第 参拾捌 話:半月の下で
真斗達が広間で昼食を食べている一方、河上屋敷では源三郎が愛する妻の桜華と義娘の奈々花と共に広間で台物に乗った昼食料理を楽しんでいた。
「ねぇ義父上、どうですか?私が作った料理の味は?美味しいですか?」
胡坐をする源三郎の右側に正座をし笑顔で問う菜々花に対して右手に箸を持った源三郎は笑顔で頷く。
「ああ、凄く美味しいぞ。この豚の塩焼きなんて絶品だぞ」
源三郎からの誉め言葉に菜々花は明るい笑顔となって照れる。すると今度は彼の左側で正座をする桜華が酢豚の乗った皿を手に持ち、少し妖艶さを感じる笑顔で源三郎に擦り寄る様に近づく。
「ねぇーーーっあ・な・た♡この酢豚も食べて♡娘が料理を作った時に余った豚肉で私が作ったのよ。食べて♡食べて♡」
そう目を輝かせながら笑顔で勧める桜華の姿に源三郎は笑顔で酢豚を箸で取る。
「ああ、じゃこっちも頂くよ」
そう言って源三郎は一口食べると口の中に広がる甘酸っぱさとほんのりと感じる愛情に源三郎は喜ぶ。
「おおぉっ!これも凄く美味いぞ桜華‼︎」
源三郎からの嬉しそうな褒め言葉に桜華は満面の笑みで喜ぶ。
「本当!ふふふっ♪ありがとう、あなた♡それとね貴方、今夜は我と奈々花と一緒にお風呂に入らない?」
桜華の斜め上を行った提案に思わず源三郎は口に入れていた雑穀米を喉に詰まらせてしまう。
何とか自身の台物に乗っている湯呑み茶碗に入っていた水を飲んで喉に詰まった雑穀米を流し込んだ源三郎はホッと息をして目を疑う表情で桜華に問う。
「い!一体お前は何を言っているんだ‼︎お前とならまだしも!義娘の奈々花とって⁉︎いくら血が繋がっていなくても!まだ若年の義娘は入れんぞ!」
あたふたする源三郎に対して桜華は妖艶で誘惑を感じる笑顔で答える。
「分かっていますわ。でもねあなた、私も奈々花も留守の間、貴方に会えない寂しさからずっと二人で“慰み合っていた”のよ」
すると桜華は着ている美しいヨルガオが刺繍された黒紫色の着物の胸元と両肩を開けさせ、源三郎の体に密着させる。
「お願いあ・な・た♡どうか私と奈々花の寂しさを埋めて♡」
「し・・・しかし、」
「お願いち・ち・う・え♡」
拒もうとする源三郎に今度は奈々花が着ている美しいハナカイドウが刺繍された濃い蜜柑色の着物の胸元と両肩を開けさせ、桜華と同じ妖艶で誘惑を感じる笑顔で源三郎の右に両腕を絡めさせ、胸の谷間を押し付ける。
「私も母上も義父上を肌で感じたいんです♡それに・・・義父上だったら私の体♡“味わって”もいいでよ♡」
二人からの容赦のない妖しげな誘惑に源三郎は今までの人生で感じた事がない色欲に耐えていた。
(待て!待て!落ち着け俺‼鬼龍家に仕えて約三十年!文武両道のみで生きていた俺だ!生きていた中で培った知識で何とか切る抜けなと‼)
源三郎は心の内で語りながら桜華と菜々花からのアプローチをどうにか回避しようと模索する。
(ダメだぁーーーーーっ!全然‼よい案が思い付かん!一体どうすればいいのだぁーーーーーーーーーっ!)
すると桜華がゆっくりと源三郎の左耳に自身の口元を近づけ、そっと囁く。
「あ・な・た♡そんな深く考えずに今♡心の奥から湧いている欲に身を任せればいいのよ♡後は私と奈々花が誘いますから♡」
その言葉が完全に止めとなり源三郎は武士として、家老として、真斗と愛菜の教育者として、人生で初めて今まで押さえていた己の欲に身を任せるのであった。
⬛︎
その日の夜、真斗は竹取、乙姫、鶴姫、景、直虎と共に裸で城屋敷の風呂場に入っていた。
鍛え抜かれた筋肉を持ちながら細身のある体付きをした真斗、景、直虎と美少女の顔付きと体付きでありながら豊満な胸を持った竹取、乙姫、鶴姫は湯船に横並びで入り、身と心の疲れを癒していた。
「ふぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!やっぱり風呂は最高だ」
目を閉じ癒された笑顔で言う真斗に右側に居る直虎は笑顔で賛同する。
「そうねぇーーっ特に戦から帰った時に入る風呂は格別よね」
「それより直虎、お前、自分の領地を出てこっちに来ても大丈夫なのか?」
ふとした真斗からの疑問に直虎は笑顔で答える。
「それは大丈夫よ。すでに領地の守護は家康様の家臣となった直政に引き継がせてあるから問題ないは」
直虎の答えに真斗はホッとして顎下まで湯の中に入り、天井を見上げる。
「そっか。あの“徳川四天王”の一人、井伊 直政だったら井伊氏は安泰だなぁ」
「なに真斗、もしかして私達、井伊氏を心配していたの?」
「昔から鬼龍家と井伊家は文武や物の流通で親しくなった友だ。大切な友の身を案ずるのは当たり前だろ」
笑顔で武士道精神を言う真斗に直虎を含め、二人の話しを聞いていた皆がクスクスと笑う。
「ありがとう、真斗」
「全く本当に真斗は純粋なんだから。それより直虎、家臣になる事は分かったけど真斗の側女になるって本気なの?」
真斗と直虎の間に腰を下ろして湯に入る竹取からの問いに彼女の右隣に居る直虎は笑顔で頷く。
「ええ、本気よ。真斗は私に勝ったし、それに幼馴染頃から真斗の真っ直ぐで揺るぎない姿に惚れちゃったからね」
自分の胸の内に秘めていた真斗の恋心を包み隠さずに言う直虎の姿に竹取を含め関心する。
「流石、女頭領!恥ずかしくて言えない恋心をスパッと言えちゃうなんて」
真斗の前に腰を下ろして湯に入る鶴姫は少し驚いた表情で言った後に笑顔で振り向き真斗に問う。
「ねぇ義兄上、この後の夜の営みはどうしますか?もしよかったら私から先にしませんか?」
「うんーーーーっそうだなぁ・・・・・」
鶴姫からの提案に少し考え込む真斗、すると左側に居る景が水飛沫を上げながら少し険しい表情で真斗と鶴姫の元に近づく。
「おい!鶴‼ずるいぞ!私だって義兄貴と“初めて”がしたいわ!」
「ちょっと!景‼私が先に言い出したから私が先よ」
二人が真斗の前で言い争っていると今度は真斗と景との間で湯に入っている乙姫がムスッとした表情で鶴姫と景に向かって動き、割って入る。
「ちょっと!二人共‼︎後から来た貴女達が先なのは失礼よ!こう言うのは先に側女となった人とするのが定石でしょ‼︎」
鶴姫と景の言い争いと乙姫の言い分を間近で見て聞いていた竹取までもがムシッとした表情で言い争いに介入する。
「乙姫も!鶴姫も!景も!いい加減にしなさい‼︎貴女達は側女なのよ!側女は後で!最初に夫と営みをするのは正室である私が先でしょう‼︎」
常識的とも言える竹取の発言と介入で余計に言い争いが激しくなってしまい、その光景に真斗は呆れて溜め息を吐く。
「勘弁してくれぇーーっ風呂場はゆっくりと過ごす場所だぞ」
「「「「じゃあ!真斗‼︎夫である貴方が決めて!誰と最初に寝るの‼︎」」」」
そう言いながら少し怒った表情で突然、一斉に彼の方を向いた竹取達から迫って来た選択に真斗は焦りと混乱が起きる。
「あ!いや!その!あのぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
答えがでない真斗の姿に静かに溜め息をした直虎は近くに置いてあった桶を手に取り、湯船のお湯を汲み上げ、真斗と竹取達に向かってぶっ掛ける。
「だったら、ここは公平にじゃんけんをして順番を決めたら」
直虎の提案に真斗はハッとなって少し焦った様な笑顔と口調で静止した竹取達に勧める。
「そっ!そうだよ!直虎の言う通りだ。ここはじゃんけんで決めよ。勝った人の順で俺と営みをするってのはどうだ?」
お湯をぶっ掛けられた事で冷静となった竹取達は納得する。
「そうね。それだったら文句はないわね。それじゃ皆!じゃんけんをしましょう!」
竹取がそう言うと乙姫、鶴姫、景はやる気に満ちた表情で頷き真斗から少し離れた場所に移動する。
そして真斗は申し訳ない笑顔で直虎の元に向かい、彼女に軽く頭を下げる。
「すまん!直虎!本当に助かった‼︎」
すると直虎はフッとした笑顔で首を横に振る。
「いいのよ真斗。それとちゃんと私の事も抱いてね」
「ああ、分かったよ」
真斗は笑顔で直虎の願いを承諾する一方で竹取達はじゃんけんを始めていた。
「それじゃぁーーーっ!行くわよ!じゃーーん!けん!ポイ‼」
四回行ったじゃんけんの結果、一番手は鶴姫、二番手は景、その後は竹取、乙姫、直虎の順となった。
■
その後、風呂から上がり髪と体を乾かした真斗達は寝室へ向かい、畳の上に敷かれた布団の上で真斗は竹取達と熱く交わっていた。
最初の鶴姫とは上品ではあったが、熱く愛し合いながら激しく交わった。その際に鶴姫は真斗に対して“義兄上”と連呼し、その光景は兄に甘える妹の様であった。
次の景とはまるで男同士が交わっている様な物であった。景はまるで真斗の精力を全て吸い取る勢いであったが、真斗は負けじと景を満足させた。
続く竹取の時は順番が待てなかった乙姫が直虎を強引に引き入れ、四人で交わった。竹取と乙姫は真斗と会えなかった寂しさを埋めるかの様に激しく愛し合った。
一方、直虎とは他の四人と違い落ち着きがあり、まるで互いに心と体の絆を深める様に愛し合った。
場所は変わって河上屋敷の寝室では畳の上に敷かれた布団の上で源三郎、桜華、菜々花は裸となって交わっていた。
義妻だけでなく義娘と交わるのは他者から見れば異常ではあるが、確かにそこには愛があった。
それからしばらく経って時刻は夜の戌の刻、美しい半月の光の下、激しい交わりを終えた源三郎は少し上半身を起こした状態で右隣で夏用の布団を体に掛けて安らかに眠る奈々花の寝顔を見て微笑む。
「まるで幼子の様に寝ておるわ。わしが帰って来た事に安堵してるんじゃな」
源三郎がそう言うと左隣で彼と同じく上半身を起こし、さらに布団で胸元を隠す桜華が笑顔で頷く。
「そうですわね、あなた。この娘って昔から甘えん坊で寂しがり屋なんですよ」
奈々花の意外な側面を語る桜華。そして源三郎は右手で優しく寝ている奈々花の頬を優しく撫でる。
「わしはまた若と共に戦へ行ってしまうが、それまでの間は奈々花の甘えに答えよう」
「それがいいと思いますよ、あなた。きっと奈々花も大喜びですよ」
「そっか。ふあぁ〜〜〜〜〜〜〜っ眠くなって来た。わしらもそろそろ寝よう桜華」
「そうね。おやすみなさい、あなた」
「おやすみ、桜華」
源三郎と桜華はお互いに笑顔で見つめ合いながらキスをし、布団を体に掛けて眠りに着いた。
一方、交わりを終えた真斗達は大きい夏用の布団を体に掛け、川の字で寝ていた。
「しかし、俺の人生で初めてだなぁーっ五人を相手にするのは戦に疲れる」
天井を見ながら想像以上の疲れた様な表情で言う真斗に対して彼の右隣で寝る竹取が笑顔で言う。
「ふふふっ♫お疲れ様、真斗。それでいつ、小田原に向けて出陣するの?」
竹取からの問いに真斗は彼女の方に顔を向け、笑顔で答える。
「さぁーーーっ信長様からの出陣の書状が来るまでは小田原に向けて出陣する事はないな」
「そう。じゃーしばらくは会津に居るのね?」
「ああ。そう言えば、他の皆はどうした竹取?やけに静かだなぁ」
「私達以外は皆、寝ているわ。今日は激しく交わったから」
真斗は少し体を起こして周りを見てみると乙姫、鶴姫、景、直虎はまるで子供の様な安らかな表情で寝ていた。
そんな四人の表情に真斗は自然と微笑み、自身の左隣で寝ている乙姫の頬を優しく触る。
「この安心した様な顔、また俺達は戦に戻る事になるけど、必ず天下泰平の世を作ってみせるよ竹取」
真斗は笑顔でそう言いながら振り返ると竹取は静かに眠りに着いていた。
「おやすみ竹取」
真斗は笑顔で小さく言いながら寝ている竹取の頬に優しくキスをして自分も眠りに着くのであった。