第 伍拾零 話:欧州大征伐へ
第10次十字軍の降伏から二日後、僅かに残った十字軍の騎士達は皆、長い戦いで空腹と疲弊を起こしていた。
総大将である信長は人道的な処置でまず騎士達に食事と休息を与えた。また武器の没収のみで金品や衣服の略奪は禁止、そして双方の戦死した兵士達の遺体を丁重に火葬し、弔った。
一方、真斗は信長の命で戦死したギーとルノーの代行となったヨハンナとその他の士官達を金沢城へと連れて行き、その日の昼時に和睦の話し合いを大広間で行っていた。
「ではヨハンナ殿、我ら日ノ本はバチカンを含めた神聖ローマ帝国に対して、こちら側から提示した賠償金と身代金の支払いと責任者の処罰に謝罪があれば我々はこれ以上の望みはありません。無論、貴女様を含めた生き残った者は全員、日ノ本の船で送り届けます」
大紋を着こなし冷静な表情で胡坐をする真斗が目の前で正座をするヨハンナに言うと彼女は真剣な表情で頷く。
「分かりました真斗様。今回の十字軍の失敗をバチカンと神聖ローマ帝国が知れば神に誓って日ノ本と和睦するでしょう」
それを聞いた真斗はこれ以上、欧州と戦にならない事にホッとする。
また大広間とは別の和室では傷を手当され布団に寝かせられていたジョナサンが目を覚ます。
「あれ?ここは・・・何処だ?」
寝そべった状態で初めて見る和室の天井にジョナサンは疑問に思う。
「お!目覚めたか」
ジョナサンから見て右を向くと大紋を着こなした真斗が笑顔で胡坐をしており、彼は少し驚く。
「何で!てか、ここは⁉」
ジョナサンは勢いよく上半身を起こすとズキズキする痛みが起こり、少し俯きながら悶絶する。そして自身が上半身裸であった事に気付く。
「なん・・・でだ!敵である・・俺を・・・何で助けた?」
痛みを堪えながら少し冷や汗を流すジョナサンからの問いに真斗は笑顔で答える。
「武士の情けだ。お前の剣の腕いい、殺すのは惜しかっただけだ」
「嘘を・・・吐くな。そんな理由で俺を生かした訳じゃないだろ」
キリッとした眼差しで問うジョナサンに真斗はバレてしまったと言わんばかりの笑顔で答える。
「あの時の決闘の時にお前が戦う理由を言っていた姿が俺にそっくりでなぁ。それだけだ」
嘘偽りのない真斗の純粋な気持ちから来る笑顔で答える姿にジョナサンは彼が言っていた事を理解する。
(本当だ。この真斗と言う侍から来る笑顔で分かる。こいつは俺だ、俺自身だ。こんな遠い異国の地に俺と同じ想いで戦っている者がいるなんて。運命とは面白いなぁ)
そう心の内で語るジョナサン。すると寝ているジョナサンの足先にある中庭が見える様に開かれた襖の左側からヨハンナとアヴィラ、そしてキリスト騎士団の女騎士の“ヒルデガルド・フォン・ビンゲン”、精霊医学修道会の修道女長の“シエナ・カタリア”、フランスとドイツの少年十字軍の指揮官であるハイエルフの少年、“エティエンヌ・ピエトロ”とダークエルフの少女、“ニコラス・ビュッフェンドルフ”が入ってきた。
「ジョナサン!よかった、一昨日から目を開けませんから心配しました」
ジョナサンの左側に駆け寄り、正座をして心配そうな表情で言うヨハンナに対してジョナサンは優しい笑顔で彼女の手を握る。
「ヨハンナ様、ご心配かけて申し訳ありません。まだ痛みますが、もう大丈夫です」
それを聞いたヨハンナはホッとする。するとそこに山科 勝成が笑顔で手を振りながら現れる。
「やぁーーーっ皆様、お久しぶりです」
現れた勝成にジョナサン達はまるで幽霊と出会ったかの様に驚く。
「「「「「ジョ!ジョバンニ!?」」」」」
「「だっ!団長⁉」」
そして勝成は真斗の横で胡坐をすると彼らの反応が気になった真斗は彼に問う。
「おい勝成、もしかしてジョナサン殿達とは知り合いなのか?」
真斗からの問いに勝成は笑顔で答える。
「ああ、そうなんだよ。実は秀吉様に使える前に俺は聖ヨハネ騎士団の騎士館の一つ、ロドス騎士団の元団長でな。ジョナサン達とは知り合いなんだよ」
すると勝成の説明を補佐する様に礼拝服を着こなし正座をするヒルデガルドが落ち着いた表情で話す。
「ええ。剣の腕はジョナサン以上で入団して間もない私をよく扱いたものよ。でも面倒見がよくて仲間想いな人よ」
そして続く様にヒルデガルドの右側で修道女服を着こなし正座をするアヴィラとシエナが言う。
「ええ。とても心優しい人で飢饉で苦しむ民に対して騎士団の食糧を半分、分けたりして」
「それに盗賊騎士達に奪われた民の物を見返りなしで取り返す正義感を持っているわね」
彼女達からの称賛に勝成は照れ、それを聞いていた真斗は感心する。
「ほぉーーーっ向こうじゃ慕われているだな勝成」
真斗は素直に勝成を誉めるとジョナサンとヨハンナがある疑問を勝成に問う。
「しかし、どうやって生き残った?東シナ海で物凄い嵐に遭って船が沈没したんじゃなかったのか?」
「そうですわ。確か・・・タイフウっと呼ばれる大嵐で船がバラバラになってしまったんじゃ」
二人からの問いに勝成は笑顔で首を横に振って答える。
「いいえ、違うんです。確かに交易と旅の護衛として俺が乗っていたガレオン船は台風で酷いダメージを受けましたが、奇跡的に助かって沈み事なく大阪に着いたんです」
すると聞いていた真斗は勝成に補佐する様にある事を言う。
「確か大阪に着いた時はお前以外は全員、死んでいたよな?」
「ああ、そうなんだよ。台風で貨物は流されて飢えと疲労で俺も死にかけていた。そんな俺を助けたのが豊臣 秀吉様でな。それから俺が持つ攻城術を大変、気に入って家臣として黒田 官兵衛様と竹中 半兵衛様の補佐になったんだ」
秀吉の家臣となった経緯を説明して勝成に対してジョナサン達は感心する。
「そうだったんですか。でも正直、死んだって聞いた時は僕、凄く悲しかったですよ」
勝成の左側で修道院服を着こなし正座するエティエンヌが少し悲しいそうな表情で言うと彼の左隣りで修道女服を着こなし正座をするニコラスも少し悲しい表情で頷く。
「そうですよ。私達、少年剣騎士団に剣術を教えた恩師が死んだと知った時、どれだけ皆が悲しかったか分かりますか?」
二人からの口から出た皆の悲しみを知った勝成は申し訳ない表情で頭を下げる。
「それは申し訳ない。辛い想いをさせてしまった」
するとニコラスの左側で胡座をしていた真斗は立ち上がり、エティエンヌとニコラスの後ろを通って勝成の元に向かう。
「じゃ俺はこれで失礼するよ勝成。戦の後始末やらがあるから後は思う存分、皆と話せ」
笑顔でそう言う真斗に勝成は笑顔で頷く。
「ああ、ありがとう真斗」
そして真斗は一人、和室を後にし勝成は再会したジョナサン達と大いに会話を楽しむのであった。
⬛︎
それからしばらくして生き残った十字軍は話し合いで真斗が預かる事となり、ジョナサン達は真斗達と共に会津へ行く事となった。
最初、十字軍の騎士達は慣れない環境と日ノ本の言葉で不安が満ちていたが、真斗の機転で騎士達と共に百姓達の畑仕事を手伝わせた。
初めてする畑仕事に騎士達は悪戦苦闘するが、英語を学んでいた真斗と源三郎、そして竹取と景が通訳となり、徐々に騎士達は会津の人々と打ち解ける様になった。
それから五日が経った日の昼、百姓から貰った小袖を着た男性騎士と少年十字軍のハイエルフの少女とダークエルフの少年が黄金色に育った米の収穫をしていた。
「あーーいててっ!腰を曲げてやっていると痛くてかなわんなぁ」
そう言いながら男性騎士は前に向かって曲げていた腰を伸ばし、左手で腰をトントンとする。
「ふぅーーーーっでも、コメってこうやって出来るんだ。何だか小麦と同じね」
低くていた身を起したハイエルフの少女が流れ汗を手拭いで拭きながら笑顔で言うと少女の左側で作業をするダークエルフの少年も身を起こし、笑顔で頷く。
すると後ろから別の畑仕事をしていた会津の百姓達が大声で三人に向かって笑顔で声を掛ける。
「おーーーーい!そろそろ昼だぁ!飯にしよう!」
「んだぁ!会津の米はうっめぇーぞぉ!一緒に食べよ!」
「川で獲れた魚もあっから!たーーーーんと!食っでけろぉ!」
それを聞いた三人は笑顔で振り向き、笑顔で手を振る。
「「「ワカリマシタァーーーーーーーーーーーーーっ!」」」
一方、会津城の武家屋敷では着物を着こなしたヨハンナ、アヴィラ、シエナが大広間で竹取から生花を習っていた。
「オウーーーーッ!イケバナッテイガイト、ムズカシイノデスネ」
カタコトではあるが、勝成から教わった日本語で流暢に正座をし、初めて知った生花の繊細さの苦労を口に出すシエナ。
「エエ、ホントウデスネ。フツウニカビンニイレルノトハチガウムズカシサガアルワ」
シエナの右側で正座をし、生花用のハサミで牡丹の根元を切りながらカタコトの日本語で言うアヴィラ。
すると二人の間で挟まれる様に正座をするヨハンナは黙々と生花を仕上げていく。そして完成した作品を目の前で正座し、着物を着こなし自分の作品を淡々と作る竹取に笑顔で見せる。
「ドウデスカ?カグヤサン。ワタシノジシンサクデス」
すると竹取は作る手を止め、カタコトの日本語で話すヨハンナに向かって笑顔で彼女の作品を見る。
「凄く綺麗ね。でも少しゴワゴワしているわね。余分な所を抜いてみればなお良くなりますわ」
流暢なラテン語で言う竹取は丁寧に余分な花を抜き、整える一方でヨハンナは流暢にラテン語を言う竹取に驚く。
「竹取さん!貴女ってラテン語が話せるの⁉」
ヨハンナはラテン語で竹取に問うと彼女は手を止めて笑顔で頷く。
「ええ、話せるわよ。ラテン語だけじゃなくてギリシャ語やオランダ語、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語を習ったわ。こう見えても私は平安京の貴族で気品のある女性として色々な行儀や作法、そして他国の言語を幼少期に叩き込まれたわ」
「へぇーーーっそうだったんですか。ねぇ、竹取さんって真斗さんとはどんな出会いをしたの?私、恋話が好きで」
真斗との出会いが気になる乙女の様な笑顔で問うヨハンナに竹取は笑顔で頷く。
「分かったわ。そうね、あれは夏の日の事よ」
そう語り出す竹取にアヴィラとシエナも手を止め、ワクワクした笑顔で聞き始める。
一方、池のほとりにある野外の稽古場では白黒の袴姿の真斗、源三郎、左之助、忠司、平助が同じ白黒の袴姿のジョナサン、ヒルデガルド、エティエンヌ、ニコラスに示現流の稽古をしていた。
「よしジョナサン、まずは両手で刀を構えて振るってみろ」
「ああ、分かった真斗」
真斗の指示にジョナサンは自信に満ちた笑顔で木刀を両手で持ち、風を切り裂く様に大振りで振るうと目の前に立つ真斗は真剣な表情でくびを横に振る。
「ジョナサン、そんな振り方では隙を多く作ってしまうぞ。いいか、刀とは早い動きで小さく振るうのが最大の強みだ。この様にな」
そう言って真斗は自分の持っている木刀を両手で持ち、正眼の構えをする。そして大振りのジョナサンとは違い真斗は素早くコンパクトに振るう。
その隣では源三郎が人型をした藁の的の右横に立ち、竹製の模擬槍で一生懸命に突きと引きをするヒルデガルドを見ていた。
「16!17!18!19!20‼︎どうですか源三郎殿?ヨーロッパでは“純白の槍姫”と呼ばれた私の槍使いは?」
流れる汗を手拭いで拭きながら彼女から見て的の左側に立つ源三郎に向かって笑顔で尋ねると源三郎は厳しい目つきと表情で首を横に振る。
「いいえ、ヒルデガルド殿。厳しい事を言いますとが貴女様の槍の腕は二流です」
そう言って源三郎はヒルデガルドの持っている模擬槍を手に取り、右足を前に出し構える。
「いいですか、槍で敵を突く時は腕や足だけでなく体全てを使って突くのです。全体を使う事でより強い突きが繰り出せます、この様に」
源三郎は自分の左側に立つヒルデガルドに説明を終えると前を向き、体全体に力を込めるとまるで壁を突き破る様に槍を突くと的は押し込まれる様に真ん中から折れる。
さらに源三郎達の隣では左之助、忠司、平助が拳と蹴りで攻撃して来るエティエンヌとニコラスを素早い動きと体術のみでかわしていた。
「ほらほら、どうした?そんな遅い拳じゃ当たらねぇーぞ」
笑顔でそう言いながら左之助はヒラリヒラリと避ける一方で必死に当てようとするエティエンヌはイライラと悔しさを感じる表情をしていた。
「くそ!くそ!死ぬほどパンクラチオンを習ったのに‼どうして当たらないんだよ!」
一方、ニコラスは忠司と平助を相手に多勢に無勢であったが、互角に渡り合っていた。
「どーお!私も結構、やるでしょ!」
素早く無駄のない動きで拳と蹴りを繰り出しながら自信に満ちた笑顔で言うニコラスに対して忠司と平助は少し驚きながら素早い動きと手払いで避けていた。
「おお!こいつは凄いなぁ‼︎いい動きだぁ!」
「ああ!悪くわないぞ‼︎でもなぁ!」
平助はそう言うと左に居る忠司に向かって目で合図をすると忠司は笑顔で頷く。
すると忠司がニコラスの回し蹴りを後ろに動いて避けると同時に平助が蹴る足を素早く掴み、ニコラスをクルッと回して倒す。
「いいか、多勢に無勢の時は攻めているだけじゃダメだ。時には自分も一歩、敵の攻撃を防ぎながら勝機を掴む。まっ使い分けが重要って事だ」
笑顔でそう言いながら忠司は彼女の手を掴み起こす。
まだ敵同士ではあったが、真斗達と交流するジョナサン達の姿は平和そのものであった。だが、そんな時間もある事をきっかけに遠のくのであった。
⬛︎
ジョナサン達が会津に来て四週間後のある曇りの日の朝方、会津。
城では鬼龍軍が甲冑と陣傘を着こなした足軽達が戦の準備をしていた。
そして甲冑と兜を着こなした真斗達は城門の前で竹取達と別れの挨拶をしていた。
「真斗、気を付けてね。どんなに帰りが遅くなっても私は待っているからね」
「私もよ真斗。必ず無事に帰って来てね」
「義兄上、これ大山祇神社のお守りよ。出来るだけ早く帰って来てね」
着物を着こなし寂しそうな表情で言う竹取、乙姫、鶴姫に対して兜を被る真斗は笑顔で頷く。
「ああ、もちろんだ。約束するよ。必ず皆と一緒に帰って来るから」
そう言って真斗は三人を抱きしめる。一方、着物を着こなした愛菜と幽斎は景、直虎、義昭に向かって深く頭を下げる。
「景義姉様、直虎義姉様、義昭義姉様、兄上の事をよろしくお願いします」
「義昭様、我ら室町幕府一同を代表して、お帰りになるまでの城の留守はご心配なさらないで下さい」
二人の頭を下げる姿に兜を脱いだ景、直虎、義昭が笑顔で頷く。
「ええ、任せなさい愛菜。何があっても私達が真斗を守るわ」
「心配しないで愛菜。この井伊 直虎の名にかけて皆と一緒に帰って来るから」
「ありがとう幽斎。でも体に気を付けて無理はしないでね」
二人に向かって優しく言う景、直虎、義昭。そして彼女達の隣では着物を着こなした桜華、奈々花、大姫が兜を脱いだ源三郎達にお守りを渡していた。
「義父上、ご武運を母上と共に祈っています」
「あなた、気を付けてね。左之助様、忠司様、平助様、うちの夫を頼みます」
「爺様、くれぐれも無茶はしないでね。それと体には気を付けてね」
菜々花、桜華、大姫が少し心配そうな口調ではあるが、笑顔で言うと源三郎、左之助、忠司、平助、重清は笑顔で頷く。
「ああ、ありがとう二人共。無事に帰ったら一緒に薩摩へ旅行に行こう」
「お任せ下さい奥方様。ご家老と若様は我らが命に変えて守ります」
「はい姫様。ご心配なく、何があろうともご家老と若様は守ります」
「かしこまりました。我ら一同、必ずお約束はお守りしますので」
「ああ、ありがとう婆様。気を付けるよ」
それぞれ送り出しの挨拶を済ませた真斗達は用意されたそれぞれの愛馬に乗る。そして真斗は顔を後ろに向け、馬に乗り青い十字に赤いバツ印が描かれた白いサーコートとチェイン・メイルを着こなし、バイザーが開いたサレットヘルムやノルマンヘルムをジョナサン達、生き残った第10次十字軍に真剣な表情で問う。
「ジョナサン、本当にいいんだな?バチカンに反旗の刃を向ける事に迷いはないんだな?」
ジョナサンは迷いのない固い決意に満ちた眼差しと表情で頷く。
「ああ、迷いはない。これは間違った教えを広めるバチカンを正す為の聖戦だ」
「分かった。では参るぞ」
そして真斗を前を向き、右腕を上に上げ大きく振り下ろす。
「これより!欧州征伐の為に薩摩へ向かう‼出陣せよぉーーーっ‼」
真斗の力強く気合の入った指示に鬼龍軍全体の兵士達は大きく気合の入った返事をする。
「「「「「「「「「「おおぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」
そして鬼龍軍は再び岩城港へ向かって出陣した。
時は遡る事、三週間前の安土城。信長はバチカンに対して和平協定の条件を記した書状をヨハンナが使う転送魔法で送った。だが、バチカンからの返答は今回の第10次十字軍は一部のキリスト教徒の暴走で行った非正規の聖戦であり、バチカンは日ノ本に対して一切の条件は受けない返事が返って来た。
これには信長も堪忍袋の緒が切れ、愛刀で大広間にある周りの物に斬り掛かる程の怒りを見せた。
「秀吉‼家康‼光秀‼勝家‼長秀‼恒興‼利家‼すぐに全国の我が織田家に仕える家臣達に下知を送れ!それと朝廷にもバチカンからの返答を送れ!これより我が織田家‼嘗め腐ったバチカンはおろかカトリックが蔓延る欧州を征伐する‼集結の地は薩摩じゃ!よいなぁーーーっ‼」
上座で肩衣を着こなし周りにある物を斬る為に抜いた愛刀の長篠一文字を右手に持ちながら怒る信長からの命に目の前で正座をし、直垂を着こなした七人は深々と頭を下げる。
「「「「「「「ははぁーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」
こうして信長からの下知で真斗を含めた信長の家臣達は戦の準備をし、薩摩へ向かう事となった。またジョナサン達、生き残った第10次十字軍の兵士達もバチカンかの返答に不満が爆発し、武力によるカトリックの大改革を決意した。
この事はヨハンナから信長に伝わり、征伐成功の為に欧州の知識を欲していた信長は第10次十字軍からの征伐協力の申し出は願ったり叶ったりであった。
一方、朝廷もバチカンからの返答には怒り心頭で信長に対して欧州への軍事侵攻を許可し、全軍の出陣と官軍の命を出した。また裏朝廷も官軍として出兵する織田連合軍が欧州から帰還するまでの間、日ノ本の守りの為に朝廷と共に各地の鎌倉ならびに室町の武士達と妖怪達で結成された守護軍が組織された。
岩城港を出発した鬼龍軍は航海の途中で伊達軍、武田軍、真田軍、徳川軍、小田原北条軍、長曾我部軍と合流し五日後の夕暮れには薩摩最大の軍港である久見崎港に到着した。
翌日の早朝、鬼龍軍を含めた全国の陸上戦力と水軍戦力が一同に集まった久見崎港は欧州へ向けて多くの兵士達が出航の準備をしていた。
さらに沖や港にはイギリスとオランダから取り入れたスチーム技術と造船技術を元に全国の造船所で制作された黒い船体が特徴的なスクリュー式汽帆船のフリゲート艦とコルベット艦、輸送艦が港湾を埋め尽くす程に停泊していた。
そして武器や物資を船への積み込み終えると背中に海が見える大きな高台の上で和製南蛮の兜と甲冑を着こなした信長が目の前で大きな列を組んで兜または陣笠と甲冑を着こなす武将達と足軽達に向かって怒りを感じる真剣な表情で大声で演説する。
「皆の者よ!よくぞ我の声に応じて集まってくれた‼感謝する!分かっているが‼欧州!特にバチカンは我らを下僕の様に見下し‼我からの要求を踏み倒した!こんな屈辱は断じて許されない‼」
すると演説を聞く武将達と足軽達は同感する様に批判の声を上げる。
そして信長は肩に付けてる赤いマントを翻し、右の拳を高々に上げる。
「これより我らは海を渡り!異国の地である欧州を大征伐する‼欧州の愚か者達に!我ら日ノ本の武士魂を見せ付けてやれぇーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」
信長からの厳命に聞いていた武将達と足軽達は右腕を高々に上下させながら気合を入れる。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼えい!えい!おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
皆の気合を入れる大きな掛け声はまるで地震を呼ぶ起こす様な大きさで海と地が揺れる程であった。
こうして織田 信長による海を越え、地球のほぼ裏にある欧州に向かって大征伐をする事となった。