした表情する。
「真斗の気持ちは凄く分かるわ♡でもね私♡もう我慢が出来ないのよ。だかね♡子供が出来てもいいから抱いて♡」
義昭が自身の右手をゆっくりと真斗の足の方に進ませ、そこから来る感触にボーッしていた真斗はハッとし慌てる。
「あ!いや‼ちょ待って!義昭‼」
すると突然、閉めていた部屋のドアがまるで蹴破る様な勢いで開かれる。
「ちょっと!義昭‼私達が着替えに手こずっているのをいい事に抜け駆けしてぇ!」
「そうよ卑怯よ!元幕府の将軍とは言え!貴女‼立派な武士でしょ!」
頬を赤くし不機嫌そうな表情で色違いの義昭と同じアラビアのビキニドレスを着こなした景と直虎が現れ、二人の姿に義昭は小さく舌打ちをし、一方の真斗は驚きの余りに混乱する。
「なっ!え‼あっ!景!直虎!何で義昭と同じ格好をしているんだぁーーーっ‼」
そんな彼の言葉を振り切る様に黄色いビキニドレスを着こなす景と銀色のビキニドレスを着こなす直虎はベッドへと向かい、倒れ込む真斗の体に圧し掛かる様に横になる。
「義兄貴♡質問はなしよ♡義昭が抜け駆けしたのは想定外だけど今日は寝るまで交わるわよ♡」
「真斗♡早く私の疼きを止めてぇーーーっ♡そして私のお腹に真斗の子を宿して♡」
「ねぇーーーっ真斗♡私のお腹にも貴方の子供を宿してね♡」
もはや理性の箍が外れた義昭、景、直虎は妖艶で欲望に満ちた笑顔と眼差しで息切れをし、その姿に流石の真斗も自身の命の危機を感じる。
(ヤバい!ヤバい!これは凄くヤバ過ぎる‼三人共!理性が無い!早くして抜け出さないと!)
そう真斗が心の中で焦りながら逃れようとしたが、努力空しく遂に三人は真斗に襲い掛かる。
「ああぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」
天を貫く様な三人に襲われる真斗の悲鳴が空しくバグダッドに響き渡る。
義昭、景、直虎は征伐中に抑え溜め込んでいた欲望を満足させる為に代わる代わる真斗と交わった。一方の真斗は三人の欲望を満たす為に必死に彼女達を喜ばせたが、夕暮れ時には遂に真斗は人生で初めて疲労負けしてしまった。
しかし、真斗の努力は無駄ではなく義昭、景、直虎の欲望は満たされ夕食前には大満足した。だが、その代償は大きく疲労負けしてしまった真斗はその日は夕食が食べれないだけでなく一歩もベットから動くことが出来なかったである。
一方で真斗達が砂漠の熱を超える様な交わりをしている時にネフド砂漠近郊にある村々が突如、現れた黒い死の軍勢に襲撃され、さらに軍勢は着々とバグダッドの脅威として近づいていたのであった。