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46.刃を交えれば


 美しき剣士と美しき追跡者ストーカーが向かい合い、一触即発の状況となっている裏。


 流さんとはいうと。


 錘関市の国道では改造人間とのバイクチェイスが行われていた。


「観念しなさいネズミ野郎!おとなしく捕まるか死になさい!」


「だれが捕まるか!それに誰が死ぬかわれぇ!チビアマ!」


「誰がチビだチンピラァ! あんたみたいな下部組織のチンピラ頭が改造人間だったなんて思わなかったけど、あんたには聞きたいことがあんのよ!」


「聞きたいことあるんならウチの事務所荒らすんじゃねぇ!」


「先にやって来たのはそっちでしょ? 部下どもみたくあんたもおとなしくなりなさい! 」


「俺はインテリ系なんだよ! ヤクザのビジネスは引きが大切なんだよぉ!わりぃがイモひかせてもらうぜ!」


「自慢げに宣言してんじゃないわ!あんなチンピラに撒かれるのは癪に触る……逃がさいわ!」


 彼女もバイクを、急旋回させマウスを追った。


   *


 所戻って、人気のない通学路。


 そこでは玲央ちゃんと影森さんが睨み合う。玲央ちゃんは彼女へ日本刀を向けている。


「影森先輩……ずっと疑問だったんですよ。なんで貴女が《我々》と戦っているのか。流先輩はアメリカの諜報機関の一員だけど、あなたにはそういったバックボーンがありません。北野先輩を守りたいっていう意思が強いことは伝わりました。なので屋敷ではあえて聞きませんでしたが……」


 玲央ちゃんの声が先程より静かに落ち着いた口調となっている。


 包帯剣士の時に近い。


「なぜ……なぜ一日中北野先輩を監視しているんですか! もしや貴方本当は業武……〈我々〉と関係があるのでらないですか!?」


 違う!違うんだ!玲央ちゃん!


 彼女が僕を四六時中見ているのはそんな目論見ではないんだ。


「もし違うなら……ストーカーとでも!?」


 正解、大正解。


「れ……玲央ちゃん! 影森さんはそんな人じゃないよ! 」


「北野先輩! 私一日中先輩といましたけどあの人は常に先輩を見ています! 常に察知できたわけじゃないけど今もこうやって放課後の私たちをずっと監視していたのが証拠です!」


「彼女は監視の理由はともかく……〈我々〉の一味ではないよ!」


「なんでそんなに肩を持つんですか!? そもそもカッターで奴等と戦えるなんて異常です!そんな人が普通じゃ……ん?」


 玲央ちゃんは僕を説得しようと語りかけるが、疑問を抱いた反応をみせた。


 なにか違和感があるという表情。


「北野先輩……さっき監視の理由っていいましたよね? 前から監視されてるの知ってた……? 」


「うん……結構前から。一日中視線をかんじてるよ」


 玲央ちゃんは唖然とした表情をみせた。流さんもおんなじ表情してたような。


「見られているの察知してても何もしなかったんですか……!? 嫌じゃないんですか……というか怪しいとは思わないんですか!?」


「実害もなかったし……下駄箱に毎日クッキーいれてくれてたし。まあ影森さんだって分かってむしろ安心したというか……まあ発信器はびっくりしたかな」


「へ……誰のか知らないクッキー食べてたってことですか? しかも発信器? やること全部……犯罪……それでも安心って……」


 やっぱりこんな反応なんだね。基本。


「北野先輩も影森先輩も……ヤバイっすね」


 やっぱりヤバイのか僕達。


「兜山君……私はただ彼を、光ちゃんを守りたいだけなんだ。だから〈我々〉とも戦っている。彼を守ることはなんだってするよ」


 姿を現してから一言も話さなかった影森さんが口を開いた。彼女の答えはいつもと変わらない。


「光ちゃん……北野先輩の事。なるほど」


 玲央ちゃんは影森さんの言葉を聞いてなにかを察したような反応をみせた。


「なんとなくは理解しました。でも……貴方の力の理由とストーキング行為の是非は理解できません」


 玲央ちゃんは、日本刀を両手で握りしめ構えをとった。彼女の周りの雰囲気がキンッと冷える。


「刃で確かめさせてもらいます」


 彼女は戦う気だ。


「まって! なんで二人が戦うなんて! それに真剣を使うなんて……」


「北野先輩……これから戦う相手は世界の核へ根を張る悪魔の軍団。一緒に戦うには信頼が必要です。それがなければ……背中を預けるのは夢のまた夢……!」


 彼女の言うことは理解できる。手の内がわからない相手と一緒になんて安心できないというのは世間一般の意見だろう。


 でも戦って理解し合おうなんて。


「いいよ……君の言うとうりだ」


「影森さん!」


 影森さんも懐からカッターナイフを取り出した。


「危ないよ! いくらなんでもカッターで日本刀となんて!」


「いいのよ光ちゃん……光ちゃんのためにも彼女に認めてもらわなくちゃいけないもの!」


「その口調……あれが王子娘・影森南の本性……いや北野先輩の前での姿か……」


「そろそろ暗くなる。早めにやろう」


「そうですね……いざ!」


「尋常に……」


「勝負!」


 カッターと刀がぶつかり合う。夕焼けが照らす路地へ火花が舞い飛ぶ。


 二人の美少女が激しく刃を交える。


 やっぱり敵同士じゃない二人が戦うなんて危ない。


 僕が止めないと……説得して玲央ちゃんに分かってもらわなければ。


「光ちゃん! 間に割って入ろうなんて思わないでね! そんなことしたら私泣いちゃう!光ちゃんが傷つくもの!」


「そうですよ北野先輩……抜いた刃は答えが出るまで鞘へは戻せないんですよ。先輩が出る幕じゃないんです」


 僕の考えを見透かしたように二人は僕を制止した。


 確かに僕が二人を止めようとするならどちらかの盾になるくらいしかない。

 

 いざというときは……ふたりを信じよう。


「どうみても普通のカッターですね……これで奴等を倒しているなんて今でも信じられない……その秘密を晒してもらいます!」


 玲央ちゃんは刀を大きく振りかぶる。


 振るわれる刀の威力は凄まじいく。


 バリン!


「……!」


「そ……そんなカッターが!」


 影森さんのカッターナイフの刃が折れた。


 一撃で影森さんのあのカッターが割れるなんて信じられない!


「まだ終わらないですよ」


 玲央ちゃんの剣の勢いは止まらない。


 舞いを踊るかのような流れる剣術。


 だがそれは隙のない、勢いの増していく連撃。


 そして、彼女の刀の一撃一撃が大剣のごとき衝撃。


 近くで見ているだけで空を切る圧がジンジンと伝わってくる。


 影森さんも防戦一方だ。


 それを受け止めるたびにカッターの刃がどんどんとれていく。


 残りのカッターの刃は二段階しかない。


 でも、なにか変だ。


「まさか……影森先輩……!」


「…………」


 影森さんは彼女の連撃を何度も受け止めている。隙のない攻撃ではあるものの、反撃くらいはできるはずだ。彼女には神速の一撃という技もある。


 なのに攻撃の一手を打とうとはしない。


「私を……兜山の処刑人相手に手加減……北野先輩の真似事ですか?」


 剣道部稽古の時の僕のようだった。徹底とした防戦。攻撃を全くとして行わない。


「それで私に味方だと伝えたいようですが真似事では私は納得しません……! 」


 距離のある影森さんにむけ、彼女は刀を振るう。


 空を裂く飛ぶ残撃。



「くっ!」


 流石の影森さんも苦悶の声をあげた。


 空を伝う衝撃は彼女の体に衝撃を与え、彼女の衣服に切れ込みを入れる。


 そして残撃を全て受け止めたカッターナイフの刃は全て砕けちった。



「そんな……カッターが!」


「これで終わりです」

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