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FIERCE GOOD -戦国幻夢伝記-  作者: IZUMIN
【第一章・天下統一編】
34/65

第 参拾肆 話:小さな将軍

 瀬戸内海合戦から三日後、毛利氏と長宗我部氏は何とか地理を活かした戦いで織田連合軍の侵攻を食い止めてはいたが、官兵衛と半兵衛の巧みな秤量攻めで毛利と長宗我部はついに降伏した。


 一方、真斗は源三郎達を引き連れ昼時に大島(おおしま)に属する孤島の城、能島城(のしまじょう)を訪れていた。


 能島城の敷地内にある鶴姫の屋敷の大広間で真斗は村上氏当主と向かい合って和睦(わぼく)の話し合いをしていた。


「それでは真斗殿(どの)、そちらが提示した条件を受け入れれば、信長様も満足なされるのだな?」


 胡座をし兜を脱ぎ、甲冑を着こなした村上氏現当主、村上 武吉からの問いに胡座をし兜を脱ぎ、甲冑を着こなした真斗は頷く。


「はい、武吉様。織田家に下り使えるのであれば信長様は満足なされます」

「うーーーむ、分かった真斗殿(どの)。今ここで和睦(わぼく)を結ぼう」

「ありがとうございます。武吉様」


 お互いに笑顔で真斗と武吉は一礼をする。そして真斗はある事を武吉に問う。


「あのーーーっ武吉様、すでにきょうから聞いていらっしゃると思いますが」


 すると武吉は明るい笑顔で頷き、真斗の問いに答える。


「ああ、無論だ。正直、鶴姫様をどこぞの馬の骨に嫁ぐ位なら昔から人柄をよく知った者の元に嫁がせた方がいいし、神社の巫女達も大賛成だ」

「それでは!」

「それともう一つ、お願いがあるんだが」

「何でしょうか?」


 そして武吉は真剣な表情で両手を拳にし深々と真斗に向かって頭を下げる。


「我が娘のきょうもそなたの元に側女(そばめ)として嫁がせてくれ」


 突然の武吉からの申し願いに真斗はあたふたする。


「えぇぇぇぇぇぇっ⁉︎よ!よろしいのですか?」


 慌てる真斗からの問いに武吉は頭を上げて答える。


「もちろんだ!正直、娘は男勝りで他の武将の元に嫁げるかどうか怪しいのだ。だから!あのの友である君の元に嫁がせたいのだ‼︎一人の父親(ちちおや)として頼む‼︎」


 武吉は再び真斗に向かって深々と頭を下げる。


 真斗は一瞬、迷ったが、娘を思う武吉の姿を無碍に出来ず腹を決め、彼の気持ちに答える様に真斗も真剣な表情で両手を拳にし深々と頭を下げる。


「お任せ下さい!かならず‼お二人を幸せにします!」


 それから真斗は一人、大三島(おおみしま)を訪れ大山祇(おおやまずみ)神社へ足を運んでいた。


 そして真斗は鶴姫の屋敷のとある広間で合戦時の軽装姿のきょうと紅白の巫女服の上から甲冑と緋袴(ひばかま)の裾に脚絆(きゃはん)を着け、額に鉢金を巻いた鶴姫と共に輪で囲む様に正座と胡座をし、真ん中に置かれた皿に積み重なって乗せられた蒸したジャガイモを手に取り、食べていた。


「うん!この蒸したジャガイモは美味いなぁ!この瀬戸内海で作った塩を振り掛けるとさらに美味い!」


 胡座の真斗がジャガイモを頬張りながら嬉しそうに言うと彼の右隣で胡座をするきょうも口内のジャガイモを飲み込み、笑顔で頷く。


「ああ!本当にこいつは美味い。そう言えば義兄貴(あにき)、さっき親父(オヤジ)の使えが来て知ったよ。前向きに了承してくれたって」


 きょうがそう言うと彼女の目の前で正座をし、リスの様に両手で上品に食べる鶴姫が首を傾げる。


「ん?和睦(わぼく)の他に何かありましたっけ?」


 鶴姫が何気なく問うと真斗ときょうは深く溜め息を吐く。


「この前、結婚祝いの旅で俺が竹取(かぐや)と乙姫を連れて来た時、約束しただろう。いくさが終わったら側女(そばめ)として、お前を迎え入れるって」


 真斗が少し呆れ気味な表情で答えると鶴姫は思い出した様にハッとする。


「あぁーーっ‼︎そうでしたわ!私した事がついに忘れていましたわ」


 そう言いながら鶴姫は自分の頭に向かって優しく右の拳で叩き、笑顔でウィンクをしながらテヘペロをする。


「まったく、忘れないでよかく。ああ、それとな鶴、私も義兄貴(あにき)の元に側女(そばめ)として嫁ぐ事になったらから」

「へぇーーーっそうなんですか・・・えっ⁉‼」


 きょうの口から出た言葉に手に持っているジャガイモを落とし、鶴姫は固まってしまう。


「あの・・・きょう・・今・・・なんてと・・・言ったの?」


 少し体を震わせる鶴姫の問いにきょうはジャガイモを食べながら答える。


「ん?いや、だから私も義兄貴(あにき)の所に側女(そばめ)として嫁ぐんだって」


 それを聞いた鶴姫は体の震えが大きくなり、ついに腹の底から来る驚愕が噴火する。


「どぎゃはうぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼きょう義兄上(あにうえ)の元に嫁ぐぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼⁉!?!」


 まるで地震が起きた様に大三島(おおみしま)と瀬戸内海が揺れ、木に止まっている鳥達は一斉に飛び立ち、海中の魚達が飛び跳ねるのであった。



 村上、そして毛利と長宗我部との和睦(わぼく)が成立してから五日後、それから真斗は鶴姫ときょうを連れ、鬼龍水軍と共に瀬戸内海を発った。


 二日後の昼には大阪湾に到着し、真斗が乗る安宅船(あたけぶね)の艦首から初めて目にする大阪の光景に美しい巫女服を着こなし天冠(てんかん)を被った鶴姫と袴姿をしたきょうが興奮しながら眺めていた。


「あれが天下の台所か。すっげぇーーーっ!貿易船が敷き詰める様に何隻も居るなんて!」

「ええ!私も神社から遠出しても出雲や安芸(あき)くらいだったわ!あんな賑わいは生まれて初めてよ!」


 きょうと鶴姫が自身が感じている興奮を口に出していると二人の後ろから兜を脱ぎ、甲冑を着こなした真斗が笑顔で近づく。


「どうだ。生まれて初めて関西まで来た感想は?瀬戸内海とは全然、違うだろ」


 そう問う真斗に対して鶴姫ときょうは笑顔で目を輝かせながら振り向き、答える。


「ええ!安芸(あき)の港町とは全然!違いますわ義兄上(あにうえ)‼︎」

「私もだよ義兄貴(あにき)‼︎芸予(げいよ)諸島の港町とは天と地だよ!」


 まるで子供様にはしゃぐ姿に真斗は拳にした右手で口元を隠してクスクスと笑う。


「それはよかった。しばらくの間は我が水軍の再編の為に大阪にいるから三人で大阪の町を見て回るか」


 真斗からの提案に鶴姫ときょうはオオッとし、ワクワクさせる。


 それから大坂へ着いた真斗達は借りている島津家の屋敷へと向かい、芸予(げいよ)諸島から持って来た鶴姫ときょうの家財道具を屋敷へと入れ込んだ。


 鶴姫ときょうが少し大坂の下見をする為に二人で出かけた一方で真斗は着ていた甲冑と赤鬼(あかき)を脱ぎ、鎧直垂(よろいひたたれ)姿となって一室でのんびりと一人で過ごしていた。


「んーーーーーーっさてと!会津にいる竹取(かぐや)と乙姫、それに愛菜達に手紙を送るか」


 胡座で背伸びをし、中庭が見える様に開かれた襖の前に置かれた文机(ふづくえ)へと向かう。


わか様、失礼致します」


 文机(ふづくえ)に置かれた習字筆を手に取り、手紙を書こうとした時に忠司の声が後ろの閉まった襖からして来る。


「おう!忠司、入れ」


 真斗が笑顔で振り向き、そう言うと襖が静かに開き正座をする鎧直垂(よろいひたたれ)姿の忠司が居た。


「失礼致しますわか様。実は先程、わか様にお会いしたい者が参られまして、広間で待っております」


 忠司は頭を軽く下げて真斗に来客を伝えると真斗は笑顔で頷き、右手に持つ習字筆を筆置きに置く。


「分かった忠司。案内を頼む」

「はっ!」


 真斗と忠司は同時に立ち上がり、忠司の先導の元に真斗は広間へと向かう。


⬛︎


 広間の襖の前に着くと忠司は一礼をし静かに去る。


「失礼いたします」


 真斗がそう言って襖を開くと、そこには桃色の長い髪を白い紐を使って後ろで縛り、幼児体型の童顔に身長が160cm位の美少女が豪快で綺麗な小袖を着こなし正座をしていた。


 真斗が来た事に気付いた美少女はパッと明るい笑顔になり真斗に向かって抱き付く。


「真斗!真斗!あーーーっ‼会いたかったわ!」


 真斗は美少女に抱き付かれた事に驚きながら彼女の名を口にするのであった。


「お前!義昭か‼何でここにいるんだ?」


 義昭と言う美少女は真斗から離れ、自慢に満ちた姿勢と笑顔で胸に手を当てる。


「その通り!私こそ第十五代室町幕府将軍‼足利 義昭である!控えよぉーーーーーーっ‼」

「義昭様、自慢げに名を名乗っている場合ではありませんよ」


 義昭の後ろで正座をする少し紫が混じった長い黒髪に美しさと少し妖艶を感じる小袖を着た美女が少し呆れた表情で言う。


 すると義昭は振り向き右手で後頭部を触りながらテヘペロをする。


「イヒヒヒッごんめん、幽斎。いつもの癖でいつね」

「それはそうと殿、真斗様に大切な話しがあって参ったのでは」


 冷静な表情でここへ来た理由を述べた家臣、長岡 幽斎に義昭は振り向き笑顔で頷く。


「ええ。すまぬが幽斎、私と真斗だけにしてくれないか?」


 義昭からの頼みに幽斎は笑顔で頷く。


「はい、殿。真斗様、すみませんが私は少し外しますね」

「え⁉あ、はい」


 真斗は少しキョトンとし、お互いに軽く一礼をする。そして幽斎は笑顔で広間を立ち去るのであった。


 それからしばらくして二人きりになった真斗と義昭、そして彼女から来た理由を聞いた。


「なるほどね。確かに今の信長様は室町幕府再興よりも自分自身が描く天下太平の為に動いているからな」


 胡坐をし両腕を組み俯く様に対面する義昭の話しを聞く真斗。


「ええ、そうなの。だから真斗、お願い!信長と手を切って私に付いて‼」


 正座をする義昭が悲しそうな表情で懇願するが、真斗は目を閉じ首を横に振る。


「すまぬが、それは出来ない。正直に言うと力を失った室町幕府による天下が続けば戦乱の世は続く。ならば新たな力を持つ信長様達に仕えて幕府とは違う天下統一を築き上げるだけだ」


 そう真剣な表情で言う真斗、すると突然、義昭が飛び掛かる様に真斗を押し倒す。


 真斗に襲った義昭は目は深い闇の様に黒ずんでおり、まるで獲物を欲する獣の様に息切れをし、両頬を赤くし妖艶な笑顔をしていた。


「そう言うと思ったわ真斗。でも、それはダメよ。貴方は私の愛しき我が君(婚約者)。ああ!可哀そうに第六天魔王の毒牙に侵された貴方を救うのはこの私なのですから」


 そう言うと義昭は着ている自身の小袖を脱いで行きながら真斗の着ている鎧直垂(よろいひたたれ)を脱がしていく。


 真斗は何とか義昭の拘束から逃れようとするが、人間とは思えない力で逃れる事が出来ずにいた。


(何だ!この力は⁉こいつ本当に人間かよ‼半妖の血が流れているのか⁉)


 真斗が心の内で語っていると義昭に全てを脱がされ、脱いでいた義昭も裸になる。


「さぁーーーっ!真斗、私の愛で貴方を救うから気を楽にしていてね‼」

「おい!義昭‼よせ!止めろって‼」


 真斗は何とか義昭を制止するが、彼女は止まる事はせず真斗の意志を無視して強引に自身の純潔(処女)を真斗に捧げ、そして激しく体を交えるのであった。


 それから一時間後、強引な行為(セッ●ス)を終えた義昭はとても満足した笑顔で真斗の体に寝そべる一方で真斗は虚ろな表情でどうしていいか分からなくなっていた。


「ねぇーっ真斗、これで私達は晴れて夫婦ね。それじゃ正室の私が挙兵した時はよろしくね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 義昭が笑顔で問うが、真斗は何も答える事はなかった。だが義昭は自分勝手に了承したと決める。そして起き上がった義昭は素早く脱いだ小袖を着る。


 真斗も上半身だけを起こすと義昭は襖を開け、そこには幽斎が静かに立っていた。


「それじゃね真斗、挙兵の時はよろしくね。二人で二人だけの天下太平を築きましょうね」


 義昭は笑顔で振り向き、笑顔で手を振り広間を去る。そして幽斎は軽く真斗に向かって一礼をし彼女の後を追う様に去るのであった。


 屋敷の玄関へと向かう途中で幽斎は前を歩く義昭にある事を問う。


「殿、真斗様がこちらに付いてくれますかね?」


 すると義昭は歩きながら笑顔で振る向き、頷く。


「ええ、もちろんよ。だってあれだけ体を交えたのよ♫彼は私の未来の夫♫そして征夷大将軍の私を支える副将軍よ♪必ず信長を裏切って足利に付いてくれるわ。はぁ~~~~~~~っ♪楽しみだわぁ~~~~~~~~っ♬」


 頬を赤くし、まるで熱い恋愛に心躍らせる少女の様にウキウキとさせる義昭であった。


 一方、広間にいる真斗は鎧直垂(よろいひたたれ)を着直し、義昭によって強引に体を交えた事に深く後悔していた。


「くそ!強引に交わってしまったとは言え、義昭の体を感じてしまった‼この事は誰にも言わないでおくが・・・」


 だが、同時に真斗が今まで感じた事がない怒りが心の底から込み上がって来た。


「おのれぇーーーーーっ!足利 義昭ぃーーーーーーっ‼俺の身を汚した事を後悔させてやるぅーーーーーーーーーーーーーーーーっ‼」


 自己中心かつ軽率な義昭の予想とは裏腹に真斗の心は鬼の様な怒りに満ち溢れていたのであった。

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